会社法 / テーマ別まとめ

代表取締役と表見代表

会社を代表するのは誰か。社長・副社長の肩書を与えた場合の会社の責任。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

取締役は原則として会社を代表する権限を持つが、代表取締役など会社を代表する者を別に定めた場合はその者だけが代表権を持つ。代表取締役の権限は会社の業務に関する裁判上・裁判外の一切の行為に及び、その権限に加えた制限は知らない第三者には対抗できない。また、社長・副社長などの名称を与えられた取締役が実際には代表権を持たない場合でも、それを知らずに取引した第三者に対して会社が責任を負う場合がある。

代表取締役の権限と表見代表取締役の整理
区分対象内容第三者との関係
代表権の所在取締役原則、各自が会社を代表―
代表権の所在代表取締役を定めた場合代表取締役のみが代表―
代表取締役の権限代表取締役業務に関する裁判上・裁判外の一切の行為―
権限の制限代表取締役の権限への制限会社内部で制限を加えても善意の第三者には対抗不可
表見代表取締役代表権のない取締役社長・副社長等の名称を付与善意の第三者に会社が責任を負う
  • 代表取締役を定めるのは取締役会非設置会社では定款・取締役の互選・株主総会の決議による。
  • 代表取締役以外の取締役が複数いる場合も、各自が代表権を持つのが原則。
  • 表見代表取締役の責任は、名称を付した会社側が負うものであり、当該取締役自身の責任を定めた規定ではない。
1

誰が代表するか

選定と代表権の範囲

第349条株式会社の代表取締役が会社を代表するのが原則5項判例 2件
  • 取締役は各自、会社を代表する権限を持つ
  • ただし代表取締役など別の代表者を定めればその者のみが代表
  • 代表取締役を定める方法は定款・互選・株主総会の決議のいずれか(取締役会非設置会社)
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2

権限を制限しても

善意の第三者への対抗

第349条株式会社の代表取締役が会社を代表するのが原則5項判例 2件
  • 取締役は各自、会社を代表する権限を持つ
  • ただし代表取締役など別の代表者を定めればその者のみが代表
  • 代表取締役を定める方法は定款・互選・株主総会の決議のいずれか(取締役会非設置会社)
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3

肩書だけの代表

表見代表取締役の責任

第354条表見代表取締役社長等の肩書を与えた会社の責任1項旧商法 12件
  • 代表権のない取締役に社長・副社長等の名称を与えた場合が対象
  • その取締役の行為について、知らない第三者に会社が責任を負う
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第349条会社法

株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をしたことを理由に同取引の無効を会社以外の者が主張することの可否

裁判要旨株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合,当該会社以外の者が取締役会の決議を経ていないことを理由にその無効を主張することは,当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り,許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年4月17日 平成19(受)1219
登載
民集 第63巻4号535頁
参照法条
会社法362条4項,会社法349条4項
論点2第349条会社法

1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と刑訴法339条1項4号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役と当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続についての代表権の有無
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と当該刑事事件に係る訴訟手続についての取締役の代表権の消長
4 汚水を下水道に放流する行為が下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)の罰則の対象となり得ることと廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条〈通知義務〉違反の罪の成否

裁判要旨1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合には、破産手続が終了したとしても、刑訴法339条1項4号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」に当たらない。
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役は、破産手続開始によりその地位を当然には失わず、破産手続が終了するまでの間、当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する。
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する取締役は、会社法478条1項2号〈清算人の就任 定款で定める者〉又は3号に掲げる者がある場合を除き、破産手続の終了後は、当該刑事事件に係る訴訟手続について清算人の立場で当該会社を代表する。
4 汚水を下水道に放流する行為は、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)によって基準に適合しない下水の排除として規制され、同法の罰則の対象となり得るとしても、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条〈通知義務〉違反の罪が成立し得る。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和8年4月7日 令和6(あ)1479
登載
―
参照法条
(1、3につき)会社法475条1号、会社法476条、会社法481条1号 (1につき)刑訴法339条1項4号 (2、3につき)刑訴法27条1項 (2につき)会社法330条、会社法349条1項、民法653条2号、破産法78条1項 (3につき)会社法478条1項、会社法483条1項 (4につき)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)1条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)25条1項14号、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)32条1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)1条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)12条の2第1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)38条1項1号、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)45条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)46条1項1号
論点3第354条旧商法下の裁判例

