会社法 / テーマ別まとめ

全部取得条項付種類株式

株主総会の決議で、ある種類の株式を全部取得する仕組み。少数株主の締め出しに使われる。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

全部取得条項付種類株式は、株主総会の決議によって会社がある種類の株式の全部を取得できる仕組みで、定款にその旨を定めることで発行できる(会社法108条1項7号)。取得を決議する際は取締役に理由の説明義務があり、反対株主等は裁判所に価格決定を申し立てることができる。取得の効力は決議で定めた取得日に生じ、株主はその日に取得対価の権利者となる。

全部取得条項付種類株式の取得手続の要点
項目内容
決議要件株主総会の決議で取得を決定
取締役の説明義務取得を必要とする理由を説明
価格決定の申立てができる株主反対株主、議決権行使不可株主
申立て期間取得日の20日前から前日まで
会社からの通知取得日20日前まで(公告可)
  • 取得対価の割当ては保有株式数に応じて行う必要がある(108条2項7号ロ、171条2項)
  • 全部取得条項を新たに定款に定める場合、原則としてその種類株主総会の決議が必要(111条2項)
  • 価格決定前でも会社は公正と認める額を株主に支払うことができる(172条5項)
  • 裁判所が決定した価格には取得日後の法定利率による利息が付く(172条4項)
  • 株主への取得通知は公告で代替できる(172条3項)
  • 価格決定の申立てをした株主は、取得対価の権利者にはならない(173条2項かっこ書き)
1

定款で定める

全部取得条項の設定

第108条異なる種類の株式定款で全部取得条項を定められる3項・18号判例なし
  • 株主総会の決議で全部取得できる旨を定款で定められる
  • 取得対価の決定方法や決議条件も定款に記載する
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第111条新設・変更には株主の同意等が必要2項・3号判例なし
  • 取得条項付株式を新設する場合は当該株主全員の同意が必要
  • 全部取得条項を新設する場合は当該種類株主総会の決議が必要
  • その種類株主に議決権がなければ種類株主総会は不要
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2

取得を決議する

特別決議と取得対価の決定

第171条全部取得条項付種類株式の取得に関する決定決議で全部取得の内容を定める3項・3号判例なし
  • 決議で取得対価の内容・割当て・取得日を定める
  • 対価の割当ては保有株式数に応じて行う
  • 取締役は取得を必要とする理由を株主総会で説明する
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3

株主を保護する

価格決定の申立てと差止め

第172条裁判所に対する価格の決定の申立て反対株主等は裁判所に価格決定を申立てできる5項・2号判例 2件
  • 取得日の20日前から前日までに裁判所へ申立てできる
  • 反対株主と議決権行使できない株主が対象
  • 会社は取得日20日前までに株主へ通知する
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第173条効力の発生取得日に効力が生じ対価の権利者になる2項・4号判例なし
  • 取得日に全部取得の効力が生じる
  • 株主は取得対価(株式・社債等)の権利者になる
  • 申立てをした株主は対象外
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第172条会社法

株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,上記公開買付けが一般に公正と認められる手続により行われた場合における会社法(平成26年法律第90号による改正前のもの)172条1項にいう「取得の価格」

裁判要旨株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど当該株主又は当該株式会社と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ,公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も公開買付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されているなど一般に公正と認められる手続により上記公開買付けが行われ,その後に当該株式会社が上記買付け等の価格と同額で全部取得条項付種類株式を取得した場合には,上記取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り,裁判所は,上記株式の取得価格を上記公開買付けにおける買付け等の価格と同額とするのが相当である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年7月1日 平成28(許)4
登載
民集 第70巻6号1445頁
参照法条
会社法(平成26年法律第90号による改正前のもの)172条1項
論点2第172条会社法

