論点1第204条刑法
受傷直後の行動に関する被害者の供述中に一部事実に反する点はあるが、その被害状況に関する供述の信用性は否定し難く、刑訴法四一一条を適用すべきでないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和59年2月17日 昭和57(あ)441
- 登載
- 集刑 第234号787頁
- 参照法条
- 刑法204条,刑訴法411条3号
論点2第204条刑法
傷害事件につき懲役八年の刑がやむを得ないとされた事例
裁判要旨母親留守の間に就寝中の幼女の顔面に熱湯を浴びせた傷害事件につき言い渡された第一審判決の懲役八年の刑は、その態様の残忍性、結果の重大性等からみてやむを得ない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年6月7日 昭和56(あ)1501
- 登載
- 集刑 第231号495頁
- 参照法条
- 刑法204条
論点3第204条刑法
法定刑超過による非常上告
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和56年4月30日 昭和56(さ)2
- 登載
- 集刑 第221号645頁
- 参照法条
- 刑法204条、刑訴法458条1号但
論点4第204条刑法
一 被害者の承諾と傷害罪の成否
二 被害者の承諾が傷害行為の違法性を阻却しないとされた事例
裁判要旨一 被害者が身体傷害を承諾した場合に傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべきである。
二 過失による自動車衝突事故であるかのように装い保険金を騙取する目的で、被害者の承諾を得てその者に故意に自己の運転する自動車を衝突させて傷害を負わせた場合には、右承諾は、当該傷害行為の違法性を阻却するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和55年11月13日 昭和55(し)91
- 登載
- 刑集 第34巻6号396頁
- 参照法条
- 刑法35条,刑法204条,刑法211条
論点5第204条刑法
一 数人共同して二人以上に対しそれぞれ暴行を加え一部の者に傷害を負わせた場合の罪数
二 起訴状に記載されていない罰条の適用
三 起訴状に記載されていない罰条の適用が許されるとされた事例
裁判要旨一 数人共同して二人以上に対しそれぞれ暴行を加え、一部の者に傷害を負わせた場合には、傷害を受けた者の数だけの傷害罪と暴行を受けるにとどまつた者の数だけの暴力行為等処罰に関する法律
一条〈国内犯〉の罪が成立し、以上は併合罪として処断すべきである。
二 裁判所は、訴因により公訴事実が十分に明確にされていて被告人の防禦に実質的な不利益が生じない限りは、罰条変更の手続を経ないで、起訴状に記載されていない罰条を適用することができる。
三 暴力行為等処罰に関する法律
一条の罪にあたる事実が訴因によつて十分に明示されている場合には、裁判所は、起訴状に記載された刑法二〇八条の罰条を変更させる手続を経ないで、右法律
一条を適用することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年2月16日 昭和52(あ)1431
- 登載
- 刑集 第32巻1号47頁
- 参照法条
- 暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法45条,刑法204条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点6第204条刑法
自動車の運転者が傷害の故意に基づき車両の運転によって人を負傷さもて逃走した場合と道路交通法七二条一項前段の救護義務違反の成否
裁判要旨自動車の運転者が傷害の故意に基づき車両の運転によって人を負傷させその場から逃走した場合であっても、道路交通法七二条一項前段、一一七条の救護義務違反罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年4月3日 昭和47(あ)1958
- 登載
- 刑集 第29巻4号111頁
- 参照法条
- 道路交通法72条1項,道路交通法117条,刑法204条
論点7第204条刑法
法定刑超過の原判決が破棄された事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和47年9月1日 昭和47(あ)603
- 登載
- 集刑 第185号163頁
- 参照法条
- 刑法204条
論点8第204条刑法
傷害の手段として監禁し傷害を加えた場合と牽連犯の成否
裁判要旨傷害の手段として監禁し傷害を加えた場合でも、両者は牽連犯を構成しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月17日 昭和42(あ)2551
- 登載
- 刑集 第22巻9号853頁
- 参照法条
- 刑法204条,刑法220条,刑法54条1項,刑法45条
論点9第204条刑法
不法監禁中になされた暴行により被害者が傷害を負つた場合に監禁致傷罪ではなく監禁と傷害の二罪が成立するとされた事例
裁判要旨暴行が不法監禁中になされたものであつても、その手段としてなされたものでなく、別個の動機、原因からなされた場合において、右暴行の結果被害者に傷害を負わせたときは、監禁致傷罪ではなく、監禁と傷害の二罪が成立し、両者は併合罪の関係となる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年12月21日 昭和42(あ)1482
- 登載
- 集刑 第165号551頁
- 参照法条
- 刑法204条,刑法220条1項,刑法221条,刑法45条
論点10第204条刑法
刑法第一八一条〈不同意わいせつ等致死傷〉所定の傷害と同法第二〇四条所定の傷害の差異。
裁判要旨軽微な傷でも、人の健康状態に不良な変更を加えたものである以上、刑法所定のいわゆる傷害に該当するものであつて、同法
第一八一条〈不同意わいせつ等致死傷〉所定の傷害を同法第二〇四条所定の傷害と別異に解釈すべき特段の事由は存しないこと、当裁判所の判例(昭和三四年(あ)第一六八六号同三七年八月二一日第三小法廷決定参照)の趣旨に徴し、明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年6月25日 昭和38(あ)572
- 登載
- 集刑 第147号507頁
- 参照法条
- 刑法181条,刑法204条,刑法177条前段
論点11第204条刑法
一 違法な橋梁損壊工事をするについて立てられた通行禁止の立札と往来妨害致死傷罪の成立。
二 往来妨害致死傷罪の犯意。
三 往来妨害致死傷罪において橋梁損壊と致死傷の結果との間に因果関係があると認められる事例。
四 「傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従ツテ処断ス」という規定の趣旨。
裁判要旨一 県土木部道路課長である被告人が、故意に風害の状況を作出するため、橋梁損壊工事を実施せしめその結果人を死傷いたした場合は、これによる往来危険防止異のため県名義の通行禁止の立札が立てられていたとしても、右工事による往来妨害致死傷罪の成立を妨げない。
二 刑法
第一二四条第二項〈往来妨害及び同致死傷〉の罪が成立するためには、同条第一項列記の客体を損壊または壅塞して往来の妨害を生ぜしめる意思があれば足り、それ以外に傷害ないし傷害致死の結果につき予見あることを要するものではない。
三 右損壊行為実施中たまたま橋梁が墜落するに至り、これに因つて通行人および情を知らない作業人夫の死傷の結果を生ぜしめた場合には、被告人に右致死傷の結果に対する責任がないとは言えない。
四 刑法
第一二四条第二項の「前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス」という規定の趣旨は、人の身体を傷害した場合には刑法第二〇四条の刑と比較し、死に至した場合には同法第二〇五条の刑と比較し、それぞれ重きに従つて処断するというにある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年1月10日 昭和31(あ)4270
- 登載
- 刑集 第15巻1号1頁
- 参照法条
- 刑法124条,刑法204条,刑法205条
論点12第204条刑法
暴行と傷害との間に因果関係の存在を認めた事例。
