論点1第235条刑法
ゴルフ場内のいわゆるロストボールが窃盗罪の客体になるとされた事例
裁判要旨ゴルフアーが誤つてゴルフ場内の人工池に打ち込み放置したいわゆるロストボールも、ゴルフ場側が早晩その回収、再利用を予定しているときは、ゴルフ場側の所有及び占有に係るものとして窃盗罪の客体になる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和62年4月10日 昭和61(あ)1514
- 登載
- 刑集 第41巻3号221頁
- 参照法条
- 刑法235条,民法239条
論点2第235条刑法
いわゆる一項強盗による強盗殺人未遂罪ではなく窃盗罪又は詐欺罪といわゆる二項強盗による強盗殺人未遂罪との包括一罪になるとされた事例
裁判要旨甲と乙が、当初は丙を殺害してその所持する覚せい剤を強取することを計画したが、その後計画を変更し、共謀の上、まず甲において、覚せい剤取引の斡旋にかこつけて丙をホテルの一室に呼び出し、別室に買主が待機しているかのように装つて、覚せい剤の売買の話をまとめるためには現物を買主に見せる必要がある旨申し向けて丙から覚せい剤を受け取り、これを持つて同ホテルから逃走した後、間もなく、乙が丙のいる部屋に赴き丙を拳銃で狙撃したが殺害の目的を遂げなかつたという本件事案(判文参照)においては、いわゆる一項強盗による強盗殺人未遂罪は成立しないが、窃盗罪又は詐欺罪といわゆる二項強盗による強盗殺人未遂罪との包括一罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年11月18日 昭和60(あ)1198
- 登載
- 刑集 第40巻7号523頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法235条,刑法236条,刑法238条,刑法240条,刑法243条,刑法246条1項
論点3第235条刑法
是非弁別能力を有する刑事未成年者を利用して窃盗を行つた者につき窃盗の間接正犯が成立するとされた事例
裁判要旨自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている一二歳の養女を利用して窃盗を行つたと認められる判示の事実関係のもとにおいては、たとえ同女が是非善悪の判断能力を有する者であつたとしても、右利用者につき窃盗の間接正犯が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年9月21日 昭和58(あ)537
- 登載
- 刑集 第37巻7号1070頁
- 参照法条
- 刑法41条,刑法60条,刑法61条,刑法235条
論点4第235条刑法
窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思があるとされた事例
裁判要旨他人所有の普通乗用自動車を、数時間にわたつて完全に自己の支配下に置く意図のもとに、駐車場から所有者に無断で乗り出し、その後約四時間余りの間乗り廻していたなどの事情があるときは、たとえ、使用後に元の場所に戻しておくつもりであつたとしても、右自動車に対する不正領得の意思があつたということができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和55年10月30日 昭和55(あ)1081
- 登載
- 刑集 第34巻5号357頁
- 参照法条
- 刑法235条
論点5第235条刑法
農業共済組合総代選挙の投票が旧刑法二編四章九節「公選ノ投票ヲ偽造スル罪」の各条に定める「公選ノ投票」にあたるとした原判決が支持された事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年7月7日 昭和52(あ)1954
- 登載
- 集刑 第211号637頁
- 参照法条
- 旧刑法235条,旧刑法236条,刑法施行法25条
論点6第235条刑法
森林窃盗罪と刑法二四二条
裁判要旨刑法
二四二条〈他人の占有等に係る自己の財物〉は、森林法一九七条の森林窃盗罪に適用されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和52年3月25日 昭和50(あ)2349
- 登載
- 刑集 第31巻2号96頁
- 参照法条
- 憲法31条,森林法(昭和49年法律39号による改正前のもの)197条,刑法235条,刑法242条
論点7第235条刑法
森林法一九七条にいう産物の意義
裁判要旨森林法一九七条にいう産物とは、無機物たると有機物たるとを問わず、森林から産出する一切の物をいい、岩石もこれに含まれる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年3月20日 昭和49(あ)1513
- 登載
- 刑集 第29巻3号53頁
- 参照法条
- 森林法197条,森林法198条,刑法235条
論点8第235条刑法
自動車の一時使用と不正領得の意思
裁判要旨被告人らが、他人所有の自動車を無断で窃盗品の運搬に使用したり、あるいは、その目的をもつて、相当長時間にわたつて乗り廻している場合には、使用後これを元の位置に戻しておいたにしても、不正領得の意思を肯認することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月17日 昭和42(あ)2478
- 登載
- 集刑 第168号691頁
- 参照法条
- 刑法235条
論点9第235条刑法
被告人が常習累犯として同一の機会に同一の被害者からまず現金千円をすり取りさらに現金七千円をすり取ろうとしたが逮捕されて遂げなかつた場合の擬律
裁判要旨被告人が、常習累犯として、同一の機会に同一の被害者からまず現金千円をすり取り、さらに現金七千円をすり取ろうとしたが逮捕されて遂げなかつた場合は、包括して窃盗既遂の一個の罪と認めるべきであるから、盗犯等の防止及び処分に関する法律
第三条〈国民の国外犯〉、刑法
第二三五条〈窃盗〉を適用すれば足り、その他に刑法第二四三条を適用すべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年6月18日 昭和42(あ)2843
- 登載
- 集刑 第167号623頁
- 参照法条
- 盗犯等の防止及び処分に関する法律3条,刑法235条,刑法243条
論点10第235条刑法
解体材料を領得する目的で建造物を解体しその材料を領得した場合と建造物損壊罪の成否
裁判要旨建造物の解体材料を領得する目的で、他人の工場を解体し、その材料を領得した場合には、窃盗罪のほかに、建造物損壊罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和43年5月24日 昭和42(あ)1530
- 登載
- 集刑 第167号365頁
- 参照法条
- 刑法260条,刑法235条
論点11第235条刑法
窃盗(すり)未遂被告事件につき証拠の信用性に疑いがあるとして原判決が破棄された事例
裁判要旨本件のように、被告人の捜査官に対するすり未遂事実の自白と、被害者である私服警官の供述の信用性に、多くの疑いがある(判文参照)のにかかわらず、原判決がその点に十分検討を加えることなくこれを信用し、第一審判決認定の窃盗未遂を是認したときは、刑訴法第四一一条第一号、第三号により、原判決を破棄すべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和42年10月3日 昭和41(あ)1788
- 登載
- 集刑 第164号633頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法243条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号
論点12第235条刑法
窃盗の着手があつたものと認められた事例。
裁判要旨犯人が被害者方店舗内において所携の懐中電燈により真暗な店内を照らし、電気器具類の積んであることが判つたが、なるべく金を盗りたいので店内煙草売場の方に行きかけた、との事実があれば、窃盗の着手行為があつたものと認めるのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年3月9日 昭和39(あ)2131
- 登載
- 刑集 第19巻2号69頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法43条
論点13第235条刑法
一 同一物について森林窃盗と窃盗の両罪の成立が認められた事例。
二 地番誤記の仮処分決定にもとづく執行と刑法第九六条の差押の標示。
裁判要旨一 森林窃盗の犯人が伐採して森林内に放置していた伐採木を、仮処分決定の執行により執行吏が占有した後、右犯人がそのことを知りながら、さらにこれを自己の占有に移した場合には、森林窃盗のほか刑法第二三五条の窃盗罪が成立する。
二 申請人の錯誤により、地番を誤記して申請した仮処分決定にもとづき、目的物についてなされた差押の標示は、その取消がなされるまでは刑法第九六条の差押の標示というを妨げない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月28日 昭和38(あ)1822
- 登載
- 刑集 第18巻7号443頁
- 参照法条
- 森林法197条,刑法235条,刑法96条,民訴法755条,民訴法756条
論点14第235条刑法
公訴事実の同一性ありと解された事例。―勾留状の被疑事実(窃盗)と起訴状の公訴事実(賍物故買)―
裁判要旨所論勾留状の被疑事実(窃盗)と所論起訴状の公訴事実(賍物故買)との間には、公訴事実の同一性ありと解するのが相当である。注、所論の
(勾留状の被疑事実)被疑者は昭和三五年八月一六日午前一一時頃より同日午後四時〇分頃迄の間東京都品川区abの)c番地通信員A方において同人所有に係る現金六千円及びトランジスターラジオ(時価金八千円相当)一台並びに振袖(鶴とささ梅模様)一点外衣類四一点時価合計金二七万壱千円相当を窃取したものである。
(起訴状の公訴事実)第一、被告人Bは昭和三五年八月一六日頃東京都品川区ae丁目c番地A方において同人所有のトランジスターラジオ一台及び女物袷着物四〇点(時価合計約二六万五千円相当)を窃取し。第二、被告人Cは昭和三五年八月一九日頃東京都墨田区d町g丁目f番地h荘内D方においてBより同人が前記第一記載の通り窃取した来た前記トランジスターラジオ一台及び女物袷着物等四〇点をそれが賍品である事を知り乍ら代金約三万円で買取り以つて賍物を故買したものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年7月25日 昭和36(あ)2837
- 登載
- 集刑 第147号863頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法256条2項,刑訴法64条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点15第235条刑法
占有離脱物と認められないとした事例
裁判要旨列車の終着駅で出口近くの座席に乗つていた被害者が網棚の上にシヨルダーバツグを置き忘れたまま下車し、同一車内の他の乗客はまだ全部降りきらないうちに、かねて乗客の持物を狙つて乗車していた犯人がこれを持ち去つたという事情の下においては右シヨルダーバツグは、未だ被害者の占有を離れたものではないと認むべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年5月18日 昭和35(あ)2073
- 登載
- 集刑 第142号217頁
- 参照法条
- 刑法254条,刑法235条
論点16第235条刑法
占有離脱物と認められない事例
裁判要旨被害者が電車道寄りの歩道端に在つた塵箱の上に革製シヨルダーバツク(カメラ等在中)とカメラの三脚とを置いて右塵箱から約七米離れた店舗内に入り表戸を開けたまま短時間(約五分間)店内にとどまつていたにすぎない場合には、右シヨルダーバツクは被害者の占有を離れたものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年3月16日 昭和35(あ)1041
- 登載
- 集刑 第141号511頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法254条
論点17第235条刑法
公訴事実に同一性の認められる事例
裁判要旨被告人は某日午後一一時四〇分頃千葉県印幡郡a町a某病院前付近の道路上において、甲の保管にかかるその兄所有の腕時計一個を窃取したとの事実(主たる訴因)と、被告人は前同日時場所において、甲と乙が喧嘩闘争をする際、甲がその場に脱ぎ捨てたジヤンバーのポケツトから路上にころがり出た右時計一個を拾得して甲のため占有保管し、その翌日乙をして右時計を甲に届けさせるために乙に預け、同人において甲のためこれを占有保管中、同日乙と共謀の上、右時計を同町a某質店に入質横領したとの事実(予備的追加訴因)の間には、公訴事実の同一性がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月15日 昭和36(あ)2447
- 登載
- 刑集 第16巻3号274頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑法235条,刑法252条1項
論点18第235条刑法
判例にいわゆる「真実の高度の蓋然性」があるとされた事例。
裁判要旨昭和三四年二月二四日午後八時三〇分から午後一〇時三〇分頃までの間に自転車一台が一関市a所在A病院玄関脇自転車置場において窃取されたこと、被告人は翌二五日午後三時四〇分頃および同日午後八時過頃自転車に乗つていたが、右午後八時過頃被告人が乗つていたものは右の被害品であること、右自転車は同月二六日同市b所在のB病院玄関口に置いてあつたこと、同病院には当時被告人の母Cが入院しており、被告人は同病院に寝泊りしていたことを根拠として第一審の窃盗の認定を支持するのは判例にいわゆる真実の高度の蓋然性があるということができる。
註。判例―昭和二三年八月五日第一小法廷判決昭和二三年(れ)第四四一号判例集二巻九号一一二三頁
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年9月8日 昭和35(あ)821
- 登載
- 集刑 第135号231頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法405条2号,刑法235条
論点19第235条刑法
窃盗罪を構成する事例
裁判要旨譲渡担保にとつた貨物自動車の所有権が債権者に帰属したとしても、債務者側において引き続き占有保管している右自動車を無断で債権者が運び去る所為は、窃盗罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年4月26日 昭和31(あ)3981
- 登載
- 刑集 第14巻6号748頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法242条
論点20第235条刑法
賍物の存在と賍物牙保罪の成否。
裁判要旨窃盗罪の実行を決意した者の依頼に応じて同人が将来窃取すべき物の売却を周旋しても、窃盗幇助罪の成立することあるは格別、賍物牙保財は成立しないが、その後同人が窃取してきた前記目的物について情を知りながら現実に売却の周旋をした場合には、賍物牙保罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年12月13日 昭和35(あ)1095
- 登載
- 刑集 第14巻13号1929頁
- 参照法条
- 刑法265条2項,刑法235条,刑法62条1項
論点21第235条刑法
一 公訴事実の同一性の認められる事例−業務上横領と窃盗
二 同一事実に対する別訴の提起が二重起訴にあたらないとされた事例
裁判要旨一 被告人は家畜商を営むものであるが、昭和二五年七月二五日頃家畜商Aより同人所有の馬四頭の売却方を依頼され、同月二九日うち二頭をBに代金六万円で売却しこれを保管中、同月三〇日新潟県西蒲原郡a町C旅館において、内金三万円を着服して横領をしたとの業務上横領の訴因と、被告人は昭和二五年七月三新潟県西蒲原郡b村大字cD方から同人が一時Aより預つていたAの父E所有の牝馬鹿毛および青色各一頭を窃盗したとの窃取の訴因とは、事実の同一性を失わない。
二 第一次第一審において、右業務上横領の訴因を右窃盗の訴因に変更し後者につき有罪を認定したところ、第二審において、右は事実の同一性を欠くとしてこれを破棄、移送したため、第二次第一審において、右破棄判決の判断に従い検察官から右窃盗の訴因と同一内容の別訴が提起され、併合審理された結果、窃盗につき有罪、業務上横領はその不可罰的事後行為であるとして無罪が言渡されたが、第二次第二審を経た上告審において、右破棄判決の判断は誤りで事実の同一性があり、第二次第一審における別訴の提起は実質において訴因変更の趣旨であると解される以上、二重起訴の違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年12月11日 昭和29(あ)2526