取締役会の無効な決議により選任された代表取締役がした行為と商法二六二条の類推適用

裁判要旨取締役会の無効な決議により選任された代表取締役が会社の代表としてした行為については、会社は、商法二六二条の類推適用により、善意の第三者に対してその責に任ずべきものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和56年4月24日 昭和54(オ)475
登載
集民 第132号585頁
参照法条
商法262条
論点4第354条旧商法下の裁判例

代表権の欠缺を知らないことにつき重大な過失がある第三者と商法二六二条に基づく会社の責任

裁判要旨会社は、商法二六二条所定の表見代表取締役の行為につき、重大な過失によりその代表権の欠缺を知らない第三者に対しては、責任を負わない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年10月14日 昭和52(オ)106
登載
民集 第31巻6号825頁
参照法条
商法262条
論点5第354条旧商法下の裁判例

更生会社の管財人が数人あるのにそのうちの一人が単独で手形行為をした場合に商法二六二条の類推適用があるとされた事例

裁判要旨更生会社の管財人が数人あるにもかかわらず、そのうちの一人が、単独で、管財人の名称を使用して手形行為をした場合において、手形の取得者が、右一人の管財人が単独で手形行為をなすことができると信じて手形を取得し、更生会社においては、数人の管財人の間に会社更生法九七条一項但書の職務分掌の定めはなかつたが、右一人の管財人が更生会社の管財人として常勤し、他の管財人の同意のもとに事実上更生会社の経営部門の職務を担当し、自己の単独名義で手形行為をなすことを他の管財人が黙認していた事情があるときは、更生会社は、商法二六二条の類推適用により、手形行為者としての責に任じなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年2月23日 昭和44(オ)1048
登載
民集 第25巻1号151頁
参照法条
会社更生法97条1項,商法262条
論点6第354条旧商法下の裁判例

一、会社の訴訟上の代表者の確定と民法一〇九条、商法二六二条の適用の有無
二、控訴裁判所が被告会社代表者の代表権限の欠缺を看過してなされた第一審判決を取り消す場合の措置

裁判要旨一、民法一〇九条、商法二六二条は、会社を訴訟上代表する権限を有する者を定めるにあたつては、適用されない。
二、控訴裁判所が被告会社代表者の代表権限の欠缺を看過してなされた第一審判決を取り消す場合には、原告に対し訴状の補正を命じさせるため、事件を第一審裁判所に差し戻すべきであり、ただちに訴を不適法として却下すべきではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和45年12月15日 昭和45(オ)112
登載
民集 第24巻13号2072頁
参照法条
民訴法58条,民訴法45条,民訴法388条,民訴法389条,民法109条,商法262条
論点7第354条旧商法下の裁判例

一、代表取締役代行者なる名称と商法二六二条
二、いわゆる持ち廻りの方式によつたため有効な取締役会の決議とは認められないとされた事例
三、代表者選任が無効な場合において商法二六二条の類推適用が認められた事例

裁判要旨一、代表取締役代行者なる名称は、商法二六二条にいう会社を代表する権限を有するものと認むべき名称に該当する。
二、株式会社の代表取締役が行方不明となる緊急状態が生じたので、他の取締役全員が、判示のように、取締役甲に代表権を付与することを承認した場合において、その承認が、いわゆる持ち廻りの方式によるものであるときは、有効な取締役会の決議とは認められず、取締役甲は、会社の代表権を取得しない。
三、株式会社の代表取締役が行方不明のため、他の取締役全員により、正式に代表取締役が選任されるまでの間一時的に、会社の代表権を行使することを承認された取締役が、右承認に基づき、代表権を有するものと認むべき名称を使用してその職務を行なつたときは、右承認が取締役会の代表者選任決議と認められず、無効の場合であつても、会社は、商法二六二条の類推適用により、右名称を付した取締役の行為につき、善意の第三者に対してその責に任ずべきものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年11月27日 昭和40(オ)1197
登載
民集 第23巻11号2301頁
参照法条
商法262条,商法260条ノ2第1項,商法261条1項
論点8第354条旧商法下の裁判例