裁判要旨一 第一審判決が被告人の判示暴行と被告人の受けた判示傷害との間に因果関係の存在を認めたことはその挙示する証拠により肯認できるところであり、かつその因果関係が被告人の判示所為につき傷害罪の刑事責任を負わしめるに十分のものであることは当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第二二号同年一一月一四日第三小法廷判決、昭和二四年(れ)第二八三一号同二五年三月三一日第二小法廷判決、昭和二九年(あ)第三六〇四号同三二年二月二六日第三小法廷判決)の趣旨に徴し肯認できるところである。
二 (第二審判決の認めた事実の要旨)被害者Aは被告人から突き倒されたため昭和二八年一〇月二〇日以後拇指の伸展力に異常があつたが(正しその拇指伸筋腱が受傷直後完全に断裂したとまで認めるべき証拠は記録上必ずしも明白ではない。)その後適切な治療を受けなかつたため同三〇年五、六月までの間に拇指長伸筋腱に完全断裂を生したものである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和34年6月9日 昭和32(あ)2473
- 登載
- 集刑 第130号143頁
- 参照法条
- 刑法204条
論点13第204条刑法
傷害の同時犯の起訴を共同正犯と認定する場合と訴因変更手続の要否。
裁判要旨傷害の同時犯として起訴されたものを共同正犯と認定しても、それによつて被告人に不当な不意打を加え、その防禦権の行使に実質的な不利益を与えるおそれのないかぎり訴因変更の手続を必要としないものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年7月18日 昭和30(あ)3982
- 登載
- 刑集 第12巻12号2656頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑法207条,刑法204条,刑法60条
論点14第204条刑法
一 強盗傷人とならない一事例
二 牽連犯の要件
裁判要旨一 前夜岡山県下で強盗を行つて得た賍物を舟で運搬し、翌晩神戸で陸揚げしようとする際巡査に発見され、逮捕を免れるため暴行を加え、これを傷害した所為は、強盗傷人ではなく、強盗と公務執行妨害、傷害との罪が成立する。
二 牽連犯が成立するためには犯人が主観的に数罪の一方を他方の手段または結果の関係において実行したというだけでは足りず、その数罪間にその罪質上通常手段結果の関係が存在することを必要とする。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年7月18日 昭和31(れ)16
- 登載
- 刑集 第11巻7号1861頁
- 参照法条
- 刑法240条,刑法238条,刑法236条,刑法95条,刑法204条,刑法54条
論点15第204条刑法
刑訴法第四〇〇条但書に違反する一事例
裁判要旨強姦致傷の公訴事実について第一審が、単なる傷害罪と認定処断したのに対し、控訴審が何ら自ら事実の取調をしないで第一審判決を事実誤認があるとして破棄し、訴訟記録並びに第一審で取り調べた証拠のみによつて、直ちに強姦致傷の事実を認定処断することは、刑訴第四〇〇条但書に違反するものである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年6月21日 昭和30(あ)2244
- 登載
- 刑集 第11巻6号1721頁
- 参照法条
- 刑法204条,刑法181条,刑訴法400条
論点16第204条刑法
殺人未遂の訴因に対し傷害の事実を認定する場合と訴因変更の要否
裁判要旨殺人未遂の訴因に対し傷害と認定するについては、訴因変更の手続を経る必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月24日 昭和27(あ)6580
- 登載
- 刑集 第8巻8号1392頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑法203条,刑法199条,刑法204条
論点17第204条刑法
一 騒擾罪の成立には多衆の暴行脅迫が群集の暴動に発展し社会の治安を動揺せしめる危険または社会の治安に不安動揺を生ぜしめた事実を必要とするか
二 刑法第一〇六条〈騒乱〉にいわゆる「多衆」の意義
三 騒擾罪にあたる殺傷行為が特定の一個人に対するものである場合と騒擾罪の成否
四 騒擾罪の首魁の意義
五 騒擾罪の判示方法
六 不利益変更にあたる一事例
裁判要旨一 騒擾罪の成立には多衆の暴行脅迫が群集の暴動に発展し社会の治安を動揺せしめる危険または社会の治安に不安動揺を生ぜしめた事実を必要としない。
二 刑法
第一〇六条〈騒乱〉にいわゆる多衆は、互に意思連絡のない不特定多数人であることを必要としない。
三 騒擾罪にあたる殺傷行為が特定の一個人に対するものであつても騒擾罪の成立に影響をおよばさない。
四 騒擾罪の首魁とは主動者となり首唱劃策し、多衆をしてその合同力により暴行または脅迫を為すに至らしめる者を謂い、必ずしも暴行脅迫を共にし、もしくは現場に在つて総括指揮することを必要としない。
五 騒擾罪にあたる事実を判示するには、多衆が集合して暴行または脅迫の行為をしたことを明らかにすれば足り、特にその行為が地方の静謐を害し又は公共の平和を害する虞のあることを判示する必要はない。
六 第一審判決が被告人Aに対し懲役一年六月を言渡し第一審における未決勾留日数中一二〇日を右本刑に算入したこと、同被告人のみがこれに対し控訴したこと、しかるに原判決が同被告人に対し第一審判決と同一の懲役一年六月の刑を言渡しながら第一審における未決勾留日数を本刑に算入しなかつたときは、旧刑訴四〇三条に違反する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年5月21日 昭和26(れ)908
- 登載
- 刑集 第7巻5号1053頁
- 参照法条
- 刑法106条1項,刑法199条,刑法204条,旧刑訴法403条
論点18第204条刑法
一 傷害罪における傷害の意義と、中毒による全身倦怠、膝蓋健反射亢進
二 メチール入ドラム罐を売渡した行為により数人に対し夫々傷害致死、傷害の結果を生ぜしめた場合の罪数
三 証拠物を訊問した予審調書の採証と右証拠物の証拠調の要否
裁判要旨一 原判決がAに対する傷害として認定した中毒による全身倦怠、膝蓋健反射亢進は人の生活機能の障害を惹起したものであり、これ等は傷害罪にいわゆる傷害に当る。
二 原判決のメチール入ドラム罐をBに売渡したため右メチールアルコールが被告人不知の間に順次被害者に飲用された判示犯罪行為の態様から見て、傷害致死、傷害の各所為は所論の如く一所為数法の関係と見るのが相当である。
三 予審判事が証人に示した訊問した物件について証拠調がなされていなくても、その予審訊問調書について適法な証拠調がなされている以上同調書中の右物件を除いても独立性のある供述部分又は右物件に関係のない供述記載部分を証拠に採用することは違法でない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年9月25日 昭和26(れ)1418
- 登載
- 集刑 第53号313頁
- 参照法条
- 刑法204条,刑法205条,刑法54条1項前段,旧刑訴法336条,旧刑訴法341条
論点19第204条刑法
一 傷害罪について訴因罰条の変更を必要としない一場合
二 刑法第二〇七条〈同時傷害の特例〉と刑訴法第二五六条第四項にいわゆる「罰条」
裁判要旨一 被告人と甲とが某所を通行中乙に出合い、乙が被告人に対し暴行を加えたので、甲が棍棒で乙の頭部を数回殴打した後、被告人がその棍棒を取つて乙の頭部を数回殴打し、よつて同人に二ケ月間の安静加療を要する頭蓋不全骨折脳出血の傷害を負わせたとの趣旨の公訴事実を記載し、罪名及罰条として傷害罪刑法第二〇四条と記載した起訴状をもつてする起訴に対し、前と同一の経過順序で被告人と甲とが乙に対しそれぞれ暴行を加え、乙に対し前同様の傷害を負わせたが、右は、被告人及び甲のうち何人の暴行に基因するものであるかを知ることができないとの趣旨の事実を認定し、刑法
第二〇四条〈傷害〉、
第二〇七条〈同時傷害の特例〉を適用するについては、訴因罰条変更の手続を経ることを要しない。
二 刑法
第二〇七条のごとき規定は、刑訴
第二五六条第四項〈盗品譲受け等〉にいわゆる罰条には含まれないものと解するを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月30日 昭和25(あ)1538
- 登載
- 刑集 第4巻11号2453頁
- 参照法条
- 刑法204条,刑法207条,刑訴法256条1項,刑訴法256条2項,刑訴法256条3項,刑訴法312条1項2項,刑訴法256条4項
論点20第204条刑法
他人の身体に入れ墨をした行為が傷害罪に当たるとした第一審判決を維持した原判決が是認された事例
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成7年9月5日 平成4(あ)435