- 登載
- 刑集 第13巻13号3195頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴法338条3号,刑訴法337条,刑法253条,刑法235条
論点22第235条刑法
投票用紙の持出と不法領得の意思。
裁判要旨市議会議員選挙に際し、特定候補者に当選を得しめるため、後日その候補者の氏名を記入して投票中に混入し投票数を増加する目的をもつて、投票所管理者の保管する市選挙管理委員会所有にかかる市議会議員選挙の投票用紙をひそかに持ち出したときは、不法領得の意思なしというを得ず、窃盗罪を構成することは、当裁判所の判例とすることである。(昭和三一年(あ)第二七九七号同三三年四月一七日第一小法廷判決)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年7月2日 昭和31(あ)2118
- 登載
- 集刑 第126号657頁
- 参照法条
- 刑法235条,公職選挙法237条3項
論点23第235条刑法
掏摸現行犯逮捕手続において警察官等職務執行法第五条に違反しないと認められる場合
裁判要旨本件現行犯逮捕手続書によれば、所論司法警察員は挙動不審の被告人を看視中被告人が被害者のポケツトから品物を抜き取つたのを現認したので逮捕したというのであつて、抜き取りを現認する直前までは被告人が何らかの現行を行なおうとする様子を認めたという場合でないから、右警察員の措置は所論警察官等職務執行法五条に反するところもなく、本件逮捕手続には何らの違法もないことが明らかである
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年5月20日 昭和33(あ)113
- 登載
- 集刑 第125号437頁
- 参照法条
- 警察官等職務執行法5条,刑法235条,刑訴法212条,刑訴法213条
論点24第235条刑法
投票用紙の持出と不法領得の意思。
裁判要旨市議会議員選挙に際し、特定の候補者に当選を得しめるため、後日その候補者の氏名を記入して投票中に混入し投票数を増加する目的をもつて、投票所管理者の保管する市選挙管理委員会所有にかかる市議会議員選挙の投票用紙をひそかに持ち出したときは、不法領得の意思なしというを得ず、窃盗罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年4月17日 昭和31(あ)2797
- 登載
- 刑集 第12巻6号1079頁
- 参照法条
- 刑法235条,公職選挙法237条3項
論点25第235条刑法
森林窃盗と刑法第二四四条
裁判要旨森林法第一九七条に定める森林窃盗罪についても、いわゆる親族相盗の関係を定めた刑法第二四四条が適用される。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年2月4日 昭和31(あ)731
- 登載
- 刑集 第12巻2号109頁
- 参照法条
- 森林法197条,刑法244条,刑法235条
論点26第235条刑法
公訴事実の同一性を欠く一事例
裁判要旨「被告人は昭和二七年一二月三〇日頃の午後一一時半頃肩書自宅において、Aが川崎市aB化学工業株式会社工場内より同工場長某の管理にかかる銅製艶付板三二枚(価格九万六千円相当)を窃取するに際し、同人から例の銅板を会社から持出すからリヤカーを貸して呉れと頼まれてこれを貸与しよつて同人の右窃盗の犯行を容易ならしめて幇助した」との窃盗幇助の公訴事実と、「被告人は昭和二七年一二月三一日頃肩書自宅において、Aから、同人が他より窃取して来たものであることの情を知りながら、銅製艶付板三二枚(価格九万六千円相当)を金三万円で買受け賍物の故買をした」との賍物故買の事実との間には、公訴事実の同一性がない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年2月21日 昭和30(あ)212
- 登載
- 刑集 第12巻2号288頁
- 参照法条
- 刑訴法312条1項,刑法235条,刑法256条2項
論点27第235条刑法
一 飼犬が所有者の事実上の支配を及ぼし得ない地域に出遊した場合とその所持
二 法定刑(懲役刑)を同じくするが種類を異にする数個の犯罪を併合加重する場合と法令適用の判示方
裁判要旨一 飼犬が時に所有者の事実上の支配を及ぼし得べき地域外に出遊した場合でも、その習性として所有者の許に帰来するのを常としているものは、特段の事情の生じないかぎり、所有者の所持を離れたものということはできない。
二 窃盗、傷害(懲役刑選択)、恐喝の三罪につき併合罪の加重をする場合、いずれの罪を最も重いと認めて加重をしたかを明示しなくとも、必ずしも違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年7月16日 昭和30(あ)2908
- 登載
- 刑集 第11巻7号1829頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法47条,刑法10条,刑訴法335条1項
論点28第235条刑法
同一旅館内での窃盗と強盗とが併合罪となる事例
裁判要旨同一旅館内において宿泊客の所有物を窃取した後、女中を脅迫して主人の所有物件を強取した場合は、窃盗罪と強盗罪との併合罪になると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年3月5日 昭和31(あ)3863
- 登載
- 刑集 第11巻3号989頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法235条,刑法236条
論点29第235条刑法
恐喝罪が成立する一事例
裁判要旨二人共謀の上通行人に暴行、脅迫を加えて金員を要求し、因つて畏怖した被害者が所持の手提鞄中の財布(現金約二万三千円在中)から現金数百円を交付しようとして取り出した際犯人の一人が右財布ごとこれを奪い去つたときは窃盗罪ではなく恐喝一罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年3月5日 昭和30(あ)1379
- 登載
- 集刑 第118号43頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法249条
論点30第235条刑法
海中に取り落した物件について所持の認められる一事例
裁判要旨海中に取り落した物件については、落主の意にもとづきこれを引き揚げようとする者が、その落下場所の大体の位置を指示し、その引揚方を人に依頼した結果、その人が該物件をその附近で発見したときは、依頼者がその発見された事実を知らなくても、依頼者はその物件に対し所持即ち事実上の支配管理を有するものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年1月24日 昭和30(あ)4090
- 登載
- 刑集 第11巻1号270頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法254条
論点31第235条刑法
一 刑法上の占有の意義
二 占有離脱物と認められない一事例
裁判要旨一 刑法上の占有は人が物を実力的に支配する関係であつて、その支配の態様は物の形状その他の具体的事情によつて一様ではないが、必ずしも物の現実の所持または監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在するを以つて足りる。
二 被害者がバスを待つ間に写真機を身辺約三〇糎の個所に置き、行列の移動に連れて改札口の方に進んだが、改札口の手前約三・六六米の所に来たとき、写真機を置き忘れたことに気づき直ちに引き返したところ、既にその場から持ち去られていたもので行列が動き始めてからその場所に引き返すまでの時間は約五分、写真機を置いた場所と引き返した点との距離は約一九・五八米に過ぎないような場合は、未だ被害者の占有を離れたものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年11月8日 昭和32(あ)2125
- 登載
- 刑集 第11巻12号3061頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法254条
論点32第235条刑法
一罪の訴因を二罪と認定する場合と訴因の追加変更
裁判要旨一個の窃盗として起訴せられたものを、訴因の追加変更の手続を経ないで、二個の窃盗と認定しても、公訴事実の同一性を失わずかつ被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞れがない限り、違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年10月8日 昭和30(あ)3499
- 登載
- 刑集 第11巻10号2487頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑訴法256条,刑法235条
論点33第235条刑法
誤つて累犯加重をした違法が判決に影響を及ぼさないとした事例
裁判要旨原審の是認した第一審判決が、刑法
五六条一項〈再犯〉、
五七条〈再犯加重〉の適用を誤つて累犯加重をした違法のあることは所論のとおりである。しかし、被告人は本件犯行の外、三個の犯罪を犯し(内二件は本件と同様窃盗である。)ていることは記録上明らかであり、しかも本件犯行は、他の犯罪につき昭和三〇年一月一二日仮釈放せられた後数日にして同年一月二一日行つたものである等、諸般の事情を総合すれば、本件犯行はその犯情甚だ重く、被告人が懲役一年二月に処せられたことについては、上記の違法に拘らず、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年7月12日 昭和30(あ)3899
- 登載
- 集刑 第114号125頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法56条1項,刑法57条,刑訴法411条
論点34第235条刑法
他人が盗伐後現場に放置された伐木の窃取と森林窃盗の成立
裁判要旨他人が盗伐後現場に放置した村有林の伐木を窃盗する所為は、村有林の管理者である村長において右伐木の存在を知ると否とにかかわらず、森林窃盗の罪にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年2月14日 昭和29(あ)517
- 登載
- 刑集 第10巻2号187頁
- 参照法条
- 森林法施行法(昭和26年法律250号)24条1項,森林法(明治40年法律43号)83条,刑法254条,刑法235条
論点35第235条刑法
窃盗の実行に着手したと認められる事例。
裁判要旨電柱に架設中の電話線を切断しようとした以上、窃盗の実行に着手したものである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年10月2日 昭和31(あ)2101
- 登載
- 集刑 第115号19頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法243条,刑法43条
論点36第235条刑法
公訴事実の同一性が認められる一事例
裁判要旨所論の本件公訴事実と原審認定事実とは基本的事実関係としては、いずれも同一物件について車票の差換による不法領得という同一行為に関するものであつて、一は所論の日時場所における貨車の転送をもつて窃盗既遂として起訴し他の転送先の駅又は倉庫で管理者より騙取し又は騙取しようとしたと認定したのは単に占有関係の法的価値評価を異にした結果にすぎない。それ故原審認定事実と公訴事実は同一性を失うものではなく所論は理由がない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月24日 昭和29(れ)3
- 登載
- 刑集 第8巻8号1426頁
- 参照法条
- 旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号,刑法235条,刑法246条1項
論点37第235条刑法
窃盗の実行に着手したと認められる一事例
裁判要旨ズボンの尻ポケツトから現金をすり取ろうとして手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年5月6日 昭和28(あ)5267
- 登載
- 刑集 第8巻5号634頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法243条
論点38第235条刑法
窃盗の訴因と賍物牙保の訴因との間に公訴事実の同一性が認められる一事例
裁判要旨「被告人は昭和二五年一〇月一四日項、静岡県長岡温泉Aホテルにおいて宿泊中のBの所有にかかる紺色背広上下一着、外雑品数点を窃取した」との窃盗の訴因と、「被告人は賍物たるの情を知りながら、同月一九日頃東京都内において自称Bから右紺色背広上下一着の処分方を依頼され、同日同都豊島区池袋a丁目Y方においてこれを質入れ牙保した」との賍物牙保の訴因とは、公訴事実の同一性の範囲内に属する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年5月14日 昭和27(あ)4155
- 登載
- 刑集 第8巻5号676頁
- 参照法条
- 刑訴法314条1項,刑訴法314条4項,刑法235条,刑法256条2項
論点39第235条刑法
窃盗未遂の公訴事実に対し、目的物を遺失物と誤認したとの主張と刑訴第三三五第二項の主張
裁判要旨或る物を窃取しようとして遂げなかつたとの公訴事実に対し、被告人がその物を遺失物と誤認したとの主張は刑訴第三三五条第二項にいわゆる「犯罪の成立を妨げる理由となる事実の主張」にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和29(あ)1910
- 登載
- 刑集 第8巻13号2420頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法254条,刑訴法335条2項
論点40第235条刑法
住居侵入罪と窃盗罪との関係
裁判要旨現行刑法において住居侵入罪と窃盗罪とはその被害法益及び犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行為は窃盗罪の要素に属せず、別個独立の行為であり、しかも通常、右両罪の間には手段結果の関係があることが認められるから、第一審判決が両罪を刑法五四条一項後段のいわゆる牽連犯として取扱つたのは正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年2月20日 昭和27(あ)4943
- 登載
- 集刑 第74号179頁
- 参照法条
- 刑法57条1項後段,刑法130条,刑法235条
論点41第235条刑法
上告理由として不利益な主張となる場合の一例
裁判要旨窃盗の併合罪として認定された所為を窃犯等の防止及処分に関する法律
第二条第四号〈すべての者の国外犯 第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪〉の常習窃盗罪にあたる所為であると主張する上告論旨は、被告人にとり不利益な主張であつて上告理由としては許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年1月29日 昭和27(あ)878
- 登載
- 刑集 第7巻1号124頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法45条,刑法47条,窃盗等ノ防止及処分ニ関スル法律2条
論点42第235条刑法
毀棄並びに窃盗罪について犯意を欠く一事例(非刑罰放棄の錯誤は犯意を阻却するか)
裁判要旨被告人が飼犬証票なく且つ飼主分明ならざる犬は無主犬と看做す旨の警察規則を誤解した結果鑑札をつけていない犬は他人の飼犬であつても直ちに無主の犬と看做されるものと誤信し他人所有の犬を撲殺し、その皮を剥いだ場合は器物毀棄並びに窃盗罪の犯意を欠く。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年8月17日 昭和25(れ)1242
- 登載
- 刑集 第5巻9号1789頁
- 参照法条
- 刑法38条1項,刑法38条3項,刑法235条,刑法261条
論点43第235条刑法
