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総則/共犯

共犯の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

刑法60条から65条は、複数人が関与した犯罪について、それぞれの関与の仕方に応じてどの刑を科すかを定めています。共同して実行した者・そそのかした者・手助けした者を区別し、科す刑の重さや処罰の可否を分けているのが特徴です。実務では、誰が正犯扱いになり誰が減軽対象になるかを整理する際の基礎になります。

共犯
類型行為の内容科される刑条文
共同正犯2人以上で共同して実行全員が正犯60条
教唆犯人をそそのかして実行させる正犯の刑61条1項
再教唆教唆者をそそのかす正犯の刑と同様61条2項
従犯(幇助)正犯を手助けする正犯の刑を減軽62条1項・63条
従犯への教唆従犯をそそのかす従犯の刑62条2項
  • 拘留又は科料のみに処すべき罪では、教唆者・従犯は原則として罰しない(特別の規定がある場合を除く)
  • 身分があって初めて成立する犯罪に、身分のない者が加わったときもその者は共犯となる
  • 身分によって刑の軽重が定められている場合、身分のない者には通常の刑を科す
1

共犯

共犯について、条文は何を定めているか。

第60条共同正犯2人以上で実行すれば全員が正犯1項判例 59件
  • 2人以上が共同して犯罪を実行した場合、関与者全員を正犯として扱う
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第61条教唆人をそそのかして実行させたら正犯の刑2項判例 23件
  • 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯と同じ刑を科す
  • 教唆者をさらに教唆した者(再教唆)にも同様に正犯の刑を科す
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第62条幇助正犯を手助けした者は従犯2項判例 30件
  • 正犯を幇助した者は従犯となる
  • 従犯をそそのかした者には従犯の刑を科す
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第63条従犯減軽従犯の刑は正犯より軽くする1項判例 2件
  • 従犯に科す刑は、正犯の刑を減軽したものとする
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第64条教唆及び幇助の処罰の制限拘留・科料のみの罪は教唆・幇助を原則不処罰1項判例なし
  • 拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者・従犯は、特別の規定がなければ罰しない
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第65条身分犯の共犯身分がなくても身分犯の共犯になれる2項判例 20件
  • 身分によって成立する犯罪行為に加わった場合、身分のない者も共犯となる
  • 身分により刑の軽重がある場合、身分のない者には通常の刑を科す
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第60条刑法

兇器準備集合罪と共謀共同正犯の成否(積極)

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年12月4日 昭和58(あ)1207
登載
集刑 第241号357頁
参照法条
刑法60条,刑法208条の2
論点2第60条刑法

謀議の内容において被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていた場合といわゆる共謀共同正犯者としての殺人の故意の成立

裁判要旨謀議の内容において被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせており、犯意自体が未必的なものであつたとしても、実行行為の意思が確定的であつたときは、いわゆる共謀共同正犯者としての殺人の故意の成立に欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年3月6日 昭和58(あ)531
登載
刑集 第38巻5号1961頁
参照法条
刑法38条1項,刑法60条,刑法199条
論点3第60条刑法

訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例

裁判要旨第一審において被告人らが無罪とされた公訴事実が警察官一名に対する傷害致死を含む重大な罪にかかるものであり、また、同事実に関する現場共謀の訴因を事前共謀の訴因に変更することにより同事実につき被告人らに対し共謀共同正犯としての罪責を問いうる余地がある場合であつても、検察官が、約八年半に及ぶ第一審の審理の全課程を通じ一貫して右公訴事実はいわゆる現場共謀に基づく犯行であつて右現場共謀に先立つ事前共謀に基づく犯行とは別個のものであるとの主張をしていたのみならず、審理の最終段階における裁判長の求釈明に対しても従前の主張を変更する意思はない旨明確かつ断定的な釈明をしていたこと、第一審における被告人らの防禦活動は検察官の右主張を前提としてなされたことなど判示の事情があるときは、第一審裁判所としては、検察官に対し右のような求釈明によつて事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くしたものというべきであり、さらに進んで、検察官に対し、訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務を有するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年9月6日 昭和55(あ)629
登載
刑集 第37巻7号930頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴規則208条,刑法60条,刑法205条1項
論点4第60条刑法

是非弁別能力を有する刑事未成年者を利用して窃盗を行つた者につき窃盗の間接正犯が成立するとされた事例

裁判要旨自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている一二歳の養女を利用して窃盗を行つたと認められる判示の事実関係のもとにおいては、たとえ同女が是非善悪の判断能力を有する者であつたとしても、右利用者につき窃盗の間接正犯が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年9月21日 昭和58(あ)537
登載
刑集 第37巻7号1070頁
参照法条
刑法41条,刑法60条,刑法61条,刑法235条
論点5第60条刑法

控訴審における謀議の認定手続に不意打ちの違法があるとされた事例

裁判要旨三月一二日から一四日までの謀議への関与を理由にハイジヤツクの共謀共同正犯として起訴された被告人につき、一三日及び一四日の謀議とりわけ一三日夜の第一次謀議への関与を重視してその刑責を肯定した第一審判決に対し、被告人のみが控訴を申し立てた事案において、右第一次謀議への関与の有無がハイジヤツクに関する謀議の成否の判断上とりわけ重要であるとの基本的認識に立つ控訴審が、一三日夜の被告人のアリバイの成立を認めながら、第一審判決が認定せず控訴審において被告人側が何らの防禦活動を行つていない一二日夜の謀議の存否を争点として顕在化させる措置をとることなく、率然として、第一次謀議の日を一二日夜であると認めてこれに対する被告人の関与を肯定した本件訴訟手続(判文参照)は、被告人に不意打ちを与え違法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年12月13日 昭和55(あ)1284
登載
刑集 第37巻10号1581頁
参照法条
刑法60条,刑訴法294条,刑訴法308条,刑訴法317条,刑訴法404条
論点6第60条刑法

背任罪の共同正犯ではなく幇助犯が成立するにとどまるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年4月22日 昭和54(あ)340
登載
集刑 第227号75頁
参照法条
刑法60条,刑法62条1項,刑法65条1項,刑法247条
論点7第60条刑法

現実の殺害行為を一定の事態の発生にかからせていた場合と殺人の故意の成立

裁判要旨謀議された計画の内容においては被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする意思が確定的であつたときは、殺人の故意の成立に欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年12月21日 昭和56(あ)1004
登載
刑集 第35巻9号911頁
参照法条
刑法38条1項,刑法60条,刑法199条
論点8第60条刑法

暴行・傷害を共謀した共犯者のうちの一人が殺人罪を犯した場合における他の共犯者の罪責

裁判要旨暴行・傷害を共謀した共犯者のうちの一人が殺人罪を犯した場合、殺意のなかつた他の共犯者については、傷害致死罪の共同正犯が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年4月13日 昭和52(あ)2113
登載
刑集 第33巻3号179頁
参照法条
刑法38条2項,刑法60条,刑法199条,刑法205条1項
論点9第60条刑法

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律二九条二項〈仮釈放の取消し等〉にいう交付する者にあたらないとされた事例

裁判要旨県農林水産部林務課造林係員が造林事業補助金の交付につき単に補助的な事務を執つていたにすぎずその交付決定処分をするについてこれを左右する地位になかつた場合には、同人は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律二九条二項〈仮釈放の取消し等〉にいう交付する者にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年3月16日 昭和51(あ)687
登載
刑集 第31巻2号80頁
参照法条
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律29条,刑法60条,刑法65条1項
論点10第60条刑法

一 預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条〈すべての者の国外犯〉、四条一号〈公務員の国外犯 第百一条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪〉と金融機関に預金等をする者又は金融機関に預金等をすることについて媒介をする者と通じた特定の第三者の処罰
二 預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条二項にいう「金融機関に預金等をすることについて媒介をする者」にあたらないとされた事例

裁判要旨一 預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条〈すべての者の国外犯〉、四条一号〈公務員の国外犯 第百一条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪〉は、金融機関に預金等をする者又は金融機関に預金等をすることについて媒介をする者と通じた特定の第三者については、その物が自ら預金等をすることについて媒介をする場合を除き、預金者又は媒介者の共犯としても処罰しない趣旨である。
二 被告人が、金融機関の役員に対し自己への融資方を申し込むとともに併せて金融機関の貸出し資金の確保については然るべき預金をあつせんすることを約したうえ、甲に対し、自己が事業資金とするために金融機関から融資を受けようとしているが、それについては引き当てとなる預金が必要なので、預金者には、相応の謝礼をするので然るべき預金をあつせんしてくれるよう依頼した場合において、被告人は預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条二項に規定する金融機関に預金等をすることについて媒介をする者にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年3月18日 昭和49(あ)1839
登載
刑集 第30巻2号212頁
参照法条
預金等に係る不当契約の取締に関する法律2条,預金等に係る不当契約の取締に関する法律4条1号,刑法60条,刑法61条,刑法62条
論点11第60条刑法

一 公職選挙法第二一一条第一項第一号〈業務上過失致死傷等〉の供与等を共謀した者の間における金銭又は物品の授受と同条項第五号の交付又は受交付の罪の成否
二 右共謀にかかる供与等が行なわれた場合における供与等の罪と交付又は受交付の罪との関係
三 前記共謀にかかる供与等が共謀者間で授受された金銭又は物品の一部について行なわれた場合における供与等の罪と交付又は受交付の罪との関係
四 二審が一審判決を破棄するにさいし二審で追加された予備的訴因に基づいて自判することと審級の利益
五 甲が乙に三万円を交付したとする訴因と甲乙共謀のうえ右三万円中二万七、〇〇〇円について丙らに供与等をしたとする訴因との間の公訴事実の同一性。

裁判要旨一 公職選挙法第二二一条第一項第一号〈逮捕等致死傷〉の供与等いわゆる買収を目的とする金銭又は物品を交付し、又はその交付を受ける行為は、右買収を共謀した者相互の間で行なわれた場合でも、同条項第五号の交付又は受交付の罪を構成するのに妨げない
二 前項の場合において、共謀にかかる供与等が行なわれたときは、交付又は受交付の罪は、後の供与等の罪に吸収される
三 前二項の場合において、共謀者間で授受された金銭又は物品の一部について供与等が行なわれ、その残部が受交付者の手裡に保留されたときは、前者についての供与等の罪と後者についての交付又は受交付の罪との併合罪として処断すべきである
四 第一審以来の審理において、金員の授受およびこれに関連する一連の事実関係が十分明らかにされ、被告人の防禦にも支障はなかつたものと認められる本件の場合、原審が、事件を第一審に差し戻すことなく、右予備的訴因に基づいて自ら判決をした措置は、被告人Aに対して審級の利益をはく奪したものとはいえない
五 被告人Aが被告人Bに対して現金三万円を交付したとする本位的訴因と、被告人Aが被告人Bとの共謀のうえ、右現金三万円中合計二万七、〇〇〇円をCらに対してそれぞれ供与もしくはその申込をし、又は交付したとする予備的訴因との間には、公訴事実の同一性が認められるから、右予備的訴因の追加を許可した原審の措置に違法の点はない
裁判
最高裁判所大法廷 昭和41年7月13日 昭和40(あ)1541
登載
刑集 第20巻6号623頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑法60条,刑法45条,刑訴法400条,刑訴法312条
論点12第60条刑法

いわゆる必要的共犯の関係にある被告人らの事件が各別に同一裁判所に係属したのに対し併合審理の請求があつた場合と弁論併合の要否

裁判要旨いわゆる必要的共犯の関係にある被告人らの事件が、各別に同一裁判所に係属している場合に、併合審理の請求があつても、必ずしも弁論を併合しなければならないものではなく、これを併合するかどうかは、右請求を受けた裁判所の裁量事項に属し、極端な裁量権濫用の場合を除いては、違法の問題を生ずる余地はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年4月8日 昭和40(あ)461
登載
集刑 第159号37頁
参照法条
刑法60条,刑訴法313条
論点13第60条刑法

強姦罪と身分のない者の加功。

裁判要旨女性が男性と共謀して、強姦の犯罪行為に加功した場合には、強姦罪の共同正犯が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年3月30日 昭和37(あ)2476
登載
刑集 第19巻2号125頁
参照法条
刑法177条,刑法60条,刑法65条1項
論点14第60条刑法

刑訴法第四〇〇条但書に違反しないとされた事例。

裁判要旨第一審が被告人の所為を詐欺の幇助として認定したのに対し、控訴審が被告人質問によつて事実の取調を行なつたうえ、同一の事実関係を前提として、これを詐欺の共同正犯に問擬した措置は、刑訴法第四〇〇条但書の許さないところではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年6月2日 昭和37(あ)389
登載
集刑 第151号315頁
参照法条
刑訴法400条,刑法246条,刑法60条,刑法62条
論点15第60条刑法