- 登載
- 集刑 第266号985頁
- 参照法条
- 刑法204条
論点21第204条刑法
教職員組合員らによる建造物侵入,公務執行妨害等の所為について違法性に欠けるところはないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成3年11月28日 昭和61(あ)1311
- 登載
- 集刑 第258号403頁
- 参照法条
- 刑法95条1項,刑法130条,刑法204条,刑法208条,暴力行為等処罰に関する法律1条
論点22第204条刑法
1 同一被害者に対し一定の期間内に反復累行された一連の暴行によって種々の傷害を負わせた事実について,包括一罪とされた事例
2 包括一罪を構成する一連の暴行による傷害について,訴因の特定に欠けるところはないとされた事例
裁判要旨1 同一被害者に対し約4か月間又は約1か月間という一定の期間内に反復累行された一連の暴行によって種々の傷害を負わせた事実については,その暴行が,被告人と被害者との一定の人間関係を背景として,共通の動機から繰り返し犯意を生じて行われたものであることなどの事情(判文参照)に鑑みると,全体を一体のものと評価し,包括して一罪と解することができる。
2 包括一罪を構成する一連の暴行による傷害については,本件のような訴因(判文参照)であっても,共犯者,被害者,期間,場所,暴行の態様及び傷害結果を記載することをもって,その特定に欠けるところはない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成26年3月17日 平成23(あ)1224
- 登載
- 刑集 第68巻3号368頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑法204条 (2につき)刑訴法256条3項
論点23第204条刑法
不法に被害者を監禁し,その結果,被害者に外傷後ストレス障害(PTSD)を発症させた場合について,監禁致傷罪の成立が認められた事例
裁判要旨不法に被害者を監禁し,その結果,被害者が,医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現していることなどから外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと認められる場合,同障害の惹起は刑法にいう傷害に当たり,監禁致傷罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成24年7月24日 平成22(あ)2011
- 登載
- 刑集 第66巻8号709頁
- 参照法条
- 刑法221条,刑法204条
論点24第204条刑法
睡眠薬等を摂取させて数時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた行為につき傷害罪の成立が認められた事例
裁判要旨病院で勤務中ないし研究中であった者に対し,睡眠薬等を摂取させたことによって,約6時間又は約2時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた行為は,傷害罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成24年1月30日 平成22(あ)340
- 登載
- 刑集 第66巻1号36頁
- 参照法条
- 刑法204条
論点25第204条刑法
共謀加担後の暴行が共謀加担前に他の者が既に生じさせていた傷害を相当程度重篤化させた場合の傷害罪の共同正犯の成立範囲
裁判要旨他の者が被害者に暴行を加えて傷害を負わせた後に,被告人が共謀加担した上,更に暴行を加えて被害者の傷害を相当程度重篤化させた場合,被告人は,被告人の共謀及びそれに基づく行為と因果関係を有しない共謀加担前に既に生じていた傷害結果については,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によって傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成24年11月6日 平成24(あ)23
- 登載
- 刑集 第66巻11号1281頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法204条
論点26第204条刑法
自宅から隣家の被害者に向けて連日連夜ラジオの音声等を大音量で鳴らし続け被害者に慢性頭痛症等を生じさせた行為が傷害罪の実行行為に当たるとされた事例
裁判要旨自宅から隣家の被害者に向けて,精神的ストレスによる障害を生じさせるかもしれないことを認識しながら,連日連夜,ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして,被害者に精神的ストレスを与え,慢性頭痛症等を生じさせた行為(判文参照)は,傷害罪の実行行為に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成17年3月29日 平成16(あ)2145
- 登載
- 刑集 第59巻2号54頁
- 参照法条
- 刑法204条
論点27第205条刑法
傷害致死につき誤想過剰防衛であるとされた事例
裁判要旨空手三段の在日外国人が、酩酊した甲女とこれをなだめていた乙男とが揉み合ううち甲女が尻もちをついたのを目撃して、甲女が乙男から暴行を受けているものと誤解し、甲女を助けるべく両者の間に割つて入つたところ、乙男が防衛のため両こぶしを胸に前辺りに上げたのを自分に殴りかかつてくるものと誤信し、自己及び甲女の身体を防衛しようと考え、とつさに空手技の回し蹴りを乙男の顔面付近に当て、同人を路上に転倒させ、その結果後日死亡するに至らせた行為は、誤信にかかる急迫不正の侵害に対する防衛手段として相当性を逸脱し、誤想過剰防衛に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和62年3月26日 昭和59(あ)1699
- 登載
- 刑集 第41巻2号182頁
- 参照法条
- 刑法36条,刑法38条,刑法205条1項
論点28第205条刑法
傷害致死罪における暴行と死亡との間に因果関係があるとされた事例
裁判要旨被害者の死因となつたくも膜下出血が、被告人らの暴行に耐えかねた被害者が逃走しようとして池に落ち込み露出した岩石に頭部を打ちつけたため生じたものであるとしても、被告人らの暴行と被害者の右受傷に基づく死亡との間に因果関係を認めるのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和59年7月6日 昭和58(あ)1537
- 登載
- 刑集 第38巻8号2793頁
- 参照法条
- 刑法205条
論点29第205条刑法
訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例
裁判要旨第一審において被告人らが無罪とされた公訴事実が警察官一名に対する傷害致死を含む重大な罪にかかるものであり、また、同事実に関する現場共謀の訴因を事前共謀の訴因に変更することにより同事実につき被告人らに対し共謀共同正犯としての罪責を問いうる余地がある場合であつても、検察官が、約八年半に及ぶ第一審の審理の全課程を通じ一貫して右公訴事実はいわゆる現場共謀に基づく犯行であつて右現場共謀に先立つ事前共謀に基づく犯行とは別個のものであるとの主張をしていたのみならず、審理の最終段階における裁判長の求釈明に対しても従前の主張を変更する意思はない旨明確かつ断定的な釈明をしていたこと、第一審における被告人らの防禦活動は検察官の右主張を前提としてなされたことなど判示の事情があるときは、第一審裁判所としては、検察官に対し右のような求釈明によつて事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くしたものというべきであり、さらに進んで、検察官に対し、訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務を有するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年9月6日 昭和55(あ)629
- 登載
- 刑集 第37巻7号930頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑訴規則208条,刑法60条,刑法205条1項
論点30第205条刑法
刑法二〇五条二項〈傷害致死〉と憲法一三条、一四条、七六条
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和54年7月10日 昭和54(あ)499
