労働組合法 / テーマ別まとめ

労働協約

労働協約の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

労働協約は、労働組合と使用者またはその団体が労働条件などについて取り決める協約で、書面を作成し両当事者が署名または記名押印することで効力が生じます。有効期間の上限や解約の予告期間、労働契約より不利な条件を無効にする効力(規範的効力)、そして一定割合の労働者に適用されると他の同種労働者にも及ぶ拡張適用の仕組みを定めています。

労働協約
項目要件・基準効果
効力発生要件書面+署名または記名押印効力が生じる
有効期間の上限三年超える定めは三年とみなす
期間の定めなしの解約九十日前に文書で予告解約できる
規範的効力協約の基準に違反する部分その部分は無効、基準による
事業場単位の拡張適用同種労働者の四分の三以上他の同種労働者にも適用
地域単位の拡張適用同種労働者の大部分が適用労働委員会決議で行政が適用決定
  • 第17条の拡張適用は「一の工場事業場」単位、第18条は「一の地域」単位で要件が異なる
  • 第18条の適用は労働委員会の決議を経て厚生労働大臣または都道府県知事が決定し、公告による
  • 労働委員会は第18条の決定にあたり協約の不適当な部分を修正できる
  • 期間の定めのある協約でも、期間経過後も効力を存続させる定めがある場合は同様に九十日前予告で解約できる
  • 第16条により無効となった契約部分には協約の基準が適用され、契約に定めがない部分も同様
1

労働協約

労働協約について、条文は何を定めているか。

第14条労働協約の効力の発生書面と署名(記名押印)で効力が生じる1項判例 6件
  • 労働協約は書面に作成することが必要
  • 両当事者の署名または記名押印が必要
  • この要件を満たすことで効力が生じる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第15条労働協約の期間有効期間は三年が上限、超えは三年扱い4項判例 1件
  • 有効期間は三年を超える定めができない
  • 三年を超す定めをしても三年の協約とみなされる
  • 期間の定めがない協約は、九十日前までに署名または記名押印した文書で予告すれば解約できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第16条基準の効力協約の基準に反する契約部分は無効1項判例 8件
  • 労働条件など協約の基準に違反する労働契約の部分は無効
  • 無効になった部分には協約の基準が適用される
  • 契約に定めがない部分も協約の基準による
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第17条一般的拘束力同種労働者の四分の三以上で拡張適用1項判例 2件
  • 一の工場事業場で同種労働者の四分の三以上に協約が適用されると成立
  • 残りの同種労働者にも同じ協約が自動的に適用される
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第18条地域的の一般的拘束力地域の大部分に適用なら行政が拡張決定3項判例なし
  • 一の地域で同種労働者の大部分に協約が適用されている場合が対象
  • 労働委員会の決議を経て厚生労働大臣または都道府県知事が適用を決定
  • 決定は公告によって行われる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第14条労働組合法

平和義務違反の争議行為を理由とする懲戒処分の許否

裁判要旨使用者は、労働者が労働協約に基づく平和義務に違反する争議行為をし、またはこれに参加したことのみを理由として、当該労働者を懲戒処分に付することは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和39(オ)773
登載
民集 第22巻13号3194頁
参照法条
労働組合法14条,労働基準法89条
論点2第14条労働組合法

一 労働組合規約に組合員総会の決議事項として特定事項の外委員会において必要と認むる事項とまた委員会の決議事項として特定事項の外総会に諮るべき事項と規定している場合と総会における組合員の議案提出権の有無
二 旧組合が解散して新組合が結成された場合と旧組合当時の労働協約の効力

裁判要旨一 労働組合規約に、組合員総会に諮るべき事項として、組合規約等の外委員会において必要と認むる事項と、また委員会に諮るべき事項として組合運営に関する事項等の外総会に諮るべき事項と定めている場合においても、緊急な特別の事情がある場合には、委員会に図ることなく、組合員より直接総会に議案を提出することを得るものと解すべきである。
二 旧組合が解散して新組合が結成された場合において、旧組合と新組合との間に関連性がなく、団体としての統一的持続を欠く場合には、旧組合当時の労働協約はその効力を失うものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年12月4日 昭和26(オ)128
登載
民集 第7巻12号1318頁
参照法条
労働組合法14条
論点3第14条労働組合法