訴因、罰条の変更手続を要しないとされた事例―職業安定法第六三条第一項〈従犯減軽〉と同法第六四条第一号第三二条第一項本文刑法第六〇条

裁判要旨一 被告人は甲女と同棲中同女を働かせてその周旋料を取得しようと企て肩書住居において同女に対し短刀を示しながら「逃げたら只ではおかんぞ」と申し向けて同女を脅迫し昭和三四年二月二八日頃料理店AことBに対し、同女を同人方女給として雇入方斡旋し、もつて脅迫による職業紹介を行つたものであるとの職業安定法六三条一項〈従犯減軽〉該当の公訴事実と被告人は相被告人と共謀の上、法定の除外事由がないのに営利の目的で昭和三四年二月二八日頃右山本に対し右甲女を仲居として雇用するよう斡旋し、もつて有料の職業紹介事業を行つたものであるとの、職業安定法六四条一号三二条一項本文刑法六〇条該当の第一審判決認定事実とは基本的事業関係においては同一であると認められるので、いわゆる公訴事実の同一性には何ら欠くるところはない。
二 本件における事実関係並びに訴訟の経過にかんがみると、前者の罪として起訴された訴因を右脅迫という要件を欠如する後者の罪、しかも起訴にかかる同種の職業犯の一部として認定することは、被告人の防禦に実質的な不利益を与える虞れはなく、いわゆる訴因、罰条の変更手続を要しない場合であると解すべく、第一審裁判所の訴訟手続には所論の如き違法は勿論何ら違法の点は存しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年6月5日 昭和36(あ)102
登載
集刑 第143号15頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,職業安定法63条1項,職業安定法64条1号,職業安定法32条,刑法60条
論点16第60条刑法

殺人予備罪の共同正犯にあたるとされた事例。

裁判要旨殺人の目的を有する者から、これに使用する毒物の入手を依頼され、その使途を認識しながら、右毒物を入手して依頼者に手交した者は、右毒物による殺人が予備に終つた場合に、殺人予備罪の共同正犯としての責任を負うものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年11月8日 昭和37(あ)88
登載
刑集 第16巻11号1522頁
参照法条
刑法201条,刑法199条,刑法60条
論点17第60条刑法

強姦致死罪と認められる事例。

裁判要旨被告人らが被害者を強いて姦淫すべく、下半身を裸にして急激な寒冷にさらしたことを含む暴行行為により、異常体質者の被害者をシヨツク状態に陥らせ、且つ、被害者をすでに死亡したものと誤信して田圃に背負い出し放置して凍えさせた行動により相合して被害者を死に致したときは、包括的に一個の強姦致死罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年1月25日 昭和32(あ)1573
登載
刑集 第15巻1号266頁
参照法条
刑法181条,刑法178条,刑法179条,刑法60条
論点18第60条刑法

一 法律の錯誤としてたばこ専売法違反の成立を妨げないものとされた事例
二 共同被告人を分離して証人として尋問し、その証言を当該被告人の犯罪を認定する証拠とすることと憲法第三八条第一項〈故意〉

裁判要旨一 繊維製品の販売等を目的とする株式会社の代表取締役たる甲と同会社の取締役にして営業部長なる乙とが共謀の上、右会社が日本専売公社指定の製造たばこ小売人ではないのにもかかわらず、同会社の業務に関し、右公社の製造たばこを他に小売販売した場合には、たとえ甲および乙において、製造たばこの小売人の指定が乙の個人名義でなされていても、同人が右会社の前記のような地域にある関係上、会社において製造たばこの小売販売をなし得るものと信じていたとしても、それは法律の錯誤であつて、故意を阻却するものではなく、本件につきたばこ専売法違反の罪が成立することを妨げるものではない。
二 共犯者にして共同被告人たる甲、乙両名のある場合、甲を分離して乙のために甲を証人として尋問した後、更に併合の上、先に右甲が乙の証人としてなした証言を、甲の犯罪を認定する証拠としても、憲法第三八条第一項に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年9月9日 昭和32(あ)2338
登載
刑集 第14巻11号1477頁
参照法条
刑法38条,刑法60条,たばこ専売法29条2項,たばこ専売法71条5号,たばこ専売法77条,憲法38条1項,刑訴法143条,刑訴法146条,刑訴法313条
論点19第60条刑法

訴因変更を許した事例。―「被告人は偽造公文書を行使した」との訴因と「被告人は他人と共謀の上右と同一の公文書を偽造した」との訴因。

裁判要旨本件は、被告人が偽造公文書を行使したとの訴因を、被告人が他人と共謀の上右と同一の公文書を偽造したとの訴因に変更した場合であり被告人自ら同一の公文書に対する公信力を害したとの点において、両者その基本的事実を同一にし、しかも刑法一五八条も、偽造公文書行使の罪を犯した者は、公文書偽造の罪を犯した者と同一の刑に処する旨規定して居るのであつて、起訴状において訴因とされた偽造公文書行使の事実と変更の許可を得て新らしい訴因となつた同一公文書偽造の事実とは、刑事訴訟法上、同一事実関係と解すべきである。されば第一審が所論の如く訴因変更を許可し、原審がこれを適法と判断したことに所論の違法がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年7月19日 昭和31(あ)4296
登載
集刑 第134号633頁
参照法条
刑訴法312条,刑法155条,刑法158条,刑法60条
論点20第60条刑法

判例違反(法令の適用の誤り)が判決に影響しない事例。

裁判要旨原判決は第一審判決をその科刑重きにすぎるとして破棄自判し、被告人の犯罪事実である第一審判決判示第一の各所為及び第三の所為につき、いずれも刑法第二五三条(第三の所為については更に同第六〇条〈共同正犯〉をも適用)の業務上横領罪の規定を適用しているが、右第三の所為(註。業務上横領に加功した非業務者の加功行為)につき刑法二五三条〈業務上横領〉を適用した点は、法令の適用を誤つたものであり、所論判例に違反していること所論の指摘するとおりである。しかし被告人にはこれと併合罪の関係にある右第一の業務上横領の多数の犯行もあり、原判決はこれら業務上横領のうち犯罪の最も重い罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内において量刑処断していることも原判文上明白であるから、右判例違反は判決に影響を及ぼさないから、判決破棄の理由とならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年6月24日 昭和32(あ)609
登載
集刑 第134号359頁
参照法条
刑訴法405条3号,刑訴法410条,刑法253条,刑法252条1項,刑法60条,刑法65条2項
論点21第60条刑法

既遂後の窃盗犯人と共同して賍物を運搬した者の罪責。

裁判要旨既遂後の窃盗犯人と共同して賍物を運搬した者は、本犯が賍物罪に問われなくても、賍物運搬罪の責を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年12月22日 昭和32(あ)2418
登載
刑集 第14巻14号2198頁
参照法条
刑法256条2項,刑法60条
論点22第60条刑法

一 上告審で提出命令が出せるか
二 上告審における証拠物の取調方法
三 上告審で取り調べた証拠物はどの程度に判断の資料となし得るか。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実か。
五 事実誤認を疑うに足りる顕著な事由がある場合と刑訴法第四一一条第三号による原判決の破棄。

裁判要旨一 本件における「諏訪メモ」の如き証拠物については上告審で所有者にその提出を命ずることができる。
二 上告審で右の証拠物を取り調べるにあたつては、公判にこれを顕出するをもつて足りる。
三 上告審は右の方法で取り調べた証拠物を原判決の事実認定の当否を判断する資料に供することができる。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実である。
五 判決に影響があつてこれを破棄しなければ著しく正義に反する重大な事実誤認を疑うに足りる顕著な事由があるときは、刑訴第四一一条第三号によつて原判決を破棄することができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和34年8月10日 昭和29(あ)1671
登載
刑集 第13巻9号1419頁
参照法条
刑訴法99条2項,刑訴法303条,刑訴法305条,刑訴法306条,刑訴法307条,刑訴法317条,刑訴法404条,刑訴法409条,刑訴法414条,刑訴法335条1項,刑訴法411条3号,刑法60条
論点23第60条刑法

一 関税逋脱事件について通告を経ない告発が適法と認められた事例
二 納税義務者でない者につき関税逋脱の共同正犯が成立するか

裁判要旨一 イ、関税逋脱事件につき税関長が懲役の刑に処するのを相当として、通告をすることなく告発したときは、判決が罰金刑であつたからといつて、右告発が遡つて不適法にはならない。
ロ、法人のために行為する者について、税関長が懲役の刑に処するのを相当として直接告発する場合においては、法人に対しても通告なしに告発することができる。
二 納税義務者でない者が納税義務者と共同して関税を逋脱したときは、関税補達の罪の共同正犯となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年5月8日 昭和31(あ)3426
登載
刑集 第13巻5号657頁
参照法条
旧関税法75条,旧関税法82条の3,旧関税法97条,刑法65条1項,刑法60条
論点24第60条刑法

傷害の同時犯の起訴を共同正犯と認定する場合と訴因変更手続の要否。

裁判要旨傷害の同時犯として起訴されたものを共同正犯と認定しても、それによつて被告人に不当な不意打を加え、その防禦権の行使に実質的な不利益を与えるおそれのないかぎり訴因変更の手続を必要としないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年7月18日 昭和30(あ)3982
登載
刑集 第12巻12号2656頁
参照法条
刑訴法312条,刑法207条,刑法204条,刑法60条
論点25第60条刑法

訴因の変更を必要としない事例(強盗殺人の共同正犯―殺人の幇助)

裁判要旨被告人は、甲が金品強取の目的で乙を殺害しようとしてその首を絞めているとき、その企図を察知共謀の上乙の抵抗を阻止し、また着用の腰紐を甲に与えて絞首殺害の目的を達成するに至らせた旨の訴因で、被告人において甲が乙殺害の目的でその首を絞めている企図を察知しながら、その着用の腰紐を甲に与えて、絞首殺害の目的達成を容易ならしめてこれを幇助したと認めるのには訴因の変更を必要としない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月24日 昭和31(あ)462
登載
刑集 第12巻10号2269頁
参照法条
刑訴法312条,刑法240条,刑法199条,刑法60条,刑法62条
論点26第60条刑法

一 いわゆる共謀共同正犯の成立要件
二 実行行為に関与しない共謀者の刑責と憲法第三一条〈刑の時効〉
三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」であるか
四 共謀の判示方法
五 憲法第三八条第二項の法意
六 憲法第三八条第三項の法意
七 被告人本人との関係における共犯者の犯罪事実に関する供述と、憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」
八 数人間の順次の共謀と共謀共同正犯の成立

裁判要旨一 いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない
二 いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責を負うもので、かく解することは憲法第三一条に違反しない
三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならず、これを認めるためには厳格な証明によらなければならない
四 共謀の判示は、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についてまで、いちいち具体的に判示することを要しない
五 憲法第三八条第二項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白または不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白の証拠能力を否定したものである
六 憲法第三八条第三項の規定は、被告人本人の自白の証拠能力を否定または制限したものではなく、かかる自白の証明力(証拠価値)に対する自由心証を制限し、被告人本人を処罰するには、さらにその自由の証明力を補充しまたは強化すべき他の証拠(いわゆる補強証拠)を要することを規定したものである
七 共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であつて、かかる共犯者または共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法三八条二項とごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白と同一視し、またはこれに準ずるものではない
八 同一の犯罪について、数人の間の順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたものと解するを相当とし、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人の間に一個の共謀の成立することを必要とするものではない
裁判
最高裁判所大法廷 昭和33年5月28日 昭和29(あ)1056
登載
刑集 第12巻8号1718頁
参照法条
刑法60条,憲法31条,憲法38条2項,憲法38条3項,刑訴法335条,刑訴法335条1項,刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法319条
論点27第60条刑法

自動車強盗の際、共謀の上別の自動車にて追尾援助を与えようとした者は共同正犯か

裁判要旨自動車強盗の際共謀の上別の自動車でこれを追尾援助を与えようとした被告人の所為が共同正犯にあたるとした原審の判断は正当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年2月26日 昭和29(あ)3585
登載
集刑 第117号1275頁
参照法条
刑法236条,刑法60条
論点28第60条刑法

一 「モミ」賭博の方法と詐欺罪の成立
二 いわゆる「モミ」賭博による詐欺の実行の着手
三 被害者の金銭の不所持と「モミ」賭博による詐欺未遂罪の成否

裁判要旨一 原審の認定した事実によれば、本件詐欺は俗にモミと称する詐欺賭博によるものであつて、見物人には一の数字を書いた紙玉を落し入れると称して金を賭けさせ、金を賭けたものが一の数字のある紙玉を拾い上げたときは賭金の三倍相当の金をやり、もし他の数字のある紙を拾うたときはその賭金は胴元の所得とするという方法であり、被告人においては一の数字のある紙玉を「数他玉中に落して混ぜるように見せかけ、実際は混入せず巧に自分の手中で他の数字を書いた紙玉と取替え」るというのであるから、賭金した見物人には勝つ機会が全くないに拘らず、その機会があるかのように欺罔して賭金を騙取するのである。論旨は、モミ賭博に手品が介在することは社会常識であるから詐欺にはならないと主張するがかかる場合に客は手品に乗らないつもりで賭けても胴元の手品に引かかるのであるから、やはり錯誤に陥つた結果金銭を交付するのであつて詐欺の要件を具えていることはいうまでもない。
二 原審の認定した本件詐欺の方法は、第一点に説明した通りであつて、原判決の認識した事実は賭金した見物人には勝つ機会が全くないのに拘らずその機会があるように「盛にその方法によつて客に勝負をすすめ、被告人AとB、C等は見物人の中に居て勝負するように見せかけて客を誘う所謂サクラの役をつとめ、被告人Dは見張となつて戒の役をしていると見物人中のEことF(当時二十五年)がうまく欺しの手に乗つて勝負しようと決定し」たというのであるから欺罔着手のあつたことは極めて明白である。
三 旅行中の船客は多少の金銭を所有するのが普通であり又他人から金銭を借りることもできたかも知れないのであるからたまたまFが賭金に足りるだけの金銭を持つていなかつたと仮定しても金銭騙取という結果発生の可能性はあつたのである。されば、詐欺の被害物件がないのに犯罪成立するものとした違法があるとの論旨は理由がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月8日 昭和25(れ)1715
登載
刑集 第5巻6号1004頁
参照法条
刑法246条1項,刑法43条,刑法60条,刑法246条,刑法250条
論点29第60条刑法