- 登載
- 集刑 第215号69頁
- 参照法条
- 憲法13条,憲法14条,憲法76条,刑法205条2項
論点31第205条刑法
暴行・傷害を共謀した共犯者のうちの一人が殺人罪を犯した場合における他の共犯者の罪責
裁判要旨暴行・傷害を共謀した共犯者のうちの一人が殺人罪を犯した場合、殺意のなかつた他の共犯者については、傷害致死罪の共同正犯が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年4月13日 昭和52(あ)2113
- 登載
- 刑集 第33巻3号179頁
- 参照法条
- 刑法38条2項,刑法60条,刑法199条,刑法205条1項
論点32第205条刑法
配偶者の直系尊属に対する傷害致死について定めた刑法二〇五条二項と憲法一四条
裁判要旨配偶者の直系尊属に対する傷害致死について定めた刑法二〇五条二項の規定は、憲法一四条に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和51年2月6日 昭和50(あ)1563
- 登載
- 刑集 第30巻1号1頁
- 参照法条
- 憲法14条,刑法205条
論点33第205条刑法
刑法二〇五条二項〈傷害致死〉と憲法一四条一項
裁判要旨尊属傷害致死に関する刑法二〇五条二項の規定は、憲法一四条一項に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年11月28日 昭和50(あ)1283
- 登載
- 集刑 第198号707頁
- 参照法条
- 憲法14条1項,刑法205条2項
論点34第205条刑法
刑法二〇五条二項〈傷害致死〉と憲法一四条一項
裁判要旨尊属傷害致死に関する刑法二〇五条二項の規定は、憲法一四条一項に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年11月20日 昭和50(あ)48
- 登載
- 集刑 第198号491頁
- 参照法条
- 憲法14条1項,刑法205条2項
論点35第205条刑法
刑法二〇五条二項〈傷害致死〉と憲法一四条一項
違憲でないことがきわめて明らかであるとして、違憲の主張が不適法とされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年12月20日 昭和49(あ)1997
- 登載
- 集刑 第194号495頁
- 参照法条
- 憲法14条1項,憲法22条,刑法205条
論点36第205条刑法
刑訴法四〇〇条但書に違反するとされた事例
裁判要旨殺人の公訴事実について、第一審が殺意の存在を認めず、傷害致死の犯罪事実を認定したのに対し、控訴審が、みずから殺意の点に関する事実の取調をすることなく、実質上、第一審で取り調べた証拠のみに基づいて未必の殺意を認定し、殺人罪として処断することは、刑訴法四〇〇条但書の解釈上許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年12月22日 昭和45(あ)913
- 登載
- 刑集 第24巻13号1872頁
- 参照法条
- 刑法199条,刑法205条,刑訴法400条
論点37第205条刑法
一 加持祈祷の結果人を死亡させた行為と憲法第二〇条第一項
二 捜査の必要上、宗教的行事の外形を再現した検証調書と証拠能力の有無
裁判要旨一 精神異常者の平癒を祈願するために宗教行為として加持祈祷行為がなされた場合でも、それが原判決の認定したような他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、それにより被害者を死に致したものである以上、憲法第二〇条第一項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかなく、これを刑法第二〇五条に該当するものとして処罰することは、何ら憲法の右条項に反するものではない。
二 上告趣意第五中に、司法警察員作成の昭和三三年一〇月二五日付検証調書の内容である検証は、宗教的所作を、宗教を伴わないで再現しようとしたものであつて、宗教に対する冒涜であるから、かかる検証調書は、証拠能力を有しない旨の主張があるが、捜査の必要上、宗教行為としてでなく、宗教的行事の外形を再現したからといつて、その一事をもつてそれが宗教に対する冒涜であり、その状況を記載した検証調書が証拠能力を有しないものであるということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和38年5月15日 昭和36(あ)485
- 登載
- 刑集 第17巻4号302頁
- 参照法条
- 憲法20条1項,刑法205条,刑訴法218条,刑訴法220条,刑訴法318条,刑訴法321条3項
論点38第205条刑法
刑法第二〇五条〈傷害致死〉は憲法第一四条に違反するか。
裁判要旨故意犯である刑法第二〇五条に該当する者が、過失犯である同法第二一〇条、第二一一条に該当する者よりも重く処罰されるのは、故意による傷害致死行為という行為の属性に由来するのであつて、人によつて差別を設けたものではなく、人の地位、身分による区別ではないのであり、何人にも適用される法条なのである。従つて刑法第二〇五条は憲法第一四条に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年2月22日 昭和37(あ)2451
- 登載
- 集刑 第146号419頁
- 参照法条
- 憲法14条,刑法205条,刑法210条,刑法211条
論点39第205条刑法
被害者の傷害と死亡との間の因果関係の存否に関する判断に理由不備があつて、刑訴法第四一一条一号にあたるとされた事例。
裁判要旨被告人から濃硫酸約五合を浴びせかけられ、頭部、顔面、頸部、前胸部、両上下肢等殆んど身体の全部位に治療数ケ月を要する硫酸腐蝕傷を受けた被害者が、入院加療の途上、該硫酸腐蝕傷は八割以上治癒したが結核性胸膜炎を誘発し、これに基づく循環機能不全により死亡するに至つた事案において、原審が、専門医に対し右被害者の受傷の部位、程度、治療の経過、治療中の健康状態等について具体的に何ら示すところがなく、単に「硫酸腐蝕傷を受けた患者がその症痕形成において約八割以上治癒した場合右受傷に基因して結核性胸膜炎による循環機能不全を発病する場合ありや」との鑑定を求め、その鑑定結果は「硫酸腐蝕傷を受けた者が結核性胸膜炎にかかり循環機能不全をおこすことは極めて稀れである」との一般的判断のみを示したに止まるにも拘わらず、他に特段の事由を説示することなく、右鑑定結果だけで、被害者の傷害と死亡との間に因果関係がないと判断したのは、証拠理由不備の違法があり、刑訴第四一一条第一号により破棄を免かれない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年8月21日 昭和33(あ)1588
- 登載
- 刑集 第16巻8号1303頁
- 参照法条
- 刑法205条1項,刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑訴法411条1号
論点40第205条刑法
一 証人の供述中その一部の採証と事実の認定。
二 相互に矛盾する多数の証拠による事実の認定。
三 傷害致死罪において暴行と死亡との間に因果関係が存在すると認められる事例。
裁判要旨一 証人の供述中分離することができる部分があるときは、その一部を採り、他の部分を捨てても差支えなく、また、多数の証拠のうち一部において相互に牴触するものがあつても、論理法則または実験則に反しない限り、その全部を綜合して事実を認定しても差支えないものである。(昭和二三年(れ)第一三一二号同二四年二月二四日第一小法廷判決、刑集三巻二号二三八頁参照)
二 被告人が、小料理店の土間で被害者から帰宅を促されたことに憤慨のあまり、同人に対しその着用していたワイシヤツの襟を両手でつかんで強く首を締めつけたうえ、同人を同店東側出入口の方向に突き飛ばして右出入口外側道路上に仰向けに転倒させるなどの暴行を加え、即時同所において、同人をして心筋梗塞のために死亡するに至らしめたことの証拠上明白である以上、たとえ、被害者の心臓に高度の肥大を存するうえ、心筋の各所に白色瘢痕化部分を有し、かつ心冠状動脈に顕著な狭穿を存するなど高度重篤な病変があつたとしても、被告人の右暴行と被害者の死亡との間に因果関係が存在する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年11月21日 昭和35(あ)2042
- 登載
- 刑集 第15巻10号1731頁
- 参照法条
- 刑訴法318条,刑法205条1項
論点41第205条刑法
傷害致死後における死体遺棄の罪責。