前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例

裁判要旨すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が八〇パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年12月22日 昭和59(オ)303
登載
集民 第158号805頁
参照法条
民法90条,労働基準法39条,労働基準法65条,労働基準法66条,労働基準法67条,労働基準法68条,労働基準法76条,労働組合法2章,労働組合法14条,労働組合法16条,憲法28条
論点4第14条労働組合法

前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例

裁判要旨すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が八〇パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年12月14日 昭和58(オ)1542
登載
民集 第43巻12号1895頁
参照法条
民法90条,労働基準法39条,労働基準法65条,労働基準法66条,労働基準法67条,労働基準法68条,労働基準法76条,労働組合法第2章,労働組合法14条,労働組合法16条,憲法28条
論点5第14条労働組合法

使用者と労働組合との間の合意により当該労働組合に所属する労働者の未払賃金に係る債権が放棄されたということはできないとされた事例

裁判要旨使用者と労働組合との間の当該労働組合に所属する労働者の未払賃金に係る債権を放棄する旨の合意につき,当該労働組合が当該労働者を代理して当該合意をしたなど,その効果が当該労働者に帰属することを基礎付ける事情はうかがわれないという事実関係の下においては,これにより当該債権が放棄されたということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成31年4月25日 平成29(受)1889
登載
集民 第261号233頁
参照法条
労働組合法14条
論点6第14条労働組合法

労働組合と使用者との間の労働条件その他に関する合意で書面の作成がなく又は作成した書面に両当事者の署名及び記名押印がないものの労働協約としての規範的効力

裁判要旨労働組合と使用者との間の労働条件その他に関する合意は,書面に作成され,かつ,両当事者がこれに署名し又は記名押印しない限り,労働協約としての規範的効力を生じない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年3月13日 平成12(受)192
登載
民集 第55巻2号395頁
参照法条
労働組合法14条,労働組合法16条
論点7第15条労働組合法

労働協約中の解雇同意条項といわゆる余後効

裁判要旨労働協約中の解雇同意条項が当該協約の終了により失効した後も右条項に定められたところが個別の労働契約の内容として存続すると解する余地はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年12月20日 昭和62(オ)442
登載
集民 第155号507頁
参照法条
労働組合法15条,労働組合法16条
論点8第16条労働組合法

無効な休職処分により就労を拒否された労働者の右期間中の賃金請求につき平均査定配分額の限度で賃金協定中の賃上額のいわゆる査定部分に関する協定の効力が右労働者にも及ぶものとして賃上額による賃金請求権が認められた事例

裁判要旨(省略)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年7月18日 昭和52(オ)398
登載
集民 第124号441頁
参照法条
民法623条,労働基準法24条,労働組合法16条
論点9第16条労働組合法

一、民間会社における従業員の在籍専従と使用者の承諾義務
二、労働組合法一七条〈一般的拘束力〉の規定により拡張適用される労働協約の範囲
三、在籍専従に関する労働協約の規定の法的性質

裁判要旨一、民間会社において、使用者が従業員の在籍専従を認めるか否かは、その自由に委ねられているものと解するのが相当である。
二、労働組合法一七条〈一般的拘束力〉の規定により拡張適用される労働協約の範囲は、いわゆる規範的部分にかぎられる。
三、在籍専従に関する労働協約の規定は、いわゆる規範的部分に属しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年11月8日 昭和42(オ)939
登載
集民 第110号407頁
参照法条
憲法28条,労働組合法2条,労働組合法16条,労働組合法17条
論点10第16条労働組合法

「組合は経営権が会社にあることを確認する。但し会社は経営の方針、人事の基準……等経営の基本に関する事項については……組合又は連合会と協議決定する。前項の人事とは従業員の採用、解雇、異動、休職、任免及びこれらに関連する事項をいう。」旨の労働協約の趣旨

裁判要旨会社が極度の経営不振に陥り、企業到壊の寸前に追い追まれたため、企業の再建の方策として人員整理を含む経営方針を樹立し、右協約条項に基き組合側と協議を重ねたが、人員整理を内容とする企業再建方策が当時の状勢の下においては会社としてはやむを得ない措置であり、かつ早急にこれを実施する必要に迫られていると認められるにかかわらず、組合側があくまでも人員整理の方針に反対し、この方針に応じなければ協議に応じないとする態度を固執したため、協議の続行を断念せざるを得なかつた場合には、会社が一方的に人員整理基準を定め、これに基き人員整理を実施しても、右協約の定めに違反するものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年1月21日 昭和27(オ)776
登載
民集 第8巻1号123頁
参照法条
労働組合法16条
論点11第16条労働組合法