一 窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思
二 窃盗犯人に不正領得の意思が認められる一事例
三 強盗傷人と窃盗の二罪を構成する例
裁判要旨一 そもそも、刑法上窃盗罪の成立に必要な不法領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであつて、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としないのであるから、被告人等が対岸に該船を乗り捨てる意思で前記肥料船に対するAの所持を奪つた以上、一時的にも該船の権利を排除し終局的に自ら該船に対する完全な支配を取得して所有者と同様の実を挙げる意思即ち右にいわゆる不正領得の意思がなかつたという訳にはゆかない。
二 被告人等が本件強盗傷人の罪を犯す当時には未だ本件窃盗を犯す意思は全然なく、右強盗傷人が既遂となり逃走の途中偶然の機会において新たに本件窃盗の犯意を生じたものであることは原判決挙示の証拠上疑いのないところであるばかりでなく、それらの行為自体からみても、はた又被害法益の点からみても、本件強盗傷人と窃盗の二罪を構成し、所論のように単一の犯罪を構成するものと認めるべきでないことは多言を要しないところである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年7月13日 昭和26(れ)347
- 登載
- 刑集 第5巻8号1437頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法236条
論点44第235条刑法
準強盗致死傷とその適条
裁判要旨窃盗犯人が刑法第二三八条の行為を為し、よつて人を殺傷したときは同法第二四〇条を適用すれば足り、同法第二三五条及び同法第二三八条を引用する必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年6月8日 昭和26(れ)138
- 登載
- 刑集 第5巻7号1261頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法238条,刑法240条
論点45第235条刑法
殺害された被害者の所持する財布を奪取した者の罪責
裁判要旨なお、被害者が殺害されたからとてその死亡によつて直ちに所論財布を何人も所持しなくなるというわけのものでない。そうして盗罪は他人の所持を奪うことによつて成立するのであるから原判決が判示第二の所為を、所論のように占有離脱物の横領とせずに、窃盗罪としたのは正当である。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和26年4月18日 昭和25(れ)1341
- 登載
- 集刑 第44号185頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法254条
論点46第235条刑法
窃盗と賍物牙保との公訴事実の同一性の有無に関する判例違反の主張の適否―原判決言渡後の判例と刑訴法第四〇五条第二号
裁判要旨論旨は、窃盗と賍物牙保とがその日時、場所において近接し、対象となる賍物も同一である場合には、基本的事実関係は同一と解すべきであるとして旧刑訴法の適用される事件についての公訴事実の同一性に関する当裁判所の判例を挙示し、原判決は、これら判例と相反する判断をしたものであると主張しているもののようである。論旨挙示の判例中昭和二五年(れ)同二七五号同年六月三〇日第二小法廷判決は、原判決の宣告された後の判例であるから、これを除外し(なお右判決も従来の判例を変更したものではない)その他の判例に照して見ても原判決は窃盗と賍物牙保とは常に公訴事実の同一性がないとか或は犯罪の日時場所が隔つている場合には公訴事実の同一性がないとか判断したのではなく、基本的事実関係が同一でないから公訴事実の同一性がないと判断したに止まるのであるから、その理論においてはこれらの判例と相反する判断をしたことにならないのである。(昭和二五年(あ)第八四号同年二月二一日第三小法廷判決参照)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月6日 昭和25(あ)1851
- 登載
- 集刑 第40号245頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法256条2項,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法405条2号
論点47第235条刑法
一 労働関係調整法第七条と正当争議行為
二 生産管理開始のときから占有していた物を後に領得した行為の擬律
三 労働組合法第一条第二項と刑法第三五―争議行為の正当性
四 生産管理において労働者の団体が工場、設備、資材等を接収してその占有下においた場合には会社側の占有を完全に離脱するか
五 労働者が生産管理中の工場から争議期間中の賃金支払にあてる目的をもつて工場資材を工場外に搬出した行為と窃盗罪の成立
六 生産管理と同盟罷業との関係―生産管理の違法性
七 憲法と勤労者の争議権―争議行為の正当性の限界
八 生産管理と労働関係調整法第七条にいわゆる「その他」の行為
裁判要旨一 労働関係調整法第七条は、争議行為の定義を掲げただけであつて、争議行為の正当性は別個の観点から判断すべきものである。
二 被告人等が本件生産管理開始のときから判示鉄板を占有していたとしても、それは違法の占有であるから、後にこれを領得しても横領罪とはならず窃盗罪となる。
三 労働組合法第一条第二項は、労働組合の団体交渉その他の行為について無条件に刑法第三五条の適用があることを規定しているのではなく唯労働組合法所定の目的達成のために為した正当な行為についてのみ適用を認めているに過ぎない(昭和二二年(れ)第三一九号同二四年五月一八日最高裁判所大法廷判決参照)。如何なる争議行為を以て正当とするかは、具体的に個々の争議につき、争議の目的並びに争議手段としての各個の両面に亘つて、現行法秩序全体との関連において決すべきである。従つて至産管理及び生産管理中の個々の行為が、すべて当然に正当行為であるとの論旨は理由がない。
四 原判決が、生産管理においては労働者の団体が工場、設備、資材等一切のものを接収してその占有下におくと判示し、本件においては被告人が既に生産管理に入つたものであることを認めながら、而も他方において判示鉄板は「会社の占有を完全に離脱したものでない」と判示したのは、生産管理開始により労働者の図体が工場、設備、資材等一切のものを自己の支配下におき占有を取得したと言つても、個々の資材物件等については、それが会社構内に存置せられる以上、会社側にもなお占有が存するという趣旨に解すべきである。
五 論旨は、原判決が、本件鉄板は会社の占有を完全に離脱したものではないので被告人等が壇にこれを工場外に搬出した行為は会社の所持を奪つたものであり、窃盗の罪責を免れない、と判示したことを非難し生産管理の下においては占有の所持は労働者側にあり、会社は観念上間接占有を有するに過ぎないから、所持の奪取即ち窃盗はあり得ないい。被告人等には占有奪取の意思もなく、不正領得の意思もなかつたと主張する。しかし労働者側がいわゆる生産管理開始のとき工場、設備、資材等をその占有下においたのは違法の占有であり、判示鉄板についてもそのとき会社側の占有に対して占有の侵奪があつたというべきであるが、原判決はこれを工場外に搬出したとき不法領得の実現行為があつたものと認定したものである。これを証拠に照らし合わせて考えてみても、被告人等が争議期間中の労働者の賃金支払等に充てるために売却する目的を以て、会社側の許可なくしてこれを工場外に運び出し、自己の事実上の支配内に收めた行為は、正に不法領得の意思を以て会社の所持を奪つたものというべきであつて、原判決が窃盗罪にあたるものとしたのは当然である。
六 論旨は生産管理が同盟罷業と性質を異にするものでないということを理由として、生産管理も同盟罷業と同様に違法性を阻却される争議行為であると主張する。しかしわが国現行の法律秩序は私有財産制度を基幹として成り立つており、企業の利益と損失とは資本家に帰する。従つて企業の経営、生産行程の指揮命令は、資本家又はその代理人たる経営担当者の権限に属する。労働者が所論のように企業者と並んで企業の担当者であるとしても、その故に当然に労働者が企業の使用收益権を有するのでもなく、経営権に対する権限を有するものでもないい。従つて労働者側が企業者側の私有財産の基幹を揺がすような争議手段は許されない。なるほど同盟罷業も財産権の侵害を生ずるけれども、それは労働力の給付が積務不履行となるに過ぎない。然るに本件のようないわゆる生産管理に於ては、企業経営の権能を権利者の意思を排除して非権利者が行うのである。それ故に同盟罷業も生産管理も財産権の侵害である点においては同様であるからとて、その相違点を無視するわけにはゆかない。前者において違法性が阻却されるからとて、後者においてもそうだという理由はない。
七 論旨は、憲法が労働者の争議権を認めたことを論拠として、従来の市民法的個人法的観点を楊棄すべきことを説き、かような立場から労働者が争議によつて使用者たる資本家の意思を抑圧してその要求を貫徹することは不当でもなく違法でもないと主張する。しかし憲法は勤労者に対して団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障すると共に、すべての国民に対して平等権、自由権、財産権等の基本的人権を保障しているのであつて、是等諸々の基本的人権が労働者の争議権の無制限な行使の前に悉く排除されることを認めているのでもなく、後者が前者に対して絶対的優位を有することを認めているのでもない。寧ろこれ等諸々の一般的基本的人権と労働者の権利との調和をこそ期待しているのであつて、この調和を破らないことが、即ち争議権の正当性の限界である。その調和点を何処に求めるべきかは、法律制度の精神を全般的に考察して決すべきである。固より使用者側の自由権や財産権と雖も絶対無制限ではなく、労働者の団体行動権等のためある程度の制限を受けるのは当然であるが、原判決の判示する程度に、使用者側の自由意思を抑圧し、財産に対する支配を阻止することは、許さるべきでないと認められる。それは労働者側の争議権を偏重して使用者側の権利を不当に侵害し、法が求める調和を破るものだからである。
八 論旨は、原判決を以て、生産管理の本質を誤り、生産管理が争議権行使の一方法であることを否認し、争議権行使の方法を制限した違法あるものとして、非難すると共に、生産管理が労働関係調整法第七条にいわゆる「その他」の行為の中に含まれるということを論拠として、労働者が争議方法として生産管理を行うことには何等の制限を受くべきでないと主張する。しかし右の法条は争議行為の定義を掲げただけであつて、争議行為又はそれに伴う諸々の行為がすべて適法又は正当であると言つているのではない。従つて生産管理が右の「その他」の行為の中に含まれるとしても、そのことだけから、生産管理を行う自由があると即断することはできない。具体的争議行為の適法性の限界については、別個の観点から判断されなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和25年11月15日 昭和23(れ)1049
- 登載
- 刑集 第4巻11号2257頁
- 参照法条
- 労働関係調整法7条,刑法235条,刑法252条,刑法35条,労働組合法1条2項,労働組合法1条,憲法12条,憲法28条,憲法29条
論点48第235条刑法
窃盗の共犯として起訴せられ第一審が臟物運搬と認定し原審が窃盗の幇助と認定した場合と事実の同一性
裁判要旨裁判所は、その基本たる事実関係の同一性を害しない限り、公訴事実とその態様において異り、したがつて適用法条を異にする事実を認定することができるものである(昭和二三年れ第八三八号、同年一二月四日第二小法廷判決参照)。そして、所論の原判示事実は、窃盗の共犯として起訴せられ、第一審が臟物運搬と認定したのを、原審において窃盗の幇助と認定したものであり、起訴事実と原審認定事実とは、その基本たる事実関係において同一性を失わないことが明らかであるから、原判決には何等所論のような違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和25年10月27日 昭和25(れ)1098
- 登載
- 集刑 第19号1051頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法235条,刑法256条,刑法62条,旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号
論点49第235条刑法
一 憲法第三三條違反と上告理由
二 留置の際その理由及び辯護人を選任することを得る旨を告げられなかつた場合と上告理由
三 裁判官の令状なき押收搜索と上告理由
四 採證の用に供しない自白強制の主張と上告理由
五 採證の用に供しない被告人の訊問調書を讀み聞かせなかつた場合と上告理由
六 警察官に對する強制自白と同一内容の自白を公判廷において任意にした場合と間接強制の有無
七 證據の取捨選擇の自由と採證の法則
八 第一審に對する非難と上告理由の適否
九 窃取した物の數量の一部を自白のみによつて認定した場合と刑訴應急措置法第一〇條第三項
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が葉煙草を不法領得した行爲と窃盜罪の成否
一一 從犯と正犯の區別
裁判要旨一 假りに被告人が逮捕状なくして、警察に出頭せしめられたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
二 假りに被告人が警察に留置せられるに當り、留置の理由及び辯護人を選任することが出來る旨を告げられなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
三 假りに被告人が現行犯でない本罪に付いて裁判官の令状なく押收、搜索を受けたものであるとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
四 假りに被告人が警察で強制的に自白せしめられたとしても、その自白を證據に採つて居ない限り、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
五 假りに被告人の訊問調書を被告人に讀み聞かせなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
六 假りに被告人の警察官に對する供述が強制によるものであり、且つ公判廷における自白の内容がそれと全然同じであつたとしても、後者は何等強制を加えられないで任意に爲されたものであるから、これを間接の強制とは斷言できない。
七 證據の取捨選擇は原審の自由裁量權に屬する事項であるから、既に原審が採用した證據だけで判示事實を認定するに充分である以上、それに關係のない他の點はこれを不問に付し、又この點を證明するための證人の申請を却下したとしても、採證の法則の違反は審理不盡の違法があるということにはならない。
八 論旨一の中には、第一審に對する非難を含んでいるが、上告は第二審に對してなされるべきものであるからこれは上告理由となし得ないものである。
九 刑訴應急措置法第一〇條第三項は、被告人の自白のみを證據としてこれを有罪とすることを禁じているけれども、犯罪事實の細部に亘つて悉く自白以外の補強證據を必要とする趣旨ではないから、本件のように窃盜の事實の概要が既に、補強證據によつて認められた場合に窃取した物の數量の一部分につき自白のみによつてこれを認めても差支えない。
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が取扱所の保管する政府所有の葉煙草を領得した行爲は横領罪でなくして窃盜罪である。
一一 原判決が被告人はB及びCの手足又は機械として動いたものであるとの認定をしていないことは、判文上明らかである。從つて原判決が被告人の所爲を、窃盜從犯でなくて窃盜正犯に該當するものと判斷したことは何等の違法も存しない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和23年11月5日 昭和23(れ)61
- 登載
- 刑集 第2巻12号1473頁
- 参照法条
- 憲法33条,憲法34条,憲法35条1項,憲法38条2項,憲法38条,刑訴法411条,刑訴法56条3項,刑訴法337条,刑訴法344条,刑訴法408条,刑訴応急措置法6条1項,刑訴応急措置法7条2項,刑訴応急措置法10条2項,刑訴応急措置法10条3項,刑法253条,刑法235条,刑法60条,刑法62条
論点50第235条刑法
窃盜罪及び強盜罪と刑法第五五條
