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罪/横領の罪

横領の罪の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

刑法第252条から第255条は、自分や他人が預かっている物を着服する「横領の罪」を定めています。横領罪は、単純な横領・業務上の横領・遺失物等の横領の3類型に分かれ、物を預かった経緯や業務との関わりの有無によって法定刑が異なります。第255条により、第244条の規定もこの章の罪について準用されます。

横領の罪
条文罪名対象の物法定刑
252条横領自己が占有する他人の物5年以下の拘禁刑
253条業務上横領業務上占有する他人の物10年以下の拘禁刑
254条遺失物等横領遺失物・占有離脱物1年以下拘禁刑/10万円以下罰金・科料
  • 252条2項:自己の物でも公務所から保管を命じられた物を横領した場合も同様に処罰される
  • 255条:第244条の規定は、この章(横領の罪)についても準用される
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横領の罪

横領の罪について、条文は何を定めているか。

第252条横領預かった他人の物を着服すると横領罪になる2項判例 32件
  • 自己が占有する他人の物を横領すると5年以下の拘禁刑
  • 自分の物でも公務所から保管を命じられた物を横領すれば同様に処罰される
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第253条業務上横領業務で預かった物の横領は罰が重くなる1項判例 32件
  • 業務上、自己が占有する他人の物を横領すると10年以下の拘禁刑
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第254条遺失物等横領落とし物や置き忘れの物を横領した場合の罪1項判例 11件
  • 遺失物・漂流物など占有を離れた他人の物を横領すると1年以下の拘禁刑
  • または10万円以下の罰金もしくは科料
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第255条準用244条〈親族間の犯罪に関する特例〉の規定はこの章の罪にも準用される1項判例 2件
  • 第244条〈親族間の犯罪に関する特例〉の規定が、横領の罪についてもそのまま適用される
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第252条刑法

自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた自動車を金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した所為が横領罪に該当するとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年7月15日 昭和55(あ)119
登載
集刑 第218号243頁
参照法条
刑法252条1項
論点2第252条刑法

横領の犯意につき事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月2日 昭和45(あ)1966
登載
集刑 第183号301頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑法252条
論点3第252条刑法

横領と犯意につき事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月9日 昭和46(あ)365
登載
集刑 第182号457頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑法252条
論点4第252条刑法

一 商品市場における売買取引の委託について顧客から商品仲買人に委託証拠金の代用として有価証券を預託する行為の法律上の性質
二 転質と横領罪の成否
三 商品仲買人がいわゆる委託証拠金充用証券を担保に差し入れる行為が業務上横領罪にあたるとされた事例

裁判要旨一 商品市場における売買取引の委託について、顧客から商品仲買人に委託証拠金の代用として有価証券を預託する行為の法律上の性質は、根質権の設定であつて、消費寄託ではない。
二 質権者は、質権設定者の同意がなくても、その権利の範囲内において質物を転質となしうるが、新たに設定された質権が原質権の範囲を超越するときは、横領罪を構成する。
三 商品仲買人が、いわゆる委託証拠金充用証券を顧客の同意なく担保に差し入れる行為は、それが原質権の範囲を超越しているときは、業務上横領罪を構成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年3月27日 昭和43(あ)2546
登載
刑集 第24巻3号76頁
参照法条
商品取引所法(昭和42年法律97号による改正前のもの)97条,商品取引所法(昭和42年法律97号による改正前のもの)92条,民法362条,民法348条,刑法252条,刑法253条
論点5第252条刑法

横領罪が成立するとされた事例

裁判要旨一 一審判決認定の事実関係の下で、被告人の所為を横領罪に当るとした原判断は正当である。
二 (原判断の大要は、次のとおり)「不動産(時価千万円位相当)の所有者からその不動産を担保として銀行から資金の融資を受け、一年以内に礼金(五〇万円位)を添えきれいにして返す旨の約で、一時登記名義を移すために必要な書類等を預かり、移転登記を経て、法律上これを占有した者が、期限内に弁済できる見込がないのにかかわらず、他人から四〇七万円を期限二ケ月半の約で借り受けるにあたり右不動産につき右債務不履行を停止条件とする代物弁済契約をなし、その旨の登記をなすが如きは、原状回復義務の履行不能を予見しつつ不動産を処分するものにほかならず所有者でなければできない処分行為で、横領罪を構成する。」
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年3月14日 昭和42(あ)2921
登載
集刑 第170号659頁
参照法条
刑法252条,刑法247条
論点6第252条刑法

刑訴法第四一一条第二号に該当するとして原判決破棄刑の執行猶予が言い渡された事例

裁判要旨被告人は炭坑事故のため負傷し生活保護を受けている者であり、三三才の病妻と二児を扶養し、三九才の今日まで一切犯歴がなく、被告人が副会長をしていた生活保護者の互助会の会員の中で生活苦のため米代の支払えない者が数名おり、被告人が金融業者Kから高利で一五万円を借りうけて右の支払にあててやつたが、その金利に追われ生活苦に陥つたのが本件犯行の動機であり、本件の被害総額は約一六万円であるが、実質的な被害者はKただひとりであつて、犯行の発覚前すでに同人との間に示談が成立しており、弁償の担保として被告人所有の家屋一棟を提供している等の諸事情(判文参照)を考慮すると、原判決が被告人を懲役六月の実刑に処したのは、量刑が甚しく不当であつて、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年7月19日 昭和42(あ)2877
登載
集刑 第168号609頁
参照法条
刑訴法411条2号,刑訴法381条,刑法159条1項,刑法161条1項,刑法246条1項,刑法252条1項
論点7第252条刑法

共有者の一人が受領した共有物の売却代金と横領罪の客体

裁判要旨他人との共有にかかる土地を、その依頼により、表面上単独所有者として第三者に売り渡した者が、その第三者から受領した代金は、特約ないし特殊の事情の認められないかぎり、その他人との共有に属し、横領罪の客体となる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年5月23日 昭和42(あ)2074
登載
集刑 第167号319頁
参照法条
刑法252条
論点8第252条刑法

刑訴法第四一一条第二号に該当するとして第一、二審判決破棄刑の執行猶予が言い渡された事例

裁判要旨被告人が二七歳の配管工で、二六歳の妻と二歳の長男を扶養し、道路交通法違反の罰金一回のほか一切犯歴がなく、素行上特に非難すべき点も認められず、犯行の動機は、仕事の資金に困つていたとき、たまたま現金を手にしたため工事資金に流用したということで、遊興費等にはあてられておらず、本件は被害金額約八万円の単純横領の罪で、犯罪個数は一回だけであり、被害者が分割弁済の要請に応じないうえ、一部弁済の提供をも拒否したため示談が成立するに至らなかつた等の諸事情(判文参照)を考慮すると、第一審判決が被告人を懲役五月の実刑に処し、原判決がこれを維持したのは、量刑が甚しく不当であつて、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年12月1日 昭和41(あ)3016
登載
集刑 第165号911頁
参照法条
刑訴法411条2号,刑訴法381条,刑法252条1項,刑法25条
論点9第252条刑法

業務上横領罪が成立するとした事例。

裁判要旨被告人の保管にかかる前示銀行に対する預金を引出し業務上保管中擅にその全部又は一部を着服して横領しこれを銀行における自己の預金口座に振替えた場合は横領罪の成立を妨げないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年6月14日 昭和36(あ)1662
登載
集刑 第143号89頁
参照法条
刑法252条,刑法253条
論点10第252条刑法