権利実行の手段としての恐喝にあたらない事例

裁判要旨原判決は、その判示のごときAが原審相被告人Bに無断で同人の住所及び氏名を冐用し、禁制品である手巻タバコを小包郵便で他に発送したという不都合な所為につき、被告人が原審共同被告人Bと共謀し、右Aを恐喝して右の事情を内密に済ませるという名義の下にAから金員を喝取することを企て、判示のごとき恐喝行為をしたという事実を認定したものであることは原判文上明瞭であつて所論のように、被告人が所論権利実行の手段として右のごとき恐喝をしたことは原審の認定しないところであり、また、被告人も原審において、右のごとき事実関係を主張した形迹はみとめられないのである所論は理由がない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年4月27日 昭和25(れ)1791
登載
集刑 第44号689頁
参照法条
刑法249条1項,刑法60条,旧刑訴法409条
論点30第60条刑法

窃盗の共犯として起訴せられ第一審が臟物運搬と認定し原審が窃盗の幇助と認定した場合と事実の同一性

裁判要旨裁判所は、その基本たる事実関係の同一性を害しない限り、公訴事実とその態様において異り、したがつて適用法条を異にする事実を認定することができるものである(昭和二三年れ第八三八号、同年一二月四日第二小法廷判決参照)。そして、所論の原判示事実は、窃盗の共犯として起訴せられ、第一審が臟物運搬と認定したのを、原審において窃盗の幇助と認定したものであり、起訴事実と原審認定事実とは、その基本たる事実関係において同一性を失わないことが明らかであるから、原判決には何等所論のような違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和25年10月27日 昭和25(れ)1098
登載
集刑 第19号1051頁
参照法条
刑法60条,刑法235条,刑法256条,刑法62条,旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号
論点31第60条刑法

一 見張りと窃盜の共同正犯
二 財物奪取の意思連絡による行爲の分擔と強盜の共同正犯
三 共謀の事實についての判示の程度
四 見張りと強盜の共同正犯
五 脅迫されて犯行現場の近くに立つていたとの主張と刑訴第三六〇条第二項
六 共謀の日時場所の判示の要否
七 共同正犯に對し刑法第六〇條の適用を判文に明示することの當否

裁判要旨一 窃盜の共犯者と意思連絡のもとに見張をした場合は窃盜の共同正犯と斷ずべきものである。
二 他人の財物を奪取する意思連絡の下にその目的を達するために、或者は財物の奪取行爲を擔當し、他の者は被害者に暴行又は脅迫を加えた場合に、その全員について強盜罪の共同正犯が成立することは多く論ずるまでもないことである。
三 論旨は何日何處で誰々との間に如何なる通謀をしたかの事實理由を判決に明示しなければならないというのであるが、共謀の日時場所は必ずしも判決に明示する必要はなく誰々の間に本件犯行の共謀があつたかは判文自體より明らかであり且第一審相被告人等と被告人との間に主從關係があるとか、對等關係でないとかの事實は、原審では認めないのであるからことさらに對等關係で共謀した旨を説示しなくとも所論の如き違法はない。
四 原判決舉示の證據により、被告人と第一審相被告人との間に本件犯行について意思連絡があり、しかも相被告人等と被告人の間に主從關係とか、不平等關係があつたということは原審で認めないのであるから所論の如き主犯とかの區別は認められないのである。被告人は直接財物窃盜行爲をなさずただ見張をしただけであるから幇助罪として斷ずべきものだと主張するのであるが、原審においては本件共犯者間には強盜についての意思連絡ありと認定したものであり、強盜についての意思連絡の下に見張をしたものは共同正犯として處罰し得べきことは大審院判例の示すところであつて、今これを改める必要なしとの見解に基き強盜の見張をした被告人を強盜の共同正犯と斷じたことを窺い知ることができるのであるから、所論の如き刑法第六〇條の解釋を誤つたものではない。
五 強盗犯人から、犯行を共にするよう誘われ、これを拒んだところ、匕首で脅迫されたので、やむを得ず犯行の現場近くで立つていたとの主張は、刑訴法第三六〇条第二項の「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張」にあたらない。
六 数人共謀して犯罪を犯した場合に、共謀をした日時場所は、必ずしも判示する必要はない。
七 原判決において刑法第六〇條を適用した旨を判文上明示しなかつたことは所論の通りである。しかし原判決は第一審相被告人等と被告人とは本件犯行について共謀したものと認定し、且其共謀に基いて被告人は見張をした事實を認定したのであり。意思連絡のもとに強盜の見張をしたのであるから、本件犯行の共同正犯であると断じたものである從つて刑法第六〇條を適用した旨を判文上明示しなくとも、同條を適用した趣旨であることはおのづから明白であるから、所論の如き違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和23年7月20日 昭和23(れ)351
登載
刑集 第2巻8号979頁
参照法条
刑法356条,刑法60条,刑法236条,刑訴法360条1項,刑訴法360条2項
論点32第60条刑法

一 公判手續の瑕疵と手續の更新
(辯論更新前における刑訴第四三條第二項の違反)
二 辯護人不出頭のまま行われた公判手續を更新した場合と辯護權の不法制限
三 強盗共犯者の犯意の認定と他の共犯者の行爲に對する共同責任
四 勾留六ケ月後にした自白と不當に長い拘禁後の自白
五 十一歳の小學兒童の證人資格
六 刑訴第二〇一條第一項の取調をした旨の記載を缺く證人訊問調書の證據能力
七 刑訴第一九九條の法意と僞證の罰を告げないでした證人訊問の効力
八 共同被告人に對し訴訟費用の分擔を命ずる場合と裁判所の自由裁量
九 刑訴法第二四二條の法意

裁判要旨一 原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手續は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新され、第二回公判期日には被告人Aの私選辯護人伊藤博夫が、又第三回公判期日には同様同被告人の私選辯護人桑名邦雄がそれぞれ出頭して審理に立曾つていることが記録上明かであるから、右第一回公判期日における前記瑕疵(利害相反する相被告人の辯護人をして被告人を辯護せしめたこと)は右審理更新の結果原判決に影響を及ぼさないものというべきである。
二 原審が右のように第一回公判期日において被告人Aの辯護人伊藤博夫から提出した所論期日變更申請を却下し、同辯護人不出頭のまま同期日の審理を行つたことは所論のとおりであるが、その後第二回公判期日は同辯護人にも適法に通知され同期日には同辯護人出頭の上、公判手續が更新されたこと前示のとおりであるから、結局原審手續は不當に辯護權を制限した違法のものということはできない。
三 原審判決が、被告人Aは相被告人Bにおいて判示被害者宅内で判示暴行脅迫を行つた現場には居合わせず屋外にいたと認定したからといつて直ちに被告人Aは、右暴行脅迫の事實について認識していなかつたとはいえないのみならず、同被告人が暴行脅迫行爲を現認しないからとて、共犯者中の他の者が暴行脅迫を加えて財物を奪取している以上強盗の共犯としての責任を免れ得るものでもない。
四 被告人が勾留されたのは所論のとおり昭和二一年一二月一九日であり、又同被告人の原審における自白は昭和二二年六月五日の第一回公判以後同年八月三〇日の第三回公判を通じてなされているのであつて、右勾留後第一回公判期日迄に約六ケ月、第三回公判期日迄には二五〇日餘を經過していることが明かではあるが、本件事案の内容、取調の経過、相被告人の供述内容等諸般の事情に鑑み、右程度の勾留は未だ不當に長い拘禁とはいえない。
五 原審證人Cが原審における取調べを受けた當時一一年(昭和一二年三月生)の小學兒童であつたことは同證人訊問調書の記載から明かであるが、この程度の年齢の者は絶對に證人たる資格がないとはいえないのであつて、同調書記載の同證人の供述内容から見ても同人は本件強盗の被害當時の状況について、詳細に記憶しているその實驗事實を順序良く訊問に答えて陳述報告しているのであつて、事理を辯識する能力を備えていた者と認めるべく、かかる年齢の證人の供述を證據として採用するか否かは事實審たる原番の自由になし得るところであるから、原審が同證人の右證言を判斷の資料に供したとて無効の證據を罪證に供した違法があるということはできない。
六 證人訊問調書に、その證人が刑訴第二〇一條第一項各號に該當するかしないかの取調をした旨の記載がなくても、右證人の供述内容その他によつて、右各號に該當せず宣誓を要する證人であることが明白であり、且つ、宣誓をなさしめて訊問をしている場合には、右訊問調書はこれを證據として差支えない。
七 元来刑事訴訟法第一九九條は、證人にその供述をなす前あらかじめその注意を促し、良心に從つてありのまゝにその實験した事實を供述させるとともに、僞證罪に問われることのないようにさせるため設けられた訓示的規定であるから、證人に宣誓をなさした上供述させている以上、たとえ宣誓前に僞證の罰を論示しなかつたからといつて、宣誓の効力には何ら影響がなく、その證人の證言を無効と考える必要は少しもない。
八 共同被告人中のある者が公訴事實を認め、他の者がこれを否認している場合に、裁判所がその公訴事實の審理のため證人を喚問するのは、結局眞實を發見するためであるから、かような證人に支給した旅費日當などの訴訟費用を、その共同被告人をして連帶して負擔させるか又はその中のある者のみに負擔させるかは、裁判所が自由に定めることのできる問題であつて、從つて、審理の結果右の公訴事實が證明され判決において認定された場合には右の費用は、公訴事實を否認していた被告人のみに負擔させるべきであつて當初からこれを認めていた被告人には負擔させてはいけないという理由はない。
九 刑事訴訟法第二四二條によれば、訴訟費用の負擔を命じる裁判に對しては本案の裁判について上訴する場合に限り不服を申立て得るものであつて、本案の裁判と獨立して上告の申立をすることはできないものである。從つて、本案の裁判に對する上告が理由があるときは、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服もこれを維持することができるけれども、本案の裁判に對する上告が理由がないときは、これの離れて、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服のみを維持することはできないものと解するのが相當である。しかるに本件において本案の裁判に對する上告が少しも理由がないものであることは、上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和23年4月17日 昭和22(れ)209
登載
刑集 第2巻4号364頁
参照法条
刑訴法43条2項,刑訴法411条,刑訴法334条,刑訴法410条10号,刑訴法184条,刑訴法201条,刑訴法199条,刑訴法238条,刑訴法242条,刑法60条,刑法236条,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条2項
論点33第60条刑法

一 憲法第三三條違反と上告理由
二 留置の際その理由及び辯護人を選任することを得る旨を告げられなかつた場合と上告理由
三 裁判官の令状なき押收搜索と上告理由
四 採證の用に供しない自白強制の主張と上告理由
五 採證の用に供しない被告人の訊問調書を讀み聞かせなかつた場合と上告理由
六 警察官に對する強制自白と同一内容の自白を公判廷において任意にした場合と間接強制の有無
七 證據の取捨選擇の自由と採證の法則
八 第一審に對する非難と上告理由の適否
九 窃取した物の數量の一部を自白のみによつて認定した場合と刑訴應急措置法第一〇條第三項
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が葉煙草を不法領得した行爲と窃盜罪の成否
一一 從犯と正犯の區別

裁判要旨一 假りに被告人が逮捕状なくして、警察に出頭せしめられたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
二 假りに被告人が警察に留置せられるに當り、留置の理由及び辯護人を選任することが出來る旨を告げられなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
三 假りに被告人が現行犯でない本罪に付いて裁判官の令状なく押收、搜索を受けたものであるとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
四 假りに被告人が警察で強制的に自白せしめられたとしても、その自白を證據に採つて居ない限り、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
五 假りに被告人の訊問調書を被告人に讀み聞かせなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
六 假りに被告人の警察官に對する供述が強制によるものであり、且つ公判廷における自白の内容がそれと全然同じであつたとしても、後者は何等強制を加えられないで任意に爲されたものであるから、これを間接の強制とは斷言できない。
七 證據の取捨選擇は原審の自由裁量權に屬する事項であるから、既に原審が採用した證據だけで判示事實を認定するに充分である以上、それに關係のない他の點はこれを不問に付し、又この點を證明するための證人の申請を却下したとしても、採證の法則の違反は審理不盡の違法があるということにはならない。
八 論旨一の中には、第一審に對する非難を含んでいるが、上告は第二審に對してなされるべきものであるからこれは上告理由となし得ないものである。
九 刑訴應急措置法第一〇條第三項は、被告人の自白のみを證據としてこれを有罪とすることを禁じているけれども、犯罪事實の細部に亘つて悉く自白以外の補強證據を必要とする趣旨ではないから、本件のように窃盜の事實の概要が既に、補強證據によつて認められた場合に窃取した物の數量の一部分につき自白のみによつてこれを認めても差支えない。
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が取扱所の保管する政府所有の葉煙草を領得した行爲は横領罪でなくして窃盜罪である。
一一 原判決が被告人はB及びCの手足又は機械として動いたものであるとの認定をしていないことは、判文上明らかである。從つて原判決が被告人の所爲を、窃盜從犯でなくて窃盜正犯に該當するものと判斷したことは何等の違法も存しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年11月5日 昭和23(れ)61
登載
刑集 第2巻12号1473頁
参照法条
憲法33条,憲法34条,憲法35条1項,憲法38条2項,憲法38条,刑訴法411条,刑訴法56条3項,刑訴法337条,刑訴法344条,刑訴法408条,刑訴応急措置法6条1項,刑訴応急措置法7条2項,刑訴応急措置法10条2項,刑訴応急措置法10条3項,刑法253条,刑法235条,刑法60条,刑法62条
論点34第60条刑法