裁判要旨窃盜罪と強盜罪とは、ともに財物奪取行爲より成り、唯後者にあつてはその手段として暴行又は脅迫を施用すると云う點において前者と異るものがあるに過ぎないので、兩者はいずれも同一罪質と云うを妨げないのみならず、ともに同一の章たる第三六章の下に規定されている刑法犯であるから、これを刑法第五五條にいわゆる同一の罪名とするにつき、毫も異とする所はない。原判決が所論の如く右法條を適用して被告人の判示所爲に對して連續犯の成立ありとしたとて、何等違法とする筋合はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和22年11月5日 昭和22(れ)72
- 登載
- 集刑 第1号5頁
- 参照法条
- 刑法55条,刑法235条,刑法236条
論点51第235条刑法
自動車金融により所有権を取得した貸主による自動車の引揚行為と窃盗罪の成否
裁判要旨買戻約款付自動車売買契約により自動車金融をしていた貸主が、借主の買戻権喪失により自動車の所有権を取得した後、借主の事実上の支配内にある自動車を承諾なしに引き揚げた行為は、刑法
二四二条〈他人の占有等に係る自己の財物〉にいう他人の占有に属する物を窃取したものとして窃盗罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成元年7月7日 昭和59(あ)1168
- 登載
- 刑集 第43巻7号607頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法242条
論点52第235条刑法
置き忘れられた現金在中の封筒を窃取したとされる事件について,封筒内に現金が在中していたとの事実を動かし難い前提として被告人以外には現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に被告人による窃取を認定した第1審判決及び原判決の判断が論理則,経験則等に照らして不合理で是認できないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成29年3月10日 平成27(あ)63
- 登載
- 集刑 第321号1頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑訴法411条3号
論点53第235条刑法
単独犯の訴因で起訴された被告人に共謀共同正犯者が存在するとしても,訴因どおりに犯罪事実を認定することが許されるか
裁判要旨検察官において共謀共同正犯者の存在に言及することなく,被告人が当該犯罪を行ったとの訴因で公訴を提起した場合において,被告人1人の行為により犯罪構成要件のすべてが満たされたと認められるときは,他に共謀共同正犯者が存在するとしても,裁判所は訴因どおりに犯罪事実を認定することが許される。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成21年7月21日 平成21(あ)291
- 登載
- 刑集 第63巻6号762頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法235条
論点54第235条刑法
1 パチスロ店内で,パチスロ機から不正な方法によりメダルを窃取した者の共同正犯である者が,上記犯行を隠ぺいする目的をもって,その隣のパチスロ機において,自ら通常の方法により遊戯していた場合,この通常の遊戯方法により取得したメダルについて窃盗罪が成立するか
2 窃取した財物と窃取したとはいえない財物とが混在している場合における窃盗罪の成立範囲について判示した事例
裁判要旨1 パチスロ店内で,パチスロ機に針金を差し込んで誤動作させるなどの方法によりメダルを窃取した者の共同正犯である者が,上記犯行を隠ぺいする目的をもって,その隣のパチスロ機において,自ら通常の方法により遊戯していた場合,この通常の遊戯方法により取得したメダルについては,窃盗罪は成立しない。
2 パチスロ機の下皿内に窃取したメダル72枚が入っており,ドル箱内に窃取したものと窃取したとはいえないものとが混在したメダル414枚が入っているとの本件事実関係の下においては,窃盗罪が成立する範囲は,下皿内のメダル72枚のほか,ドル箱内のメダル414枚の一部にとどまる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成21年6月29日 平成21(あ)328
- 登載
- 刑集 第63巻5号461頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑法235条 (1につき)刑法60条
論点55第235条刑法
1 専らメダルの不正取得を目的として体感器と称する電子機器を身体に装着してパチスロ機で遊戯する行為の窃盗罪該当性
2 専らメダルの不正取得を目的として体感器と称する電子機器を身体に装着してパチスロ機で遊戯し取得したメダルについて窃盗罪が成立する範囲
裁判要旨1 専らメダルの不正取得を目的として体感器と称する電子機器(判文参照)を使用する意図のもとにこれを身体に装着してパチスロ機で遊戯する行為は,同機器がパチスロ機に直接には不正の工作ないし影響を与えないものであっても,窃盗罪の実行行為に当たる。
2 専らメダルの不正取得を目的として体感器と称する電子機器(判文参照)を使用する意図のもとにこれを身体に装着してパチスロ機で遊戯し取得したメダルについては,それが同機器の操作の結果取得されたものであるか否かを問わず,そのすべてについて窃盗罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成19年4月13日 平成18(あ)1605
- 登載
- 刑集 第61巻3号340頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑法235条
論点56第235条刑法
公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した行為が窃盗罪に当たるとされた事例
裁判要旨公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した行為は,被害者がベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点で行われたことなど判示の事実関係の下では,窃盗罪に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成16年8月25日 平成16(あ)882
- 登載
- 刑集 第58巻6号515頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法254条
論点57第235条刑法
前訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪であるが実体的には一つの常習特殊窃盗罪を構成する場合と前訴の確定判決による一事不再理効の範囲
裁判要旨前訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪である場合には,両者が実体的には一つの常習特殊窃盗罪を構成するとしても,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成15年10月7日 平成14(あ)743
- 登載
- 刑集 第57巻9号1002頁
- 参照法条
- 刑訴法337条1号,刑法235条,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律2条
論点58第235条刑法
消費者金融会社の係員を欺いてローンカードを交付させた上これを利用して同社の現金自動入出機から現金を引き出した場合の罪責
裁判要旨消費者金融会社の係員を欺いてローンカードを交付させた上これを利用して同社の現金自動入出機から現金を引き出した場合には,同係員を欺いて同カードを交付させた点につき詐欺罪が成立し,同カードを利用して現金自動入出機から現金を引き出した点につき窃盗罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成14年2月8日 平成13(あ)1341
- 登載
- 刑集 第56巻2号71頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法246条1項
論点59第235条刑法
公園予定地の一部に無権原で簡易建物を構築するなどした行為が不動産の侵奪に当たるとされた事例
裁判要旨東京都の公園予定地の一部に、無権原で、角材を土台とし、要所に角材の柱を立て、多数の角材等からなる屋根部分を接合し、周囲をビニールシート等で覆うなど容易に倒壊しない骨組みを有する簡易建物を構築し、相当期間退去要求にも応じなかった行為(判文参照)は、不動産の侵奪に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年12月15日 平成12(あ)451
- 登載
- 刑集 第54巻9号923頁
- 参照法条
- 刑法235条の2
論点60第235条刑法
所有者による現実の支配管理が困難になった土地上に大量の廃棄物を堆積させた行為につき不動産侵奪罪が成立するとされた事例
裁判要旨所有者による現実の支配管理が困難になった土地について、一定の利用権を有する者が、その利用権限を超えて地上に大量の廃棄物を堆積させ、容易に原状回復をすることができないようにしたときは、所有者の占有を排除し自己の支配下に移したものとして、不動産侵奪罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成11年12月9日 平成9(あ)1054
- 登載
- 刑集 第53巻9号1117頁
- 参照法条
- 刑法235条の2
論点61第235条刑法
いわゆるキャッシュカードすり替え型の窃盗罪につき実行の着手があるとされた事例
裁判要旨被害者に電話をかけキャッシュカードを封筒に入れて保管することが必要でありこれから訪れる者が作業を行う旨信じさせ,被害者宅を訪れる被告人が封筒に割り印をするための印鑑を被害者に取りに行かせた隙にキャッシュカード入りの封筒と偽封筒とをすり替えてキャッシュカードを窃取するという犯行計画に基づいて,すり替えの隙を生じさせる前提となり,被告人が被害者宅を訪問し虚偽の指示等を行うことに直接つながるとともに,被害者に被告人の指示等に疑問を抱かせることなくすり替えの隙を生じさせる状況を作り出すようなうそが述べられ,被告人が被害者宅付近路上まで赴いたなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,被告人が被害者に対してキャッシュカード入りの封筒から注意をそらすための行為をしていないとしても,当該うそが述べられ被告人が被害者宅付近路上まで赴いた時点では,窃盗罪の実行の着手が既にあったと認められる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和4年2月14日 令和2(あ)1087
- 登載
- 刑集 第76巻2号101頁
- 参照法条
- 刑法43条,刑法243条,刑法235条
論点62第235条刑法
前訴で住居侵入,窃盗の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において,後訴の訴因である常習特殊窃盗を構成する行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときの前訴の確定判決による一事不再理効の範囲
裁判要旨前訴で住居侵入,窃盗の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において,後訴の訴因である常習特殊窃盗を構成する住居侵入,窃盗の各行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときは,前訴の訴因が常習性の発露として行われたか否かについて検討するまでもなく,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和3年6月28日 令和2(あ)919
- 登載
- 刑集 第75巻7号909頁
- 参照法条
- 刑訴法337条1号,刑法235条,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律2条
論点63第236条刑法
被告人の所為が強盗致傷の罪にあたるとされた事例。
裁判要旨一 原審が、第一審の認定した事実関係の下において、被告人の所為を強盗致傷の罪に当るとした判断は正当である。
二 (原審の判断の要旨)
三 所論は、本件傷害は強盗の手段たる暴行行為に包含せらるべきもので、強盗未遂をもつて論ずべきものであるというのであるが、第一審判示右傷害は被告人から暴行を受けた際に生じるものであること、右傷害のうち両手関節部擦過傷は被害者が受傷後出血しているものを認めて痛みを覚え、また下口唇の傷は第三者から知らされるので気ずき、即日医師の手当を受けに行き、両手関節部擦過傷の部分に薬を塗り、繃帯をしてもらい、下口唇にも薬をつけてもらい、その後は自宅で右各受傷部分に二、三日間薬をつけていたが、特に右手関節部擦過傷は長さ約三糎、幅約〇、五糎のものであり、右両手関節部擦過傷は受傷後一〇日を経てもまだ傷跡が残つていたこと、下口唇血腫は者を食べる時痛みを感じ、約一週間で治つたこと、また両大腿部打撲傷は医師の手当を受けに行つた際には気ずかず、翌日から痛み出し、見ると左大腿部打撲傷は長径約五・六糎短径約三・四糎に亘り内出血のため青紫色に腫れており、右大腿部打撲傷の内出血はもつと小さかつたが、一週間痛みを覚え、受傷後九日を経てようやく打ち身の跡が消えたことが明らかであるから、右各受傷は刑法上強盗致傷罪を構成するに足る傷害である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年9月15日 昭和39(あ)806
- 登載
- 集刑 第152号833頁
- 参照法条
- 刑法240条前段,刑法236条
論点64第236条刑法
警察官による人物確認のためのひそかな写真撮影の対象とされた者と共に撮影された者において、そのフイルム装填の写真機を強取した行為が違法と認められた事例。
裁判要旨警察官が甲に対する収監の必要上、その人物確認の手段として、ひそかに、甲と思われる人物の写真を撮影するにあたり、これと同道していた乙および丙を分離して撮影することが困難であつたため、乙および丙をも同時に撮影したとしても、その撮影行為は違法でなく、被撮影者らにおいて、暴行をもつて右警察官の反抗を抑圧して、自己らの撮影されたフイルムの装填してある写真機を強取することは刑法上許された行為ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年7月9日 昭和33(あ)2671
- 登載
- 刑集 第17巻6号579頁
- 参照法条
- 刑法36条,刑法236条
論点65第236条刑法
不法原因に基く給付と強盗殺人罪(刑法第二三六条第二項〈強盗〉、第二四〇条〈強盗致死傷〉後段)の成立。
裁判要旨麻薬密売買にことよせて他人を誘き出し、その所持する麻薬購入資金を預かり同人のため保管中、該金員を不法に領得する目的をもつて同人を殺害し同人から事実上右金員の返還請求を受けることのない結果を生ぜしめて返還を免れたときは、たとえ右金員の授受は不法原因に基く給付であるがため被害者に返還請求権がないとしても刑法第二三六条第二項、
第二四〇条〈強盗致死傷〉後段の罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年8月30日 昭和34(あ)962
- 登載
- 刑集 第14巻10号1418頁
- 参照法条
- 刑法236条,刑法240条
論点66第236条刑法
刑法第二三六条第二項〈強盗〉の強盗罪の成立
裁判要旨犯人が債務の支払を免れる目的をもつて債権者に対しその反抗を抑圧すべき暴行、脅迫を加え、債権者をして支払の請求をしない旨を表示せしめて支払を免れた場合であると、右の手段により債権者をして事実上支払の請求をすることができない状態に陥らしめて支払を免れた場合であるとを問わずひとしく刑法第二三六条第二項の不法利得罪を構成するものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年9月13日 昭和31(あ)2368
- 登載
- 刑集 第11巻9号2263頁
- 参照法条
- 刑法236条
論点67第236条刑法
一 強盗傷人とならない一事例
二 牽連犯の要件
裁判要旨一 前夜岡山県下で強盗を行つて得た賍物を舟で運搬し、翌晩神戸で陸揚げしようとする際巡査に発見され、逮捕を免れるため暴行を加え、これを傷害した所為は、強盗傷人ではなく、強盗と公務執行妨害、傷害との罪が成立する。