公訴事実に同一性の認められる事例

裁判要旨被告人は某日午後一一時四〇分頃千葉県印幡郡a町a某病院前付近の道路上において、甲の保管にかかるその兄所有の腕時計一個を窃取したとの事実(主たる訴因)と、被告人は前同日時場所において、甲と乙が喧嘩闘争をする際、甲がその場に脱ぎ捨てたジヤンバーのポケツトから路上にころがり出た右時計一個を拾得して甲のため占有保管し、その翌日乙をして右時計を甲に届けさせるために乙に預け、同人において甲のためこれを占有保管中、同日乙と共謀の上、右時計を同町a某質店に入質横領したとの事実(予備的追加訴因)の間には、公訴事実の同一性がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月15日 昭和36(あ)2447
登載
刑集 第16巻3号274頁
参照法条
刑訴法312条,刑法235条,刑法252条1項
論点11第252条刑法

横領罪の成立する事例―持分権のある共同預入名義の普通預金からの払戻

裁判要旨原審の認定したところによれば、第一審判決判示第二事実の預金につき、所論のように被告人に持分権があつたとしても、該預金は、被告人とAとの共同預入名義となつていて、被告人の勝手に引出せないものであるにかかわらず、被告人がこれをほしいままに払戻を受けたというのであるから、右被告人の行為が横領罪に当ることは当然である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月15日 昭和36(あ)1195
登載
集刑 第141号463頁
参照法条
刑法252条
論点12第252条刑法

横領罪および封印破棄罪が成立する事例。

裁判要旨執行吏により仮処分の標示と封印との施された物件につき代理占有保管方の委任を受けた者が、売却する意思をもつてこれを指定された場所から搬出し、他の場所の倉庫に預け入れたときには、横領と差押の標示ならびに封印を無効ならしめた犯罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年12月26日 昭和33(あ)233
登載
刑集 第15巻12号2046頁
参照法条
刑法252条1項,刑法96条
論点13第252条刑法

訴因変更手続を要しない事例―業務上横領と単純横領。

裁判要旨本件の如く、業務上横領罪の訴因を肯定した第一審判決の認定に対し、被告人が控訴審において判示金員に対する被告人の占有は業務に基くものでないから業務上横領罪が成立しない旨抗争している場合において控訴審が右の主張を理由があるとして単純横領罪と認定するには訴因変更の手続を経ることを要しないものと解する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年11月10日 昭和33(あ)1581
登載
集刑 第140号77頁
参照法条
刑訴法312条,刑法252条,刑法253条
論点14第252条刑法

使途を決めて寄託された金銭または有価証券と横領罪

裁判要旨使途の決まつている金銭または有価証券の寄託を受けた場合には、所定の使用に使用されるまで、これらの所有権は所有者に保留され、これを受寄者が所定の使途以外に使用すれば、横領罪を構成する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年10月31日 昭和34(あ)599
登載
刑集 第15巻9号1622頁
参照法条
刑法252条
論点15第252条刑法

賍物の牙保者がその売却代金を着服した場合と横領罪の成否。

裁判要旨窃盗犯人から賍物の牙保を依頼されてその交付を受けた牙保者が、その売却代金をほしいままに着服した場合は、横領罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年10月10日 昭和33(あ)319
登載
刑集 第15巻9号1580頁
参照法条
刑法256条,刑法252条
論点16第252条刑法

判例違反(法令の適用の誤り)が判決に影響しない事例。

裁判要旨原判決は第一審判決をその科刑重きにすぎるとして破棄自判し、被告人の犯罪事実である第一審判決判示第一の各所為及び第三の所為につき、いずれも刑法第二五三条(第三の所為については更に同第六〇条〈共同正犯〉をも適用)の業務上横領罪の規定を適用しているが、右第三の所為(註。業務上横領に加功した非業務者の加功行為)につき刑法二五三条を適用した点は、法令の適用を誤つたものであり、所論判例に違反していること所論の指摘するとおりである。しかし被告人にはこれと併合罪の関係にある右第一の業務上横領の多数の犯行もあり、原判決はこれら業務上横領のうち犯罪の最も重い罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内において量刑処断していることも原判文上明白であるから、右判例違反は判決に影響を及ぼさないから、判決破棄の理由とならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年6月24日 昭和32(あ)609
登載
集刑 第134号359頁
参照法条
刑訴法405条3号,刑訴法410条,刑法253条,刑法252条1項,刑法60条,刑法65条2項
論点17第252条刑法

一 応訴して自己の所有権を主張・抗争する所為は横領罪を構成するか
二 器物損壊罪を構成する事例
三 右の場合地方公共団体(長)の告訴は適法か

裁判要旨一 登記簿上自己が所有名義人となつて預り保管中の不動産につき所有権移転登記手続請求の訴を提起された場合に、右不動産に対する不法領得意思の確定的発現として、右訴訟において自己の所有権を主張・抗争する所為は、不動産の横領罪を構成する。
二 土地の持分に対し貸借権の設定登記を受けた者が、すでに右土地に対し貸借権の設定を受けていた地方公共団体において、その設置かつ管理る高等学校の工程として使用していた場合に、実力をもつて工程にアパート建築現場と墨書した立札を掲げ、巾六間長さ約二〇間の範囲で二箇所にわたり地中に杭を打込み板付けをして、もつて保健体育の授業その他生徒の課外活動に支障を生ぜしめたときは、器物損壊罪を構成する。
三 右の場合、告訴権者は地方公共団体に設けられている教育委員会であるが、地方公共団体(長)も適法な告訴権を有する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年12月27日 昭和34(あ)2368
登載
刑集 第14巻14号2229頁
参照法条
刑法252条,刑法261条,教育委員会法(昭和31年9月30日廃止前のもの)48条,教育委員会法(昭和31年9月30日廃止前のもの)49条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律24条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律28条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律30条
論点18第252条刑法

共有者の一人がした告訴の効力範囲。

裁判要旨共有者の一人が共有物に関する犯罪に対して告訴をしたときは、告訴人が被害共有物について有する持分の多少にかかわらず、不可分的に被害共有物全部に関する犯罪の訴追に対し効力が及ぶ。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年12月22日 昭和32(あ)2717
登載
刑集 第14巻14号2204頁
参照法条
刑法252条1項,刑訴法230条
論点19第252条刑法

一 売買農地の所有権移転の効力発生時期
二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第四条〈公務員の国外犯〉所定の「金銭の貸借の媒介を行う者」の意義
三 不動産の登記簿上の所有名義と刑法上の占有
四 上告受理申立の理由書記載事項を援用した上告趣意書の適否

裁判要旨一 売買農地の所有権移転は知事の許可と同時に其の効力を発生するものと解すべきである。
二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第四条〈公務員の国外犯〉所定の「金銭の貸借の媒介を行う者」とは単に金銭の貸借の媒介を行う者と解すべきであつて、業として行うと否とを問わない。
三 不動産の所有権が売買により買主に移転しかつ該不動産が買主に引渡されたとしても、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主は刑法上その不動産を占有するものと解すべきである。
四 上告趣意書自体にその趣意内容を示さないで、単に上告受理申立の理由書記載事項につき裁判を求めると記載したものは、適法な上告趣意書といえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年3月13日 昭和31(あ)2521
登載
刑集 第13巻3号310頁
参照法条
農地法3条1項,農地法92条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律4条,刑法252条,刑訴法407条,刑訴規則266条,刑訴規則240条
論点20第252条刑法

設立中の株式会社の財産について横領罪の成立する一事例

裁判要旨株式会社設立のため出資された資金によつて建設された建物が、会社設立前でも出資者の組合財産であると認められる場合は、その組合の事業を委されている者がこれを自己名義に保存登記をした上、自己の債務の弁済に供するため他に譲渡した場合は横領罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年12月19日 昭和28(あ)5403
登載
刑集 第11巻13号3316頁
参照法条
刑法252条,民法667条,民法668条,商法535条,商法536条
論点21第252条刑法

