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罪/過失傷害の罪

過失傷害の罪の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

この章は、故意ではなく不注意(過失)によって人を傷つけたり死亡させたりした場合の刑事責任を定めています。単なる不注意か、業務上の不注意・重大な過失かによって、罰則の重さと告訴の要否が変わります。事故対応や社内処分を検討する際に、どの条文が関係するかを確認する基準になります。

過失傷害の罪
条文行為結果罰則告訴
209条(過失傷害)不注意で人を傷つける傷害30万円以下の罰金・科料告訴が必要
210条(過失致死)不注意で人を死亡させる死亡50万円以下の罰金告訴不要
211条(業務上過失致死傷等)業務上の不注意/重大な過失死傷5年以下拘禁刑・100万円以下罰金告訴不要
  • 209条の罪は告訴がなければ起訴できない(告訴が必要)。210条・211条には告訴に関する定めはない。
  • 211条は「業務上必要な注意を怠り」場合と「重大な過失」の場合のどちらでも同じ罰則が科される。
  • 211条の罰則は拘禁刑と罰金のどちらかが科される(選択刑)。
1

過失傷害の罪

過失傷害の罪について、条文は何を定めているか。

第209条過失傷害不注意でけがをさせた場合の罰則2項判例なし
  • 30万円以下の罰金または科料が科される
  • 被害者の告訴がなければ起訴されない
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第210条過失致死不注意で死亡させた場合の罰則1項判例 5件
  • 50万円以下の罰金が科される
  • 告訴が必要とする定めはない
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第211条業務上過失致死傷等仕事中の不注意で死傷させた場合の罰則1項判例 37件
  • 5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される
  • 重大な過失による死傷も同じ罰則が適用される
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第210条刑法

神社の行事に参集した群集の雑踏により多数の死者を生じた事故についてその行事を企画施行した当該神社の職員に右事故の発生を予見しこれを未然に防止するための措置をとるべき注意義務があるとされた事例

裁判要旨大みそかから元旦にかけて特定の神社(新潟県西蒲原郡a村所在A神社)に参拝することが二年まいりと呼ばれ、これがその地方では神社の著名な行事とされていて、例年多数の参拝者が境内に参集する慣わしになつている場合において、当該神社の職員は、右二年まいりの行事を企画施行し、その行事の一環として、午前零時の花火を合図に拝殿前の広場で餅まきをする等の催しを行なうにあたつては、参拝や餅まきの餅を拾うために多数の群集が右拝殿前の広場、これに通ずる門およびその門前の石段付近に集まり、その雑踏によつて転倒者が続出し、多数の死者を生ずるような事故の発生するおそれのあることを予見し、これを未然に防止するため、あらかじめ相当数の警備員を配置し、参拝者の一方交通を行なう等雑踏整理の手段を講ずるとともに、右餅まきの時刻、場所、方法等を配慮し、その終了後参拝者を安全に分散退出させるべく誘導する等の措置をとるべき注意義務がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年5月25日 昭和39(あ)2016
登載
刑集 第21巻4号584頁
参照法条
刑法210条
論点2第210条刑法

刑法第二〇五条〈傷害致死〉は憲法第一四条に違反するか。

裁判要旨故意犯である刑法第二〇五条に該当する者が、過失犯である同法第二一〇条、第二一一条に該当する者よりも重く処罰されるのは、故意による傷害致死行為という行為の属性に由来するのであつて、人によつて差別を設けたものではなく、人の地位、身分による区別ではないのであり、何人にも適用される法条なのである。従つて刑法第二〇五条〈傷害致死〉は憲法第一四条に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年2月22日 昭和37(あ)2451
登載
集刑 第146号419頁
参照法条
憲法14条,刑法205条,刑法210条,刑法211条
論点3第210条刑法

昏睡者に対する注意義務と過失致死の責任

裁判要旨第一審判決が一般通常人の注意を以つてすれば、当時被告人の夫Aが睡眠剤を嚥下し正常な感覚を失い昏睡状態となつて居たことを容易に認識し得べかりしにかゝわらず、被告人において適当な注意を払わず、夫の容態を確認せず且火気の適当措置を怠つて外出した点に過失責任を認定して失火と過失致死の責任を認めたのは正当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年6月24日 昭和25(あ)3133
登載
集刑 第65号321頁
参照法条
刑法210条,刑法116条
論点4第210条刑法