一部の組合員の定年及び退職金支給基準率を不利益に変更する労働協約の規範的効力が認められた事例

裁判要旨定年の改定及び退職金支給基準率の変更を主たる内容とする労働協約に定められた基準を右協約締結当時五三歳であった組合員甲に適用すると、甲は、定年が六三歳から五七歳に、退職金支給基準率が七一・〇から五一・〇に引き下げられるという不利益を受けることになる場合であっても、甲が雇用されていた会社には、定年が六三歳の従業員と五五歳の従業員とがあり、定年の統一が長年の懸案事項であったところ、会社は、右協約締結の数年前から経営危機に陥り、定年の統一と退職金算定方法の改定を会社再建のための重要な施策と位置付けて組合との交渉を重ね、組合も、その決議機関における討議のほか、組合員による職場討議や投票等も行った上で右協約の締結に至ったものであり、右組合員の六三歳という従前の定年は、特殊な事情に由来する当時としては異例のものであって、右協約に定められた定年や退職金支給基準率は、当時の業界の水準と対比して低水準のものとはいえないなど判示の事実関係の下においては、甲に対する右協約の規範的効力を否定する理由はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年3月27日 平成7(オ)1299
登載
集民 第182号673頁
参照法条
労働組合法16条
論点12第17条労働組合法

一 労働協約上の基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益である場合における労働協約の一般的拘束力
二 未組織の同種労働者に対する労働協約の一般的拘束力が一部否定された事例

裁判要旨一 労働組合法一七条〈一般的拘束力〉所定の要件を満たす労働協約に定める基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益であっても、そのことだけで右の不利益部分について労働協約の効力を未組織の同種労働者に及ぼし得ないとすることはできないが、労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容、労働協約が締結されるに至った経緯、右労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、労働協約を右労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは、その効力を右労働者に及ぼすことはできない。
二 定年年齢の改定、退職金算定方法の変更等を内容とし、労働組合法一七条所定の要件を満たす労働協約につき、その効力を未組織の同種労働者である甲に及ぼしたならば、甲は、これによって定年年齢が六歳引き下げられて、右労働協約の効力を生じたその日に、既に定年に達していたものとして退職したことになるだけでなく、それと同時に、その退職により取得した退職金請求権の額が従来の退職金手当規程によって算出される金額よりも減額されることになるという大きな不利益だけを受ける立場にあり、しかも、甲は労働組合の組合員資格を認められていなかったなど判示の事実関係の下においては、従来の退職手当規程に従った退職金の支払を続けていけば使用者の経営が著しく悪化することになるなどの事情があったとしても、退職金の額を右金額を下回る額にまで減額するという不利益を甲に甘受させることは著しく不合理であって、その限りにおいて、右労働協約の効力は甲に及ぶものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年3月26日 平成5(オ)650
登載
民集 第50巻4号1008頁
参照法条
労働組合法17条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

労働組合法 第14条(労働協約の効力の発生) 詳細ページ
(労働協約の効力の発生)
第十四条労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる。
労働組合法 第15条(労働協約の期間) 詳細ページ
(労働協約の期間)
第十五条労働協約には、三年をこえる有効期間の定をすることができない。
2三年をこえる有効期間の定をした労働協約は、三年の有効期間の定をした労働協約とみなす。
3有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によつて相手方に予告して、解約することができる。一定の期間を定める労働協約であつて、その期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定があるものについて、その期間の経過後も、同様とする。
4前項の予告は、解約しようとする日の少くとも九十日前にしなければならない。
労働組合法 第16条(基準の効力) 詳細ページ
(基準の効力)
第十六条労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。
労働組合法 第17条(一般的拘束力) 詳細ページ
(一般的拘束力)
第十七条一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。
労働組合法 第18条(地域的の一般的拘束力) 詳細ページ
(地域的の一般的拘束力)
第十八条一の地域において従業する同種の労働者の大部分が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該労働協約の当事者の双方又は一方の申立てに基づき、労働委員会の決議により、厚生労働大臣又は都道府県知事は、当該地域において従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約(第二項の規定により修正があつたものを含む。)の適用を受けるべきことの決定をすることができる。
2労働委員会は、前項の決議をする場合において、当該労働協約に不適当な部分があると認めたときは、これを修正することができる。
3第一項の決定は、公告によつてする。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。