二 牽連犯が成立するためには犯人が主観的に数罪の一方を他方の手段または結果の関係において実行したというだけでは足りず、その数罪間にその罪質上通常手段結果の関係が存在することを必要とする。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年7月18日 昭和31(れ)16
- 登載
- 刑集 第11巻7号1861頁
- 参照法条
- 刑法240条,刑法238条,刑法236条,刑法95条,刑法204条,刑法54条
論点68第236条刑法
自動車強盗の際、共謀の上別の自動車にて追尾援助を与えようとした者は共同正犯か
裁判要旨自動車強盗の際共謀の上別の自動車でこれを追尾援助を与えようとした被告人の所為が共同正犯にあたるとした原審の判断は正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年2月26日 昭和29(あ)3585
- 登載
- 集刑 第117号1275頁
- 参照法条
- 刑法236条,刑法60条
論点69第236条刑法
訴因罰条の変更を必要としない一事例
裁判要旨控訴裁判所が、強盗の起訴に対し強盗幇助と認定した第一審判決を破棄して、自ら恐喝と認定するについては訴因、罰条の変更手続を経ることを要しないものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月19日 昭和29(あ)1260
- 登載
- 刑集 第8巻10号1600頁
- 参照法条
- 刑法236条,刑法62条,刑法249条,刑訴法312条
論点70第236条刑法
一 強盗傷人罪における暴行と認められる一事例
二 傷害が暴行の結果と認められる一事例
三 共同被告人が弁論分離後証人としてした供述の証拠能力
裁判要旨一 被害者に対し「金を出せ、騒ぐと突き刺すぞ」等と申し向けて刃渡四五糎の日本刀を突きつける所為は、人の身体に対する不法な有形力の行使であつて、強盗傷人罪における暴行にあたる。
二 右の場合、被害者が右日本刀にしがみついて救を求め、犯人がその刀を引いたことによつて右手掌等に傷害を負わしめたときは、その所為は暴行の結果といい得る。
三 共同被告人であつても弁論分離後証人としてした供述は、完全な証拠能力を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月19日 昭和26(あ)3700
- 登載
- 刑集 第7巻2号280頁
- 参照法条
- 刑法236条1項,刑法240条,刑訴法317条,刑訴法319条2項
論点71第236条刑法
犯意継続による連続犯関係の認められない一事例
裁判要旨被告人が本件起訴に係る強盗関係の犯行後一年以上経過した後に原判決指摘の如き前科にかゝる強盗行為を更に犯したことが明白であつてしかも被告人は、本件起訴に係る犯行により逮捕された後昭和二一年四月二六日係検察官に対し深く前非を悔い、真人間となつて更正することを誓つているような場合には両犯罪の間に連続犯の関係を認めるべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月6日 昭和26(れ)2450
- 登載
- 集刑 第64号97頁
- 参照法条
- 刑法55条(昭和22年法律124号による削除前),刑法236条
論点72第236条刑法
正当な権利を有する者がその権利を実行するにあたり詐欺恐喝の手段を用いた場合に関する判例と債権回収の目的でした強盗行為
裁判要旨法律上、他人より財物の交付を受け又は財産上の利得を領得すべき正当の権利を有する者が、その権利を実行するにあたり、欺罔又は恐喝の手段を用いて義務の履行をなさしめて財産の交付を受け又は財産上の利益を領得するも、詐欺恐喝の罪を構成することなしとした大審院刑事総部連合の判決(大正二年(れ)第一二一一号同年一二月二三日宣告)は、債権を回収するためとはいえ、虚言をもつて被害者をおびき出した上、突如野球用バツトにその頭部を強打して昏倒させ、その所持していた金品を強取した事案に対しては、判例として適切でない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月7日 昭和26(れ)1800
- 登載
- 集刑 第62号295頁
- 参照法条
- 刑法236条,刑法246条,刑法249条,刑訴法405条3号
論点73第236条刑法
強盗予備罪と強盗罪が併合罪となる一事例
裁判要旨被告人が甲乙と強盗と共謀し被害者方に侵入しようとしたが強盗の目的を達せずその予備をした後、さらに乙、丙と右同一被害者方に強盗に押し入ることを共謀しその目的を遂げた場合は、強盗予備罪と強盗罪の併合罪となる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年4月3日 昭和25(れ)1852
- 登載
- 刑集 第5巻5号804頁
- 参照法条
- 刑法236条,刑法237条,刑法45条前段
論点74第236条刑法
強盜の既遂時期
裁判要旨強盜の目的で會社の事務所に押入り、居合わせた事務員全部を縛つて、そこに有つた洋服類を着込みその他の物は、荷造りをして持出すばかりにした以上は強盜の既遂を以て論ずべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和24年6月14日 昭和24(れ)939
- 登載
- 刑集 第3巻7号1066頁
- 参照法条
- 刑法236条1項
論点75第236条刑法
犯行現場での逮捕と強盜既遂罪の成立
裁判要旨被告人等第在宅の家人五人全部を縛り上げ目隠をした後一時間に亘り家内の金品を取出し現金をポケツトに入れ衣類等或は行李、リツクサツクにつめ込み、或は風呂敷に包み、或は着込み又は懐中したときは金品を自己の実力支配内においたことは明らかであるから被告人等が右金品を戸外に持出す前現場で逮捕されたことは強盜既遂罪の成立に影響がない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和24年12月3日 昭和24(れ)971
- 登載
- 刑集 第3巻12号1865頁
- 参照法条
- 刑法236条,刑法43条
論点76第236条刑法
一 憲法第三八條第三項にいわゆる本人の自白と刑訴法第三一九條第二項の意義
二 強盗の豫備をなしたものがその實行に着手した場合と強盗豫備罪の成否
三 死刑及無期懲役刑の合憲性−死刑と無期懲役刑との本質的相異
四 被告人が殺意を以て兇器を携え乘車勤務中の車掌に殺害を加えその懐中時計を強奪し進行中の列車から付き落した所爲に對する無期懲役刑の宣告と殘虐な刑罰
五 牽連犯の意義と罪數−銃砲等所持禁止令違反と強盗殺人未遂は牽連犯となるか
裁判要旨一 憲法第三八條第項三に所謂本人の自白には判決裁判所の公判廷における自白を含まないと解すべきことは、當裁判所の判例において展々判示したところであり、今この判例を變更する必要を認めない。新刑訴法が第三一九條第二項において公判廷における自白であつてもそれが被告人に不利益な唯一の證據である場合にはこれによつて有罪とされない旨の規定を新設したことは所論のとおりである。しかし、かゝる規定を設けたことの當否はしばらくこれを措くとしてこの規定は憲法第三八條第三項に對する所謂解釋規定ではなく自白偏重の弊害を矯正し被告人の人權を擁護せんとする憲法の根本精神をさらに擴充すると共に新刑訴法の指導原理たる當事者對等主義にも立脚して、自白が當事者である被告人の供述たる點を考慮してその證據能力について、新たな一の制限を設け公判廷における自白にまで及ぼしたものに過ぎないのである。それは丁度憲法第三八條第二項においては「強制拷問若しくは脅迫による自白又は不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」について證據能力を制限しているのを、新刑訴法第三一九條第一項においてはさらに擴充して「その他任意にされたものでない疑いのある自白」についても證據能力を制限するに至つたのと同様である。これ等は何れも憲法の基本精神を擴充しその線に沿つた法律改姓であつて、毫も憲法の趣旨に背反するものでないからその合憲性を有することは疑のないところである。されば憲法第三八條第三項の合理的解釋として示した判例の見解は毫も新刑訴法第三一九條第二項の規定と矛盾するところはなく今後も維持さるべきものである。従つて反對の見地に立つて右判例の變更を求める所論には賛同することはできない。
二 強盗の豫備をしたものかその實行に着手した以上それが未遂に終ると既遂になるとを問わずその豫備行爲は未遂または既遂の強盗罪に吸收されて獨立して所罰の對象となるものではない。本件において、原審は既に強盗殺人未遂罪を認定所斷したのであるから、もはや所論の豫備行爲は所罰の對象として獨立して審判さるべきものではないのである原判決の事實摘示は、獨立した強盗豫備罪を構成する罪となるべき事實を認定した意味ではなく單に被告人が本件犯行を爲すに至るまでの経過を示しその犯情の一端を明らかにする目的を以て認定掲記したに過ぎない。従つて原審が該事實に對し刑法第二三七條を適用しなかつたのはむしろ當然であり原判決には所論のような違法はない。
三 死刑そのものは憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」に當らないとすることは當裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第一一九號昭和二二年三月一二日大法廷判決参照)。既に現行制度における死刑それ自体が然りとすれば同様に現行制度における無期懲役刑そのものも亦殘虐な刑罰といゝ得ないことは一層當然であろう。論旨は死刑はその與へる苦痛が瞬間的であるに反し、無期自由刑は犯人の生涯を通じ永續的に人間存在の前提ともいうべき自由を剥奪し、必要以上の精神的肉体的苦痛を與え死刑に比して却つて殘虐であるといわねばならないと主張する。無期自由刑が觀念的には−假出獄、刑の執行停止、恩赦等の制度のあることを度外視すれば−犯人の一生を通じその自由を剥奪せんとするものであることは所論のとおりであるが、欲に「命あつてのもの種」といわれるやうに、論旨が人間存在の前提であるとする自由そのものは實は生命の存在を前提とするものであり、生命の剥奪は、すべての自由の絶對的剥奪となる。人は本能的にその自由よりもその生命を尊重し、生命の剥奪を自由のそれにも増して嫌惡し恐怖するのが通常である。尤も特殊の人が特殊の事情の下に無期自由刑よりも死刑を選ぶようなこともないではないであろう。しかしそれはあくまで稀有な例外的事例に過ぎないのであつてこれを以て一般を律することはできない。さればわが刑法においても現代文明各國の立法例と共に死刑を以て最重の刑とし無期自由刑をこれに次くものとしているのである(刑法第一〇條参照〃のみならず科刑の目的は受刑者その人を對象とする特別豫防の他に社會を犯罪から防衛せんとする一般豫防の面もあるのであるから、刑の種類及び量の適否と要否とについてもこの兩者の立場から考察されなければならない。そして又犯罪と犯人とがその型と質とを異にするに従いこれに對應する刑罰も亦その量及種類を異にせざるを得ないのである。死刑の以てしては過酷に失し有期の自由刑を以てしてはなお足りないとする場合もあり得るのであるから、法律が無期自由刑を認めたからというて、唯特殊の受刑者の個人的立場からのみこれを目して必要以上にその精神的肉体的苦痛を與へる殘虐な刑罰を規定するものとし、違憲であると斷じ去ることはできない。しかも近時における行刑制度は素朴な應報刊主義の見地のみによらず教育刑主義にも立脚して組織され運用されているのである。すなわち現代の行刑は、無期自由刑の受刑者に對してもでき得る限りその物心兩生活においてその反省の機會を與え人間生活の廣さと深さとを味得せしめてその更生を誘致すべく努力するのである。所論は人間の生命に對する本能を顧みず刑の眞義と行刑の實情とを正規しない偏見に過ぎない。この要旨に對する裁判官斎藤悠輔同澤田竹治郎の意見あり。
四 原審認定事實によれぼ被告人は乘者勤務中の車掌を殺害してその所持する運輸省貸與の懐中時計を強奪しようと決意し、昭和二三年四月二三日ハンマー及び匕首を携えてa驛から常磐線下り貨物列車の最後部車掌室に、車掌Aの承諾を得て乘込み同日午後一〇時半頃突如Aの前頭をハンマーで殴打し、次いで匕首をふるつて同人の肩、顔面その他を數回突刺し又は斬付けて重傷を負はせてから、同人の所持していた運輸省貸與の懐中時計及びその鎖を強奪した上、同人を進行中の列車から車外に突落したが、殺害の目的を遂げなかつたというのである。原審は、この事實にもとづき刑法第二四〇條後段第二四三條を適用し、未遂減輕をしないで無期懲役を撰擇所斷した。その未遂減輕をしなかつたのは本件犯情を斟酌した結果であつて未遂減輕が事實審の裁定に委ねられている現行法においては、直ちにこれを違法とはいゝ得ない。そしてまた原判決にはその量刑においても實驗則に背反したと認むべきかどもなく、まして人道に悖る殘虐な科刑をしたものと到底は認め得ないのである。所論は畢竟事實審である原審の裁量權の範圍内において適法になした量刑を非難するに歸着するもので採用に値しない。
五 牽連犯は元來數罪の成立があるのであるが、法律がこれを處斷上一罪として取扱うこととした所以は、その數罪間にその罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという關係があり、しかも具体的にも犯人がかゝる關係においてその數罪を實行したような場合にあつてはこれを一罪としてその最も重き罪につき定めた刑を以て處斷すれば、それによつて輕き罪に對する處罰をも充し得るのを通例とするから、犯行目的の單一性をも考慮して、もはや數罪としてこれを處斷するの必要なきものと認めたことによるものである。従つて數罪が牽連犯となるためには犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の關係において實行したというだけでは足らず、その數罪間にその罪質上通例手段結果の關係が存在すべきものたることを必要とするのである。然るに所論銃砲等所持禁止令違反の罪と強盗殺人未遂罪とは、必ずしもその罪質上通常手段又は結果の關係あるべきものとは認め得ないのであるから、たとえ、本件において被告人が所論強盗殺人未遂罪實行の手段として匕首不法所持罪を犯したものとしても、その一事だけで右兩面の罪を牽連犯とみることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和24年12月21日 昭和23(れ)2063
- 登載
- 刑集 第3巻12号2048頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,憲法36条,刑訴法319条2項,刑法237条,刑法236条,刑法9条,刑法11条,刑法12条,刑法240条,刑法243条,刑法54条,銃砲等所持禁止令1条
論点77第236条刑法
一 見張りと窃盜の共同正犯
二 財物奪取の意思連絡による行爲の分擔と強盜の共同正犯
三 共謀の事實についての判示の程度
四 見張りと強盜の共同正犯
五 脅迫されて犯行現場の近くに立つていたとの主張と刑訴第三六〇条第二項
六 共謀の日時場所の判示の要否
七 共同正犯に對し刑法第六〇條の適用を判文に明示することの當否
裁判要旨一 窃盜の共犯者と意思連絡のもとに見張をした場合は窃盜の共同正犯と斷ずべきものである。
二 他人の財物を奪取する意思連絡の下にその目的を達するために、或者は財物の奪取行爲を擔當し、他の者は被害者に暴行又は脅迫を加えた場合に、その全員について強盜罪の共同正犯が成立することは多く論ずるまでもないことである。
三 論旨は何日何處で誰々との間に如何なる通謀をしたかの事實理由を判決に明示しなければならないというのであるが、共謀の日時場所は必ずしも判決に明示する必要はなく誰々の間に本件犯行の共謀があつたかは判文自體より明らかであり且第一審相被告人等と被告人との間に主從關係があるとか、對等關係でないとかの事實は、原審では認めないのであるからことさらに對等關係で共謀した旨を説示しなくとも所論の如き違法はない。
四 原判決舉示の證據により、被告人と第一審相被告人との間に本件犯行について意思連絡があり、しかも相被告人等と被告人の間に主從關係とか、不平等關係があつたということは原審で認めないのであるから所論の如き主犯とかの區別は認められないのである。被告人は直接財物窃盜行爲をなさずただ見張をしただけであるから幇助罪として斷ずべきものだと主張するのであるが、原審においては本件共犯者間には強盜についての意思連絡ありと認定したものであり、強盜についての意思連絡の下に見張をしたものは共同正犯として處罰し得べきことは大審院判例の示すところであつて、今これを改める必要なしとの見解に基き強盜の見張をした被告人を強盜の共同正犯と斷じたことを窺い知ることができるのであるから、所論の如き刑法第六〇條の解釋を誤つたものではない。
五 強盗犯人から、犯行を共にするよう誘われ、これを拒んだところ、匕首で脅迫されたので、やむを得ず犯行の現場近くで立つていたとの主張は、刑訴法第三六〇条第二項の「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張」にあたらない。