裁判要旨身体傷害により人を死に致した後、さらに死体を遺棄するにおいては、傷害致死罪のほかに死体遺棄罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和34年2月19日 昭和33(あ)742
- 登載
- 刑集 第13巻2号161頁
- 参照法条
- 刑法205条,刑法190条,刑法45条
論点42第205条刑法
判決に理由不備の違法がある一事例
裁判要旨一定の時に被害者に脳出血による何らかの身体的症状の生じたことを前提として被害者の受傷と死亡との時間的間隔を判定した場合に、右身体的症状を生じたことを認定するための証拠が明らかにその証拠の趣旨と矛盾し、かつ他にこれを認定するにたる証拠のない判決には理由不備の違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月25日 昭和23(れ)1738
- 登載
- 集刑 第71号431頁
- 参照法条
- 旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号,刑法195条,刑法205条
論点43第205条刑法
一 傷害致死罪の成立と致死の結果の予見の要否
二 二人以上の者が共謀しないで他人に暴行を加え傷害致死の結果を生じその傷害を生ぜしめた者を知ることができない場合の罪責
裁判要旨一 傷害致死罪の成立には傷害と死亡、との間の因果関係の存在を必要とするにとどまり、致死の結果についての予見は必要としないのであるから、原判決が所論傷害の結果たる致死の予見について判示しなかつたからといつて、原判決には所論理由不備の違法は存しない。
二 二人以上の者が共謀しないで、他人に暴行を加え傷害致死の結果を生ぜしめた者を知ることができない場合は、共同暴行者はいずれも傷害致死の責任を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年9月20日 昭和26(れ)797
- 登載
- 刑集 第5巻10号1937頁
- 参照法条
- 刑法205条1項,刑法207条,旧刑訴法360条1項
論点44第205条刑法
一 刑法第二〇五条第二項〈傷害致死〉の尊属傷害致死の規定は憲法第一四条に違反するか
二 憲法第一四条にいわゆる「法の下における平等」の意義と刑法における尊属殺人等の規定
裁判要旨一 刑法
第二〇五条第二項〈傷害致死〉の規定は、新憲法実施後の今日においても、厳としてその効力を存続するものというべく、従つて本件において原審が被告人の尊属致死の所為を認定しながら、これに同法条の適用を拒定し、一般傷害致死に関する同法第二〇五条第一項を擬律処断したことは、憲法第一四条第一項の解釈を誤り、当然に適用すべき刑事法条を適用しなかつた違法があることに帰し本件上告はその理由があるのである。
二 おもうに憲法第一条が法の下における国民平等の原則を宣明し、すべて国民が人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会関係上差別的な取扱を受けない旨を規定したのは、人格の価値がすべての人間について同等であり、従つて人種、宗教、男女の性職業、社会的身分等の差異にもとずいて、あるいは特権を有し、あるいは特別に不利益な待遇を与えられてはならぬという大原則を示したものに外ならない。奴隷制や貴族等の特権が認められず、又新民法において妻の無能力制、戸主の特権的地位が廃止せられたごときは畢竟するにこの原則に基くものである。しかしながら、このことは法が、国民の基本的平等の原則の範囲内において、各人の年齢、自然的素質、職業、人と人との間の特別の関係等の各事情を考慮して、道徳正義、合目的性等の要請より適当な具体的規定をすることを妨げるものではない。刑法において尊属親に対する殺人、傷害致死等が一般の場合に比して重く罰せられているのは、法が子の親に対する道徳的義務をとくに重要視したものであり、これ道徳の要請にもとずく法にある具体的規定に外ならないのである。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和25年10月11日 昭和25(あ)292
- 登載
- 刑集 第4巻10号2037頁
- 参照法条
- 憲法14条,刑法205条2項,刑法200条
論点45第205条刑法
共犯関係が解消していないとされた事例
裁判要旨甲が、乙と共謀のうえ、こもごも丙に暴行を加えたのち、現場から立ち去るに際し、乙において丙に対しなお暴行を加えるおそれが消滅していなかつたのに、格別これを防止する措置を講じなかつたときは、甲乙間の当初の共犯関係は、右の立ち去つた時点で解消したものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年6月26日 昭和63(あ)948
- 登載
- 刑集 第43巻6号567頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法205条1項
論点46第205条刑法
尊属傷害致死罪の成立を認めた控訴審判決言渡し後に施行された刑法の一部を改正する法律(平成七年法律第九一号)によって尊属傷害致死罪が廃止されたときと刑訴法四一一条五号にいう「刑の変更」
裁判要旨刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの)
二〇五条二項〈傷害致死〉の尊属傷害致死罪の成立を認めた控訴審判決言渡し後に施行された刑法の一部を改正する法律(平成七年法律第九一号)によって尊属傷害致死罪が廃止されたときは、刑訴法四一一条五号にいう「刑の変更」に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成8年11月28日 平成6(あ)1021
- 登載
- 刑集 第50巻10号827頁
- 参照法条
- 刑法(平成7年法律91号による改正前のもの)6条,刑法205条,刑法(平成7年法律91号による改正前のもの)205条2項,刑法の一部を改正する法律(平成7年法律91号)附則2条1項,刑訴法411条5号
論点47第205条刑法
原判決が理由中において訴因外の共同正犯が成立するとしたことが是認できないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成30年2月26日 平成28(あ)1869
- 登載
- 集刑 第323号1頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法205条,刑訴法294条,刑訴法308条,刑訴法312条,刑訴法404条
論点48第205条刑法
刑法205条2項〈傷害致死〉と憲法14条
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成2年11月26日 平成1(あ)165
- 登載
- 集刑 第256号271頁
- 参照法条
- 憲法14条,刑法205条2項
論点49第205条刑法
第三者の暴行が介在した場合でも当初の暴行と死亡との間の因果関係が認められるとされた事例
裁判要旨被告人の暴行により被害者の死因となった傷害が形成された場合には、その後第三者により加えられた暴行によって死期が早められたとしても、被告人の暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成2年11月20日 昭和63(あ)1124
- 登載
- 刑集 第44巻8号837頁
- 参照法条
- 刑法第1編第7章,刑法205条1項
論点50第205条刑法
傷害致死の事案につき,懲役10年の求刑を超えて懲役15年に処した第1審判決及びこれを是認した原判決が量刑不当として破棄された事例
裁判要旨親による幼児に対する傷害致死の事案において,これまでの量刑の傾向から踏み出し,公益の代表者である検察官の懲役10年の求刑を大幅に超える懲役15年という量刑をすることにつき,具体的,説得的な根拠を示しているとはいい難い第1審判決及びその量刑を是認した原判決は,量刑不当により破棄を免れない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成26年7月24日 平成25(あ)689
- 登載
- 刑集 第68巻6号925頁
- 参照法条
- 刑法205条,刑訴法411条2号
論点51第205条刑法
殺人1件,傷害致死1件等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例(中国人妻による替え玉殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成25年11月11日 平成23(あ)881
- 登載
- 集刑 第312号7頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法199条,刑法205条,刑訴法411条2号