身分的共犯の処罰。

裁判要旨村長、助役が収入役と共謀の上、収入役の保管にかかる新制中学校建設資金の寄附金を横領したときは、刑法第六五条第一項〈身分犯の共犯〉により同法第二五三条に該当する共犯となるが、村長、助役は業務上物の占有者たる身分がないから、同法第二五二条第一項の刑を科すべきものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年11月19日 昭和30(あ)3640
登載
刑集 第11巻12号3073頁
参照法条
刑法65条,刑法253条,刑法252条
論点22第252条刑法

業務上横領罪の共犯ではあるが身分なき被告人に対し刑法第二五三条を適用したる違法と判決への影響

裁判要旨業務上の占有者たる身分なき被告人が他人の業務上横領罪に共同正犯として加功した事実を認めながら刑法二五三条を適用処断したのは性質上判決に影響を及ぼすことの明らかな法律適用の誤りがあるものというべきこと論をまたない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年6月5日 昭和29(あ)2903
登載
集刑 第113号719頁
参照法条
刑法65条,刑法252条,刑法253条,刑訴法380条
論点23第252条刑法

一 刑法第二五二条第一項〈横領〉の横領罪に当る一事例
二 横領罪既遂時期についての一事例

裁判要旨一 終戦後広島県a町等に散在した未転用未整理の国有旧軍用物資の集荷を同県から委託された者が、既に他に転用払下済の旧軍用物資を未転用未整理のものと誤信して集荷占有中、擅にこれを処分して横領した所為は、刑法第二五二条第一項〈横領〉の罪に当り、誤つて占有した物件の横領として刑法第二五四条により処断すべきものではない。
二 被告人等が他人の委託により占有するケーブルを、擅に、その被覆ゴムの部分と蘂線とを剥離して売却処分する意図の下に、人夫等をしてこれを二、三〇米宛の長さに切断させ、その被覆ゴムを剥離した上、その後これを数回にわたり他の分割売却した本件においては、右切断被覆剥離の作業を終えた段階で横領罪が成立するものと認めるべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年11月10日 昭和30(あ)1144
登載
刑集 第9巻12号2388頁
参照法条
刑法252条1項,刑法254条,遺失物法12条
論点24第252条刑法

一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠く場合の効力
二 予備的訴因の追加により公訴事実の同一性が害されない事例
三 予備的訴因につき有罪を認定した場合に主たる訴因に対する判断を明示することの要否

裁判要旨一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠いていても、ただちにその挿入削除を無効とすべきではなく、その効力の有無は、裁判所が諸般の状況に照して合理的な裁量により決すべきものである。
二 「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、かねて同税務事務所滞納整理係Cから徴収方依頼を受けていた納税者D会社より、固定資産税一六四、七三〇円を同会社振出の同額の小切手で徴収し保管中、その頃擅に着服横領した。」との横領の訴因に対し、「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、D会社において、その制限なきにかかわらず権限あるをよそおい、Eに対し同会社の固定資産税一六四、七三〇円の請求をし、同人をしてその旨誤信せしめ、よつて同人から同会社振出の同額の小切手の交付を受けて、これを騙取した。」との詐欺の予備的訴因を追加することにより、公訴事実の同一性は害されない。
三 主たる訴因と予備的訴因のある場合に、予備的訴因につき有罪を認定したときは、主文において主たる訴因につき無罪を言い渡すべきでないことは勿論、理由中においても、かならずしもこれに対する判断を明示することを要するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月23日 昭和27(あ)5538
登載
刑集 第8巻3号305頁
参照法条
刑訴規則59条,刑訴法256条3項,刑訴法256条5項,刑訴法312条1項,刑訴法44条1項,刑訴法336条,刑訴法378条3号,刑法252条1項,形法246条1項
論点25第252条刑法

一 公訴事実に同一性の認められる一場合
二 一審で横領と認定した事実を控訴審で訴因罰条の変更手続を経ることなく占有離脱物横領と認定することの適法な一場合

裁判要旨一 「被告人は甲日、某信用組合において、事務員Aが誤つて他人に支払うべき払戻金三万五千円を被告人に提供せんとするや右誤信に乗じてこれを受け取り騙取した」との詐欺の事実(主たる訴因)と「被告人は甲日某信用組合事務員の過失により他人に支払うべき払戻金三万五千円を受領し帰宅後、事務員Bより財布の内容を尋ねられるや、領得の意思でその返還を拒否して着服横領した」との横領の事実(予備的訴因)とは、公訴事実の同一性があるし控訴審において、これを右はA事務員の真意に基かない授受であるとして、占有離脱物横領と認定することも、公訴事実の同一性を害しない。
二 右の場合、横領を占有離脱物横領と認定するには訴因罰条の変更手続を経るを要しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年5月29日 昭和26(あ)4626
登載
刑集 第7巻5号1158頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴規則209条,刑法246条,刑法252条,刑法254条
論点26第252条刑法

一 刑法第六五条〈身分犯の共犯〉にいわゆる「身分」の意義
二 横領の目的物を犯人が占有する状態は右にいわゆる「身分」にあたるか

裁判要旨刑法第六五条〈身分犯の共犯〉にいわゆる身分は、男女の性別、内外人の別、親族の関係、公務員たるの資格のような関係のみに限らず、総て一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態を指称するものであつて、刑法二五二条〈横領〉においては、横領罪の目的物に対する犯人の関係が占有という特殊の状態にあることが刑法六五条にいわゆる身分に該るものと云わなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年9月19日 昭和27(れ)103
登載
刑集 第6巻8号1083頁
参照法条
刑法65条,刑法252条,刑法253条
論点27第252条刑法

一 使途を定められて寄託された金銭と横領罪
二 旧刑訴法第四〇四条と憲法第三七条第一項

裁判要旨一 使途を定められて寄託された金銭については特別の事情のないかぎり受託者は刑法第二五二条にいわゆる「他人ノ物」を占有するものと解すべきであつて、受託者がその金銭について擅に委託の本旨に違つた処分をしたときは横領罪を構成する。
二 旧刑訴法第四〇四条は、憲法第三七条第一項に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年5月25日 昭和25(れ)1661
登載
刑集 第5巻6号1186頁
参照法条
刑法252条,民法657条,憲法37条1項,旧刑訴法404条
論点28第252条刑法

一 労働関係調整法第七条と正当争議行為
二 生産管理開始のときから占有していた物を後に領得した行為の擬律
三 労働組合法第一条第二項と刑法第三五―争議行為の正当性
四 生産管理において労働者の団体が工場、設備、資材等を接収してその占有下においた場合には会社側の占有を完全に離脱するか
五 労働者が生産管理中の工場から争議期間中の賃金支払にあてる目的をもつて工場資材を工場外に搬出した行為と窃盗罪の成立
六 生産管理と同盟罷業との関係―生産管理の違法性
七 憲法と勤労者の争議権―争議行為の正当性の限界
八 生産管理と労働関係調整法第七条にいわゆる「その他」の行為