六 数人共謀して犯罪を犯した場合に、共謀をした日時場所は、必ずしも判示する必要はない。
七 原判決において刑法第六〇條を適用した旨を判文上明示しなかつたことは所論の通りである。しかし原判決は第一審相被告人等と被告人とは本件犯行について共謀したものと認定し、且其共謀に基いて被告人は見張をした事實を認定したのであり。意思連絡のもとに強盜の見張をしたのであるから、本件犯行の共同正犯であると断じたものである從つて刑法第六〇條を適用した旨を判文上明示しなくとも、同條を適用した趣旨であることはおのづから明白であるから、所論の如き違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和23年7月20日 昭和23(れ)351
- 登載
- 刑集 第2巻8号979頁
- 参照法条
- 刑法356条,刑法60条,刑法236条,刑訴法360条1項,刑訴法360条2項
論点78第236条刑法
一 公判の公開と公判調書の記載
二 公開禁止の決定の効力
三 裁判官が「合議の上」裁判の公開を禁止した旨の公判調書の記載と憲法第八二條
四 強盗行爲に對し必死に反抗中の被害者から腕時計を奪取した行爲と強盗罪の成立
裁判要旨一 判決宣告期日の公判調書に、公開を禁じた旨の記載がない限り、判決の宣告は、公開法廷で行われたものと認めることができる。
二 審理が風俗を害する虞があるとして、裁判所が公判の公開を禁じた場合には、その公開禁止の効力は、結審後の判決宣告期日の公判には及ばないものと解すべきである。
三 裁判が公開の法廷において公正な裁判所によつてなさるべきことは所論のごとく憲法の明定するところである。ただ公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある場合には、裁判官の全員一致で對審を公開しないで行うことができることは、憲法第八二條第二項の定めているところである。そして、本件記録を調査すると(イ)所論のように「裁判長は合議の上爾後の審理は風俗を害する虞あるにより公開を禁止する旨を告げ非公開とした」との記載が昭和二二年九月三〇日の公判調書に明記されている。かくとごとく裁判所が非公開で審理をした場合には「裁判官の全員一致で」公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決定した旨を明確な表現で調書に記載しておくことが大切である。そこで本件調書に「合議の上」風俗を害する虞あるにより公開を禁止した旨を告げ非公開としたとの記載は嚴格にいえば稍不正確の嫌があるがしかしなお裁判所法にいわゆる評議を經て裁判官全員の意見が合致して非公開を決定したものと認め得るのである強いて所論のように評議の結果多數決をもつて公開を禁止したものと解すべき根據は全記録の何處にも見當らない。
四 判決宣告期日の公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り判決の宣告は、公開法廷で行われたものを認むべきである。
五 論旨は被害者が強姦行爲に對し力一杯反抗した證據と被害者が畏怖し抗拒不能となつているのに乘じて右手の腕時計をもぎ取つて強取した犯罪事實との間は重要な齟齬があるというのであるが、本件被害者は「ぐずぐずしておれば強姦され私の一生は臺無にされると思い私は力一杯の元氣を出して反抗しました處相手は私に馬乘りになつた儘左手にはめていた腕時計をもぎ取り」し旨を供述しているのであつて、婦人が強姦に對し本能的に強く反抗したからといつて前記状態において畏怖を感じ腕時計の強奪に對し抗拒不能であつたと原審が認定したことは常識上むしろ當然であつて毫も所論のような齟齬を存在しない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和23年6月23日 昭和22(れ)219
- 登載
- 刑集 第2巻7号680頁
- 参照法条
- 刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑訴法410条7号,憲法82条,刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑法177条,刑法236条
論点79第236条刑法
一 公判手續の瑕疵と手續の更新
(辯論更新前における刑訴第四三條第二項の違反)
二 辯護人不出頭のまま行われた公判手續を更新した場合と辯護權の不法制限
三 強盗共犯者の犯意の認定と他の共犯者の行爲に對する共同責任
四 勾留六ケ月後にした自白と不當に長い拘禁後の自白
五 十一歳の小學兒童の證人資格
六 刑訴第二〇一條第一項の取調をした旨の記載を缺く證人訊問調書の證據能力
七 刑訴第一九九條の法意と僞證の罰を告げないでした證人訊問の効力
八 共同被告人に對し訴訟費用の分擔を命ずる場合と裁判所の自由裁量
九 刑訴法第二四二條の法意
裁判要旨一 原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手續は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新され、第二回公判期日には被告人Aの私選辯護人伊藤博夫が、又第三回公判期日には同様同被告人の私選辯護人桑名邦雄がそれぞれ出頭して審理に立曾つていることが記録上明かであるから、右第一回公判期日における前記瑕疵(利害相反する相被告人の辯護人をして被告人を辯護せしめたこと)は右審理更新の結果原判決に影響を及ぼさないものというべきである。
二 原審が右のように第一回公判期日において被告人Aの辯護人伊藤博夫から提出した所論期日變更申請を却下し、同辯護人不出頭のまま同期日の審理を行つたことは所論のとおりであるが、その後第二回公判期日は同辯護人にも適法に通知され同期日には同辯護人出頭の上、公判手續が更新されたこと前示のとおりであるから、結局原審手續は不當に辯護權を制限した違法のものということはできない。
三 原審判決が、被告人Aは相被告人Bにおいて判示被害者宅内で判示暴行脅迫を行つた現場には居合わせず屋外にいたと認定したからといつて直ちに被告人Aは、右暴行脅迫の事實について認識していなかつたとはいえないのみならず、同被告人が暴行脅迫行爲を現認しないからとて、共犯者中の他の者が暴行脅迫を加えて財物を奪取している以上強盗の共犯としての責任を免れ得るものでもない。
四 被告人が勾留されたのは所論のとおり昭和二一年一二月一九日であり、又同被告人の原審における自白は昭和二二年六月五日の第一回公判以後同年八月三〇日の第三回公判を通じてなされているのであつて、右勾留後第一回公判期日迄に約六ケ月、第三回公判期日迄には二五〇日餘を經過していることが明かではあるが、本件事案の内容、取調の経過、相被告人の供述内容等諸般の事情に鑑み、右程度の勾留は未だ不當に長い拘禁とはいえない。
五 原審證人Cが原審における取調べを受けた當時一一年(昭和一二年三月生)の小學兒童であつたことは同證人訊問調書の記載から明かであるが、この程度の年齢の者は絶對に證人たる資格がないとはいえないのであつて、同調書記載の同證人の供述内容から見ても同人は本件強盗の被害當時の状況について、詳細に記憶しているその實驗事實を順序良く訊問に答えて陳述報告しているのであつて、事理を辯識する能力を備えていた者と認めるべく、かかる年齢の證人の供述を證據として採用するか否かは事實審たる原番の自由になし得るところであるから、原審が同證人の右證言を判斷の資料に供したとて無効の證據を罪證に供した違法があるということはできない。
六 證人訊問調書に、その證人が刑訴第二〇一條第一項各號に該當するかしないかの取調をした旨の記載がなくても、右證人の供述内容その他によつて、右各號に該當せず宣誓を要する證人であることが明白であり、且つ、宣誓をなさしめて訊問をしている場合には、右訊問調書はこれを證據として差支えない。
七 元来刑事訴訟法第一九九條は、證人にその供述をなす前あらかじめその注意を促し、良心に從つてありのまゝにその實験した事實を供述させるとともに、僞證罪に問われることのないようにさせるため設けられた訓示的規定であるから、證人に宣誓をなさした上供述させている以上、たとえ宣誓前に僞證の罰を論示しなかつたからといつて、宣誓の効力には何ら影響がなく、その證人の證言を無効と考える必要は少しもない。
八 共同被告人中のある者が公訴事實を認め、他の者がこれを否認している場合に、裁判所がその公訴事實の審理のため證人を喚問するのは、結局眞實を發見するためであるから、かような證人に支給した旅費日當などの訴訟費用を、その共同被告人をして連帶して負擔させるか又はその中のある者のみに負擔させるかは、裁判所が自由に定めることのできる問題であつて、從つて、審理の結果右の公訴事實が證明され判決において認定された場合には右の費用は、公訴事實を否認していた被告人のみに負擔させるべきであつて當初からこれを認めていた被告人には負擔させてはいけないという理由はない。
九 刑事訴訟法第二四二條によれば、訴訟費用の負擔を命じる裁判に對しては本案の裁判について上訴する場合に限り不服を申立て得るものであつて、本案の裁判と獨立して上告の申立をすることはできないものである。從つて、本案の裁判に對する上告が理由があるときは、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服もこれを維持することができるけれども、本案の裁判に對する上告が理由がないときは、これの離れて、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服のみを維持することはできないものと解するのが相當である。しかるに本件において本案の裁判に對する上告が少しも理由がないものであることは、上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和23年4月17日 昭和22(れ)209
- 登載
- 刑集 第2巻4号364頁
- 参照法条
- 刑訴法43条2項,刑訴法411条,刑訴法334条,刑訴法410条10号,刑訴法184条,刑訴法201条,刑訴法199条,刑訴法238条,刑訴法242条,刑法60条,刑法236条,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条2項
論点80第236条刑法
共犯者が住居に侵入した後強盗に着手する前に現場から離脱した場合において共謀関係の解消が否定された事例
裁判要旨共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀した被告人が,共犯者の一部が住居に侵入した後強盗に着手する前に,見張り役の共犯者において住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい,先に帰る」などと一方的に伝えただけで,被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく,待機していた現場から上記見張り役らと共に離脱したなどの本件事実関係の下では,当初の共謀関係が解消したとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成21年6月30日 平成19(あ)1580
- 登載
- 刑集 第63巻5号475頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法130条前段,刑法236条1項
論点81第236条刑法
刑事未成年者に指示命令して強盗を実行させた者につき強盗の共同正犯が成立するとされた事例
裁判要旨A子が生活費欲しさから強盗を計画し,12歳10か月の長男Bに指示命令して強盗を実行させた場合においても,当時Bには是非弁別の能力があり,A子の指示命令はBの意思を抑圧するに足る程度のものではなく,Bは自らの意思によりその実行を決意した上,臨機応変に対処して強盗を完遂し,Bが奪ってきた金品をすべてA子が領得したなど判示の事実関係の下では,A子につき強盗の間接正犯又は教唆犯ではなく共同正犯が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成13年10月25日 平成12(あ)1859
- 登載
- 刑集 第55巻6号519頁
- 参照法条
- 刑法41条,刑法60条,刑法61条,刑法236条1項
論点82第237条刑法
刑法二三八条〈事後強盗〉の準強盗を目的とする場合と同法二三七条にいう「強盗ノ目的」
裁判要旨刑法
二三七条〈強盗予備〉にいう「強盗ノ目的」には同法二三八条の準強盗を目的とする場合を含む。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和54年11月19日 昭和53(あ)643
- 登載
- 刑集 第33巻7号710頁
- 参照法条
- 刑法237条,刑法238条
論点83第237条刑法
一 予備罪と中止未遂の関係
二 第一審判決の不定期刑を第二審が定期刑にする場合と旧刑訴第四〇三条
裁判要旨一 予備罪には中止未遂の観念を容れる余地がない。
二 第一審が旧少年法第八条に従い、懲役二年六月以上四年以下の不定期刑を言い渡した被告人が控訴の申立をした事件において、第二審がその判決時において既に成人となつていた被告人に対し、右不定期刑の中間位である三年三月より重い懲役四年の定期刑を言い渡したときは旧刑訴第四〇三条に違反する。註。田中、井上、谷村各裁判官は中間説に同調
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和29年1月20日 昭和24(れ)1881
- 登載
- 刑集 第8巻1号41頁
- 参照法条
- 刑法43条,刑法237条,刑法10条,旧刑訴法403条,旧少年法8条
論点84第238条刑法
刑法第二三八条〈事後強盗〉の強盗にあたる事例。
裁判要旨某工場で窃盗した者が、現場から一〇メートル位距つた同工場塀外の路上で、折柄警戒中の巡査に発見せられ、現行犯人として追跡を受け、約六〇メートル進んだ地点で逮捕されようとしたので、これを免れるため、手拳で右巡査の胸部を突くなどの暴行を加え、格闘したが、程なく抵抗を止め、同巡査からシヤツの襟をつかまれて附近の前記工場守衛詰所へ連行される途中、二、三〇メートル進んだ所で、右巡査の隙を窺い、その手を振りきつて逃げ出し、更に、逮捕を免れるため、手拳で同巡査の首辺を殴打し、胸部を突いてその場に顛倒させ或いは足蹴にする等の暴行を加えた場合には、刑法
第二三八条〈事後強盗〉にいう「窃盗財物ヲ得テ逮捕ヲ免レル為メ暴行ヲ為シタルトキ」にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年6月12日 昭和31(あ)3767
- 登載
- 刑集 第13巻6号960頁
- 参照法条
- 刑法238条
論点85第238条刑法
傷害行為が強盗の機会に犯されたものと認められる事例。
裁判要旨被告人が第一現場において被害者の運転するタクシーの車内で料金の支払を免れ、かつ金員強取の目的で被害者に拳銃を突付け金を要求したが同人が応じないため一旦下車し、その後再び右タクシーに乗車した約五、六分の後約六千米距つた第二現場である交番前に致つた際、逃走せんがため格斗の末その車内において右拳銃をもつて被害者の頭部を殴打して傷害を負わせた本件傷害の所為はその強盗の機会に犯されたものというべきで強盗と別の機会になされた別個独立の行為とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年5月22日 昭和33(あ)1694
- 登載
- 刑集 第13巻5号801頁
- 参照法条
- 刑法238条,刑法240条
論点86第238条刑法
刑法第二三八条〈事後強盗〉の「逮捕ヲ免レ」るための暴行にあたる事例。
裁判要旨窃盗犯人が、進行中の電車内で現行犯として車掌に逮捕され、約五分経過後到着駅ホームを警察官に引渡のため連行されている際に、逃走を企て右車掌に暴行したときは、刑法
第二三八条〈事後強盗〉の「逮捕ヲ免レ」るための暴行にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年3月23日 昭和33(あ)2499
- 登載
- 刑集 第13巻3号391頁
- 参照法条
- 刑法238条,刑訴法213条,刑訴法214条
論点87第238条刑法
刑法第二三八条〈事後強盗〉の「逮捕ヲ免レ」るための暴行にあたる事例。
裁判要旨窃盗犯人が現行犯として被害者に逮捕せられ警察官に引き渡されるまでの間に、逮捕状態を脱するため暴行をすることも、刑法
第二三八条〈事後強盗〉の「逮捕ヲ免レ」るための暴行にあたる
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年10月31日 昭和31(あ)863
- 登載