共同代表の定があるのに代表取締役の一人が単独の代表名義で約束手形を振り出した場合に商法第二六二条の類推適用があるとされた事例

裁判要旨共同代表の定があるのにかかわらず、代表取締役の一人が、単独で、代表取締役の名称を使用して約束手形を振り出した場合においても、右手形の取得者が、共同代表の定の登記がされていることを知らず、右代表取締役が社長と称し会社の主宰者として行動している事実から単独の代表権を有するものと信じてこれを取得し、会社においても当時右代表取締役が社長と称して行動することを許容し、または黙認していた等の事情が存在するときは、会社は、右手形について、商法第二六二条の類推適用により、振出人としての責に任ずるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和41(オ)684
登載
民集 第22巻13号3349頁
参照法条
商法262条,商法261条,商法12条
論点9第354条旧商法下の裁判例

表見代表取締役が自己の利益を図るためにした行為と会社の責任

裁判要旨商法第二六二条は、第三者が代表権の欠缺について善意であるかぎり、表見代表取締役のした行為の目的のいかんにかかわらず適用され、行為者の意図が自己の利益を図ることにあつた場合においては、第三者がその意図を知り、または知りうべかりしときにかぎり、会社は、民法第九三条但書の提起を類推適用して、その責を免れることができるにすぎないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年7月6日 昭和41(オ)875
登載
集民 第88号1頁
参照法条
商法262条,民法93条但書
論点10第354条旧商法下の裁判例

共同代表の定めがあるのに代表取締役が単独で代表権限を行使した場合に商法第二六二条の類推適用があるとされた事例

裁判要旨共同代表の定めがあり、その旨の登記がある場合において、当該代表取締役が単独で代表権限を行使できる者であると見られる外観をもつて代表取締役の名称を使用しているのに対し、これを他の代表取締役全員が黙認していた等原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとでは、当該代表取締役が単独で行なつた法律行為についても、会社は、商法第二六二条の規定の類推適用により善意の第三者に対してその責に任ずるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年4月28日 昭和41(オ)1042
登載
民集 第21巻3号496頁
参照法条
商法262条,商法261条,商法12条
論点11第354条旧商法下の裁判例

表見代表取締役の行為につき会社が責任を負うためには第三者の無過失を要するか

裁判要旨表見代表取締役の行為につき会社が責任を負うためには、第三者が善意であれば足り、その無過失を要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年11月10日 昭和41(オ)777
登載
民集 第20巻9号1771頁
参照法条
商法262条
論点12第354条旧商法下の裁判例

表見代表取締役が直接代表取締役の記名押印をして会社名義の約束手形を振り出した場合と商法第二六二条の適用の有無。

裁判要旨会社名義で振り出された約束手形につき、手形面上に会社代表者として表示されている者に代表権はあるが、右代表者の記名押印をした者に代表権がない場合であつても、会社が後者に対して常務取締役等会社を代表する権限を有するものと認められる名称を与えており、かつ、手形受取人が右後者の代表権の欠缺につき善意であるときは、右後者が自己の氏名を手形面上に表示した場合と同様、会社は手形金支払の責を負うものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年4月9日 昭和37(オ)433
登載
民集 第19巻3号632頁
参照法条
商法262条
論点13第354条旧商法下の裁判例

民法第一一二条の表見代理の主張に対し商法第二六二条の表見代表取締役の規定を適用して判断することの可否。

裁判要旨当事者が民法第一一二条の表見代理による約束手形金の支払請求を主張している場合であっても、商法第二六二条の要件事実が主張されている以上、同条の表見代表取締役の行為による会社に対する責任に基づいて、請求を認容することに違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月12日 昭和38(オ)306
登載
集民 第74号57頁
参照法条
民法112条,商法262条,民訴法186条
論点14第354条旧商法下の裁判例

会社の使用人が代表取締役の承認のもとに常務取締役の名称を使用してなした行為に対する商法第二六二条の類推適用の有無。

裁判要旨商法第二六二条は、会社の使用人が代表取締役の承認のもとに常務取締役の名称を使用してなした行為につき、類推適用されると解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年10月14日 昭和32(オ)596
登載
民集 第14巻12号2499頁
参照法条
商法262条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第349条(株式会社の代表) 詳細ページ
(株式会社の代表)
第三百四十九条取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。
3株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
4代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
会社法 第354条(表見代表取締役) 詳細ページ
(表見代表取締役)
第三百五十四条株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。