一 被害者の多數ある強盜の單純一罪を判示するに當り被害者の一人を明示しなかつたことの當否
二 共同正犯の判示要領
三 公判請求書が裁判所に受理せられた日附の記載が明らかでない場合における公訴提起の日の認定
四 勾留状の方式の違法と上告理由

裁判要旨一 原判決は本件強盜を單純一罪として判示したのであるから被害者の一人であるAについて原判示のように説示して強盜罪の構成要件に當る具體的事實を明らかにした以上他の被害者の表示を明らかにしなくとも原判決には理由不備の違法はない。
二 被告人の分担した具体的な犯罪行為の判示がなくても、判示事実によつて、被告人が他の共犯者と共謀して自己の犯意を実現するために共犯者の行為を利用したことが認められる以上、共同正犯の判示として十分である。
三 公判請求書に押された裁判所の受理日附印の数字が明らかでないため、公訴が勾留状の請求のあつた日から一〇日以内になされたかどうかが問題となつた場合には、検察官の公判請求書作成の日附、検察庁の被告人に関する移監指揮書作成日附及びその内容、判事が右移監指揮書に同意した日附、刑務所の収容者領収証印の日附並びに弁護人選任届の日附等から公訴提起の日を判断しても差支えない。
四 勾留状の方式について違法があれば、勾留に關する決定に對する抗告その他法律の定める手續にょつてこれが是正を求むべきであつて、これをもつて原判決を攻撃する理由とすることはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年11月10日 昭和23(れ)582
登載
刑集 第2巻12号1512頁
参照法条
刑法236條,刑法60条,刑訴法360條1項,刑訴法257条1項,刑訴法457條,刑訴法411條
論点35第60条刑法

共犯関係が解消していないとされた事例

裁判要旨甲が、乙と共謀のうえ、こもごも丙に暴行を加えたのち、現場から立ち去るに際し、乙において丙に対しなお暴行を加えるおそれが消滅していなかつたのに、格別これを防止する措置を講じなかつたときは、甲乙間の当初の共犯関係は、右の立ち去つた時点で解消したものということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年6月26日 昭和63(あ)948
登載
刑集 第43巻6号567頁
参照法条
刑法60条,刑法205条1項
論点36第60条刑法

一 共同正犯が成立する場合における過剰防衛の成否の判断方法
二 殺人の共同正犯者中の一人に過剰防衛が成立する場合に他の一人について過剰防衛が成立しないとされた事例

裁判要旨一 共同正犯が成立する場合における過剰防衛の成否は、共同正犯者の各人につきそれぞれの要件を満たすかどうかによって判断すべきである。
二 被告人と共謀の上被害者を殺害した甲について過剰防衛が成立する場合であっても、被害者の攻撃を予期し、その機会を利用して甲に反撃を加えさせようとして侵害に臨んだ被告人については、侵害の急迫性の要件を欠き、過剰防衛は成立しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成4年6月5日 平成2(あ)788
登載
刑集 第46巻4号245頁
参照法条
刑法36条,刑法60条,刑法199条
論点37第60条刑法

原判決が理由中において訴因外の共同正犯が成立するとしたことが是認できないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成30年2月26日 平成28(あ)1869
登載
集刑 第323号1頁
参照法条
刑法60条,刑法205条,刑訴法294条,刑訴法308条,刑訴法312条,刑訴法404条
論点38第60条刑法

詐欺の被害者が送付した荷物を依頼を受けて名宛人になりすまして自宅で受け取るなどした者に詐欺罪の故意及び共謀があるとされた事例

裁判要旨宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺において,被告人が自宅に配達される荷物を依頼を受けて名宛人になりすまして受け取り,直ちに回収役に渡す仕事を複数回繰り返して多額の報酬を受領していること,被告人は荷物の中身が詐欺の被害品である可能性を認識しており,現金とは思わなかったなどと述べるのみで詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情は見当たらないことなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人には,詐欺の故意に欠けるところはなく,共犯者らとの共謀も認められる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年12月14日 平成28(あ)1808
登載
刑集 第72巻6号737頁
参照法条
刑法60条,刑法246条1項
論点39第60条刑法

指示を受けてマンションの空室に赴き詐欺の被害者が送付した荷物を名宛人になりすまして受け取るなどした者に詐欺罪の故意及び共謀があるとされた事例

裁判要旨マンションの空室に宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺において,被告人が指示を受けてマンションの空室に赴き,そこに配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り,回収役に渡すなどしていること,被告人は同様の受領行為を多数回繰り返して報酬等を受け取っており,犯罪行為に加担していると認識していたこと,詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情は見当たらないことなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人には,詐欺の故意に欠けるところはなく,共犯者らとの共謀も認められる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成30年12月11日 平成29(あ)44
登載
刑集 第72巻6号672頁
参照法条
刑法60条,刑法246条1項
論点40第60条刑法

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条5号〈すべての者の国外犯 第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪〉の危険運転致死傷罪の共同正犯が成立するとされた事例

裁判要旨被告人とAが,それぞれ自動車を運転し,赤色信号を殊更に無視して交差点に進入し,被害者5名が乗車する自動車にA運転車両が衝突するなどしてうち4名を死亡させ,1名に重傷を負わせた交通事故について,被告人とAが,互いに,相手が同交差点において赤色信号を殊更に無視する意思であることを認識しながら,相手の運転行為にも触発され,速度を競うように高速度のまま同交差点を通過する意図の下に赤色信号を殊更に無視する意思を強め合い,時速100kmを上回る高速度で一体となって自車を同交差点に進入させたなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人には,A運転車両による死傷の結果も含め,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条5号〈すべての者の国外犯 第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪〉の危険運転致死傷罪の共同正犯が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年10月23日 平成29(あ)927
登載
刑集 第72巻5号471頁
参照法条
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条5号,刑法60条
論点41第60条刑法

共犯者による欺罔行為後だまされたふり作戦開始を認識せずに共謀の上被害者から発送された荷物の受領行為に関与した者が詐欺未遂罪の共同正犯の責任を負うとされた事例

裁判要旨共犯者による欺罔行為がされた後,だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに共犯者らと共謀の上,詐欺を完遂する上で欺罔行為と一体のものとして予定されていた被害者から発送された荷物の受領行為に関与したなどの本件事実関係(判文参照)の下では,だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず,被告人はその加功前の欺罔行為の点も含め詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負う。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成29年12月11日 平成29(あ)1079
登載
刑集 第71巻10号535頁
参照法条
刑法60条,刑法250条,刑法246条1項
論点42第60条刑法

花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警察署副署長に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯は成立しないとされた事例

裁判要旨花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警備計画策定の第一次的責任者ないし現地警備本部の指揮官という立場にあった警察署地域官と,同署副署長ないし署警備本部の警備副本部長として同署署長を補佐する立場にあった被告人とでは,分担する役割や事故発生の防止のために要求され得る行為が基本的に異なっていたなどの本件事実関係(判文参照)の下では,事故を回避するために両者が負うべき具体的注意義務が共同のものであったということはできず,被告人に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯は成立しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年7月12日 平成26(あ)747
登載
刑集 第70巻6号411頁
参照法条
刑法60条,刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段,刑訴法254条2項,刑訴法337条4号,刑訴法(平成16年法律第156号による改正前のもの)250条4号
論点43第60条刑法

共謀加担後の暴行が共謀加担前に他の者が既に生じさせていた傷害を相当程度重篤化させた場合の傷害罪の共同正犯の成立範囲

裁判要旨他の者が被害者に暴行を加えて傷害を負わせた後に,被告人が共謀加担した上,更に暴行を加えて被害者の傷害を相当程度重篤化させた場合,被告人は,被告人の共謀及びそれに基づく行為と因果関係を有しない共謀加担前に既に生じていた傷害結果については,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によって傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負う。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年11月6日 平成24(あ)23
登載
刑集 第66巻11号1281頁
参照法条
刑法60条,刑法204条
論点44第60条刑法

虚偽記載半期報告書提出罪及び虚偽記載有価証券報告書提出罪について,当該会社と会計監査契約を締結していた監査法人に所属する公認会計士に会社代表取締役らとの各共同正犯の成立を認めた原判断が是認された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成22年5月31日 平成19(あ)1462
登載
集刑 第300号191頁
参照法条
刑法60条,刑法65条1項,証券取引法(平成17年法律第87号による改正前のもの)24条1項,証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)24条の5第1項,証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)197条1項1号,証券取引法(平成17年法律第87号による改正前のもの)198条6号,証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)207条1項1号,証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)207条1項2号
論点45第60条刑法

単独犯の訴因で起訴された被告人に共謀共同正犯者が存在するとしても,訴因どおりに犯罪事実を認定することが許されるか

裁判要旨検察官において共謀共同正犯者の存在に言及することなく,被告人が当該犯罪を行ったとの訴因で公訴を提起した場合において,被告人1人の行為により犯罪構成要件のすべてが満たされたと認められるときは,他に共謀共同正犯者が存在するとしても,裁判所は訴因どおりに犯罪事実を認定することが許される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年7月21日 平成21(あ)291
登載
刑集 第63巻6号762頁
参照法条
刑法60条,刑法235条
論点46第60条刑法

共犯者が住居に侵入した後強盗に着手する前に現場から離脱した場合において共謀関係の解消が否定された事例

裁判要旨共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀した被告人が,共犯者の一部が住居に侵入した後強盗に着手する前に,見張り役の共犯者において住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい,先に帰る」などと一方的に伝えただけで,被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく,待機していた現場から上記見張り役らと共に離脱したなどの本件事実関係の下では,当初の共謀関係が解消したとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年6月30日 平成19(あ)1580
登載
刑集 第63巻5号475頁
参照法条
刑法60条,刑法130条前段,刑法236条1項
論点47第60条刑法

1 パチスロ店内で,パチスロ機から不正な方法によりメダルを窃取した者の共同正犯である者が,上記犯行を隠ぺいする目的をもって,その隣のパチスロ機において,自ら通常の方法により遊戯していた場合,この通常の遊戯方法により取得したメダルについて窃盗罪が成立するか
2 窃取した財物と窃取したとはいえない財物とが混在している場合における窃盗罪の成立範囲について判示した事例

裁判要旨1 パチスロ店内で,パチスロ機に針金を差し込んで誤動作させるなどの方法によりメダルを窃取した者の共同正犯である者が,上記犯行を隠ぺいする目的をもって,その隣のパチスロ機において,自ら通常の方法により遊戯していた場合,この通常の遊戯方法により取得したメダルについては,窃盗罪は成立しない。
2 パチスロ機の下皿内に窃取したメダル72枚が入っており,ドル箱内に窃取したものと窃取したとはいえないものとが混在したメダル414枚が入っているとの本件事実関係の下においては,窃盗罪が成立する範囲は,下皿内のメダル72枚のほか,ドル箱内のメダル414枚の一部にとどまる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年6月29日 平成21(あ)328
登載
刑集 第63巻5号461頁
参照法条
(1,2につき)刑法235条 (1につき)刑法60条
論点48第60条刑法

事後強盗としての暴行についての共謀等を認めなかった原判決を重大な事実誤認の疑いが顕著であるとして破棄して差し戻した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年10月8日 平成20(あ)181
登載
集刑 第297号425頁
参照法条
刑法60条,刑法238条,刑法240条,刑訴法411条3号
論点49第60条刑法

銃刀法違反被告事件につき,けん銃等所持の共謀が認められないとした第1審判決及びこれを是認した原判決に重大な事実誤認の疑いがあるとして破棄し,事件を第1審に差し戻した事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年10月19日 平成18(あ)1124
登載
集刑 第297号489頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑法60条
論点50第60条刑法

銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき,当該融資の申込みをしたにとどまらず,その実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者に,特別背任罪の共同正犯の成立が認められた事例

裁判要旨銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき,当該融資の申込みをしたにとどまらず,融資の前提となるスキーム(判文参照)を頭取らに提案してこれに沿った行動を取り,同融資の担保となる物件の担保価値を大幅に水増しした不動産鑑定書を作らせるなどして,同融資の実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者は,上記特別背任行為に共同加功をしたということができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成20年5月19日 平成18(あ)2030
登載
刑集 第62巻6号1623頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)486条1項,刑法60条,刑法65条,刑法247条
論点51第60条刑法