一 酩酊すると暴行する習癖のある注意義務
二 殺人の公訴事実中には過失致死の事実も含まれるか

裁判要旨一 本件被告人の如く、多量に飲酒するときは病的酩酊に陥り、因つて心神喪失状態において他人に犯罪の害悪を及ぼす危険ある素質を有する者は、居常右心神喪失の原因となる飲酒を抑止又は制限する等前示危険の発生を未然に防止するよう注意する義務あるものといわねばならない。しからば、たとえ原判決認定のように、本件殺人の所為は被告人の心身喪失時の所為であつたとしても、(イ)被告人にして既に前示のような己れの素質を自覚していたものであり且つ(ロ)本件事前の飲酒につき前示注意義務を怠つたがためであるとするならば、被告人は過失致死の罪責を免れ得ないものといわねばならない。
二 殺人の公訴事実中には過失致死の事実をも包含するものと解するを至当とすべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年1月17日 昭和25(れ)548
登載
刑集 第5巻1号20頁
参照法条
刑法199条,刑法210条,旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号
論点5第210条刑法

過失の主張と旧刑訴法第三六〇条第二項

裁判要旨殺人被告事件において、被告人が過失による傷害である旨の主張は、旧刑訴法第三六〇条第二項の主張にはあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和24年5月17日 昭和23(れ)2030
登載
刑集 第3巻6号729頁
参照法条
旧刑訴法360条2項,刑法199条,刑法210条,刑法410条20号
論点6第211条刑法

被害者側の落度が介在した場合につき因果関係が認められた事例

裁判要旨医師の資格のない柔道整復師が風邪の症状を訴える患者に対して誤つた治療法を繰り返し指示し、これに忠実に従つた患者が病状を悪化させて死亡するに至つた場合には、患者側に医師の診察治療を受けることなく右指示に従つた落度があつたとしても、右指示と患者の死亡との間には因果関係がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和63年5月11日 昭和61(あ)960
登載
刑集 第42巻5号807頁
参照法条
刑法第1編第7章,刑法211条
論点7第211条刑法

一 迅速な裁判の保障との関係で公訴提起の遅延がいまだ著しいとまでは認められないとされた事例
二 胎児に病変を発生させ出生後死亡させた場合における業務上過失致死罪の成否
三 刑訴法二五三条一項にいう「犯罪行為」の意義
四 被害者が受傷後期間を経て死亡した場合における業務上過失致死罪の公訴時効
五 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合の公訴時効

裁判要旨一 公訴提起が事件発生から相当の長年月を経過した後になされたとしても、複雑な過程を経て発生した未曾有の公害事犯であつてその解明に格別の困難があつたこと等の特殊事情があるときは、迅速な裁判の保障との関係において、いまだ公訴提起の遅延が著しいとまではいえない。
二 業務上の過失により、胎児に病変を発生させ、これに起因して出生後その人を死亡させた場合も、人である母体の一部に病変を発生させて人を死に致したものとして、業務上過失致死罪が成立する。
三 刑訴法二五三条一項にいう「犯罪行為」には、刑法各本条所定の結果も含まれる。
四 業務上過失致死罪の公訴時効は、被害者の受傷から死亡までの間に業務上過失傷害罪の公訴時効期間が経過したか否かにかかわらず、その死亡の時点から進行する。
五 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合につき公訴時効完成の有無を判定するに当たつては、その全部を一体として観察すべきであり、最終の結果が生じたときから起算して同罪の公訴時効期間が経過していない以上、その全体について公訴時効は未完成である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年2月29日 昭和57(あ)1555
登載
刑集 第42巻2号314頁
参照法条
憲法37条1項,刑法211条前段(昭和43年法律61号による改正前のもの),刑法54条1項,刑訴法250条,刑訴法253条1項
論点8第211条刑法

一 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律三条一項〈国民の国外犯〉にいう「工場又は事業場における事業活動に伴つて人の健康を害する物質を排出し」の意義
二 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律三条の罪が成立しないとされた事例
三 工場において原料の液体塩素の受入れ作業に従事していた未熟練技術員が過失により塩素ガスを放出させて起した事故につき右技術員を受入れ担当の班に配置した製造課長と班の責任者にも業務上過失傷害罪が成立するとされた事例