論点52第205条刑法
6名を殺害し,1名を死に致すなどした殺人,傷害致死等被告事件につき,被告人を無期懲役に処した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないとされた事例(反対意見がある。)(北九州連続監禁殺人等事件)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成23年12月12日 平成19(あ)2276
- 登載
- 集刑 第306号695頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法199条,刑法205条,刑訴法411条2号
論点53第205条刑法
被害者が暴行による傷害の治療中に医師の指示に従わなかったために治療の効果が上がらなかったとしても暴行と死亡との間に因果関係があるとされた事例
裁判要旨暴行による傷害がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものであった場合には,その治療中に被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために治療の効果が上がらなかったという事情が介在したとしても,上記暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成16年2月17日 平成15(あ)1716
- 登載
- 刑集 第58巻2号169頁
- 参照法条
- 刑法第1編第7章 犯罪の不成立及び刑の減免,刑法205条
論点54第205条刑法
暴行とその被害者が現場からの逃走途中に遭遇した交通事故による死亡との間に因果関係があるとされた事例
裁判要旨暴行の被害者が現場からの逃走途中に高速道路に進入するという極めて危険な行動を採ったために交通事故に遭遇して死亡したとしても,その行動が,長時間激しくかつ執ような暴行を受け,極度の恐怖感を抱いて,必死に逃走を図る過程で,とっさに選択されたものであり,暴行から逃れる方法として,著しく不自然,不相当であったとはいえないなど判示の事情の下においては,上記暴行と被害者の死亡との間には因果関係がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年7月16日 平成15(あ)35
- 登載
- 刑集 第57巻7号950頁
- 参照法条
- 刑法第1編第7章 犯罪の不成立及び刑の減免,刑法205条
論点55第205条刑法
暴行態様,傷害の内容,死因等の表示が概括的であっても傷害致死罪の訴因の特定に欠けるところはないとされた事例
裁判要旨「被告人は,単独又は甲及び乙と共謀の上,平成9年9月30日午後8時30分ころ,福岡市a区所在のビジネス旅館Ab階c号室において,被害者に対し,その頭部等に手段不明の暴行を加え,頭蓋冠,頭蓋底骨折等の傷害を負わせ,よって,そのころ,同所において,頭蓋冠,頭蓋底骨折に基づく外傷性脳障害又は何らかの傷害により死亡させた。」との傷害致死の訴因は,暴行態様,傷害の内容,死因等の表示が概括的であるが,検察官において,当時の証拠に基づき,できる限り日時,場所,方法等をもって罪となるべき事実を特定して訴因を明示したものである以上,訴因の特定に欠けるところはない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成14年7月18日 平成13(あ)318
- 登載
- 刑集 第56巻6号307頁
- 参照法条
- 刑法205条,刑訴法256条3項
論点56第207条刑法
1 同時傷害の特例を定めた刑法207条の法意
2 共犯関係にない二人以上の暴行による傷害致死の事案においていずれかの暴行と死亡との間の因果関係が肯定された場合と刑法207条の適用の可否
裁判要旨1 同時傷害の特例を定めた刑法207条は,共犯関係にない二人以上が暴行を加えた事案において,検察官が,各暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであること及び各暴行が外形的には共同実行に等しいと評価できるような状況において行われたこと,すなわち同一の機会に行われたものであることの証明をした場合,各行為者において,自己の関与した暴行が傷害を生じさせていないことを立証しない限り,傷害についての責任を免れないとしたものである。
2 共犯関係にない二人以上の暴行による傷害致死の事案において,刑法
207条〈同時傷害の特例〉適用の前提となる事実関係が証明された場合には,いずれかの暴行と死亡との間の因果関係が肯定されるときであっても,各行為者について同条の適用は妨げられない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成28年3月24日 平成27(あ)703
- 登載
- 刑集 第70巻3号1頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑法207条
論点57第207条刑法
1 他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合と刑法207条
2 他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合において,後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有しないときに,刑法207条〈同時傷害の特例〉を適用することの可否
裁判要旨1 他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合,その傷害を生じさせた者を知ることができないときは,刑法
207条〈同時傷害の特例〉の適用により後行者は当該傷害についての責任を免れない。
2 他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合に,刑法
207条の適用により後行者に対して当該傷害についての責任を問い得るのは,後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであるときに限られる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和2年9月30日 令和1(あ)1751
- 登載
- 刑集 第74巻6号669頁
- 参照法条
- 刑法207条
論点58第208条刑法
兇器準備集合罪と共謀共同正犯の成否(積極)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和60年12月4日 昭和58(あ)1207
- 登載
- 集刑 第241号357頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法208条の2
論点59第208条刑法
一 兇器準備集合罪の保護法益
二 迎撃形態の兇器準備集合罪と相手方からの襲撃の客観的蓋然性の要否
裁判要旨一 兇器準備集合罪は、個人の生命、身体又は財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも同様に保護法益とするものである。
二 兇器準備集合罪はいわゆる抽象的危険反であつて、いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪が成立するためには、必ずしも相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性が客観的状況として存在することは必要でなく、兇器準備集合の状況が社会生活の平穏を害しうる態様のものであれば足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年6月23日 昭和55(あ)1608
- 登載
- 刑集 第37巻5号555頁
- 参照法条
- 刑法208条ノ2
論点60第208条刑法
迎撃形態の兇器準備集合罪における共同加害目的
裁判要旨いわゆる迎撃形態の兇器準備集合罪において共同加害目的があるというためには、行為者が、相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性を認識している必要はなく、相手方からの襲撃のありうることを予想し、襲撃があつた際にはこれを迎撃して相手方の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える意思を有していれば足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年11月22日 昭和56(あ)950