裁判要旨一 労働関係調整法第七条は、争議行為の定義を掲げただけであつて、争議行為の正当性は別個の観点から判断すべきものである。
二 被告人等が本件生産管理開始のときから判示鉄板を占有していたとしても、それは違法の占有であるから、後にこれを領得しても横領罪とはならず窃盗罪となる。
三 労働組合法第一条第二項は、労働組合の団体交渉その他の行為について無条件に刑法第三五条の適用があることを規定しているのではなく唯労働組合法所定の目的達成のために為した正当な行為についてのみ適用を認めているに過ぎない(昭和二二年(れ)第三一九号同二四年五月一八日最高裁判所大法廷判決参照)。如何なる争議行為を以て正当とするかは、具体的に個々の争議につき、争議の目的並びに争議手段としての各個の両面に亘つて、現行法秩序全体との関連において決すべきである。従つて至産管理及び生産管理中の個々の行為が、すべて当然に正当行為であるとの論旨は理由がない。
四 原判決が、生産管理においては労働者の団体が工場、設備、資材等一切のものを接収してその占有下におくと判示し、本件においては被告人が既に生産管理に入つたものであることを認めながら、而も他方において判示鉄板は「会社の占有を完全に離脱したものでない」と判示したのは、生産管理開始により労働者の図体が工場、設備、資材等一切のものを自己の支配下におき占有を取得したと言つても、個々の資材物件等については、それが会社構内に存置せられる以上、会社側にもなお占有が存するという趣旨に解すべきである。
五 論旨は、原判決が、本件鉄板は会社の占有を完全に離脱したものではないので被告人等が壇にこれを工場外に搬出した行為は会社の所持を奪つたものであり、窃盗の罪責を免れない、と判示したことを非難し生産管理の下においては占有の所持は労働者側にあり、会社は観念上間接占有を有するに過ぎないから、所持の奪取即ち窃盗はあり得ないい。被告人等には占有奪取の意思もなく、不正領得の意思もなかつたと主張する。しかし労働者側がいわゆる生産管理開始のとき工場、設備、資材等をその占有下においたのは違法の占有であり、判示鉄板についてもそのとき会社側の占有に対して占有の侵奪があつたというべきであるが、原判決はこれを工場外に搬出したとき不法領得の実現行為があつたものと認定したものである。これを証拠に照らし合わせて考えてみても、被告人等が争議期間中の労働者の賃金支払等に充てるために売却する目的を以て、会社側の許可なくしてこれを工場外に運び出し、自己の事実上の支配内に收めた行為は、正に不法領得の意思を以て会社の所持を奪つたものというべきであつて、原判決が窃盗罪にあたるものとしたのは当然である。
六 論旨は生産管理が同盟罷業と性質を異にするものでないということを理由として、生産管理も同盟罷業と同様に違法性を阻却される争議行為であると主張する。しかしわが国現行の法律秩序は私有財産制度を基幹として成り立つており、企業の利益と損失とは資本家に帰する。従つて企業の経営、生産行程の指揮命令は、資本家又はその代理人たる経営担当者の権限に属する。労働者が所論のように企業者と並んで企業の担当者であるとしても、その故に当然に労働者が企業の使用收益権を有するのでもなく、経営権に対する権限を有するものでもないい。従つて労働者側が企業者側の私有財産の基幹を揺がすような争議手段は許されない。なるほど同盟罷業も財産権の侵害を生ずるけれども、それは労働力の給付が積務不履行となるに過ぎない。然るに本件のようないわゆる生産管理に於ては、企業経営の権能を権利者の意思を排除して非権利者が行うのである。それ故に同盟罷業も生産管理も財産権の侵害である点においては同様であるからとて、その相違点を無視するわけにはゆかない。前者において違法性が阻却されるからとて、後者においてもそうだという理由はない。
七 論旨は、憲法が労働者の争議権を認めたことを論拠として、従来の市民法的個人法的観点を楊棄すべきことを説き、かような立場から労働者が争議によつて使用者たる資本家の意思を抑圧してその要求を貫徹することは不当でもなく違法でもないと主張する。しかし憲法は勤労者に対して団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障すると共に、すべての国民に対して平等権、自由権、財産権等の基本的人権を保障しているのであつて、是等諸々の基本的人権が労働者の争議権の無制限な行使の前に悉く排除されることを認めているのでもなく、後者が前者に対して絶対的優位を有することを認めているのでもない。寧ろこれ等諸々の一般的基本的人権と労働者の権利との調和をこそ期待しているのであつて、この調和を破らないことが、即ち争議権の正当性の限界である。その調和点を何処に求めるべきかは、法律制度の精神を全般的に考察して決すべきである。固より使用者側の自由権や財産権と雖も絶対無制限ではなく、労働者の団体行動権等のためある程度の制限を受けるのは当然であるが、原判決の判示する程度に、使用者側の自由意思を抑圧し、財産に対する支配を阻止することは、許さるべきでないと認められる。それは労働者側の争議権を偏重して使用者側の権利を不当に侵害し、法が求める調和を破るものだからである。
八 論旨は、原判決を以て、生産管理の本質を誤り、生産管理が争議権行使の一方法であることを否認し、争議権行使の方法を制限した違法あるものとして、非難すると共に、生産管理が労働関係調整法第七条にいわゆる「その他」の行為の中に含まれるということを論拠として、労働者が争議方法として生産管理を行うことには何等の制限を受くべきでないと主張する。しかし右の法条は争議行為の定義を掲げただけであつて、争議行為又はそれに伴う諸々の行為がすべて適法又は正当であると言つているのではない。従つて生産管理が右の「その他」の行為の中に含まれるとしても、そのことだけから、生産管理を行う自由があると即断することはできない。具体的争議行為の適法性の限界については、別個の観点から判断されなければならない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和25年11月15日 昭和23(れ)1049
登載
刑集 第4巻11号2257頁
参照法条
労働関係調整法7条,刑法235条,刑法252条,刑法35条,労働組合法1条2項,労働組合法1条,憲法12条,憲法28条,憲法29条
論点29第252条刑法

他人所有の建物を同人のために預かり保管していた者が,金銭的利益を得ようとして,同建物の電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了したことにつき,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに,横領罪が成立するとされた事例

裁判要旨甲会社から乙及び丙に順次譲渡されたものの,所有権移転登記が未了のため甲会社が登記簿上の所有名義人であった建物を,甲会社の実質的代表者として丙のために預かり保管していた被告人が,甲会社が名義人であることを奇貨とし,乙及び丙から原状回復にしゃ口して解決金を得ようと企て,上記建物に係る電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了した場合には,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに,横領罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年3月26日 平成20(あ)2253
登載
刑集 第63巻3号291頁
参照法条
刑法252条1項,刑法157条1項,刑法158条1項,不動産登記法106条
論点30第252条刑法

1 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了していた場合においてその後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了する行為と横領罪の成否
2 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときの審理方法

裁判要旨1 委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後,これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは,後行の所有権移転行為について横領罪の成立を肯定することができ,先行の抵当権設定行為が存在することは同罪の成立自体を妨げる事情にはならない。
2 委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後,これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において,後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときは,裁判所は,所有権移転の点だけを審判の対象とすべきであり,犯罪の成否を決するに当たり,所有権移転行為に先立って横領罪を構成する抵当権設定行為があったかどうかといった訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきではない。
裁判
最高裁判所大法廷 平成15年4月23日 平成13(あ)746
登載
刑集 第57巻4号467頁
参照法条
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)第1編第7章 犯罪ノ不成立及ヒ刑ノ減免,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)252条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)253条,刑訴法256条
論点31第252条刑法

他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効の期間

裁判要旨他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合、非占有者に対する公訴時効の期間は、刑法252条1項〈横領〉の横領罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑訴法250条2項5号)である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年6月9日 令和3(あ)821
登載
刑集 第76巻5号613頁
参照法条
刑法65条、刑法252条1項、刑法253条、刑訴法250条、刑訴法337条4号
論点32第252条刑法

農地の売買契約が締結されたが、譲受人の委託に基づき第三者の名義を用いて農地法所定の許可が取得され、当該第三者に所有権移転登記が経由された場合において、当該第三者が当該土地を不法に領得したときの横領罪の成否

裁判要旨農地の所有者たる譲渡人と譲受人との間で農地の売買契約が締結されたが、譲受人の委託に基づき、第三者の名義を用いて農地法所定の許可が取得され、当該第三者に所有権移転登記が経由された場合において、当該第三者が当該土地を不法に領得したときは、当該第三者に刑法252条1項の横領罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和4年4月18日 令和2(あ)131
登載
刑集 第76巻4号191頁
参照法条
刑法252条1項、農地法3条1項本文、農地法5条1項本文
論点33第253条刑法