社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合における,社債等振替法154条3項所定の通知の要否

裁判要旨社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年12月7日 平成22(許)9
登載
民集 第64巻8号2003頁
参照法条
会社法172条1項,(社債等振替法)社債,株式等の振替に関する法律128条1項,(社債等振替法)社債,株式等の振替に関する法律154条3項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第108条(異なる種類の株式) 詳細ページ
(異なる種類の株式)
第百八条株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
一剰余金の配当
二残余財産の分配
三株主総会において議決権を行使することができる事項
四譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
五当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
六当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
七当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
八株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第八項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
九当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。次項第九号及び第百十二条第一項において同じ。)又は監査役を選任すること。
2株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
一剰余金の配当当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容
二残余財産の分配当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容
三株主総会において議決権を行使することができる事項次に掲げる事項
イ株主総会において議決権を行使することができる事項
ロ当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件
四譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること当該種類の株式についての前条第二項第一号に定める事項
五当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること次に掲げる事項
イ当該種類の株式についての前条第二項第二号に定める事項
ロ当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
六当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること次に掲げる事項
イ当該種類の株式についての前条第二項第三号に定める事項
ロ当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
七当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること次に掲げる事項
イ第百七十一条第一項第一号に規定する取得対価の価額の決定の方法
ロ当該株主総会の決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは、その条件
八株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの次に掲げる事項
イ当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項
ロ当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは、その条件
九当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること次に掲げる事項
イ当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数
ロイの定めにより選任することができる取締役又は監査役の全部又は一部を他の種類株主と共同して選任することとするときは、当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数
ハイ又はロに掲げる事項を変更する条件があるときは、その条件及びその条件が成就した場合における変更後のイ又はロに掲げる事項
ニイからハまでに掲げるもののほか、法務省令で定める事項
3前項の規定にかかわらず、同項各号に定める事項(剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項に限る。)の全部又は一部については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。この場合においては、その内容の要綱を定款で定めなければならない。
会社法 第111条 詳細ページ
第百十一条種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として第百八条第一項第六号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない。
2種類株式発行会社がある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合には、当該定款の変更は、次に掲げる種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
一当該種類の株式の種類株主
二第百八条第二項第五号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の種類株主
三第百八条第二項第六号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の種類株主
会社法 第171条(全部取得条項付種類株式の取得に関する決定) 詳細ページ
(全部取得条項付種類株式の取得に関する決定)
第百七十一条全部取得条項付種類株式(第百八条第一項第七号に掲げる事項についての定めがある種類の株式をいう。以下この款において同じ。)を発行した種類株式発行会社は、株主総会の決議によって、全部取得条項付種類株式の全部を取得することができる。この場合においては、当該株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一全部取得条項付種類株式を取得するのと引換えに金銭等を交付するときは、当該金銭等(以下この条において「取得対価」という。)についての次に掲げる事項
イ当該取得対価が当該株式会社の株式であるときは、当該株式の種類及び種類ごとの数又はその数の算定方法
ロ当該取得対価が当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ当該取得対価が当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ当該取得対価が当該株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ当該取得対価が当該株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
二前号に規定する場合には、全部取得条項付種類株式の株主に対する取得対価の割当てに関する事項
三株式会社が全部取得条項付種類株式を取得する日(以下この款において「取得日」という。)
2前項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該株式会社を除く。)の有する全部取得条項付種類株式の数に応じて取得対価を割り当てることを内容とするものでなければならない。
3取締役は、第一項の株主総会において、全部取得条項付種類株式の全部を取得することを必要とする理由を説明しなければならない。
会社法 第172条(裁判所に対する価格の決定の申立て) 詳細ページ
(裁判所に対する価格の決定の申立て)
第百七十二条第百七十一条第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、次に掲げる株主は、取得日の二十日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、株式会社による全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てをすることができる。
一当該株主総会に先立って当該株式会社による全部取得条項付種類株式の取得に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該取得に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二当該株主総会において議決権を行使することができない株主
2株式会社は、取得日の二十日前までに、全部取得条項付種類株式の株主に対し、当該全部取得条項付種類株式の全部を取得する旨を通知しなければならない。
3前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
4株式会社は、裁判所の決定した価格に対する取得日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
5株式会社は、全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社がその公正な価格と認める額を支払うことができる。
会社法 第173条(効力の発生) 詳細ページ
(効力の発生)
第百七十三条株式会社は、取得日に、全部取得条項付種類株式の全部を取得する。
2次の各号に掲げる場合には、当該株式会社以外の全部取得条項付種類株式の株主(前条第一項の申立てをした株主を除く。)は、取得日に、第百七十一条第一項の株主総会の決議による定めに従い、当該各号に定める者となる。
一第百七十一条第一項第一号イに掲げる事項についての定めがある場合同号イの株式の株主
二第百七十一条第一項第一号ロに掲げる事項についての定めがある場合同号ロの社債の社債権者
三第百七十一条第一項第一号ハに掲げる事項についての定めがある場合同号ハの新株予約権の新株予約権者
四第百七十一条第一項第一号ニに掲げる事項についての定めがある場合同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。