- 登載
- 刑集 第37巻9号1507頁
- 参照法条
- 刑法208条ノ2
論点61第208条刑法
刑法二〇八条の二〈凶器準備集合及び結集〉の規定違憲(憲法三一条違反)の主張が「欠前提」とされた事例-いわゆる広大闘争事件
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年3月8日 昭和56(あ)235
- 登載
- 集刑 第225号747頁
- 参照法条
- 憲法31条,刑法208条の2
論点62第208条刑法
一 訴訟費用負担の主文例
二 刑法二〇八条の二〈凶器準備集合及び結集〉にいう「兇器」等の文言があいまい不明確で憲法三一条に違反するとの主張が欠前提とされた事例
三 いわゆる分割審理をしたこと、国選弁護人の辞任申出を認めず弁護人不出頭のまま審理をしたこと等につき違憲をいう主張が欠前提とされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年11月10日 昭和54(あ)846
- 登載
- 集刑 第216号261頁
- 参照法条
- 刑訴法181条1項本文,刑訴法185条,憲法31条,憲法32条,憲法37条1項,刑法208条ノ2
論点63第208条刑法
一、共同加害の目的が認められないとして兇器準備集合罪の成立を成否を否定した原判決に事実誤認の疑いがあるとされた事例
二、無許可集団示威運動と昭和二十五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例四条〈公務員の国外犯〉飯田橋
裁判要旨一 角材の柄付きプラカード等を所持して集団示威運動を行つていた学生集団の先頭部分の学生のうち、所携の右プラカード等を振り上げて警察官をめがけて殴りかかつている状況を相互に目撃し得る場所に近接して位置し、しかもみずから警察官に対し暴行に及んだ者あるいは暴行に及ぼうとしていた者についてまで、右行為は各自の個人的な意思発動による偶発的行為であるとして、兇器準備集合罪にいう共同加害目的の存在を否定した原判決は、判示の事情のもとにおいては、事実を誤認した疑いがあり、破棄を免れない。
二 昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例
四条〈公務員の国外犯〉は、同条にいう所要の措置が違反行為の態様、公共の秩序に対する侵害の程度等に応じて必要な限度を超えてはならないことを規定したものであつて、無許可の集団示威運動に対し、これを直ちに実力で阻止し解散させなければならないほど明白かつ切迫した事態にない限り阻止することも許されないとする趣旨ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年5月6日 昭和49(あ)1200
- 登載
- 刑集 第31巻3号544頁
- 参照法条
- 刑法95条1項,刑法208条ノ2第1項,刑訴法411条3号,集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和25年東京都条例44号)4条
論点64第208条刑法
労働組合役員の他組合員に対する暴行、逮捕行為が法秩序全体の見地からみて到底許容されないものであるとされた事例
裁判要旨甲労働組合とこれから脱退した者を中心とする乙労働組合との間の紛争の過程で、甲組合の副組合長が、乙組合の言い分を記載したビラを甲組合の組合員に配付しようとした乙組合の書記長の左肩を掴んで後方に引きのかせ、胸部付近を突き、さらに手首を掴み腕を組むようにして引つ張つて甲組合事務所に連れ込む等した暴行行為、及び右副組合長と甲組合の書記長が、ビラの内容について取消文を書かせるため、いつたん組合事務所を出た同人を再び連れ戻そうと考え、同人を中にはさんで両腕を抱え約六〇メートルを約一五分にわたり無理に連行した逮捕行為(各判文参照)は、法秩序全体の見地からみるとき、原判決の諸般の事情を考慮に入れても、到底許容されるものとはいい難い。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年8月27日 昭和46(あ)1095
- 登載
- 刑集 第29巻7号442頁
- 参照法条
- 刑法35条,刑法208条,刑法220条1項,刑訴法411条1号,労働組合法1条2項
論点65第208条刑法
兇器準備集合の罪とその継続中における暴力行為等処罰に関する法律一条〈国内犯〉違反の罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
裁判要旨被告人が、甲ほか一一名と共謀のうえ、乙らに危害を加える目的をもつて、某日午後一一時頃から翌日午前二時三〇分頃までの間、某市内の乙方およびその付近路上ならびに同市内の甲方において猟銃、日本刀、包丁等の兇器を準備し、またはその準備のあることを知つて集合したという兇器準備集合の罪と、右某日午後一一時頃乙方において乙に対し所携の包丁、日本刀を示し、「指を詰めろ」等と申し向け、手拳等でその身体を殴打し、あるいは足蹴にする等し、もつて数人共同して兇器を示し、かつ、多衆の威力を示して暴行、脅迫を加えたという暴力行為等処罰に関する法律
一条〈国内犯〉違反の罪とは、併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年2月8日 昭和47(あ)159
- 登載
- 刑集 第27巻1号1頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法208条2第1項,暴力行為等処罰に関する法律1条
論点66第208条刑法
兇器準備集合の所為とその継続中における暴力行為等処罰に関する法律一条〈国内犯〉違反の所為とが併合罪の関係にあるとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年2月8日 昭和47(あ)160
- 登載
- 集刑 第186号33頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法208条の2,暴力行為等処罰法1条
論点67第208条刑法
刑法二〇八条の二〈凶器準備集合及び結集〉にいう「兇器」にあたらないとされた事例
裁判要旨他人を殺傷する用具として利用する意図のもとに準備されたダンプカーであっても、他人を殺傷する用具として利用される外観を呈しておらず、社会通念に照らし、ただちに他人をして危険感をいだかせるに足りない場合には、刑法
二〇八条の二〈凶器準備集合及び結集〉にいう「兇器」にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年3月14日 昭和45(あ)1011
- 登載
- 刑集 第26巻2号187頁
- 参照法条
- 刑法208条ノ2
論点68第208条刑法
一、長さ一メートル前後の角棒は刑法二〇八条の二にいう「兇器」にあたるか
二、刑法二〇八条の二〈凶器準備集合及び結集〉にいう「集合」にあたる場合
三、刑法二〇八条の二にいう「集合」の状態の継続と兇器準備集合罪の継続
裁判要旨一、長さ一メートル前後の角棒は、刑法
二〇八条の二〈凶器準備集合及び結集〉にいう「兇器」にあたる。
二、すでに一定の場所に集まつている二人以上の者が、その場で兇器を準備し、またはその準備のあることを知つたうえ、他人の生命、身体または財産に対し共同して害を加える目的を有するに至つた場合は、刑法
二〇八条の二にいう「集合」にあたる。
三、刑法
二〇八条の二にいう「集合」の状態が継続するかぎり、兇器準備集合罪は、継続して成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年12月3日 昭和44(あ)1453
- 登載
- 刑集 第24巻13号1707頁
- 参照法条
- 刑法208条の2
論点69第208条刑法
兇器準備集合の所為と暴力行為等処罰に関する法律第一条〈国内犯〉違反の所為とが併合罪の関係にあるとされた事例
裁判要旨被告人らが、共謀のうえ、甲らに危害を加える目的をもつて、猟銃、日本刀等の兇器を準備し、または準備のあることを知つて、某所に集合したという兇器準備集合の所為と、その集合の直後、集合場所付近において、甲の身体を手拳で殴打し、足蹴にするなどし、かつ、甲に対し「横着だぞ」等と怒号し、もつて数人共同し、多衆の威力を示して暴行、脅迫をしたという暴力行為等処罰に関する法律
第一条〈国内犯〉違反の所為とは、併合罪の関係にあると解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日 昭和42(あ)2277
- 登載