裁判要旨一 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律三条一項〈国民の国外犯〉にいう「工場又は事業場における事業活動に伴つて人の健康を害する物質を排出し」とは、工場又は事業場における事業活動の一環として行われる廃棄物その他の物質の排出の過程で、人の健康を害する物質を工場又は事業場の外に何人にも管理されない状態において出すことをいい、事業活動の一環として行われる排出とみられる面を有しない他の事業活動中に、過失によりたまたま人の健康を害する物質を工場又は事業場の外に放出するに至らせたとしても、同法三条の罪には当たらない。
二 工場において、タンクローリーで運搬されてきた液体塩素を貯蔵タンクに受け入れるに際し、その作業に従事していた未熟練技術員が右タンクの受入れバルブを閉めようとして誤つてパージバルブを開け、大量の塩素ガスを大気中に放出させて付近住民に傷害を負わせた事故については、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律三条の罪は成立しない。
三 タンクローリーで運搬されてきた液体塩素を工場の貯蔵タンクに受け入れる作業に従事中の未熟練技術員が単独で受入れバルブを閉めようとし、一緒に受入れ作業に従事中の熟練技術員がこれを了承したため、未熟練技術員が誤つてパージバルブを開け、大量の塩素ガスを大気中に放出させて付近住民等に傷害を負わせた事故については、未熟練技術員を配置した製造課長と班の責任者にも、事前に双方の技術員に対し、未熟練技術員が単独でバルブ操作をしないよう留意すべき旨の安全教育を行い、少なくとも配置の際にその旨の指示を行うべき注意義務を怠つて、未熟練技術員を配置した過失があり、業務上過失傷害罪が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和63年10月27日 昭和59(あ)238
登載
刑集 第42巻8号1109頁
参照法条
刑法211条,人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律3条
論点9第211条刑法

自動車運転者に注意義務を課す根拠となる具体的事実が訴因変更手続を経て撤回された場合につき右事実を認定することに違法はないとされた事例

裁判要旨自動車運転者に速度調節義務を課す根拠となる路面の滑りやすい原因と程度に関する具体的事実として、石灰の粉塵の路面への堆積凝固という事実が、公訴事実中に記載され、その後訴因変更手続を経て撤回されたとしても、被告人の防禦権が侵害されたとは認められない本件においては、右事実を認定することに違法はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和63年10月24日 昭和62(あ)1051
登載
刑集 第42巻8号1079頁
参照法条
刑法211条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点10第211条刑法

判例違反の主張が理由なし及び事案異とされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和61年12月19日 昭和61(あ)1037
登載
集刑 第244号597頁
参照法条
刑法211条
論点11第211条刑法

大型貨物自動車の運転者につき自車を避譲して走行中の自転車の追抜きを差し控えるべき注意義務があるとされた事例

裁判要旨狭隘な道路を進行する大型貨物自動車の運転者としては、前方を走行中の自転車が自車の警笛に応じて道路端に避譲して走行した場合であつても、その自転車はブロツク塀に接する安全走行に適しない有蓋側溝上を走行しており、運転者が老齢であつたなどの本件状況(判文参照)の下においては、自転車転倒の危険を予測して追抜きを差し控えるべき業務上の注意義務がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年4月30日 昭和59(あ)220
登載
刑集 第39巻3号186頁
参照法条
刑法211条
論点12第211条刑法

一 刑法一一七条の二〈業務上失火等〉の業務の意義
二 人の生命・身体の危険を防止することを義務内容とする業務と刑法二一一条の業務
三 易燃物の管理責任者につき業務上失火罪及び業務上過失致死罪が成立するとされた事例

裁判要旨一 刑法一一七条の二〈業務上失火等〉にいう業務とは、職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位をいう。
二 刑法二一一条〈業務上過失致死傷等〉にいう業務には、人の生命・身体の危険を防止することを義務内容とする業務も含まれる。
三 ウレタンフオームの加工販売業を営む会社の工場部門の責任者として、易燃物であるウレタンフオームを管理するうえで当然に伴う火災防止の職務に従事していた者が、火を失し、死者を伴う火災を発生させた場合は、業務上失火罪及び業務上過失致死罪が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年10月21日 昭和58(あ)829
登載
刑集 第39巻6号362頁
参照法条
刑法116条1項,刑法117条ノ2,刑法211条
論点13第211条刑法

いわゆる雫石全日空機自衛隊機衝突事件(反対意見がある)

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年9月22日 昭和53(あ)1333
登載
集刑 第233号1頁
参照法条
刑法211条前,航空法(昭49法87による改正前)142条2項
論点14第211条刑法