銀行の頭取が信用保証協会の役員と共謀して同協会に対する背任罪を犯したと認めるには合理的な疑いが残るとされた事例

裁判要旨甲銀行の頭取乙が,丙信用保証協会の役員丁から,丙の基本財産の増強計画に基づき甲において負担金を拠出するよう依頼された際に,丁に対し,丙の甲に対する別件の保証債務につき免責を主張する丙の方針を見直して代位弁済に応ずるよう要請した結果,丁ら役員が丙の従前の方針を変更し,丙が代位弁済に応じた場合において,甲が上記負担金の拠出を拒絶することが実際上可能であったか疑問であること,丙としては代位弁済に応ずることと負担金の拠出が受けられないこととの利害得失を総合検討して態度を決定すべき立場にあったことなどの事情の下では(判文参照),乙が丁らと共謀して丙に対する背任罪を犯したと認めるには,合理的な疑いが残る。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年9月10日 平成13(あ)347
登載
刑集 第58巻6号524頁
参照法条
刑法60条,刑法65条,刑法247条
論点52第60条刑法

1 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的で実行行為者の判示が択一的であっても殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえないとされた事例
2 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することの適否
3 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に訴因変更手続を経ることなく実行行為者が共犯者又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことに違法はないとされた事例

裁判要旨1 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的なものである上,実行行為者の判示が「A又は被告人あるいはその両名」という択一的なものであっても,その事件が被告人とAの2名の共謀による犯行であるときには,殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえない。
2 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に,それと実質的に異なる認定をするには,原則として訴因変更手続を要するが,被告人に不意打ちを与えるものではなく,かつ,認定される事実が訴因に記載された事実に比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定しても違法ではない。
3 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に,訴因変更手続を経ることなく実行行為者がA又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことは,訴因と認定との間で共犯者の範囲に変わりがなく,被告人が1審の審理においてAとの共謀及び実行行為への関与を否定し,実行行為者は被告人である旨のAの証言につき自己の責任を被告人に転嫁するものであると主張するなどした判示の事情の下においては,違法とはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年4月11日 平成11(あ)423
登載
刑集 第55巻3号127頁
参照法条
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)60条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)199条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法312条1項,刑訴法312条2項
論点53第60条刑法

刑事未成年者に指示命令して強盗を実行させた者につき強盗の共同正犯が成立するとされた事例

裁判要旨A子が生活費欲しさから強盗を計画し,12歳10か月の長男Bに指示命令して強盗を実行させた場合においても,当時Bには是非弁別の能力があり,A子の指示命令はBの意思を抑圧するに足る程度のものではなく,Bは自らの意思によりその実行を決意した上,臨機応変に対処して強盗を完遂し,Bが奪ってきた金品をすべてA子が領得したなど判示の事実関係の下では,A子につき強盗の間接正犯又は教唆犯ではなく共同正犯が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成13年10月25日 平成12(あ)1859
登載
刑集 第55巻6号519頁
参照法条
刑法41条,刑法60条,刑法61条,刑法236条1項
論点54第60条刑法

詐欺の被害者が送付した荷物を依頼を受けて送付先のマンションに設置された宅配ボックスから取り出して受領するなどした者に詐欺罪の故意及び共謀があるとされた事例

裁判要旨宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺において,被告人が依頼を受け,他人の郵便受けの投入口から不在連絡票を取り出すという著しく不自然な方法を用いて,送付先のマンションに設置された宅配ボックスから荷物を取り出した上,これを回収役に引き渡すなどしていること,他に詐欺の可能性の認識を排除するような事情も見当たらないことなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人には,詐欺の故意に欠けるところはなく,共犯者らとの共謀も認められる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和元年9月27日 平成30(あ)1224
登載
刑集 第73巻4号47頁
参照法条
刑法60条,刑法246条1項
論点55第60条刑法

依頼を受けて現金自動預払機付近で待機し電子計算機使用詐欺の犯行により増加した預貯金を引き出すなどした者に電子計算機使用詐欺の共謀が認められた事例

裁判要旨還付金等を受け取ることができる旨誤信させられていた者に電話で指示して、振込送金の操作であると気付かせないまま、現金自動預払機で振込送金する操作を行わせ、被告人らの管理する預貯金口座の残高を増加させる電子計算機使用詐欺において、被告人が氏名不詳者らから依頼を受けて同口座のキャッシュカードを所持して現金自動預払機付近で待機し、氏名不詳者らから電話で指示があれば直ちに同キャッシュカードを使用して現金自動預払機から現金を引き出し、報酬を差し引いた残りを回収役に交付したこと、被告人が特殊詐欺等の犯罪行為によって得られた現金を引き出すものである可能性を認識していたことなどの本件事実関係の下では、被告人と氏名不詳者らとの間で、電子計算機使用詐欺の共謀が認められる。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和7年7月11日 令和6(あ)264
登載
刑集 第79巻5号199頁
参照法条
刑法60条、刑法(令和4年法律第67号による改正前のもの)246条の2
論点56第60条刑法

労働組合の活動に参加した組合員らの威力業務妨害行為につき、労働組合の執行委員長に共謀が認められた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和7年1月27日 令和5(あ)422
登載
―
参照法条
刑法60条、刑法234条
論点57第60条刑法

外国公務員等に対して金銭を供与したという不正競争防止法違反の罪について、共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨外国公務員等に対して金銭を供与したという不正競争防止法違反の罪について、被告人の地位及び立場、被告人が同供与に関する相談を受けるに至った経緯及びこれに対する被告人の言動並びにその相談後に同供与が実行されたという経過等を総合考慮して、被告人が同供与を了承し、これを実行する意思決定に関与したとして共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は、共謀を基礎付ける事実関係となる上記の諸事情に対する評価を十分示さないまま、主として同供与を積極的に容認する意思の有無という観点から検討し、第1審判決の認定が不合理であるとする説得的な論拠を示していないなど、第1審判決が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和4年5月20日 令和2(あ)1135
登載
刑集 第76巻4号452頁
参照法条
刑法60条、不正競争防止法18条1項、不正競争防止法21条2項7号、刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点58第60条刑法

1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことの許否
2 警察官が日本国外に所在する蓋然性がある記録媒体にリモートアクセスをして電磁的記録を複写するなどして収集した証拠について証拠能力が肯定された事例
3 リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可した捜索差押許可状の執行に当たり個々の電磁的記録につき内容を確認せずに複写することが許されるとされた事例
4 インターネット上の動画の投稿サイト及び配信サイトを管理・運営していた被告人両名に上記各サイト上におけるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪の各共同正犯が成立するとされた事例

裁判要旨1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し,同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に,国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことは許される。
2 警察官が,(1)リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可した捜索差押許可状記載の捜索場所においてコンピュータから記録媒体にリモートアクセスをして当該コンピュータの使用者のメールアドレスに係るメール等の電磁的記録を複写するなどし,(2)同所に所在するコンピュータの使用者からアカウントの付与を受けるなどして同所外のコンピュータからリモートアクセスをして電磁的記録の複写を行った場合,上記各リモートアクセスの対象である記録媒体が日本国外にあるか,その蓋然性が否定できないものであっても,(1)の手続は,コンピュータの使用者の任意の承諾に基づく任意捜査として適法であるとはいえず,サイバー犯罪に関する条約32条〈時効の期間〉が規定する場合に該当するともいえないが,実質的には,司法審査を経て発付された同許可状に基づく手続ということができ,警察官は,同許可状の執行と同様の手続により,同許可状において差押え等の対象とされていた証拠を収集したものであって,同許可状が許可する処分の範囲を超えた証拠の収集等を行ったものとは認められず,警察官が,国際捜査共助によらずにコンピュータの使用者の任意の承諾を得てリモートアクセス等を行うという方針を採ったこと自体が不相当であるということはできない,(2)の手続についてのコンピュータの使用者の承諾の効力を否定すべき理由はないなど判示の事情の下においては,(1),(2)の各手続について重大な違法があるということはできず,警察官が各手続により収集した証拠の証拠能力を肯定することができる。
3 捜索差押許可状によるリモートアクセスによる複写の処分の対象となる電磁的記録に被疑事実と関連する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において,差押えの現場における電磁的記録の内容確認の困難性や確認作業を行う間に情報の毀損等が生ずるおそれ等があるという事情の下においては,個々の電磁的記録について個別に内容を確認することなく複写の処分を行うことが許される。
4 インターネット上の動画の投稿サイト及び配信サイトを管理・運営していた被告人両名が,上記各サイトに投稿・配信された動画が無修正わいせつ動画であったとしても,これを利用して利益を上げる目的で,上記各サイトにおいて不特定多数の利用者の閲覧又は観覧に供するという意図の下,上記各サイトの仕組み等を通じて動画の投稿・配信を勧誘し,投稿者及び配信者らが,上記の働きかけを受け,同様の意図に基づき,上記各サイトのシステムに従って投稿又は配信を行ったものであり,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪は,上記投稿者らが無修正わいせつ動画を上記各サイトに投稿又は配信することによって初めて成立し,上記投稿者らも,被告人両名らによる上記勧誘及び上記各サイトの管理・運営行為がなければ,無修正わいせつ動画を不特定多数の者が認識できる状態に置くことがなかったなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人両名について,上記投稿者らとの上記各罪の各共同正犯が成立する。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和3年2月1日 平成30(あ)1381
登載
刑集 第75巻2号123頁
参照法条
(1~3につき)刑訴法99条2項,刑訴法218条2項 (1,2につき)サイバー犯罪に関する条約32条 (4につき)刑法60条,刑法174条,刑法175条1項前段
論点59第60条刑法

生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患した幼年の被害者の治療をその両親から依頼された者が,両親に指示してインスリンの投与をさせず,被害者が死亡した場合について,母親を道具として利用するとともに不保護の故意のある父親と共謀した殺人罪が成立するとされた事例

裁判要旨生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患している幼年の被害者の治療をその両親から依頼された被告人が,インスリンを投与しなければ被害者が死亡する現実的な危険性があることを認識しながら,自身を信頼して指示に従っている母親に対し,インスリンは毒であるなどとして被害者にインスリンを投与しないよう執ようかつ強度の働きかけを行い,母親をして,被害者の生命を救うためには被告人の指導に従う以外にないなどと一途に考えるなどして被害者へのインスリンの投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥らせ,被告人の治療法に半信半疑の状態であった父親に対しても母親を介してインスリンの不投与を指示し,両親をして,被害者へのインスリンの投与をさせず,その結果,被害者が死亡したなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人には,母親を道具として利用するとともに不保護の故意のある父親と共謀した未必の殺意に基づく殺人罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和2年8月24日 平成30(あ)728
登載
刑集 第74巻5号517頁
参照法条
刑法60条,刑法199条
論点60第61条刑法

犯人に対する犯人隠避教唆罪の成立

裁判要旨犯人が他人を教唆して自己を隠避させたときは、犯人隠避罪の教唆犯が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年7月3日 昭和60(あ)203
登載
集刑 第240号245頁
参照法条
刑法61条1項,刑法103条
論点61第61条刑法

殺人教唆等の公訴事実につき被教唆者の供述の信用性を肯定しアリバイの成立を否定した原審の判断が支持し難いとして破棄された事例

裁判要旨殺人教唆等の公訴事実についての唯一の直接証拠である被教唆者の検察官に対する供述調書の証拠価値に疑問を容れる余地がないとはいえず、被告人のアリバイの成否について幾多の疑問が残されているのに(判文参照)、被告人を有罪とした原判決は、刑訴法四一一条一号、三号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年4月24日 昭和56(あ)897
登載
刑集 第38巻6号2196頁
参照法条
刑法61条1項,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点62第61条刑法

無免許運転教唆罪と道路交通法七五条所定の運行管理義務違反の罪との罪数

裁判要旨道路交通法七五条所定の車両等の運行を直接管理する地位にある者が、当該業務に関し、車両等の運転者に帯し無免許運転を教唆し、よって被教唆者をして無免許運転をするに至らせた場合には、無免許運転教唆罪と道路交通法七五条所定の運行管理義務違反の罪とが成立し、両者は観念的競合の関係にある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年9月28日 昭和45(あ)1282
登載
刑集 第25巻6号798頁
参照法条
道路交通法64条,道路交通法75条1項1号,道路交通法118条1項1号,道路交通法119条1項12号(昭和45年法律86号による改正前のもの、同法律による改正後は118条1項3号の2),刑法54条1項,刑法61条1項
論点63第61条刑法

他人を教唆して自己を隠避させる行為と犯人隠避教唆罪の成否

裁判要旨犯人が他人を教唆して自己を隠避させたときは、犯人隠避罪の教唆犯が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月9日 昭和43(あ)238
登載
集刑 第168号211頁
参照法条
刑法103条,刑法61条1項
論点64第61条刑法

弁護士法第七二条違反の罪の教唆犯が成立しないとされた事例

裁判要旨弁護士でない者に、自己の法律事件の示談解決を依頼し、これに報酬を与えもしくは与えることを約束しても、弁護士法第七二条違反の罪の教唆犯は成立しないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和42(あ)1988
登載
刑集 第22巻13号1625頁
参照法条
弁護士法72条,弁護士法77条,刑法61条1項
論点65第61条刑法