洋服の仕立業者が仕立のため預かつた洋服生地に加工を加えた場合の所有権の帰属

裁判要旨洋服の仕立業者が、他人の注文を受けて、仕立のためにその者から預かつた洋服生地に加工を加え洋服に仕立てた場合には、たとえその結果著しく価格が増加しても、その所有権は注文者に属する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年4月8日 昭和44(あ)2125
登載
集刑 第176号51頁
参照法条
民法246条,刑法253条
論点34第253条刑法

特定郵便局長が郵便切手類および印紙の売さばき人の名義を使用して郵便切手類等を売りさばきその手数料を取得した行為が詐欺罪および業務上横領罪にあたるとされた事例

裁判要旨特定郵便局長が、手数料を取得する目的で、郵便切手類および印紙の売さばき人の名義を借り受け、自己の計算のもとに郵便切手類等を売りさばき、それを、あたかも、名義人自身が売りさばいたように書類を作成して、指定郵便局に提出し、歳出金支払証票の交付を受けた行為は詐欺罪となり、また自己の保管する渡切経費の中から、手数料支払名下に、右手数料相当額を取得した行為は、業務上横領罪になると解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年7月5日 昭和41(あ)776
登載
刑集 第22巻7号588頁
参照法条
郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律(昭和29年法律14号による改正前のもの)5条,郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律(昭和29年法律14号による改正前のもの)7条,刑法246条1項,刑法253条
論点35第253条刑法

有価証券の信用取引における保証金代用の有価証券の売却処分と業務上横領罪の成否

裁判要旨有価証券の信用取引において、証券業者が、顧客から保証金の代用として預託を受けた有価証券につき、顧客の同意の範囲外である売却処分をしたときは、業務上横領罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年9月6日 昭和40(あ)1027
登載
刑集 第20巻7号759頁
参照法条
刑法253条,証券取引法49条,証券取引法51条
論点36第253条刑法

業務上横領罪に該当するとされた事例

裁判要旨一 本件重油抜取り行為が、業務上横領罪に該当するとした原審の判断は正当である。
二 (原審の判断)
本件A丸に積み込まれた重油についてはその輸送タンクに八箇所の封印が施行されていたのであるから重油運送の業務に従事する者がその途中封印のままで内容物を抜き取るときは窃盗罪を構成するけれども、被告人Bは右A丸の船主兼船長として被告人Cは機関長として重油類の運搬これに伴う積み込み及び荷揚げ等の業務に従事していたものであるからA丸到着後荷受主立会のうえ油吐出用移送管の基部の封印を破棄したのちその重油をD丸又はE丸に移し替える際には荷受主に対する引渡を完了するまでは被告人B並にCらにおいて出荷主のためにこれを占有保管していたものであつて、その荷揚作業中油吐出用移送管の中途から他に誘導して抜き取る行為は出荷主を被害者とする業務上横領罪を構成するものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年6月23日 昭和40(あ)2870
登載
集刑 第159号1255頁
参照法条
刑法253条
論点37第253条刑法

公訴事実の同一性がなく訴因の予備的追加の請求が許されないとされた事例

裁判要旨「被告人は喜多方市a町b番地において衣料品商を営んでいた者であるが、昭和二六年度の衣料品の暴落等により業績振るわず経営頗る困難な状態に立至つたところ、予て自己に対し多額の不正融資をしていたA農業協同組合専務理事Bがその回収を急いでいる弱点に乗じ、旧い債務と共に返済するという口実等で同人から金員を騙取せんことを企て昭和二七年九月二四日頃喜多方市字c丁目d番地A農業協同組合事務所において、右Bに対し、仕事も順調だから儲けられる故、手形でもよいから貸してくれと虚構の事実を申し向け、その旨誤信した同人から額面四〇万円の約束手形一通を騙取した」旨の本位的訴因と「被告人は喜多方市字c丁目d番地所在A農業協同組合の専務理事として同農業協同組合の金銭出納保管など一切の業務に従事していたBと共謀のうえ昭和二九年九月頃、前同所においてその業務上保管にかかる現金二〇万円を擅にCに対する借金の返済として同人に交付して横領したものである」旨の予備的に追加された訴因との間には公訴事実の同一性は存しないから第一審裁判所が検察官の右追加請求を許可したことは、刑訴法第三一二条第一項に違反するものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年4月12日 昭和39(あ)804
登載
集刑 第159号157頁
参照法条
刑法246条,刑法253条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点38第253条刑法

一 横領罪ではなく背任罪が成立するとされた事例。
二 刑訴法第四一一条第一号にあたらないとされた事例。

裁判要旨一 農業協同組合の組合長である被告人が、任務に背いて組合名義をもつて約束手形を振出したときは、背任罪が成立し、その手形を組合の当座預金から払出して支払つた行為もまた右背任罪の一部であつて、別に横領罪を構成するものではない。
二 原判決の認定する被告人の犯行が、合計二四回総額一、三四一万円に達する業務上横領並びに合計六回総額二、二三〇万円に達する背任の所為である場合において、原判決が法令の適用を誤り、背任罪とすべきものを業務上横領として処断したのが、そのうち合計四回総額一六五万円にすぎないときは、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年5月27日 昭和39(あ)2013
登載
刑集 第19巻4号396頁
参照法条
刑法247条,刑法253条,刑訴法411条1号
論点39第253条刑法

配炭公団の役職員のした寒冷地手当、退職手当、税金立替等の不法支出につき期待可能性なしとして無罪を言い渡した原判決を破棄し、業務上横領罪の成立を認めた事例

裁判要旨被告人が公訴事実一の別表一(3)ないし(6)及び二ないし八の寒冷地手当、退職手当、税金立替金等の各支出行為をなしたる事実が適法に認定されるにおいては、たとえそれが原審の支持する第一審判決認定の如き特別事情の下において行われたものであつても、これにより右支出行為が業務上横領の犯意を欠くものとし又は刑法三五条ないし三九条〈心神喪失及び心神耗弱〉の規定により犯罪の不成立を来たすものとし、これを罪とならないものと解することはできない。
註。配炭公団の役職員のした寒冷地手当、退職手当、税金立替金等の不法支出につき、第一審判決は、当時の経済情勢、同公団の性格、任務、同公団従業員組合の性格及びその経済的要求に関する労働攻勢その他諸般の情況から右各所為は、真にやむを得ざるに出でたものであつて、他の適法行為に出ずべきことを到底期待し得なかつた事情にあつたものと認め無罪の言渡をなし、第二審判決は、期待可能性の理論については大いに論議の存するところであろうが、社会一般の道義観念に照らし非難すべからざる真にやむを得ざるにいでた右行為は、法律上罪とならざるものといわねばならないとした。なお判文参照。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年5月1日 昭和33(あ)2284
登載
集刑 第142号1頁
参照法条
刑法253条,刑法35条,刑法38条1項
論点40第253条刑法