一 被害者の承諾と傷害罪の成否
二 被害者の承諾が傷害行為の違法性を阻却しないとされた事例

裁判要旨一 被害者が身体傷害を承諾した場合に傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべきである。
二 過失による自動車衝突事故であるかのように装い保険金を騙取する目的で、被害者の承諾を得てその者に故意に自己の運転する自動車を衝突させて傷害を負わせた場合には、右承諾は、当該傷害行為の違法性を阻却するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年11月13日 昭和55(し)91
登載
刑集 第34巻6号396頁
参照法条
刑法35条,刑法204条,刑法211条
論点15第211条刑法

昭和四三年法律第六一号による改正刑法施行前の業務上過失傷害の所為につき懲役刑を言渡した判決と破棄

裁判要旨昭和四三年法律第六一号による改正刑法施行前の業務上過失傷害の所為につき懲役刑を言渡した判決は、刑法六条〈刑の変更〉に違反したものであり、被告人に不利益であるから、破棄すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年4月16日 昭和45(さ)1
登載
集刑 第176号203頁
参照法条
刑法の一部を改正する法律(昭和43年法律61号),刑法6条,刑法10条,刑法211条,刑訴法458条
論点16第211条刑法

業務上過失致死被告事件において被害者を事前に発見することが不可能であつたという主張と刑訴法三三五条二項

裁判要旨業務上過失致死被告事件において、被害者の自転車が被告人の進路前方に停車中の大型貨物自動車の背後から突如飛び出して来たため、被告人にはこれを事前に発見することが不可能であつたという主張は、刑訴法三三五条二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」の主張にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年2月13日 昭和44(あ)1931
登載
刑集 第24巻2号17頁
参照法条
刑訴法335条2項,刑法211条
論点17第211条刑法

業務上過失傷害罪の判示として理由不備の違法があるとされた事例

裁判要旨原判決の判示によると、被告人は時速約一〇粁で北から本件交差点に進入し、一方被害者は、時速二〇ないし三〇粁で東から右交差点に進入してまもなく、北から進入してくる被告人の車を約三〇米以上の距離をへだてて認めながら、そのままの速度で進行した事実が認められるというのであり、被害者の速度は被告人の速度の少なくとも二倍であるから、特段の事情のないかぎり、被害者の車は被告人の車が本件衝突地点に至る前にその前を通過できたはずであつて、本件衝突は起こり得ないのにかかわらず、原判決は、何ら特段の事情のあつたことを判示しておらず、右の事実関係のもとにおいては、原判示の被告人の過失のため本件衝突が発生したとすることは困難であり、判決に影響を及ぼすべき理由不備、理由のくいちがいがある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年3月20日 昭和43(あ)190
登載
集刑 第170号837頁
参照法条
刑法211条,刑訴法378条4号
論点18第211条刑法

訴因の変更を促しまたはこれを命じないことが審理不尽になるとされた事例

裁判要旨裁判所は、原則として、自らすすんで検察官に対し、訴因変更手続を促しまたはこれを命ずる義務はないが、本件のように、証拠上、起訴状に記載された殺人の訴因については無罪とするほかなくても、これを重過失致死という相当重大な罪の訴因に変更すれば有罪であることが明らかな場合には、例外的に、訴因変更を促しまたはこれを命ずる義務があり、これをしないで殺人の訴因につきただちに無罪の判決をするのは、審理不尽の違法があるものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年11月26日 昭和42(あ)1192
登載
刑集 第22巻12号1352頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法397条1項,刑訴法379条,刑法199条,刑法211条
論点19第211条刑法

必要的弁護事件でない業務上過失致死罪が併合罪の関係において処断刑が長期三年を超える場合必要的弁護事件となるか。

裁判要旨業務上過失致死罪の法定刑は、「三年以下の禁錮又は千円以下の罰金」(刑法第二一一条〈業務上過失致死傷等〉前段)であるから、本件被告人の二個の業務上過失致死罪は、それぞれ刑訴法第二八九条にいわゆる必要的弁護事件ではないものというべく、所論の如く、両者が併合罪の関係にあつてその処断刑が長期三年を超えることとなるからといつて、本件の如き場合には処断刑を基準として必要的弁護事件であるか否かを決すべきものと解すべきではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年7月10日 昭和39(あ)1879
登載
集刑 第156号129頁
参照法条
刑法211条前段,刑訴法289条
論点20第211条刑法