道路交通法第七二条第一項違反の罪の教唆犯が成立するとされた事例

裁判要旨道路交通法第七二条第一項に規定する措置、報告等を怠る意思のなかつた運転者等を教唆して、新たに犯意を生ぜしめ、右の義務違反をさせたような場合には、同法第七三条の妨害罪ではなく、同法第七二条第一項違反の罪の教唆犯が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年3月16日 昭和41(あ)1920
登載
刑集 第21巻2号430頁
参照法条
道路交通法72条1項,道路交通法73条,刑法61条
論点66第61条刑法

自己の刑事被告事件に関する証憑偽造の教唆犯の成立。

裁判要旨犯人が他人を教唆して、自己の刑事被告事件に関する証憑を偽造させたときは、刑法第一〇四条〈証拠隠滅等〉の証憑偽造罪の教唆犯が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年9月16日 昭和40(あ)560
登載
刑集 第19巻6号679頁
参照法条
刑法104条,刑法61条1項
論点67第61条刑法

一 刑訴法第四〇二条に違反しないとされた事例。
二 犯人に対する犯人隠避教唆罪の成立。

裁判要旨一 第一審が懲役七月の実刑を言い渡したのを、控訴審が、懲役七月三年間執行猶予、罰金五、〇〇〇円に変更しても、第一審の判決を不利益に変更したものといえない。
二 犯人が他人を教唆して自己を隠避させた場合には、犯人隠避罪の教唆犯が成立する(昭和三五年(あ)九八号同年七月一八日第二小法廷決定、刑集一四巻九号一一八九頁参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年2月26日 昭和39(あ)2370
登載
刑集 第19巻1号59頁
参照法条
刑訴法402条,刑法103条,刑法61条1項
論点68第61条刑法

犯人に対する犯人隠避教唆罪の成立。

裁判要旨犯人が他人を教唆して自己を隠避させたときは、犯人隠避罪の教唆犯が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年7月18日 昭和35(あ)98
登載
刑集 第14巻9号1189頁
参照法条
刑法103条,刑法61条1項
論点69第61条刑法

一 刑訴法第二条第一項にいわゆる「現在地」の意義
二 被告人の黙秘権と偽証教唆罪の成否
三 証人の証拠拒絶権と偽証罪の成否

裁判要旨一 刑訴第二条第一項〈すべての者の国外犯〉にいわゆる「現在地」とは、公訴提起の当時被告人が任意または適法な強制処分によつて現在する地域をいう。
二 被告人に黙秘権があるからといつて他人に虚偽の証言をするように教唆したときは、偽証教唆罪が成立する。
三 証人が証言拒絶権を有する事項であつても宣誓の上虚偽の供述をすれば偽証罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年4月30日 昭和29(あ)3965
登載
刑集 第11巻4号1502頁
参照法条
刑訴法2条1項,刑訴法311条1項,刑訴法146条,刑訴法154条,刑法61条1項,刑法169条
論点70第61条刑法

一 公式令廃止後の法令公布の方法
二 昭和二三年七月三一日なした昭和二三年政令第二〇一号違反教唆罪の成否

裁判要旨一 法令の公布は、国家が官報に代わる他の適当な方法をもつて行うものであることが明らかな場合でないかぎり、公式令廃止後も通常官報をもつてされるものと解するのが相当である。
二 昭和二三年政令第二〇一号は、昭和二三年七月三一日には公布されていなかつたのであるから、同日になした右政令違反教唆罪の成立する余地はない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年12月28日 昭和30(れ)3
登載
刑集 第11巻14号3461頁
参照法条
公式令(明治40年勅令6号)12条,憲法7条1号,昭和23年7月22日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡に基く臨時措置に関する政令(昭和23年政令201号)2条,昭和23年7月22日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡に基く臨時措置に関する政令(昭和23年政令201号)3条,昭和23年7月22日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡に基く臨時措置に関する政令(昭和23年政令201号)附則,刑法61条
論点71第61条刑法

憲法違反の主張がその前提を欠く場合 −詐術を用いて犯行を誘発せしめたとの主張−

裁判要旨所論第一は、要するに捜査当局が犯人にあらざるものに詐術を以て強いて犯罪を行わしめこれを逮捕するがごときは個人の人権の侵害で憲法一三条〈削除〉に違反するというのである。しかし、本件被告人が捜査当局から詐術を以て本件犯罪を強いて誘発された事実を認むべき証拠がないから(被告人は、所論Aより相談を持ちかけられる前既に友人亡Bから本件麻薬の売却方を依頼されていたことは論旨も認めるところである。)所論は、その前提を欠くものであつて採用できない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年1月21日 昭和26(れ)1938
登載
集刑 第91号541頁
参照法条
憲法13条,刑法61条,刑法62条,麻薬取締規則(昭和21年厚生省第25号)23条
論点72第61条刑法

いわゆる囮捜査はこれによつて犯意を誘発された者の犯罪の成否に影響するか

裁判要旨いわゆる囮捜査は、これによつて犯意を誘発された者の犯罪構成要件該当性、責任性若しくは違法性を阻却するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年11月5日 昭和27(あ)5727
登載
刑集 第8巻11号1715頁
参照法条
麻薬取締法53条,刑法61条,刑法62条,刑法38条,刑法35条
論点73第61条刑法

いわゆる囮捜査はこれによつて犯意を誘発された者の犯罪の成否および訴訟手続に影響するか

裁判要旨いわゆる囮捜査は、これによつて犯意を誘発された者の犯罪構成要件該当性、責任性若しくは違法性を阻却するものではなく、また公訴提起の手続に違反し若しくは公訴権を消滅せしめるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年3月5日 昭和27(あ)5470
登載
刑集 第7巻3号482頁
参照法条
麻薬取締法53条,刑法61条,刑法62条,刑法38条,刑法35条,刑訴法338条4号,刑訴法337条
論点74第61条刑法

一 被告人の黙祕権と偽証教唆罪の成否
二 刑法第一〇四条〈証拠隠滅等〉の証憑の偽造には証人の偽証を包含するか
三 証人の証言拒絶権と偽証罪の成否

裁判要旨一 被告人自体に黙祕権があるからといつて、他人に虚偽の陳述をするように教唆したときは、偽証教唆罪が成立する。
二 刑法第一〇四条〈証拠隠滅等〉にいわゆる証憑の偽造とは、証拠自体の偽造を指称し、証人の偽証を包含しないと解すべきである。
三 証人が刑訴第一四六条〈水道毒物等混入及び同致死〉の証言拒否権を有したとしても、宣誓の上虚偽の陳述をしたときは偽証罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年10月19日 昭和27(あ)1976
登載
刑集 第7巻10号1945頁
参照法条
刑法61条1項,刑法169条,刑法104条,刑訴法311条1項,刑訴法146条,刑訴法154条,刑訴法155条1項
論点75第61条刑法

被告人の黙祕権と偽証教唆罪の成立

裁判要旨被告人自身に黙祕権があるからといつて、他人に虚偽の陳述をするよう教唆したときは偽証教唆の責を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月14日 昭和26(あ)262
登載
集刑 第60号851頁
参照法条
刑訴法311条,刑法169条,刑法61条
論点76第61条刑法

逮捕勾留中の犯人の身代りを出頭させる行為と犯人隠避教唆罪の成否

裁判要旨犯人が逮捕勾留された後であつても、他の者を教唆して身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為は、犯人隠避教唆罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年5月1日 昭和63(あ)247
登載
刑集 第43巻5号405頁
参照法条
刑法61条1項,刑法103条
論点77第61条刑法

甲の刑事事件に関する具体的な証拠偽造を乙が考案して積極的に甲に提案していたという事情があっても甲が当該証拠偽造を乙に依頼した行為が証拠偽造教唆罪に当たるとされた事例

裁判要旨甲の刑事事件に関する具体的な証拠偽造を乙が考案して積極的に甲に提案していたという事情があっても,甲がこれを承諾して提案に係る工作の実行を依頼した行為は,これによって乙がその提案どおりに犯罪を遂行しようという意思を確定させたという判示の事実関係の下では,人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせたものとして,教唆に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年11月21日 平成17(あ)302
登載
刑集 第60巻9号770頁
参照法条
刑法61条1項,刑法104条
論点78第61条刑法

犯人が他人を教唆して自己の刑事事件に関する証拠を隠滅させる行為と刑法104条〈証拠隠滅等〉の証拠隠滅罪の教唆犯の成否

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年9月13日 令和5(あ)134
登載
集刑 第332号201頁
参照法条
刑法61条1項、刑法104条
論点79第61条刑法

犯人が他人を教唆して自己を蔵匿させ又は隠避させる行為と刑法103条〈犯人蔵匿等〉の罪の教唆犯の成否

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和3年6月9日 令和3(あ)54
登載
集刑 第329号85頁
参照法条
刑法61条1項,刑法103条
論点80第62条刑法

一 幇助罪の個数
二 幇助罪が数個成立する場合と刑法五四条一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉にいう一個の行為

裁判要旨一 幇助罪の個数は、正犯の罪のそれに従つて決定される。
二 幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法五四条一項にいう一個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年2月17日 昭和55(あ)515
登載
刑集 第36巻2号206頁
参照法条
刑法54条1項,刑法62条1項,覚せい剤取締法41条1項1号
論点81第62条刑法

一個の公然わいせつ行為を幇助したとされた事例

裁判要旨舞台上で演じられた男女二組のシヨーに照明をあてて公然わいせつの犯行を容易ならしめた所為は、一個の公然わいせつ行為を幇助したものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和56年7月17日 昭和56(さ)3
登載
刑集 第35巻5号563頁
参照法条
刑法62条1項,刑法174条
論点82第62条刑法

正犯を間接に幇助したものとして従犯の成立が認められた事例

裁判要旨被告人が、甲またはその得意先の者において不特定の多数人に観覧せしめるであろうことを知りながら、猥せつ映画フイルムを甲に貸与し、甲からその得意先である乙に右フイルムが貸与され、乙においてこれを映写し十数名の者に観覧させて公然陳列するに至つた場合、被告人の所為については、正犯たる乙の犯行を間接に幇助したものとして、従犯が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年7月17日 昭和43(あ)1889
登載
刑集 第23巻8号1061頁
参照法条
刑法62条1項,刑法175条
論点83第62条刑法

けん銃購入のあつ旋はその不法所持の幇助犯となるか

裁判要旨他人がけん銃を購入してこれを携帯所持すべきことを認識しながら、その購入のあつ旋をし、同人をしてけん銃を購入所持するに至らせたときは、けん銃の不法所持の幇助犯が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年12月14日 昭和42(あ)333
登載
刑集 第21巻10号1396頁
参照法条
銃砲刀剣類等所持取締法3条1項,銃砲刀剣類等所持取締法31条1号,刑法62条1項
論点84第62条刑法

窃盗幇助をした者がその賍物を故買した場合の罪数。

裁判要旨窃盗幇助をした者がその賍物を故買した場合には、窃盗罪と賍物故買の二罪が成立すると解するを相当する(昭和二四年(れ)第一五〇六号同年一〇月一日第二小法廷判決、刑集三巻一〇号一六二九頁・昭和二七年(あ)第五四四〇号同二八年三月六日第二小法廷判決、裁判集七五号四三五頁参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年12月17日 昭和39(あ)904
登載
集刑 第153号699頁
参照法条
刑法325条,刑法62条1項,刑法256条2項,刑法45条前段
論点85第62条刑法

刑法第六三条〈従犯減軽〉の適用と同六八条〈法律上の減軽の方法〉適用の遺脱。

裁判要旨原審で支持した第一審判は本件幇助罪に適条として刑法六三条を適用している。それは当然に同六八条〈法律上の減軽の方法〉の規定の適用せられたことを示しているものということができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年2月24日 昭和33(あ)1156
登載
集刑 第137号329頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑法62条,刑法68条
論点86第62条刑法

故意犯(現住建造物放火幇助)と過失犯(失火)との間に公訴事実の同一性の認められた事例。

裁判要旨被告人に対する本件現住建造物放火幇助の公訴事実と失火の公訴事実(各判文参照)との間には同一性があるものと認むべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年7月15日 昭和31(あ)1357
登載
刑集 第14巻9号1152頁
参照法条
憲法39条,刑訴法312条,刑訴法337条1号,刑法116条,刑法108条,刑法62条
論点87第62条刑法

一 人権侵害、労働基準法違反等の疑があるとして関係官庁において調査を開始したという事実の報道と名誉毀損罪の成否
二 刑訴法第四一一条第一号にあたる事例

裁判要旨一 苟も人権侵害、労働基準法違反等の疑があるとして関係官庁において該事実の有無について調査を開始したという事実の如きは公益に影響を及ぼすべき問題であるから報道機関としての新聞紙がこれを取り上げ報道することは許容さるべきところである。註第一、二審判決は高等裁判所判例集第一〇巻一号五〇頁に登載されている。
二 名誉毀損幇助被告事件において、控訴事実となつている被告人の談話の記事がK新聞の「年少者も酷使?N営業所人権問題労基署でも調査へ」なる見出のもとに掲載された社会ニユース記事の一部分をなし、そのニユース記事の構造上これを綜合的全体的に考察するを相当とする場合に、単に被告人の談話部分のみを名誉毀損罪の成否の対象とするにととまり、右ニユース記事を取材した記者及びその編集責任者に同罪の正犯としての要件がそなわつているか否の点についての審理を尽さず、たやすく被告人のした談話をもつて名誉毀損罪の幇助に当るものとしたときは、刑訴第四一一条第一号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年12月16日 昭和32(あ)523
登載
刑集 第14巻14号2126頁
参照法条
刑法230条,刑法230条1項,刑法62条1項,昭和20年9月19日附連合国最高司令官の日本政府に対する覚書「新聞規則」,刑訴法411条1号
論点88第62条刑法