一 背任罪(農業共同組合法違反)の成立する事例。
二 訴因変更の手続を要しない事例。―業務上横領と背任

裁判要旨一 原審の確定した事実関係の下においては、本件行為が岐阜県販売農業協同組合連合会の事業の範囲外の行為であつて、農業協同組合法に違反するものであるとした原審の判断は正当である。
二 (原判決の要旨)被告人A等が販連の資金をその事業の範囲外において融資(貸付)することは、販連定款及び農業協同組合法により固く禁止されており、これに違反することはその任務に背く行為であるのにかかわらず、同人等はその情を知りながら役員会に諮りB活性炭株式会社に対し事業資金の融資を図らんことを決意し、B、C等と共謀の上、同年度第十回役員会を開催し「活性炭素取扱に関する件」と題する議案を提出して、販連より同社に対し融資(貸付)をする旨の議決をなした上、その後右融資を隠蔽するため……同組合をして架空または虚偽の内容を記載した薪炭発送報告書(空発報と略称)を作成してこれを販連に送付させ、そして同空発報にもとずき販連より同社に対し融資する旨を決定し……販連に対し財産上の損害を加えた。
三 業務上横領の控訴事実につき、訴因変更の手続を経ないで、背任の犯罪事実を認定しても差支えない。
四 (公訴事実の要旨)被告人Dは岐阜県販売農業協同組合連合会の会計主任として……いたものであるが被告人B、Cより依頼を受け、共謀の上E銀行F支店の普通預金として業務上保管中の販連の資金中より百五十万円を引出し、ほしいままにG化工株式会社の設立資本金として利用する目的をもつて同銀行の被告人B名義の普通預金口座に入金して横領したものである。
五 (原審認定の要旨)販連の会計主任として……いた被告人Dは第三者の利益を図り、その任務に背き、或いは本人たる販連に財産上の損害を加うべきことを認識しながら、業務上保管中の販連の資金中より百五十万円を販連名義をもつてG化工株式会社に不正融資(貸付)し、その結果、右金員の回収を不能ならしめて、販連に同額の財産上の損害を加えたものであるから、背任罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年4月27日 昭和34(あ)2130
登載
集刑 第137号633頁
参照法条
農業協同組合法1条,農業協同組合法10条,刑法247条,刑法253条,刑訴法312条
論点41第253条刑法

業務上横領罪の成立する事例。

裁判要旨刑法二五三条〈業務上横領〉にいわゆる業務上の占有は他人の物の占有保管を主たる職務又は営業とする場合における占有のみに限局すべきものにあらず、いやしくも職務又は営業に附随して他人の物を占有保管する以上は特に法令においてこれを職務又は営業の範囲より除外せざる限り同条にいわゆる業務上の占有に該当する。されば消防各種自動車、消防ポンプ、消化器および消防器具類の製作、販売等の業務を行うことを目的とする株式会社の代表取締役社長が、同会社が他から買い受けて引き取つた後売買契約を解除して右売主に返品を約した消防ポンプを返還のため荷造発送すべく保管中、ほしいままにこれを第三者に対し前受金の担保として引き渡したときは、業務上横領罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年7月15日 昭和32(あ)2121
登載
集刑 第134号603頁
参照法条
刑法253条
論点42第253条刑法

業務上横領罪の成立する事例。

裁判要旨原判決の認定によれば、A証券株式会社は、昭和二六年八月二一日、BからC鉱業株式会社株式三〇〇株の買付委託を受け、同日及び同月二七日の二回に、買付委託手数料を含めた買付代金当て合計金五一、七五〇円を受取り、同証券会社は翌八月二八日D証券取引所市場において、右委託を受けた三〇〇株を含む同株式六〇〇株を買付け、その市場の受渡は同年九月一日行われ、したがつて同証券会社が右市場より受渡を受けた六〇〇株のうちには、Bよりの買付委託株三〇〇株を包含しておるものであり且つBへの受渡期日も既に到来したものであるところ、当時同証券会社は資金難から営業不振の状態にあつたため、同社社長たる被告人は同日、被告人自ら又は少なくとも自社社員に命じ若しくは指示して右六〇〇株全部をEに他に売却処分したものであるというのである。なるほど原判決には、横領罪の構成要件たる「他人の物」といい得るに至つた点についての理論的の判示のうち稍々正確を欠くものがあるけれども、上示原判決の認定した如き本件事実関係のもとにおいては、これを業務上横領罪が成立するものとした原判決の結論は結局正当に帰する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年8月28日 昭和30(あ)2823
登載
集刑 第131号375頁
参照法条
刑法253条
論点43第253条刑法

一 控訴審が破棄自判する場合と第一審において取り調べた証拠
二 農林漁業資金融通法による政府貸付金について業務上横領罪の成立する場合

裁判要旨一 控訴審が事実の取調をなし第一審の無罪判決を破棄して有罪を認定するにあたつては、第一審において取り調べた証拠は、控訴審で再び証拠調をし直すことを必要とせず、そのまま証拠能力を認めて判決の基礎とすることができる。
二 社団法人たる森林組合を代表し組合業務一切を掌理する組合長および組合長を補佐し組合業務を執行する組合常務理事が、農林漁業資金融通法(昭和二六年法律第一〇五号)の規定により政府から組合に対し組合員に造林資金として転貸交付する目的をもつて貸付され、右転貸資金以外他のいかなる用途にも流用支出することのできない金員を組合のため業務上保管中共謀の上その保管方法と使途の規正に反し、もつぱら第三者たる地方公共団体の利益を図り、その諸経費支払資金に充てしめるため、ほしいままにこれに貸付支出したときは、対政府関係における融資条件違反の罰則の有無にかかわらず、また、たとえその金員が組合の所有に属し、右第三者に対する貸付が組合名義をもつて処理されているとしても、横領罪の成立に必要な不法領得の意思ありと認めて妨げなく、業務上横領罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年2月13日 昭和31(あ)1761
登載
刑集 第13巻2号101頁
参照法条
刑訴法394条,刑訴法400条但書,農林漁業資金融通法(昭和26年法律105号)2条2号,農林漁業資金融通法(昭和26年法律105号)3条4項2号,農林漁業資金融通法(昭和26年法律105号)4条1項,刑法253条
論点44第253条刑法

一 公訴事実の同一性の認められる事例−業務上横領と窃盗
二 同一事実に対する別訴の提起が二重起訴にあたらないとされた事例

裁判要旨一 被告人は家畜商を営むものであるが、昭和二五年七月二五日頃家畜商Aより同人所有の馬四頭の売却方を依頼され、同月二九日うち二頭をBに代金六万円で売却しこれを保管中、同月三〇日新潟県西蒲原郡a町C旅館において、内金三万円を着服して横領をしたとの業務上横領の訴因と、被告人は昭和二五年七月三新潟県西蒲原郡b村大字cD方から同人が一時Aより預つていたAの父E所有の牝馬鹿毛および青色各一頭を窃盗したとの窃取の訴因とは、事実の同一性を失わない。
二 第一次第一審において、右業務上横領の訴因を右窃盗の訴因に変更し後者につき有罪を認定したところ、第二審において、右は事実の同一性を欠くとしてこれを破棄、移送したため、第二次第一審において、右破棄判決の判断に従い検察官から右窃盗の訴因と同一内容の別訴が提起され、併合審理された結果、窃盗につき有罪、業務上横領はその不可罰的事後行為であるとして無罪が言渡されたが、第二次第二審を経た上告審において、右破棄判決の判断は誤りで事実の同一性があり、第二次第一審における別訴の提起は実質において訴因変更の趣旨であると解される以上、二重起訴の違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年12月11日 昭和29(あ)2526
登載
刑集 第13巻13号3195頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴法338条3号,刑訴法337条,刑法253条,刑法235条
論点45第253条刑法

信用組合の支店長等の預金者に対するいわゆる預金謝礼金の交付および融資希望者に対する不正高利の貸付がともに業務上横領罪を構成するとされた事例。

裁判要旨信用組合の支店長等が、支店の預金成績の向上を装うため、勧誘に応じた一部預金者に対し、正規の利息のほかに多額の金員を自己の業務上保管する組合の金員中から預金謝礼金名下に勝手に支出交付し、同謝礼金を補填するため、正規に融資を受ける資格のない者に対し、前同様組合の金員を貸付名下に高利をもつて勝手に支出交付したときは、それが自己の計算においてなされたものである限り、いずれも業務上横領罪を構成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年10月10日 昭和31(あ)1324
登載
刑集 第12巻14号3246頁
参照法条
刑法253条,刑法247条
論点46第253条刑法