第二審における訴因変更手続の要否。

裁判要旨殺人罪として起訴された事案について、第一審判決が殺人予備と重過失致死で処断し、第二審がこれを破棄自判するに当り、訴因変更手続を経ることなく殺人罪として処断したとしても、第一審において訴因変更手続がとられた形跡が存しないときは、第二審は本来の訴因そのものにつき審判をしたに止まり、訴因変更手続要否の問題が生ずる余地は存しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月24日 昭和38(あ)386
登載
集刑 第152号545頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法404条,刑訴規則209条,刑法199条,刑法201条,刑法211条後段
論点21第211条刑法

原判決が、いわゆる「ひき逃げ」事件に関し、既になされた高等裁判所の判例および原判決後になされた右判例と同趣旨の最高裁判所の判例と相反する判断をしている場合と破棄理由。

裁判要旨車両等の運転者等が、交通事故を起しながらいわゆる「ひき逃げ」をした場合には、道路交通法第七二条第一項前段の救護等の義務違反の罪と同項後段の報告義務違反の罪とが成立し、両者は併合罪の関係に立つものと解すべきことは、当裁判所大法廷判決(昭和三七年(あ)第五〇二号、同三八年四月一七日宣告)の示すところである。してみると、これと同趣旨に出でた論旨引用の各高等裁判所の判例は正当として支持さるべきで、論旨は理由があり(原判決言渡当時においては、右大法廷判決はまだなされていなかつたのであるから、本件の場合が刑訴法第四〇五条第三号後段に当ることを妨げるものではない。)、原判決は刑訴法第四〇五条第三号、第四一〇条第一項本文により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年7月19日 昭和37(あ)1918
登載
集刑 第147号851頁
参照法条
道路交通法72条,道路交通法117条,道路交通法119条10号,刑法211条前段,刑法45条,刑訴法405条3号,刑訴法410条1項
論点22第211条刑法

重過失致死罪の成立を認めた事例。―放火後の注意義務

裁判要旨原判決の是認した第一審判決は、(註。被告人は材料置場に置いてある油に放火するときは、A方及びその附近の家屋に延焼し、同家屋居住者の生命身体に危害を及ぼすに至る虞のあることは少し注意すれば容易に予見できたのに拘らず……憤激の余り漫然所携のマツチで右油槽内のシンナ、白灯油等に放火した。)被告人は燃えている物に蒲団、砂をかける等臨機の措置をとつて火勢が拡大し被害が他に及ばないよう沈着適切な行動をとるとともに、当時二階に寝ていたBに対し可及的速かに火災の急を告げて同女を屋外に避難させ、或いは他人に救助を頼む等あらゆる方法をこうじ、もつてBの救助に最善の努力を傾ける注意義務があつた旨を判示している。そして被告人の右注意義務は、原判示の是認した第一審判決の確定した事実関係の下においては、一般通常人の注意を払うことにより、よく罪となるべき事実を認識しうべき程度の注意義務と解するを相当とし、また、その注意義務を果すことが期待不可能であつたとは認められない。しからば、被告人が右の注意を怠り、よつてBを死に致した被告人の本件行為を過失犯をもつて問擬したことは正当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月1日 昭和36(あ)465
登載
集刑 第141号377頁
参照法条
刑法38条1項,刑法110条1項,刑法211条後段
論点23第211条刑法

因果関係が存在すると認められる事例。

裁判要旨被告人甲(門司駅門司操車場下り運転室の運転係)が、下り旅客列車の通貨する前に第三信号機と線路との状況に注意する義務を怠つた過失と被告人乙(同駅甲て子取扱所の信号係)が右下り旅客列車が通過する前に下り貨物列車を通過せしめるために反位に開通した転てつ器を、通過後速かに正位に復さなければならない義務を怠つた過失とが一因をなして、右旅客列車を東小倉駅下り貨物二番線に停車中の右貨物列車の後部車輛に追突させ、その衝撃により人を傷害する事故が発生した以上、たとえ右事故が自動閉塞進行機の受け持つ機能区間外で発生したとしても、被告人らの右過失と事故との間に因果関係が存在する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年9月26日 昭和33(あ)1462
登載
刑集 第15巻8号1511頁
参照法条
刑法211条,刑法129条
論点24第211条刑法

