刑事訴訟法 / テーマ別まとめ

総則/通訳及び翻訳

通訳及び翻訳の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

通訳及び翻訳は、日本語が分からない者や耳・口が不自由な者の陳述を正確に裁判手続に反映させるための制度です。国語でない文字・符号の翻訳や、証人尋問等に関する規定の通訳・翻訳への準用についても定めています。

通訳及び翻訳
場面対応根拠
国語に通じない者の陳述通訳人を必ずつける175条
耳の聞こえない者・口のきけない者の陳述通訳人をつけられる176条
国語でない文字・符号翻訳させられる177条
証人尋問等の規定通訳・翻訳に準用178条
  • 175条は必要的(「させなければならない」)、176条・177条は任意的(「させることができる」)という違いがあります。
  • 178条は前章(証人尋問に関する規定)を通訳・翻訳に準用するもので、遮へい措置やビデオリンク方式に関する規定(171条で準用する157条の6第2項)の読み替えも定めています。
  • 読み替え後は、通訳・翻訳が著しく困難な場合、音声の送受信により同時に通話できる方法(電話会議等)によることも認められます。
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通訳及び翻訳

通訳及び翻訳について、条文は何を定めているか。

第175条日本語が分からない人には通訳を必ずつける1項判例 4件
  • 国語に通じない者に陳述させる場合は通訳人による通訳が必須です。
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第176条耳・口が不自由な人には通訳をつけられる1項判例なし
  • 耳の聞こえない者・口のきけない者の陳述には通訳人をつけることができます。
  • 175条〈国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。〉と異なり必須ではなく任意的な扱いです。
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第177条外国語の文字・符号は翻訳させられる1項判例 7件
  • 国語でない文字又は符号について翻訳させることができます。
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第178条証人尋問の規定を通訳・翻訳にも準用する1項判例なし
  • 前章(証人尋問関係)の規定が通訳及び翻訳に準用されます。
  • 171条〈前章の規定は、勾引に関する規定を除き、鑑定について準用する。この場合において、第百五十七条の六第二項中「ときは、」とある…〉で準用する157条の6第2項〈裁判所は、次に掲げる者を証人として尋問する場合において、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、裁判…〉の文言が読み替えられます。
  • 読み替え後は通訳・翻訳が著しく困難な場合に音声通話の方法も認められます。
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第175条刑事訴訟法

外国人たる被告人の検察官に対する供述調書として証拠能力の認められる事例

裁判要旨外国人たる被告人が検察官に対して英語で供述したことを通訳人が日本語に通訳しこれを検察官が録取した書面に被告人の署名がなくても、これを英訳した調書に被告人の署名があり、右和英両文調書双方に通訳人が通訳及び翻訳の相違ないことを担保して署名しているときは、右両調書を一括して被告人の検察官に対する供述調書として、証拠能力を認めることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年10月29日 昭和32(あ)1195
登載
刑集 第11巻10号2708頁
参照法条
刑訴法175条,刑訴法177条,刑訴法322条1項
論点2第175条刑事訴訟法

一 起訴状の訂正が許される一事例
二 判決を宣告する場合と通訳人の要否

裁判要旨一 所論は、憲法三一条違反をいうも、その実質は単なる刑訴法違反の主張であり、しかもそれは第二審判決に対する攻撃ではなく、第一審判決に対する攻撃に過ぎないばかりでなく、所論起訴状の訂正は同一公訴事実の細部を変更しに過ぎないので所論のような刑訴法の違反も認められない。註。「所論」とは訴因又は公訴事実に異にし、この事実に対して弁解と証拠調のないという主張である。
二 判決を宣告する場合においても国語に通じない被告人に対しは通訳人を付しなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年2月15日 昭和28(あ)1731
登載
刑集 第9巻2号282頁
参照法条
刑訴法256条3項,刑訴法312条,刑訴法175条
論点3第175条刑事訴訟法

特別抗告理由にあたらない一事例 ―法延警察、訴訟指揮に関する裁判長の処分―

裁判要旨本件特別抗告理由は、原決定の違憲を主張するけれども、その実質は申立人にかかる傷害被告事件の原審公判廷において、傍聴人が大声を発し審理不能となつたことを理由として傍聴人全員に退廷を命じた裁判官の起訴指揮は違法であると主張し、また、被告人が朝鮮人であるから充分の資料に基いて日本語を使用せしむべきか否かを判断すべきに拘らず、これを怠り日本語を使用せしめようとしたことは法令に違反すると主張するのであつて、いずれも単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四三三条〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉所定の特別抗告理由に該当しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年6月30日 昭和27(し)33
登載
集刑 第96号609頁
参照法条
刑訴法294条,刑訴法433条,刑訴法175条,裁判所法71条,裁判所法74条
論点4第175条刑事訴訟法