- 刑集 第12巻14号3421頁
- 参照法条
- 刑法238条,刑法240条,刑訴法213条,刑訴法214条
論点88第238条刑法
強姦前に盗品を返還した場合と強盗強姦罪の成立
裁判要旨犯人が衣類を窃取して屋外に出た際、帰宅した家人(女)に発見され、逮捕を免れるため、同女を屋内に押し入れ両手を後手に縛り上げて押入れに入れる等の暴行を加えたのち、同女の姿態をみて劣情を催しその押入内で同女を強姦した場合において、強姦前に盗品をもとの場所に返還した事実があつたとしても、刑法
第二四一条〈強盗・不同意性交等及び同致死〉前段の罪の成立を妨げない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年12月23日 昭和28(あ)5553
- 登載
- 刑集 第9巻14号2957頁
- 参照法条
- 刑法238条,刑法241条
論点89第238条刑法
事後強盗としての暴行についての共謀等を認めなかった原判決を重大な事実誤認の疑いが顕著であるとして破棄して差し戻した事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成21年10月8日 平成20(あ)181
- 登載
- 集刑 第297号425頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑法238条,刑法240条,刑訴法411条3号
論点90第238条刑法
妄想型統合失調症による幻覚妄想状態の中で幻聴,妄想等に基づいて行った行為が「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」2条2項〈すべての者の国外犯〉の対象行為に該当するかどうかの判断方法
裁判要旨妄想型統合失調症による幻覚妄想状態の中で幻聴,妄想等に基づいて行為を行った本件のような場合(判文参照),当該行為が「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」
2条2項〈すべての者の国外犯〉の対象行為に該当するかどうかの判断は,対象者が幻聴,妄想等により認識した内容に基づいて行うべきでなく,対象者の行為を当時の状況の下で外形的,客観的に考察し,心神喪失の状態にない者が同じ行為を行ったとすれば,主観的要素を含め,対象行為を犯したと評価できる行為と認められるかどうかの観点から行うべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成20年6月18日 平成20(医へ)1
- 登載
- 刑集 第62巻6号1812頁
- 参照法条
- 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律1条,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律2条2項5号,刑法238条
論点91第238条刑法
窃盗の犯人による事後の脅迫が窃盗の機会の継続中に行われたとはいえないとされた事例
裁判要旨被害者方で財物を窃取した犯人が,だれからも発見,追跡されることなく,いったん同所から約1km離れた場所まで移動し,窃取の約30分後に再度窃盗をする目的で被害者方に戻った際に逮捕を免れるため家人を脅迫したなど判示の事実関係の下においては,その脅迫は,窃盗の機会の継続中に行われたものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成16年12月10日 平成16(あ)92
- 登載
- 刑集 第58巻9号1047頁
- 参照法条
- 刑法238条
論点92第238条刑法
窃盗犯人による暴行が窃盗の機会の継続中に行われたものとされた事例
裁判要旨窃盗犯人が他人の居宅で財物を窃取した後もその天井裏に潜み,犯行の約3時間後に駆け付けた警察官に対し逮捕を免れるため暴行を加えたなど判示の事実関係の下においては,その暴行は窃盗の機会の継続中に行われたものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成14年2月14日 平成12(あ)411
- 登載
- 刑集 第56巻2号86頁
- 参照法条
- 刑法238条,刑法240条
論点93第240条刑法
一 死刑選択の許される基準
二 無期懲役を言い渡した控訴審判決が検察官の上告により量刑不当として破棄された事例
裁判要旨一 死刑制度を存置する現行法制の下では、犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であつて、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許される。
二 先の犯行の発覚をおそれ、あるいは金品の強取するため、残虐、執拗あるいは冷酷な方法で、次々に四人を射殺し、遺族の被害感情も深刻である等の不利な情状(判文参照)のある本件においては、犯行時の年齢(一九歳余)、不遇な生育歴、犯行後の獄中結婚、被害の一部弁償等の有利な情状を考慮しても、第一審の死刑判決を破棄して被告人を無期懲役に処した原判決は、甚だしく刑の量定を誤つたものとして破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和58年7月8日 昭和56(あ)1505
- 登載
- 刑集 第37巻6号609頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法199条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点94第240条刑法
検察官の冒頭陳述中の被告人の余罪に関する部分が冒頭陳述として相当でないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年11月29日 昭和57(あ)1505
- 登載
- 集刑 第232号995頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法199条,刑法240条,刑訴法296条,刑訴法411条2号
論点95第240条刑法
強盗殺人未遂罪といわゆる打撃の錯誤
裁判要旨犯人が強盗の手段として人を殺害する意思のもとに銃弾を発射して殺害行為に出た結果、犯人の意図した者に対して右側胸部貫通銃創を負わせたほか、犯人の予期しなかつた者に対しても腹部貫通銃創を負わせたときは、後者に対する関係でも強盗未遂罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和53年7月28日 昭和52(あ)623
- 登載
- 刑集 第32巻5号1068頁
- 参照法条
- 刑法38条1項,刑法240条,刑法243条
論点96第240条刑法
被告人の自白に信用性真実性があると認めた原審の判断が支持し難いとして破棄された事例
裁判要旨記録にあらわれた証拠関係を検討すれば、犯行の外形的事実と被告人との結びつきについて、合理的な疑いを容れるに足りる幾多の問題点が存し(判文参照)、原審が、被告人の自白に信用性、真実性があるものと認め、これに基づいて犯行を被告人の所為であるとした判断が支持し難いときは、刑訴法四一一条一号、三号により、原判決は破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年7月31日 昭和43(あ)602
- 登載
- 刑集 第24巻8号597頁
- 参照法条
- 刑法240条後段,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点97第240条刑法
強盗殺人罪についての処断と酌量軽減規定の適用。
裁判要旨強盗殺人罪について無期懲役に処するときは、酌量軽減の規定を適用すべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年11月2日 昭和40(あ)832
- 登載
- 刑集 第19巻8号797頁
- 参照法条
- 刑法66条,刑法71条,刑法68条,刑法240条
論点98第240条刑法
訴因の変更を必要としない事例(強盗殺人の共同正犯―殺人の幇助)
裁判要旨被告人は、甲が金品強取の目的で乙を殺害しようとしてその首を絞めているとき、その企図を察知共謀の上乙の抵抗を阻止し、また着用の腰紐を甲に与えて絞首殺害の目的を達成するに至らせた旨の訴因で、被告人において甲が乙殺害の目的でその首を絞めている企図を察知しながら、その着用の腰紐を甲に与えて、絞首殺害の目的達成を容易ならしめてこれを幇助したと認めるのには訴因の変更を必要としない
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月24日 昭和31(あ)462
- 登載
- 刑集 第12巻10号2269頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑法240条,刑法199条,刑法60条,刑法62条
論点99第240条刑法
強盗強姦未遂と強盗殺人との競合
裁判要旨婦女を強姦した上所持品を強取しようと決意し、まずその前頸部を扼して失神させ被害者の自転車を隠す等の行為に出で、強姦の点は未遂に終つた後即時犯行の発覚をおそれて殺意を生じ殺害した場合は、刑法
第二四〇条〈強盗致死傷〉後段、
第二四一条〈強盗・不同意性交等及び同致死〉前段、
第二四三条〈未遂罪〉、
第五四条第一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段を適用すべきものである
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月24日 昭和32(あ)3259
- 登載
- 刑集 第12巻10号2301頁
- 参照法条
- 刑法240条,刑法241条,刑法243条,刑法54条1項
論点100第240条刑法
刑法第二四三条〈未遂罪〉第二四〇条〈強盗致死傷〉後段の強盗殺人未遂罪の一罪として処断すべき事例
裁判要旨人の金員を強取しかつその現場で同人を殺害しようと企て、実行に著手したが、強取の目的も殺害の目的も遂げなかつたという場合には、刑法
第二四三条〈未遂罪〉第二四〇条〈強盗致死傷〉後段の強盗殺人未遂罪の一罪として処断すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年8月1日 昭和31(あ)4203
- 登載
- 刑集 第11巻8号2065頁
- 参照法条
- 刑法243条,刑法240条
論点101第240条刑法
想像的競合にあたる一事例
裁判要旨強盗が数人を殺害しようと決意し、続け様に三発拳銃を発射して一名を死亡させ他の一名に傷害を与えたとき、刑法
第五四条第一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段にあたる強盗殺人、同未遂であるとした原審の判断は相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年1月29日 昭和26(れ)2215
- 登載
- 集刑 第59号443頁
- 参照法条
- 刑法54条1項前段,刑法240条,刑法243条
論点102第240条刑法
一 被告人の在延する公判廷において口頭で罰条を追加する場合に特に被告人に通知手続を執ることの要否
二 犯罪事実認定の資料となる医師の診断書の採証要件
三 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対してそれぞれ暴行を加え、同人等に各傷害を与えた場合の罪責
裁判要旨一 被告人が在延する公判廷における口頭の罰条追加の場合には裁判所が特に被告人に対しこれが通知の手続を執る必要のないことは多言を要しないし、また、犯罪事実認定の資料となるべき医師の診断書は刑訴法第三二一条、第三二六条の要件あるを以て足り(本件では同第三二六条の同意あること記録上明白である)、同第二七八条、刑訴規則第一八三条所定の事実を記載するの必要ないこと勿論であるから、刑訴法第四一一条を適用すべきものとも認められない。
二 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対しそれぞれ暴行を加え同人等に各傷害を与えた場合は、甲、乙に対する各強盗傷人罪の併合罪となる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月9日 昭和26(あ)1140
- 登載
- 刑集 第5巻9号1730頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑訴法321条,刑訴法411条,刑訴法326条,刑訴法278条,刑訴規則183条,刑法240条前段,刑法45条前段
論点103第240条刑法
一 疊建具と刑法第一〇八条にいわゆる「建造物」放火未遂罪の成立
二 強盗の機会に人を殺害した所為と強盗殺人罪の成立
裁判要旨一 疊建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とするものである。従つて、判示布団は勿論判示疊のごときは未だ家屋と一体となつてこれを構成する建造物の一部といえないこと多言を要しないから、原判決の前示判示は、建造物の放火既遂の犯罪事実を認定判示したものではなく、その放火未遂の認定判示であるといわなければならない。
二 強盗の機会に人を殺害すれば、刑法
第二四〇条〈強盗致死傷〉後段の「強盗人ヲ死ニ致シタルトキ」にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和25年12月14日 昭和25(れ)1403
- 登載
- 刑集 第4巻12号2548頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑法112条,刑法240条
論点104第240条刑法
短期のある有期懲役刑の減軽
裁判要旨原判決は、その法律適用に関する説明によれば、刑法
第二四〇条〈強盗致死傷〉前段所定の法定刑中有期懲役刑を選擇し、その法定の有期懲役刑を同法第六八条第三号に従い酌量減軽し、懲役三年六月以上同七年六月の刑期範囲内において被告人を懲役五年に処したものであること明白であるそして同条号に基く減軽はその長期と短期とを各二分の一に減ずるものであるから、原判決の擬律には何等の錯誤も存しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月9日 昭和25(れ)1204
- 登載
- 刑集 第4巻11号2244頁
- 参照法条
- 刑法68条3号,刑法240条
論点105第240条刑法
擬律錯誤が判決破棄の理由とならない一事例
裁判要旨強盗致死の一罪と認むべき所為につき、強盗未遂と強盗致死の両規定を適用した擬律錯誤があつても、これを連続犯として結局強盗致死の一罪で問擬している場合には、右擬律錯誤は未だ原判決破棄の理由と為すに足らない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和25年11月17日 昭和25(れ)1112
- 登載
- 刑集 第4巻11号2334頁
- 参照法条
- 刑法240条後段,刑法55条(削除前),刑法243条,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法236条
論点106第240条刑法
強盗致傷罪における傷害の意義
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成6年3月4日 平成5(あ)1020
- 登載
- 集刑 第263号101頁
- 参照法条
- 刑法240条
論点107第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(堺市連続強盗殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成31年2月12日 平成28(あ)1485
- 登載
- 集刑 第325号1頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点108第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(愛知一家強盗殺傷事件)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成30年9月6日 平成27(あ)1585
- 登載
- 集刑 第323号39頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点109第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(資産家夫婦強盗殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成30年12月21日 平成28(あ)543