一個の道路交通取締法違反(居眠り運転)行為と二個の刑法第二一一条にあたる行為とがそれぞれ想像的競合犯の関係にある場合とその擬律

裁判要旨一個の道路交通取締法違反(居眠り運転)行為と二個の刑法第二一一条にあたる行為とがそれぞれ想像的競合犯の関係にある本件の場合には、刑法第五四条第一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段第一〇条〈刑の軽重〉を適用し一罪としてその最も重い刑に従い処断すべきものである
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年4月10日 昭和32(あ)2377
登載
刑集 第12巻5号877頁
参照法条
刑法10条,刑法54条1項前段,刑法211条,道路交通取締法7条1項,道路交通取締法2項3号,道路交通取締法28条1号
論点25第211条刑法

一 道路交通取締法違反(無謀操縦)と業務上過失致死の各事実が公訴事実の同一性を欠く一事例
二 道路交通取締法違反(無謀操縦)罪と業務上過失致死罪との間に牽連関係乃至一所為数法の関係が存しない場合

裁判要旨一 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の事実と業務上過失致死の事実とは、公訴事実としては別個の事実であつて、公訴事実の同一性を認むべきではない。
二 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の罪と業務上過失致死罪とは別個独立の犯罪であつて、右両者の間には牽連関係ないし一所為数法の関係は存しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年3月17日 昭和30(あ)2676
登載
刑集 第12巻4号581頁
参照法条
道路交通取締法28条1号,道路交通取締法7条1項,道路交通取締法2項,刑法54条1項,刑法211条,刑訴法256条,刑訴法312条1項
論点26第211条刑法

一 刑法第一二九条第二項〈過失往来危険〉第二一一条〈業務上過失致死傷等〉の業務の意義
二 上司の許可を得ないで列車を運転した場合は業務となるか

裁判要旨一 刑法第一二九条第二項〈過失往来危険〉、第二一一条〈業務上過失致死傷等〉にいわゆる業務とは、各人が社会生活上の地位に継続して行う事務のことであつて、本務たると兼務たるとを問わない。
二 電車の運転手兼乗務車掌であつて、乗務車掌の業務に従事している者が、上司の許可を得ないで列車の運転をしても、その運転行為をもつて業務上の行為でないとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年6月7日 昭和26(れ)146
登載
刑集 第5巻7号1236頁
参照法条
刑法129条2項,刑法211条
論点27第211条刑法

業務上過失致死事件につき被告人車が轢過車両であると断定することに合理的な疑いが残るとして破棄無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年4月21日 昭和59(あ)626
登載
集刑 第251号697頁
参照法条
刑法211条,刑訴法411条3号
論点28第211条刑法

運転者が認識していない後部荷台の同乗者を被害者とする業務上過失致死罪が成立するとされた事例

裁判要旨貨物自動車の運転者が制限最高速度の二倍を超える高速度で走行中、ハンドル操作を誤り自車を信号柱に激突させて後部荷台の同乗者を死亡させた場合には、たとえ運転者において同乗の事実を認識していなかつたとしても、業務上過失致死罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年3月14日 昭和61(あ)193
登載
刑集 第43巻3号262頁
参照法条
刑法211条
論点29第211条刑法

夜間無灯火で自車の進行車線を逆行して来た対向車と正面衝突した事故につき自動車運転者の過失が否定された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成4年7月10日 平成3(あ)491
登載
集刑 第260号311頁
参照法条
刑法211条
論点30第211条刑法

夜間潜水の講習指導中受講生ができ死した事故につき指導補助者及び受講生の不適切な行動が介在した場合でも指導者の行為と受講生の死亡との間に因果関係があるとされた事例

裁判要旨海中における夜間潜水の講習指導中、指導者が不用意に受講生らのそばから離れて同人らを見失い、受講生が圧縮空気タンク内の空気を使い果たしてでき死するに至った事故について、右受講生は潜水経験に乏しく技術が未熟であり、指導補助者もその経験が極めて浅かったことなどの本件の事実関係(判文参照)の下においては、指導補助者及び受講生の不適切な行動が介在したとしても、指導者の右行為と受講生と死亡との間には因果関係がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成4年12月17日 平成4(あ)383
登載
刑集 第46巻9号683頁
参照法条
刑法第1編第7章,刑法211条(平成3年法律31号による改正前のもの)
論点31第211条刑法