賍物の存在と賍物牙保罪の成否。

裁判要旨窃盗罪の実行を決意した者の依頼に応じて同人が将来窃取すべき物の売却を周旋しても、窃盗幇助罪の成立することあるは格別、賍物牙保財は成立しないが、その後同人が窃取してきた前記目的物について情を知りながら現実に売却の周旋をした場合には、賍物牙保罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年12月13日 昭和35(あ)1095
登載
刑集 第14巻13号1929頁
参照法条
刑法265条2項,刑法235条,刑法62条1項
論点89第62条刑法

製造たばこ無指定販売罪幇助犯の公訴事実の記載方法

裁判要旨製造たばこ無指定販売罪の幇助犯の公訴事実を起訴状に記載するには、日本専売公社より製造たばこの小売人として指令を受けない者が製造たばこを販売したこと、ならびにその販売を容易ならしめた具体的行為の日時、場所、方法を特定して記載するをもつて足るものと解するを相当とする。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年3月27日 昭和32(あ)2914
登載
刑集 第12巻4号697頁
参照法条
たばこ専売法29条2項,たばこ専売法71条5号,刑訴法256条,刑法62条
論点90第62条刑法

他人の名を詐称して投票するものであることを知りながら選挙管理委員会書記が投票用紙を交付する行為と公職選挙法第二三七条第二項〈強盗予備〉の罪の幇助罪の成否

裁判要旨他人の氏名を詐称して投票するものであることを知りながら選挙管理委員会書記が投票用紙を交付して投票させた場合には、右氏名詐称者が選挙権者であると否とを問わず、公職選挙法第二三七条第二項の罪の幇助罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年2月3日 昭和29(あ)1294
登載
刑集 第9巻2号168頁
参照法条
公職選挙法237条1項,公職選挙法237条2項,刑法62条
論点91第62条刑法

一 劇場責任者と公然猥褻幇助罪の成立
二 公然猥褻被告事件において証人が演技を観覧した際の感想を述べることは自己の実験した事実に含まれるか

裁判要旨一 劇場責任者が、その劇場で公演されているストリツプ、シヨウを目撃し、その演技の内容が猥褻であると知りながら、劇場を引き続き使用されるときは、公然猥褻幇助罪が成立する。
二 公然猥褻被告事件において、証人が演技を観覧した際の感想を述べることは、自己の実験した事実の供述に当然包含される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月2日 昭和27(あ)5293
登載
集刑 第93号59頁
参照法条
刑法174条,刑法62条,刑訴法156条
論点92第62条刑法

訴因罰条の変更を必要としない一事例

裁判要旨控訴裁判所が、強盗の起訴に対し強盗幇助と認定した第一審判決を破棄して、自ら恐喝と認定するについては訴因、罰条の変更手続を経ることを要しないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月19日 昭和29(あ)1260
登載
刑集 第8巻10号1600頁
参照法条
刑法236条,刑法62条,刑法249条,刑訴法312条
論点93第62条刑法

一 上申書は証拠書類にあたらない―――公判廷で弁護人の提出した証拠書類の証拠調の方法
二 従犯であるとの主張と旧刑訴法第三六〇条第二項

裁判要旨一 所論の書類は、何れも上申書であつて旧刑訴第三四〇条にいわゆる証拠書類には当らないばかりでなく、たとえ証拠書類であるとしても公判廷で被告人の弁護機関である弁護人が提出し、裁判所及び検察官の閲覧を経た証拠書類については特に必要のある場合を除くの外、必ずしもこれを被告人に読み聞かせ又は示してその意見、弁解を求める必要のないことは判例の示すとおりである。
二 所論は、原審で弁護人が従犯であると主張したのに対し、原判決はその判断を遺脱した違法があるというのである。しかし、従犯であるとの主張は、共同正犯の起訴事実に対しては単なる否認の一種であつて旧刑訴法第三六〇条第二項に定める主張に当らない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月15日 昭和24(れ)1435
登載
刑集 第5巻4号527頁
参照法条
旧刑訴法340条,旧刑訴法347条1項,旧刑訴法360条2項,刑法62条
論点94第62条刑法

胴元のために寺銭を徴収することと賄場開帳図利幇助剤の判示方

裁判要旨原判示によれば、被告人Aが昭和二二年六月二六日と翌二七日の両日に亘つてBのために寺銭を徴収して同人の賭博開帳図利の所為を幇助したことが明らかであるから、所論のように寺銭の額や徴収の方法を一々判示しなくても賄場開帳図利幇助の犯罪事実の摘示として十分である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年11月6日 昭和26(れ)1608
登載
集刑 第56号339頁
参照法条
刑法186条2項,刑法62条,旧刑訴法360条1項
論点95第62条刑法

一 従犯の地位にあつた旨の主張と法律上刑の減免の原由たる事実上の主張
二 被告人に対する最終陳述の機会の附与と「別にありません」を「別にあります」とした調書記載の誤記の認定
三 公判調書における弁護人の姓の誤記たることの認定

裁判要旨一 論旨は原審認定の被告人の犯行について被告人は原審に於て従記の地位にあつたことを主張しているのであるからこれは旧刑事訴訟第三六〇条第二項に所謂法律上刑の減免の原由たる事実上の主張に当るにも拘らず原判決は何らこれに対する判断を示していないのは判断遺脱の違法があると主張するが、所論の様な陳述があつたとしてもこれをて刑の減免の原由たる事実の主張があつたのとは認められない。
二 原審裁判長は被告人に意見及び最後い述べたいことはないかと問を発していることは所論の通りであるから被告人に対し最終陳述の機会を与えたものと言わなければならない。もしも、裁判長の発した右問に対し被告人が別に陳述する必要があつたなら其機会を与えられたのであるから陳述すべき筈であるに何も陳述した形跡はなく又裁判長が被告人の発言を禁じた形跡もない等に右「別にあります」の調書記載は「別にありません」の誤記と認むるを相当とする。調書の粗雑な点は誠に遺憾であるが何れも誤記と認められる。
三 被告人Aの弁護人選任届其他本件記録を調べて見ると山下弁護人が原審における被告人Aの弁護人であり同人の為め弁論したことは明らかであつて岡田弁護人が被告人Aの弁護人であるとは認められないから所論岡田弁護人とあるは山下弁護人の誤記と認めるを相当とする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年10月31日 昭和25(れ)1224
登載
集刑 第19号1065頁
参照法条
刑法62条,旧刑訴法360条2項,旧刑訴法60条,旧刑訴法74条,旧刑訴法349条3項,旧刑訴法40条17号,旧刑訴法64条
論点96第62条刑法

正犯の実行行為が日本国内で行われた場合における日本国外で幇助行為をした者と刑法一条一項〈国内犯〉

裁判要旨日本国外で幇助行為をした者であっても、正犯が日本国内で実行行為をした場合には、刑法一条一項〈国内犯〉の「日本国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者」に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成6年12月9日 平成5(あ)465
登載
刑集 第48巻8号576頁
参照法条
刑法1条1項,刑法62条1項
論点97第62条刑法

刑法208条の2第1項〈凶器準備集合及び結集〉前段の危険運転致死傷罪の正犯者である職場の後輩がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しながら,車両の発進を了解し,同乗して運転を黙認し続けた行為について,同罪の幇助罪が成立するとされた事例

裁判要旨刑法208条の2第1項〈凶器準備集合及び結集〉前段の危険運転致死傷罪の正犯者において,自動車を運転するに当たって,職場の先輩で同乗している被告人両名の意向を確認し,了解を得られたことが重要な契機となっている一方,被告人両名において,正犯者がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しながら,同車発進に了解を与え,その運転を制止することなくそのまま同車に同乗してこれを黙認し続け,正犯者が危険運転致死傷の犯行に及んだという本件事実関係(判文参照)の下では,被告人両名の行為について,同罪の幇助罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年4月15日 平成23(あ)2249
登載
刑集 第67巻4号437頁
参照法条
刑法62条1項,刑法208条の2第1項前段
論点98第62条刑法

適法用途にも著作権侵害用途にも利用できるファイル共有ソフトWinnyをインターネットを通じて不特定多数の者に公開,提供し,正犯者がこれを利用して著作物の公衆送信権を侵害することを幇助したとして,著作権法違反幇助に問われた事案につき,幇助犯の故意が欠けるとされた事例

裁判要旨適法用途にも著作権侵害用途にも利用できるファイル共有ソフトWinnyをインターネットを通じて不特定多数の者に公開,提供し,正犯者がこれを利用して著作物の公衆送信権を侵害することを幇助したとして,著作権法違反幇助に問われた事案につき,被告人において,(1)現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながらWinnyの公開,提供を行ったものでないことは明らかである上,(2)その公開,提供に当たり,常時利用者に対しWinnyを著作権侵害のために利用することがないよう警告を発していたなどの本件事実関係(判文参照)の下では,例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識,認容していたとまで認めることも困難であり,被告人には著作権法違反罪の幇助犯の故意が欠ける。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成23年12月19日 平成21(あ)1900
登載
刑集 第65巻9号1380頁
参照法条
刑法62条1項,著作権法(平成16年法律第92号による改正前のもの)23条1項,著作権法(平成16年法律第92号による改正前のもの)119条1号
論点99第62条刑法

薬物犯罪の幇助犯から「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」11条1項〈死刑〉,13条1項〈削除〉により没収・追徴できる薬物犯罪収益等の範囲

裁判要旨薬物犯罪の正犯がその犯罪行為により薬物犯罪収益等を得た場合,当該犯罪行為を幇助したことを理由に幇助犯から当該薬物犯罪収益等を「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」11条1項〈死刑〉,13条1項〈削除〉により正犯と同様に没収・追徴することはできず,幇助犯から没収・追徴できるのは,幇助行為により得た財産等に限られる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年4月22日 平成19(あ)1055
登載
刑集 第62巻5号1528頁
参照法条
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律11条1項,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律13条1項,刑法62条1項
論点100第62条刑法

一 けん銃の譲渡しと譲受けの周旋の意義
二 けん銃の譲渡しと譲受けの周旋の罪とその譲渡し又は譲受けの罪の幇助罪との関係

裁判要旨一 銃砲刀剣類所持等取締法三一条の一五にいうけん銃の譲渡しと譲受けの周旋とは、譲渡人と譲受人との間で譲渡し、譲受けが行われるよう仲介することをいい、譲渡人又は譲受人の一方からの依頼を受けて他方に働きかけ、その者が応じた場合も周旋に当たる。
二 銃砲刀剣類所持等取締法三一条の一五の周旋行為によってけん銃の譲渡が実現したときは、同条の周旋の罪より刑の重い同法三一条の四第一項が規定するけん銃の譲渡し又は譲受けの罪の幇助罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成10年2月13日 平成9(あ)980
登載
刑集 第52巻1号1頁
参照法条
銃砲刀剣類所持等取締法3条の7,銃砲刀剣類所持等取締法3条の10,銃砲刀剣類所持等取締法31条の4第1項,銃砲刀剣類所持等取締法31条の15,刑法62条1項
論点101第63条刑法

従犯の主張と刑訴法第三三五条第二項。

裁判要旨従犯の主張は刑訴法第三三五条第二項の主張にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年2月26日 昭和35(あ)2264
登載
集刑 第146号431頁
参照法条
刑法63条,刑訴法335条2項
論点102第63条刑法

従犯減軽をした罰金刑が法律上の減軽をした処断刑の範囲を超えた場合と判決の破棄

裁判要旨本件行為時における昭和一九年法律第四号経済関係罰則の整備に関する法律五条〈外国判決の効力〉所定の罰金刑は五千円以下であり、従犯減軽をした罰金刑は二千五百円以下であるのに、原判決は被告人に対して法律上の減軽をした処断刑の範囲を超える罰金刑を科したものであるから、刑訴施行法三条の二により適用される刑訴四一一条一号に該当する法令の違反があるといわなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月26日 昭和27(れ)76
登載
集刑 第74号403頁
参照法条
経済関係罰則の整備に関する法律5条,刑法63条,刑法68条,新刑訴法411条1号
論点103第65条刑法

麻薬取締法第六四条と刑法第六五条第二項〈身分犯の共犯〉にいう「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキ」

裁判要旨麻薬取締法第六四条が、営利の目的の有無により刑の軽重を区別しているのは、刑法第六五条第二項〈身分犯の共犯〉にいう「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキ」にあたる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年3月7日 昭和41(あ)1651
登載
刑集 第21巻2号417頁
参照法条
刑法65条2項,麻薬取締法64条
論点104第65条刑法