- 登載
- 集刑 第324号23頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点110第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(鳥取連続不審死事件)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成29年7月27日 平成26(あ)589
- 登載
- 集刑 第322号1頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法240条,刑訴法411条2号,刑訴法411条3号
論点111第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(大阪ドラム缶遺体事件)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成29年12月8日 平成27(あ)120
- 登載
- 集刑 第322号57頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号,刑訴法411条3号
論点112第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(長野一家3人強盗殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成28年4月26日 平成26(あ)477
- 登載
- 集刑 第319号307頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点113第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(福島夫婦強盗殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成28年3月8日 平成26(あ)959
- 登載
- 集刑 第319号163頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点114第240条刑法
被害者1名の強盗殺人等の事案につき無期懲役の量刑が維持された事例(名古屋闇サイト殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成24年7月11日 平成23(あ)844
- 登載
- 集刑 第308号91頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2項
論点115第240条刑法
強盗殺人事件等に関する無期懲役の確定裁判のある被告人が,同事件の13日後に犯した被殺者1名の住居侵入,強盗殺人の事案(確定裁判の余罪)につき,無期懲役の量刑が維持された事例
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成24年12月17日 平成23(あ)494
- 登載
- 集刑 第309号213頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法50条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点116第240条刑法
強盗殺人1件,強盗致死・強盗致傷1件等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成21年12月17日 平成19(あ)746
- 登載
- 集刑 第299号1275頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点117第240条刑法
被殺者2名の殺人,強盗殺人等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例(静岡大学生強殺事件)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成20年9月29日 平成19(あ)1317
- 登載
- 集刑 第295号135頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法199条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点118第240条刑法
被殺者2名の強盗殺人等被告事件につき,多数意見では被告人2名を無期懲役に処した第1審判決を維持した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされたが,1名の被告人について,2裁判官による量刑不当との反対意見が付された事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成20年2月20日 平成18(あ)417
- 登載
- 集刑 第293号119頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点119第240条刑法
強盗殺人1件,被害者を深刻な認知症に至らしめた強盗殺人未遂1件等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成20年11月4日 平成18(あ)746
- 登載
- 集刑 第295号239頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法240条,刑法243条,刑訴法411条2号
論点120第240条刑法
強盗殺人等被告事件につき,無期懲役に処した第1審判決を維持した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成17年7月15日 平成12(あ)690
- 登載
- 集刑 第287号571頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点121第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(愛知の夫婦強盗殺人等事件)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和元年7月19日 平成28(あ)1889
- 登載
- 集刑 第326号193頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法(平成16年法律第156号による改正前のもの)240条後段,刑訴法411条2号
論点122第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(干物店強盗殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和3年1月28日 平成30(あ)1270
- 登載
- 集刑 第329号1頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号,刑訴法411条3号
論点123第240条刑法
死刑の量刑が維持された事例(前橋市連続強盗殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和2年9月8日 平成30(あ)318
- 登載
- 集刑 第328号41頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点124第241条刑法
強盗強姦罪の成否に関する原判決の事実認定の是非等について補足意見,反対意見が付された事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成19年10月10日 平成19(あ)79
- 登載
- 集刑 第292号265頁
- 参照法条
- 刑法241条前段,刑訴法411条3号
論点125第242条刑法
一 国鉄公傷年金証書は財物か
二 担保に供した国鉄公傷年金証書に対する詐欺罪の成立
裁判要旨一 国鉄公傷年金証書は、刑法にいわゆる財物にあたる。
二 国鉄公傷年金証書はこれを債権の担保に供することは法令上禁止され無効であるとしても、該年金の受給者がその証書を債権担保のため債権者に差入れた後債権者を欺罔して右証書を交付させたときは、刑法
第二四二条〈他人の占有等に係る自己の財物〉にいわゆる「他人ノ財物ト看做」された自己の財物を騙取した詐欺罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年8月28日 昭和31(あ)4282
- 登載
- 刑集 第13巻10号2906頁
- 参照法条
- 刑法242条,刑法246条1項,刑法251条,国有鉄道共済組合規則(昭和15年鉄道省令7号)34条,国有鉄道共済組合規則(昭和135鉄道省令7号)31条,公共企業体職員等共済組合法29条,恩給法11条
論点126第242条刑法
刑法二四二条〈他人の占有等に係る自己の財物〉の罪の成立する事例
裁判要旨原判決が本件物件は司法警察職員の正当な領置手続の過程において、その命によりa駅長が看守していたもので、a駅長の占有は適法な占有であるとした判断は正当である。註。第一審の認定は他人の占有に係る自己の財物の窃取であり、この判例は右の認定を支持したものである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年3月23日 昭和28(あ)3502
- 登載
- 集刑 第103号717頁
- 参照法条
- 刑訴法221条,刑法242条
論点127第244条刑法
一 起訴状記載の訴因が刑法第二四四条第一項後段の親族相盗にあたるに拘らず告訴を欠く場合と訴因変更の可否
二 起訴条記載の訴因が刑法第二四四条第一項後段の親族相盗にあたるに拘らず告訴を欠く場合と起訴手続の効力
裁判要旨本件公訴にかかる窃盗の事実が、刑法
二四四条一項〈親族間の犯罪に関する特例〉後段の親告罪であるか否かは、最終的には、裁判所により事実審理の結果をまつて、判定さるべくものであり、必ずしも起訴状記載の訴因に拘束されるものではない。従つて、本件のように、事実審理の過程において起訴状に記載された訴因事実が前示の親告罪にあたることが明らかになつた場合にも、適法な告訴がないからといつて、所論のようにその起訴手続を直ちに無効であると断定すべきではない。尤も、かように訴因について訴訟条件を欠くことが明らかとなつたときは、裁判所は、もはや、この訴因について実体的訴訟関係を進展させることを得ないから、訴訟条件の欠缺が治癒または補正されない以上、その起訴手続は不適法、無効なものとして、公訴棄却の形式的裁判を以つて、その訴訟手続を締結せざるを得ないことはいうまでもない(刑訴三三八条四号)。しかし、本来の訴因が右の如く訴訟条件を欠くからといつて、現行法上、それだけで訴因の変更、追加を絶対に許さないとする理由は何ら存しない(親告罪と否とにより直ちに公訴事実の同一性を失うものではない)。そして、本件においては、本来の訴因事実の一部について、訴因変更への手続が適法になされているのであつて、刑法
二四四条の適用のない新しい訴因事実が裁判所により認定され、確定されたのであるから、その部分に関する限り本件被告事件は、本来、親告罪でなかつた訳であり、従つてこの点に関する本件起訴手続は、告訴がなくても、もともと、有効であつて無効でなかつたことに帰するのである。原判決には所論のような法令違反もない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月8日 昭和26(あ)4394
- 登載
- 刑集 第8巻9号1471頁
- 参照法条
- 刑法244条1項,刑訴法312条,刑訴法338条4号
論点128第244条刑法
刑法第二四四条第一項〈親族間の犯罪に関する特例〉前段にいわゆる「同居の親族」といえない一事例
裁判要旨一 刑法
二四四条一項〈親族間の犯罪に関する特例〉前段にいわゆる同居の親族に関する原審の見解は正当である。
二 (原審見解)右被害者Aは所論のように被告人と従兄弟の関係にあたる親族ではあるが当時被告人方の一室を間代一ケ月金二百円にて借受け特に被告人方と区劃を為し諸物資の受配、炊事、起居等全く別個に生活をしていたことを明認することができるから、右が同一家屋内において居住して居たからというて、これを以て
二百四十四条第一項前段に該当する所謂同居の親族と為すことは出来ない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年12月26日 昭和26(あ)4385
- 登載
- 集刑 第71号951頁
- 参照法条
- 刑法244条
論点129第244条刑法
一 満一五歳又は満一六歳の未成年者の供述の証拠能力
二 刑法第二四四条〈親族間の犯罪に関する特例〉と賍物
裁判要旨一 満一五才又は満一六才の未成年者であるというだけで事理を弁える能力がないということはできないのであるから、これらの者の供述は証拠能力を欠くものではない。その供述を信用し得るものとして証拠として採用するか否かは事実審たる裁判所の自由裁量に委ねられている問題である。
二 刑法
第二四四条〈親族間の犯罪に関する特例〉は、同条所定の者の間において行われた窃盗罪及びその未遂罪に関しその犯人の処罰につき特例を設けたに過ぎないのであつて、その犯罪の成立を否定したものではないから、右窃盗罪によつて奪取された物は賍物たる性質を失わない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和25年12月12日 昭和25(れ)1284
- 登載
- 刑集 第4巻12号2543頁
- 参照法条
- 旧刑訴法337条,刑法244条,刑法256条
論点130第244条刑法
窃盗犯人が所有者以外の者の占有する財物を窃取した場合における刑法二四四条一項の適用と同項の親族関係
裁判要旨窃盗犯人が所有者以外の者の占有する財物を窃取した場合において、刑法
二四四条一項〈親族間の犯罪に関する特例〉が適用されるためには、同項所定の親族関係が、窃盗犯人と財物の占有者との間のみならず、所有者との間にも存することを要する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成6年7月19日 平成6(あ)234
- 登載
- 刑集 第48巻5号190頁
- 参照法条
- 刑法244条1項
論点131第244条刑法
1 家庭裁判所から選任された成年後見人が成年被後見人所有の財物を横領した場合と刑法244条1項の準用の有無
2 家庭裁判所から選任された成年後見人が成年被後見人所有の財物を横領した場合に成年後見人と成年被後見人との間の親族関係を量刑上酌むべき事情として考慮することの当否
裁判要旨1 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,同条項は準用されない。
2 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があることを量刑上酌むべき事情として考慮するのは相当ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成24年10月9日 平成24(あ)878
- 登載
- 刑集 第66巻10号981頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑法244条1項,刑法253条,刑法255条
論点132第244条刑法
家庭裁判所から選任された未成年後見人が未成年被後見人所有の財物を横領した場合と刑法244条1項の準用の有無
裁判要旨家庭裁判所から選任された未成年後見人が業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合,未成年後見人と未成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,その後見事務は公的性格を有するものであり,同条項は準用されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成20年2月18日 平成19(あ)1230
- 登載
- 刑集 第62巻2号37頁
- 参照法条
- 刑法244条1項,刑法253条,刑法255条
論点133第244条刑法
刑法244条1項〈親族間の犯罪に関する特例〉と内縁の配偶者
裁判要旨刑法
244条1項〈親族間の犯罪に関する特例〉は,内縁の配偶者に適用又は類推適用されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年8月30日 平成18(あ)334
- 登載
- 刑集 第60巻6号479頁
- 参照法条
- 刑法244条1項