デパートの火災事故につきこれを経営する会社の取締役人事部長並びに売場課長及び営繕課員に業務上過失致死傷罪が成立しないとされた事例

裁判要旨営業中のデパート内の二階から三階への階段の上がり口付近で火災が発生し、三階店内に延焼して各階に燃え広がり、防火管理体制が不備であったため、店内の多数の者が死傷した火災事故について、(一)デパートを経営する会社の取締役人事部長には、防火管理につき包括的な権限と履行義務を有していた代表取締役が適正な防火管理業務を遂行する能力を欠くなど右業務を遂行することができない特別の事情がないこと、代表取締役から防火管理者に選任されたこともデパートの維持及び管理につき委任を受けたこともなく、人事部の所管業務の中に防火管理業務は含まれていなかったことなどの本件の事実関係(判文参照)の下においては、取締役会の構成員の一員として取締役会の決議を促して消防計画の作成等をすべき注意義務や、代表取締役に対し防火管理上の注意義務を履行するよう意見を具申すべき注意義務があるとはいえず、(二)三階の売場課長には、階段の火災を見てから三階店内に延焼するまでの時間がわずかであり、この間従業員に消火の措置を命じ、自らも延焼防止の行動を取るなど、できる限りの努力をしたが、火炎が急激な勢いで店内に吹き込んできたため以後の応急消火、延焼防止が不可能となったことなどの本件の事実関係(判文参照)の下においては、三階店内に延焼する前に階段の防火シャッターを閉鎖する措置を採らなかった過失があるとはいえず、(三)営繕課の課員には、同人をデパートの防火管理者とする選任届が提出されていたとしても、消防計画作成等の防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的地位にはなく、右業務を遂行するための具体的な権限を与えられてもおらず、右業務を遂行するためには代表取締役らの職務権限の発動を求めるほかはなかった以上、消防計画を作成してこれに基づく避難誘導等の訓練を実施すべき注意義務があるとはいえず、いずれも業務上過失致死傷罪は成立しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成3年11月14日 昭和63(あ)1064
登載
刑集 第45巻8号221頁
参照法条
刑法211条
論点32第211条刑法

業務上過失致死事件につき禁錮10月の実刑が破棄されて執行猶予が付された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年5月11日 平成1(あ)1105
登載
集刑 第255号91頁
参照法条
刑訴法411条,刑法211条
論点33第211条刑法

デパートビルの火災事故においてデパートの管理課長並びにビル内のキャバレーの支配人及び代表取締役に業務上過失致死傷罪が成立するとされた事例

裁判要旨閉店後工事が行われていたデパートビルの三階から火災が発生し、多量の煙が七階で営業中のキャバレーの店内に流入したため、多数の死傷者が生じた火災事故において、デパートの管理課長には、防火管理者として、三階の防火区画シャッター等を可能な範囲で閉鎖し、保安係員等を工事に立ち会わせ、出火に際して直ちにキャバレー側に火災発生を連絡させるなどの体制を採るべき注意義務を怠った過失があり、キャバレーの支配人には、防火管理者として、階下において火災が発生した場合、適切に客等を避難誘導できるように平素から避難誘導訓練を実施しておくべき注意義務を怠った過失があり、キャバレーを経営する会社の代表取締役には、管理権原者として、防火管理者が防火管理業務を適切に実施しているかどうかを具体的に監督すべき注意義務を怠った過失があり、それぞれ業務上過失致死傷罪が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成2年11月29日 昭和62(あ)1480
登載
刑集 第44巻8号871頁
参照法条
刑法211条
論点34第211条刑法

ホテルの火災事故においてホテル経営者に業務上過失致死傷罪が成立するとされた事例

裁判要旨ホテルで火災が発生し、火煙の流入拡大を防止する防火戸・防火区画が設置されていなかったため火煙が短時間に建物内に充満し、従業員による避難誘導が全くなかったことと相まって、相当数の宿泊客等が死傷した火災事故において、ホテルの経営管理業務を統括掌理する最高の権限を有し、ホテルの建物に対する防火防災の管理業務を遂行すべき立場にあった者には、防火戸・防火区画を設置するとともに、消防計画を作成してこれに基づく避難誘導訓練を実施すべき注意義務を怠った過失があり、業務上過失致死傷罪が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成2年11月16日 昭和62(あ)519
登載
刑集 第44巻8号744頁
参照法条
刑法211条
論点35第211条刑法

花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警察署副署長に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯は成立しないとされた事例