- 刑集 第22巻7号830頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法208条ノ2,暴力行為等処罰に関する法律1条
論点70第208条刑法
監禁罪の手段として行なわれた暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条〈国内犯〉所定の暴行脅迫と同法違反の罪の成否
裁判要旨監禁罪の手段として行なわれた暴力行為等処罰ニ関スル法律
第一条〈国内犯〉所定の暴行脅迫は監禁罪に吸収され、それと別個に同法違反の罪を構成するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年4月27日 昭和41(あ)3101
- 登載
- 刑集 第21巻3号470頁
- 参照法条
- 暴力行為等処罰ニ関スル法律1条,刑法208条,刑法220条,刑法222条,刑法54条1項
論点71第208条刑法
現行犯人としての逮捕が適法であると認められた事例。
裁判要旨一 本件逮捕が適法である旨の原判断の結論は正当である。
二 (原審判断の要旨)被告人は現行犯人として逮捕されたものではなく、任意同行したものであると主張するが、浅草警察署勤務の甲乙外二名の警察官は警察庁本部からのaのクラブ「A」で若い者が乱暴しているから急行せよとの指令により右クラブに行き、入口で経営者より被告人がグラス二個を床に投げつけ損壊したとの説明を受けた様、乙外一名の巡査が店内地下室にはいつたところ、被告人の坐つているテーブルの上にビール瓶が横に倒れており、グラスの破片は既に取片づけてあつたけれども附近にビールが散乱しており、従業員が被告人を指示して被告人が乱暴した旨を述べたので、右両巡査は被告人に対し「コツプを投げたことで本署に行つて貰いたい」と告げたところ被告人は「俺が何を悪いことをした、逮捕するなら令状を持つて来い」等の暴言をはいてなかなか応ぜず、漸く甲巡査部長の説得によつて同行に応じたのであるが、「ああ警察に行つてやるよ」等といつて相変らず不遜の態度を示し、自動車に乗る際も「お前も一緒に乗れ」といつて甲の袖を引いたりして、素直に同行に応じたものではなかつたことが認められるのであつて、右警察官が被告人に対し「逮捕する」との言葉を用いたかどうかについては必ずしも明確ではないが、被告人は警察官の強制によつてその要求は拒否し難くこれに応じたものであつて、決して被告人の意思にもとづき警察官と同道して警察に任意出頭することを承諾したものとは認められないから、警察官に逮捕されたというべきで、右逮捕は刑訴法第二一二条第二項第一号の要件を具備するものと認められる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年10月27日 昭和37(あ)2558
- 登載
- 集刑 第152号1131頁
- 参照法条
- 刑訴法212条,刑法95条1項,刑法208条
論点72第208条刑法
暴行を加えた直後の脅迫行為と罪数
裁判要旨犯人が他人に対し暴行を加えた後、さらに別個の害悪を告知し脅迫行為をした場合において、たとえ、右脅迫が暴行行為の直後同一場所でなされたものであつても、暴行罪の外に併合罪の関係にたつ脅迫罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年11月1日 昭和28(あ)5372
- 登載
- 集刑 第110号79頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法208条,刑法222条1項
論点73第208条刑法
一 銃砲等所持禁止令違反罪の公訴事実の同一性の有無
二 不法監禁中になされた暴行脅迫行為が別罪を構成する事例
裁判要旨一 同一被告人に対する二個の銃砲等所持禁止令違反の公訴事実において、その不法所持にかかる日本刀がいずれも別個のものであり、且つ、判示の如くその事実上の支配状態を別異にするときは、たとい不法所持の日時、場所が彼此近接しているとしても、その間に公訴事実の同一性は認められない。
二 暴行脅迫が不法監禁中になされたものであつても、不法監禁の状態を維持存続させるため、その手段としてなされたものでなく、全く別個の動機、原因からなされたものであるときは、右暴行脅迫の行為は、不法監禁罪に吸収されることなく、別罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年11月27日 昭和27(あ)5833
- 登載
- 刑集 第7巻11号2344頁
- 参照法条
- 憲法39条,刑訴法256条2項,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法337条1号,刑法220条1項,刑法208条,刑法222条,刑法54条1項前段,暴力行為等処罰に関する法律1条1項
論点74第208条刑法
数個の恐喝罪と暴行罪(懲役刑選撰)とを併合加重する場合の法令適用の判示方
裁判要旨数個の恐喝罪と一個の暴行罪(懲役刑選択)とを併合加重するにあたつては、何れの罪が最も重いかを明示説明しなくても、必ずしも違法でない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年10月2日 昭和26(あ)4561
- 登載
- 刑集 第6巻9号1100頁
- 参照法条
- 刑法249条,刑法208条,刑法45条,刑法47条,刑法10条,刑訴法335条
論点75第208条刑法
暴力行為等処罰に関する法律第一条一項〈国内犯〉にいう「多衆の威力を示して」にあたる事例
裁判要旨原判示第二の事実によれば、被告人A、Bら一〇名に近い町方青年が、仲間の者を殴つたのは誰かなどと叫び、吊つてある蚊帳を切り落しなどしたうえ、Cを殴打したのであるし、また同第四の事実によれば、被告人Bら一〇名に近い者が、町方青年側として参集し、Dほか二名に対し出刃庖丁を出して指を切れなどとせまり、かつ右Dを殴打したのである。従つてこれらの事実は、暴力行為等処罰に関する法律
第一条第一項〈国内犯〉にいう「多衆の威力を示して」刑法
第二〇八条〈暴行〉、
第二二二条〈脅迫〉などの罪を犯した場合にあたるものといわなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年3月13日 昭和25(れ)1648
- 登載
- 集刑 第41号513頁
- 参照法条
- 暴力行為等処罰に関する法律1条1項,刑法208条,刑法222条
論点76第208条刑法
刑法208条の2第1項〈凶器準備集合及び結集〉前段の危険運転致死傷罪の正犯者である職場の後輩がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しながら,車両の発進を了解し,同乗して運転を黙認し続けた行為について,同罪の幇助罪が成立するとされた事例
裁判要旨刑法
208条の2第1項〈凶器準備集合及び結集〉前段の危険運転致死傷罪の正犯者において,自動車を運転するに当たって,職場の先輩で同乗している被告人両名の意向を確認し,了解を得られたことが重要な契機となっている一方,被告人両名において,正犯者がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しながら,同車発進に了解を与え,その運転を制止することなくそのまま同車に同乗してこれを黙認し続け,正犯者が危険運転致死傷の犯行に及んだという本件事実関係(判文参照)の下では,被告人両名の行為について,同罪の幇助罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成25年4月15日 平成23(あ)2249
- 登載
- 刑集 第67巻4号437頁
- 参照法条
- 刑法62条1項,刑法208条の2第1項前段
論点77第208条刑法
交差点手前で信号待ちをしていた先行車両の後方から赤色信号を殊更に無視し対向車線に進出し時速約20kmで普通乗用自動車を運転して同交差点に進入しようとしたため自車を右方道路から左折進行してきた自動車に衝突させ同車運転者らを負傷させた行為が刑法208条の2第2項後段の危険運転致傷罪に当たるとされた事例
裁判要旨交差点手前で信号待ちをしていた先行車両の後方から,赤色信号を殊更に無視し,対向車線に進出し時速約20kmで普通乗用自動車を運転して同交差点に進入しようとしたため,自車を右方道路から青色信号に従い左折して対向進行してきた普通貨物自動車に同交差点入口手前において衝突させ,同車運転者らを負傷させた行為は,刑法
208条の2第2項〈凶器準備集合及び結集〉後段の危険運転致傷罪に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年3月14日 平成17(あ)2035
- 登載
- 刑集 第60巻3号363頁
- 参照法条
- 刑法208条の2第2項後段