一 第一審における証人尋問手続に関する違法のみでは判決に影響を及ぼさない一事例
二 全く日本語を解しないでもない(或る程度日本語を解する)被告人に対し、第一回公判に通訳を付せず、第二回公判にそれを付したことと刑訴法第一七五条

裁判要旨一 訴訟手続に法令の違反があることを控訴の理由とする場合には、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを要するのであるが(刑訴三七九条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉参照)、仮りに所論のように第一審の証人尋問手続に違反があつたとしても、ただそれだけでは右の違法は判決に影響を及ぼすこと明らかな場合とは到底云うことができない。
二 被告人が全く日本語を解しなかつた者でない場合は、刑訴一七五条〈国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。〉により通訳人に通訳させなければならない場合ではない。たゞ、刑訴一七五条は、このような場合に通訳人を付することを禁ずる趣旨ではないので、第一審裁判所が第二回公判以後審理上適当の処置として通訳人を付したのは相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年7月22日 昭和25(あ)2767
登載
集刑 第66号307頁
参照法条
刑訴法379条,刑訴法411条,刑訴法175条
論点5第177条刑事訴訟法

英語で記載した上告趣意書の適否

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年6月20日 昭和49(あ)508
登載
集刑 第192号793頁
参照法条
裁判所法74条,刑訴法177条
論点6第177条刑事訴訟法

中国語で記載した上告趣意書の適否

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年11月27日 昭和48(あ)1863
登載
集刑 第190号737頁
参照法条
裁判所法74条,刑訴法177条
論点7第177条刑事訴訟法

英文で記載した証明書および右日本語の翻訳文の証拠調が適法に行われたとした事例。

裁判要旨所論証拠調請求書五中番号2及び3には、証拠の標目としてA軍曹の証明書各一通となつており、その翻訳書を掲げられていないこと所論のとおりであるが、それらの証明書は、一枚の書面の上段が英文の証明書、下段が日本語の翻訳文となつていること記録上明らかであるから、証拠の標目として右軍曹の証明書とあるのは、右日本語の翻訳文も含む趣旨であり、右証明書について適法な証拠調が行われたことは、右日本語の翻訳文についても適法な証拠調が行われたものと認めるのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年7月19日 昭和32(あ)1831
登載
集刑 第134号649頁
参照法条
裁判所法74条,刑訴法177条,刑訴法305条,刑訴法317条,刑訴法298条,刑訴規則188条の2第2項
論点8第177条刑事訴訟法

中国語で記載した上告趣意書の適否

裁判要旨中国語で記載した上告趣意書は不適法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年3月23日 昭和34(あ)1904
登載
刑集 第14巻4号439頁
参照法条
裁判所法74条,刑訴法177条
論点9第177条刑事訴訟法

一 証拠の標目の表示程度。
二 外来語である「ドル」は日本語か。

裁判要旨一 所論六月四日付の書類は、記録によれば、原判示の照会とこれに対する回答との両者を含む書類の謄本であつて、その謄本作成名義人は憲兵中佐Aであり、その内容たる回答書の作成名義人はBであること明白であるから、右書類を表示するのに一審第五回公判調書は、右回答書の作成名義人によつて記載したのに対し、一審判決は右謄本作成名義人によつて記載したものと認めるのを相当とする。従つて所論のように証拠調を経ない虚無の証拠を採証したとの非難は当らない。この点に関する原判決の判断は正当である。
二 所論の「ドル」なる言葉は、外来した言語ではあるけれども、メートル、グラム等と同様、日本語である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年9月16日 昭和33(あ)1229
登載
集刑 第127号219頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法177条,刑訴規則44条,裁判所法74条
論点10第177条刑事訴訟法

英文で記載した証拠書類の取調が裁判所法第七四条に違反しない一事例

裁判要旨英文で記載した証拠書類がその訳文とともに朗読されている場合には、その証拠調をもつて裁判所第七四条〈勾引状又は勾留状の執行を受けた被告人を護送する場合において必要があるときは、仮に最寄りの刑事施設にこれを留置することがで…〉に違反するものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年12月24日 昭和26(あ)334
登載
刑集 第6巻11号1380頁
参照法条
裁判所法74条,刑訴法177条,刑訴法305条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

刑事訴訟法 第175条 詳細ページ
第百七十五条国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。
刑事訴訟法 第176条 詳細ページ
第百七十六条耳の聞えない者又は口のきけない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせることができる。
刑事訴訟法 第177条 詳細ページ
第百七十七条国語でない文字又は符号は、これを翻訳させることができる。
刑事訴訟法 第178条 詳細ページ
第百七十八条前章の規定は、通訳及び翻訳について準用する。この場合において、第百七十一条において準用する第百五十七条の六第二項中「場合において、次に掲げる場合であつて」とあるのは「場合において」と、「方法に」とあるのは「方法(当該方法による通訳又は翻訳が著しく困難であるときにあつては、音声の送受信により同時に通話をすることができる方法)に」と読み替えるものとする。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。