裁判要旨花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警備計画策定の第一次的責任者ないし現地警備本部の指揮官という立場にあった警察署地域官と,同署副署長ないし署警備本部の警備副本部長として同署署長を補佐する立場にあった被告人とでは,分担する役割や事故発生の防止のために要求され得る行為が基本的に異なっていたなどの本件事実関係(判文参照)の下では,事故を回避するために両者が負うべき具体的注意義務が共同のものであったということはできず,被告人に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯は成立しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年7月12日 平成26(あ)747
登載
刑集 第70巻6号411頁
参照法条
刑法60条,刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段,刑訴法254条2項,刑訴法337条4号,刑訴法(平成16年法律第156号による改正前のもの)250条4号
論点36第211条刑法

高速道路上に自車及び他人が運転する自動車を停止させた過失行為と自車が走り去った後に上記自動車に後続車が追突した交通事故により生じた死傷との間に因果関係があるとされた事例

裁判要旨甲が,乙の運転態度に文句を言い謝罪させるため,夜明け前の暗い高速道路の第3通行帯上に自車及び乙が運転する自動車を停止させた過失行為は,自車が走り去ってから7,8分後まで乙がその場に乙車を停止させ続けたことなどの乙ら他人の行動等が介在して,乙車に後続車が追突する交通事故が発生した場合であっても,上記行動等が甲の上記過失行為及びこれと密接に関連してされた一連の暴行等に誘発されたものであったなど判示の事情の下においては,上記交通事故により生じた死傷との間に因果関係がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年10月19日 平成15(あ)1346
登載
刑集 第58巻7号645頁
参照法条
刑法第1編第7章 犯罪の不成立及び刑の減免,刑法211条1項
論点37第211条刑法

業務上過失傷害事件について,第1審裁判所には検察官に対し訴因変更を促し又はこれを命ずる義務があるとした原判決には,法令違反があるが,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年2月20日 平成12(あ)1242
登載
集刑 第283号335頁
参照法条
刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段,刑訴法312条1項,刑訴法312条2項,刑訴法411条
論点38第211条刑法

黄色点滅信号で交差点に進入した際,交差道路を暴走してきた車両と衝突し,業務上過失致死傷罪に問われた自動車運転者について,衝突の回避可能性に疑問があるとして無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年1月24日 平成14(あ)183
登載
集刑 第283号241頁
参照法条
刑法211条前段(平成13年法律第138号による改正前のもの)
論点39第211条刑法

トンネル型水路内に周辺の河川からあふれ出た水が流れ込むのを防止する目的で設置された構造物の管理担当者に同水路内にいた請負人の作業員らを退避させる措置を採るべき注意義務があるとされた事例

裁判要旨県が発注したトンネル型水路部分を含む水路建設工事につき,トンネル内に周辺の河川からあふれ出た水が流れ込むのを防止する目的で構造物が設置され,当該構造物が周辺の河川からあふれ出た水の水圧で決壊することを予見することができたなど判示の事実関係の下においては,当該構造物の管理を担当する県職員は,決壊による危険を回避するため,トンネル内で建設工事に従事するなどしていた請負人の作業員らを直ちに退避させる措置を採るべき注意義務がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成13年2月7日 平成10(あ)677
登載
刑集 第55巻1号1頁
参照法条
刑法211条前段
論点40第211条刑法

鉄道トンネル内における電力ケーブルの接続工事を施工した業者につきトンネル内での火災発生の予見可能性が認められた事例

裁判要旨鉄道トンネル内における電力ケーブル接続工事に際し、施工資格を有してその工事に当たった者が、ケーブルに特別高圧電流が流れる場合に発生する誘起電流を接地するための接地銅板を接続器に取り付けることを怠ったため、誘起電流が大地に流されずに、接続器本体の半導電層部に流れて炭化導電路を形成し、長期間にわたり同部分に集中して流れ続けたことにより、火災が発生したという事実関係の下においては、右の者は、炭化導電路の形成という経過を具体的に予見することができなかったとしても、火災発生を予見することができたものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年12月20日 平成10(あ)579
登載
刑集 第54巻9号1095頁
参照法条
刑法117条の2,刑法211条
論点41第211条刑法

津波による原子力発電所の事故につきこれを設置し運転していた電力会社の役員らに業務上過失致死傷罪が成立しないとした第1審判決を維持した原判決が是認された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和7年3月5日 令和5(あ)246
登載
―
参照法条
刑法(平成25年法律第86号による改正前のもの)211条1項前段、刑訴法411条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

刑法 第209条(過失傷害) 詳細ページ
(過失傷害)
第二百九条過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
刑法 第210条(過失致死) 詳細ページ
(過失致死)
第二百十条過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
刑法 第211条(業務上過失致死傷等) 詳細ページ
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。