一 訴因、罰条の追加、変更をさせないで審判することが違法と解せられる事例
二 背任の成立しない事例
三 期待可能性についての無用の判示と判例違反

裁判要旨一 第一審が業務上横領罪の訴因、罰条について判決した事件について、控訴審が背任の点についても既に十分な証拠調がされているというだけの理由で、未だ任務に背いたか否かの点について十分な防禦を尽していると認められないのにかかわらず、背任について訴因罰条の追加、変更なしに審判することは違法である。
二 A公団BA局長が先に従業員に貸し付けた越冬資金の返済方を強行すれば、ストライキは避けられない情勢の下において、石炭操作賃金名義で資金を作り、恰も帳簿上右越冬資金の返済があつたかのように装つて、規定上は許されない右資金の返済方の免除を行つたからといつて、直ちに背任罪を構成するとはいえない。
三 右の場合背任罪は成立するが期待可能性がない旨の判断は無用の議論であつて、判例と相反する判断をしたものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年4月30日 昭和30(あ)737
登載
集刑 第118号1111頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法253条,刑法247条
論点47第253条刑法

刑訴第四一一条第一号にあたる事例―審理不尽、理由不備の違法

裁判要旨農業協同組合参事として組合員に対する金員の貸付けにつき包括的権限を有している者が組合員に対して制度上認められている仮払金名義により金員を貸出す行為が業務上横領の罪を構成するとする理由として、仮払金の制度、定款の規定等を審理することなく、単に「農業協同組合法並びに組合の定款の定めるところに準拠することなく、且つ正規の貸出手続によらないで、その業務上保管に係る組合公金を擅に仮払金名義で支出して……融通したことを認めるに充分であるから……なお組合の公金を不法に領得したものということができる」とするのは、審理不尽、理由不備の違法あることを免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年4月10日 昭和29(あ)597
登載
集刑 第113号5頁
参照法条
刑法253条,刑訴法411条1号,刑訴法413条本文,農業協同組合法42条
論点48第253条刑法

一 公訴事実の同一性の認められる一事例
二 業務上横領と詐欺

裁判要旨被告人はA事務局の外務員として同連盟賛助会員の募金並びに賛助金集金等の業務に従事中、昭和二六年三月二四日頃から同年八月一六日頃までの間二五回にわたつてB株式会社外二四名から集金した合計一七五〇〇〇円をその都度ほしいままに着服横領したとの業務上横領の訴因と、被告人は昭和二五年一〇月末まで右事務局員として右事務に従事し同日解職されたものであるが、なお右事務局員であるが如くよそおい前記期間中右二五名から賛助金名義で前記金額を騙取したとの詐欺の訴因とは、事実の同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年11月9日 昭和29(あ)2278
登載
刑集 第10巻11号1531頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑法253条,刑法246条
論点49第253条刑法

刑法第二五三条〈業務上横領〉の業務上他にの物を占有するということは、憲法第一四条にいわゆる社会的身分にあたるか

裁判要旨刑法第二五三条〈業務上横領〉の業務上他人の物を占有するということは、犯罪者の属性による刑法上の身分であるが、憲法第一四条にいわゆる社会的身分と解することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年8月18日 昭和30(あ)216
登載
刑集 第9巻9号2031頁
参照法条
刑法65条,刑法253条,憲法14条
論点50第253条刑法

一 普通地方公共団体たる村の水害罹災者に対する救援物資及び義損金の受払、保管の事務の性格と村長に対する業務上横領罪の成立
二 横領罪にいわゆる「他人ノ物」の判示の程度

裁判要旨一 本件各救援物資及義損金の受払、保管の事務は普通地方公共団体であるa村水害罹災者を救護する事務の一部に外ならないので、地方自治法(昭和二三年法律第一七九号による改正前の法律)二条二項にいわゆる普通地方公共団体の公共事務に該当し、同法一四八条により同村長たる被告人Aの管理、執行すべき事務に属するものと解するを相当とする。さればa村の水害罹災者に対するものとして交付された判示各救援物資及び義損金の保管は、村長たる被告人において職務としてこれを為すものといわなければならぬから、原判決には地方自治法の解釈をあやまつた違法は存しない。
二 横領罪の判示には所論の物資が他人の所有に属していることを示せば足り、その何人の所有に属するかまで判示するの要はないから、所論の物資が被告人以外の者の所有に属することの判文上明らかな原判決には所論の違法はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月21日 昭和26(れ)1663
登載
集刑 第61号279頁
参照法条
地方自治法(昭和23年法律179号による改正前のもの)2条2項,地方自治法(昭和23年法律179号による改正前のもの)148条,刑法253条,旧刑訴法360条1項
論点51第253条刑法

横領罪と不当高価販売行為との想像的競合と公訴事実の同一性

裁判要旨右追公判請求書によれば検察官はA等において本件帆布を前記代金にて販売したときに横領行為が完成したものとして公訴を提起した趣旨と認められる。されば、横領罪を構成するものとして起訴された被告人A等の右販売行為が他面において物価統制令に違反するのであるから、刑法五四一条一項前段にいう一個の行為が他の罪名に触れる場合に当り、公訴事実の同一性を害しないものと認められる。それゆえ、原審が被告人A等を同令に違反するものとして処罰したからとて審判の請求を受けない事件につき判決したものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月25日 昭和26(れ)1504
登載
集刑 第58号751頁
参照法条
物価統制令9条ノ2,刑法253条,刑法54条1項前段,旧刑訴法291条,旧刑訴法409条,旧刑訴法410条18号
論点52第253条刑法

一 憲法第三三條違反と上告理由
二 留置の際その理由及び辯護人を選任することを得る旨を告げられなかつた場合と上告理由
三 裁判官の令状なき押收搜索と上告理由
四 採證の用に供しない自白強制の主張と上告理由
五 採證の用に供しない被告人の訊問調書を讀み聞かせなかつた場合と上告理由
六 警察官に對する強制自白と同一内容の自白を公判廷において任意にした場合と間接強制の有無
七 證據の取捨選擇の自由と採證の法則
八 第一審に對する非難と上告理由の適否
九 窃取した物の數量の一部を自白のみによつて認定した場合と刑訴應急措置法第一〇條第三項
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が葉煙草を不法領得した行爲と窃盜罪の成否
一一 從犯と正犯の區別

裁判要旨一 假りに被告人が逮捕状なくして、警察に出頭せしめられたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
二 假りに被告人が警察に留置せられるに當り、留置の理由及び辯護人を選任することが出來る旨を告げられなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
三 假りに被告人が現行犯でない本罪に付いて裁判官の令状なく押收、搜索を受けたものであるとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
四 假りに被告人が警察で強制的に自白せしめられたとしても、その自白を證據に採つて居ない限り、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
五 假りに被告人の訊問調書を被告人に讀み聞かせなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
六 假りに被告人の警察官に對する供述が強制によるものであり、且つ公判廷における自白の内容がそれと全然同じであつたとしても、後者は何等強制を加えられないで任意に爲されたものであるから、これを間接の強制とは斷言できない。
七 證據の取捨選擇は原審の自由裁量權に屬する事項であるから、既に原審が採用した證據だけで判示事實を認定するに充分である以上、それに關係のない他の點はこれを不問に付し、又この點を證明するための證人の申請を却下したとしても、採證の法則の違反は審理不盡の違法があるということにはならない。
八 論旨一の中には、第一審に對する非難を含んでいるが、上告は第二審に對してなされるべきものであるからこれは上告理由となし得ないものである。
九 刑訴應急措置法第一〇條第三項は、被告人の自白のみを證據としてこれを有罪とすることを禁じているけれども、犯罪事實の細部に亘つて悉く自白以外の補強證據を必要とする趣旨ではないから、本件のように窃盜の事實の概要が既に、補強證據によつて認められた場合に窃取した物の數量の一部分につき自白のみによつてこれを認めても差支えない。
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が取扱所の保管する政府所有の葉煙草を領得した行爲は横領罪でなくして窃盜罪である。
一一 原判決が被告人はB及びCの手足又は機械として動いたものであるとの認定をしていないことは、判文上明らかである。從つて原判決が被告人の所爲を、窃盜從犯でなくて窃盜正犯に該當するものと判斷したことは何等の違法も存しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年11月5日 昭和23(れ)61
登載
刑集 第2巻12号1473頁
参照法条
憲法33条,憲法34条,憲法35条1項,憲法38条2項,憲法38条,刑訴法411条,刑訴法56条3項,刑訴法337条,刑訴法344条,刑訴法408条,刑訴応急措置法6条1項,刑訴応急措置法7条2項,刑訴応急措置法10条2項,刑訴応急措置法10条3項,刑法253条,刑法235条,刑法60条,刑法62条
論点53第253条刑法