身分的共犯の処罰。

裁判要旨村長、助役が収入役と共謀の上、収入役の保管にかかる新制中学校建設資金の寄附金を横領したときは、刑法第六五条第一項〈身分犯の共犯〉により同法第二五三条に該当する共犯となるが、村長、助役は業務上物の占有者たる身分がないから、同法第二五二条第一項の刑を科すべきものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年11月19日 昭和30(あ)3640
登載
刑集 第11巻12号3073頁
参照法条
刑法65条,刑法253条,刑法252条
論点105第65条刑法

業務上横領罪の共犯ではあるが身分なき被告人に対し刑法第二五三条〈業務上横領〉を適用したる違法と判決への影響

裁判要旨業務上の占有者たる身分なき被告人が他人の業務上横領罪に共同正犯として加功した事実を認めながら刑法二五三条〈業務上横領〉を適用処断したのは性質上判決に影響を及ぼすことの明らかな法律適用の誤りがあるものというべきこと論をまたない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年6月5日 昭和29(あ)2903
登載
集刑 第113号719頁
参照法条
刑法65条,刑法252条,刑法253条,刑訴法380条
論点106第65条刑法

刑法第二〇〇条〈削除〉の罪は犯人の身分により構成すべき犯罪か

裁判要旨刑法第二〇〇条〈削除〉の罪は、犯人の身分により構成すべき犯罪ではなく、単に卑属親たる身分があるがため、特にその刑を加重するに過ぎないものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年5月24日 昭和30(あ)3263
登載
刑集 第10巻5号734頁
参照法条
刑法200条,刑法65条
論点107第65条刑法

刑法第二五三条〈業務上横領〉の業務上他にの物を占有するということは、憲法第一四条にいわゆる社会的身分にあたるか

裁判要旨刑法第二五三条〈業務上横領〉の業務上他人の物を占有するということは、犯罪者の属性による刑法上の身分であるが、憲法第一四条にいわゆる社会的身分と解することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年8月18日 昭和30(あ)216
登載
刑集 第9巻9号2031頁
参照法条
刑法65条,刑法253条,憲法14条
論点108第65条刑法

一 刑法第六五条〈身分犯の共犯〉にいわゆる「身分」の意義
二 横領の目的物を犯人が占有する状態は右にいわゆる「身分」にあたるか

裁判要旨刑法第六五条〈身分犯の共犯〉にいわゆる身分は、男女の性別、内外人の別、親族の関係、公務員たるの資格のような関係のみに限らず、総て一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態を指称するものであつて、刑法二五二条〈横領〉においては、横領罪の目的物に対する犯人の関係が占有という特殊の状態にあることが刑法六五条にいわゆる身分に該るものと云わなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年9月19日 昭和27(れ)103
登載
刑集 第6巻8号1083頁
参照法条
刑法65条,刑法252条,刑法253条
論点109第65条刑法

一 旧地方税法第一三六条第二項〈あへん煙輸入等〉の罪の判示方
二 旧地方税法第一三六条第二項違反罪の成立と、同法第一三七条第一号
三 旧地方税法第一三六条第二項の罪の成立と同法第四一条所定の督促手続との関係
四 不法拘禁中における供述の任意性又は強制の有無
五 証人に宣誓前偽証の罰を告げなかつた場合と証言の効力
六 縣税入場税市税入場税附加税犯則事件につき国税犯則取締法の規定が適用又は準用されない事例
七 地方税特別徴収義務者の不納付行為加功者に対する刑法第六五条第一項〈身分犯の共犯〉の適用と総則規定を明示することの要否
八 旧地方税法第一三六条第一項と同条第二項の相違と同条第二項の適用

裁判要旨一 しかし、旧地方税法第一三六条第二項の規定は、特別徴収義務者が徴取すべき地方税を故意に徴収せず又は徴収した地方税を故意に納入しなかつた場合に成立する脱税に関する犯罪の処罰規定であつて、地方税の単なる滞納の場合の規定ではない。されば同条項の犯罪事実を判示するには、所論のごとき知事又は市長の発令の有無、特別徴取義務者が払込告知書を受取つたか否か及び指定期日に払込を了したか否か等の事実を確定判定するの要はない。
二 旧地方税法第一三六条第二項〈あへん煙輸入等〉の犯罪は、特別徴収義務者が徴収すべき地方税を故意に徴収せず、又は徴収した地方税を故意に納入しないときは直ちに成立し、不徴収又は不納入の手段方法の如何を問わないものであり、従つて、判事虚偽の報告が所論同法第一三七条第一号に触れることがあつても、前記条項の犯罪の成立を阻却しないものであるから、原判決が判示事実に対し同条項を適用処断したのは正当であつて、原判決には所論の違法は認められない。
三 本件入場税の納入期日が徴収した月の翌月中であることは法令である高知縣条例によつて明らかであり、判示逋脱の入場税については昭和二三年八月中に徴収されたものであることは原判決の認定判示したところである。そして特別徴収義務者の徴収した入場税の納入期日が右のごとく条例上徴収した月の翌月中に到来すべきものであるから、徴収した月が認定判示されていれば特にその納入期日を明示しなくとも自ら確定されるわけである。されば原判決は判示入場税の徴収日を八月四日から同月一〇日迄及び一八日から月末頃迄の間と確定判示し、その納入期日をその頃納入すべかりし期日にと説明した以上、旧地方税法第一三六条第二項違反罪の判示として何等欠くるところは存しない。又督促状を発することは納入しない入場税金について徴収義務者に対して滞納処分を行う法律上の要件であるにとどまり、不納入罪成立の要件ではない。されば原判決が判示逋脱の入場税金について督促状の発せられた事実及指定納入期日を判示しなかつたからといつて、原判決には違法のかどは存しない。
四 拘禁が不法であつてもその一事を以て直ちに拘禁中の供述が強制その他不任意のものであると速断することもできない。
五 しかし一九五〇年一〇月一八日附連合国最高司令官総司令部覚書施行期日たる同年一一月一日以前においては、連合国人である証人に対しては一般に宣誓をさせる場合でも偽証の罰を告げないのを相当と解すべきである(昭和二四年(れ)第一六七号同年七月九日第二小法廷判決判例集三巻八号一一九三頁以下参照)ばかりでなく、旧刑訴第一九九条〈殺人〉は証人に偽証の罪に陥ることのないようにその注意を喚起せしめる趣旨の訓示的規定と解するを相当とするから、たとえ同規定に反して裁判所が証人に偽証の罰を告げなかつたとしても、その供述は証言たるの効力を妨げられるものではない。されば原判決には所論のような違法は存しない。
六 本件のような昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に係る高知縣税入場税、高知市税入場税附加税犯則事件には国税犯則取締法の規定は適用も準用もされない筋合であることは多言を要しないところである。従つて本件高知縣税入場税高知市税入場税附加税の犯則事件に国税犯則取締法の規定の適用又は準用のあることを前提とする各論旨はいずれもその前提を欠きとるをえない。
七 原判示とその挙示する各証拠とを対照してみると原判決は判示入場税の特別徴収義務者はAであつて被告人B、同C、同D等は徴収義務者たる身分のない者で徴収義務者Aの判示入場税の一部逋脱に加功したものであると認め、刑法第六五条第一項〈身分犯の共犯〉を適用して被告人B等をAの判示逋脱犯の共犯者として処断したものであることを推断しえられるのである。そして刑法第六五条第一項のごとき総則規定はこれを適用するを以て足り、特にこれを判決中に明示する必要のないものである。
八 地方税法第一三六条第一項の規定は地方税の納税義務者が詐欺、その他不正の行為によつて地方税を逋脱した場合の処罰規定であり、同条第二項の規定は特別徴収義務者が徴収すべき地方税を納税義務者から徴収せず、又は納税義務者から徴収した地方税を納入しなかつた場合の処罰規定であつて、その不徴収又は不納入の手段、方法の如何を問わないから、本件のごとき特別徴収義務者が地方税たる判示入場税不納入の場合において、たとえ所論のような詐欺その他不正の行為が伴つたとしても同条第一項を適用すべきではなく、同条第二項を適用すべきであることは多言を要しないところである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月15日 昭和25(れ)766
登載
刑集 第5巻4号535頁
参照法条
旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改定前のもの)136条2項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条2項,旧地方税法137条1号,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)36条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)37条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)41条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条1項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)2項,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法199条,旧刑訴法360条の1項,刑訴応急措置法10条2項,国税犯則取締法12条の2,刑法65条1項
論点110第65条刑法

総則規定の適用を明示しない判決と擬律不備の有無

裁判要旨原判決が被告人Aの判示虚偽公文書作成の所為に加功した所為に対し、刑法第六五条一項〈身分犯の共犯〉の適用を明示しなかつたことは所論のとおりである。しかし、同条項のごとき総則規定は特にこれが適用を明示しなくとも、これを適用したことを看取し得れば差支ないものといわなければならない。そして原判決は、その判示冒頭において被告人は昭和二一年三月三〇日退官し爾後判示常任幹事であつたに過ぎないことを判示し刑法第六〇条〈共同正犯〉を適用する等判示全体により自ら同条項を適用処断した趣旨であることを窺い知ることができるから、原判決にはこれを破棄しなければならない擬律不備の違法はないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月2日 昭和25(れ)216
登載
集刑 第35号39頁
参照法条
刑法65条1項,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号
論点111第65条刑法

一 申告納税に関する事務を担当していない従業者と所得税法二四四条一項〈親族間の犯罪に関する特例〉にいう「使用人その他の従業者」
二 所得税法二四四条一項所定の従業者の身分のない者が従業者と共謀して所得税ほ脱の違反行為に加功した場合における所得税ほ脱の共同正犯の成否

裁判要旨一 所得税法二四四条一項にいう「使用人その他の従業者」は、所得の計算や所得税確定申告書の作成などの申告納税に関する事務を担当する従業者に限定されない。
二 所得税法二四四条一項所定の従業者の身分のない者が従業者と共謀して所得税ほ脱の違反行為に加功した場合、その身分のない者には、刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの)六五条一項〈身分犯の共犯〉の適用により所得税ほ脱の共同正犯が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成9年7月9日 平成8(あ)637
登載
刑集 第51巻6号453頁
参照法条
所得税法238条1項,所得税法244条1項,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)65条1項
論点112第65条刑法

一 証券取引法(昭和六三年法律第七五号による改正前のもの)一二五条二項一号後段の意義
二 証券取引法(昭和六三年法律第七五号による改正前のもの)一二五条二項一号後段違反の罪及び同条三項違反の罪と刑法六五条一項にいう身分によって構成すべき犯罪

裁判要旨一 証券取引法(昭和六三年法律第七五号による改正前のもの)一二五条二項一号後段は、有価証券の相場を変動させるべき一連の売買取引等のすべてを違法とするものではなく、人為的な操作を加えて相場を変動させるにもかかわらず、投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させて有価証券市場における有価証券の売買取引に誘い込む目的をもってする、相場を変動させる可能性のある売買取引等を禁止するものである。
二 証券取引法(昭和六三年法律第七五号による改正前のもの)一二五条二項一号後段違反の罪及び同条三項違反の罪は、刑法六五条一項〈身分犯の共犯〉にいう身分によって構成すべき犯罪ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成6年7月20日 昭和63(あ)1102
登載
刑集 第48巻5号201頁
参照法条
証券取引法80条2項,証券取引法(昭和63年法律75号による改正前のもの)107条,証券取引法(昭和63年法律75号による改正前のもの)125条2項1号後段,証券取引法(昭和63年法律75号による改正前のもの)125条3項,証券取引法(昭和56年法律62号による改正前のもの)197条2号,刑法65条1項
論点113第65条刑法

18歳未満の者を現に監護する者の身分のない者が同身分のある者と共謀して当該18歳未満の者に対し性交等をした場合における監護者性交等罪(令和5年法律第66号による改正前の刑法179条2項)の共同正犯の成否

裁判要旨18歳未満の者を現に監護する者(以下「監護者」という。)の身分のない者が、監護者と共謀して、監護者であることによる影響力があることに乗じて当該18歳未満の者に対し性交等をした場合、監護者の身分のない者には刑法65条1項の適用により監護者性交等罪(令和5年法律第66号による改正前の刑法179条2項)の共同正犯が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和7年1月27日 令和6(あ)753
登載
刑集 第79巻1号1頁
参照法条
刑法65条1項、刑法(令和5年法律第66号による改正前のもの)179条2項
論点114第65条刑法

他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効の期間

裁判要旨他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合、非占有者に対する公訴時効の期間は、刑法252条1項〈横領〉の横領罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑訴法250条2項5号)である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年6月9日 令和3(あ)821
登載
刑集 第76巻5号613頁
参照法条
刑法65条、刑法252条1項、刑法253条、刑訴法250条、刑訴法337条4号
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

刑法 第60条(共同正犯) 詳細ページ
(共同正犯)
第六十条二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
刑法 第61条(教唆) 詳細ページ
(教唆)
第六十一条人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
2教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。
刑法 第62条(幇助) 詳細ページ
(幇助)
第六十二条正犯を幇助した者は、従犯とする。
2従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
刑法 第63条(従犯減軽) 詳細ページ
(従犯減軽)
第六十三条従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
刑法 第64条(教唆及び幇助の処罰の制限) 詳細ページ
(教唆及び幇助の処罰の制限)
第六十四条拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。
刑法 第65条(身分犯の共犯) 詳細ページ
(身分犯の共犯)
第六十五条犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
2身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。