1 家庭裁判所から選任された成年後見人が成年被後見人所有の財物を横領した場合と刑法244条1項の準用の有無
2 家庭裁判所から選任された成年後見人が成年被後見人所有の財物を横領した場合に成年後見人と成年被後見人との間の親族関係を量刑上酌むべき事情として考慮することの当否

裁判要旨1 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,同条項は準用されない。
2 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があることを量刑上酌むべき事情として考慮するのは相当ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年10月9日 平成24(あ)878
登載
刑集 第66巻10号981頁
参照法条
(1,2につき)刑法244条1項,刑法253条,刑法255条
論点54第253条刑法

家庭裁判所から選任された未成年後見人が未成年被後見人所有の財物を横領した場合と刑法244条1項の準用の有無

裁判要旨家庭裁判所から選任された未成年後見人が業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合,未成年後見人と未成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,その後見事務は公的性格を有するものであり,同条項は準用されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成20年2月18日 平成19(あ)1230
登載
刑集 第62巻2号37頁
参照法条
刑法244条1項,刑法253条,刑法255条
論点55第253条刑法

全体が包括一罪を構成する業務上横領の事案について月ごとの横領金額を明示した訴因に対し一部の月の横領金額につき訴因を上回る金額を認定するに当たり訴因変更手続を経なかったことに違法はないとされた事例

裁判要旨全体が包括一罪を構成する長期間継続的に行われた業務上横領の事案について、月ごとの横領金額を明示した訴因に対し、第1審裁判所が、訴因を下回る合計横領金額を認定しつつ、横領の成立時期をより遅く認定した部分があることに伴い、一部の月の横領金額につき訴因に明示された金額を上回る金額を認定したという事情の下では、第1審裁判所が訴因変更手続を経なかったことが違法であるとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和7年10月20日 令和6(あ)1506
登載
刑集 第79巻7号321頁
参照法条
刑法(令和4年法律第67号による改正前のもの)253条、刑訴法312条1項、刑訴法312条2項
論点56第254条刑法

網生けすから逃げ出した鯉について遺失物横領罪が成立するとされた事例

裁判要旨養殖業者の網生けすから広大な湖沼に逃げ出した鯉であつても、他人が飼養していたものであることを知りながらほしいままに領得すれば(判文参照)、遺失物横領罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和56年2月20日 昭和54(あ)2285
登載
刑集 第35巻1号15頁
参照法条
刑法254条
論点57第254条刑法

占有離脱物と認められないとした事例

裁判要旨列車の終着駅で出口近くの座席に乗つていた被害者が網棚の上にシヨルダーバツグを置き忘れたまま下車し、同一車内の他の乗客はまだ全部降りきらないうちに、かねて乗客の持物を狙つて乗車していた犯人がこれを持ち去つたという事情の下においては右シヨルダーバツグは、未だ被害者の占有を離れたものではないと認むべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年5月18日 昭和35(あ)2073
登載
集刑 第142号217頁
参照法条
刑法254条,刑法235条
論点58第254条刑法

占有離脱物と認められない事例

裁判要旨被害者が電車道寄りの歩道端に在つた塵箱の上に革製シヨルダーバツク(カメラ等在中)とカメラの三脚とを置いて右塵箱から約七米離れた店舗内に入り表戸を開けたまま短時間(約五分間)店内にとどまつていたにすぎない場合には、右シヨルダーバツクは被害者の占有を離れたものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年3月16日 昭和35(あ)1041
登載
集刑 第141号511頁
参照法条
刑法235条,刑法254条
論点59第254条刑法

海中に取り落した物件について所持の認められる一事例

裁判要旨海中に取り落した物件については、落主の意にもとづきこれを引き揚げようとする者が、その落下場所の大体の位置を指示し、その引揚方を人に依頼した結果、その人が該物件をその附近で発見したときは、依頼者がその発見された事実を知らなくても、依頼者はその物件に対し所持即ち事実上の支配管理を有するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年1月24日 昭和30(あ)4090
登載
刑集 第11巻1号270頁
参照法条
刑法235条,刑法254条
論点60第254条刑法

一 刑法上の占有の意義
二 占有離脱物と認められない一事例

裁判要旨一 刑法上の占有は人が物を実力的に支配する関係であつて、その支配の態様は物の形状その他の具体的事情によつて一様ではないが、必ずしも物の現実の所持または監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在するを以つて足りる。
二 被害者がバスを待つ間に写真機を身辺約三〇糎の個所に置き、行列の移動に連れて改札口の方に進んだが、改札口の手前約三・六六米の所に来たとき、写真機を置き忘れたことに気づき直ちに引き返したところ、既にその場から持ち去られていたもので行列が動き始めてからその場所に引き返すまでの時間は約五分、写真機を置いた場所と引き返した点との距離は約一九・五八米に過ぎないような場合は、未だ被害者の占有を離れたものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年11月8日 昭和32(あ)2125
登載
刑集 第11巻12号3061頁
参照法条
刑法235条,刑法254条
論点61第254条刑法

他人が盗伐後現場に放置された伐木の窃取と森林窃盗の成立

裁判要旨他人が盗伐後現場に放置した村有林の伐木を窃盗する所為は、村有林の管理者である村長において右伐木の存在を知ると否とにかかわらず、森林窃盗の罪にあたる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年2月14日 昭和29(あ)517
登載
刑集 第10巻2号187頁
参照法条
森林法施行法(昭和26年法律250号)24条1項,森林法(明治40年法律43号)83条,刑法254条,刑法235条
論点62第254条刑法

窃盗未遂の公訴事実に対し、目的物を遺失物と誤認したとの主張と刑訴第三三五第二項の主張

裁判要旨或る物を窃取しようとして遂げなかつたとの公訴事実に対し、被告人がその物を遺失物と誤認したとの主張は刑訴第三三五条第二項にいわゆる「犯罪の成立を妨げる理由となる事実の主張」にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和29(あ)1910
登載
刑集 第8巻13号2420頁
参照法条
刑法235条,刑法254条,刑訴法335条2項
論点63第254条刑法

殺害された被害者の所持する財布を奪取した者の罪責

裁判要旨なお、被害者が殺害されたからとてその死亡によつて直ちに所論財布を何人も所持しなくなるというわけのものでない。そうして盗罪は他人の所持を奪うことによつて成立するのであるから原判決が判示第二の所為を、所論のように占有離脱物の横領とせずに、窃盗罪としたのは正当である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年4月18日 昭和25(れ)1341
登載
集刑 第44号185頁
参照法条
刑法235条,刑法254条
論点64第254条刑法

公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した行為が窃盗罪に当たるとされた事例

裁判要旨公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した行為は,被害者がベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点で行われたことなど判示の事実関係の下では,窃盗罪に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年8月25日 平成16(あ)882
登載
刑集 第58巻6号515頁
参照法条
刑法235条,刑法254条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

刑法 第252条(横領) 詳細ページ
(横領)
第二百五十二条自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
2自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
刑法 第253条(業務上横領) 詳細ページ
(業務上横領)
第二百五十三条業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第254条(遺失物等横領) 詳細ページ
(遺失物等横領)
第二百五十四条遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
刑法 第255条(準用) 詳細ページ
(準用)
第二百五十五条第二百四十四条の規定は、この章の罪について準用する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。