手形法 / テーマ別まとめ

為替手形/裏書

裏書の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

為替手形は裏書によって譲渡でき、裏書がされるたびに手形から生じる一切の権利が譲受人に移転します。白地式・取立委任・質入・期限後など裏書の種類によって効力や所持人が行使できる権利の範囲が変わるため、実務では裏書の記載内容を見分けることが重要です。裏書の連続や人的抗弁の扱いも、支払・回収の場面で確認すべきポイントです。

裏書
種類記載文言の例主な効果
通常裏書(記名式)被裏書人を指定して署名一切の権利を移転、引受・支払を担保
白地式裏書被裏書人を記載せず署名のみ持参人払の裏書と同一効力
一部裏書手形金額の一部を裏書無効
条件付裏書裏書に条件を付す条件は無記載とみなす
取立委任裏書「取立のため」等の文言権利行使可、再裏書は代理のためのみ
質入裏書「質入のため」等の文言権利行使可、再裏書は代理のためのみ
期限後裏書満期後にした裏書拒絶証書作成後は債権譲渡の効力のみ
裏書禁止文言(裏書人)新たな裏書を禁ずる旨記載その裏書人は後の被裏書人に担保責任なし
指図禁止(振出人)「指図禁止」等を記載民法の債権譲渡方式でのみ譲渡可
  • 白地式裏書の所持人は白地補充・再裏書・そのままの譲渡のいずれも選べる(第14条)
  • 抹消した裏書は裏書の連続の判断上、記載がなかったものとみなす(第16条)
  • 裏書の連続で権利を証明する所持人は適法な所持人とみなされ、手形の返還義務を負わない。ただし悪意・重過失で取得した場合を除く(第16条)
  • 人的抗弁は原則所持人に対抗できないが、所持人が債務者を害すると知って取得した場合は対抗できる(第17条・第19条)
  • 日付のない裏書は支払拒絶証書作成期間経過前にしたものと推定される(第20条)
  • 裏書は単純でなければならず、条件を付けても条件部分だけが無記載とみなされる(第12条)
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裏書

裏書について、条文は何を定めているか。

第11条指図式でなくても裏書で譲渡できる3項判例 9件
  • 為替手形は指図式で振り出さなくても裏書で譲渡できる
  • 振出人が「指図禁止」等と記載した場合は民法の債権譲渡方式でのみ譲渡できる
  • 引受の有無を問わず支払人・振出人など債務者に対しても裏書でき、その者も再度裏書できる
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第12条裏書は単純でなければならない3項判例 3件
  • 裏書に付けた条件は記載しなかったものとみなされる
  • 手形金額の一部についての裏書は無効
  • 持参人払の裏書は白地式裏書と同一の効力を持つ
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第13条裏書は手形か補箋に記載し署名する2項判例 4件
  • 裏書は為替手形または結合した紙片(補箋)に記載し裏書人が署名する
  • 被裏書人を指定しない、または署名のみの白地式裏書もできる
  • 白地式裏書は手形の裏面か補箋にしなければ効力を生じない
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第14条裏書は手形上の一切の権利を移転する2項・3号判例 7件
  • 裏書により為替手形から生じる一切の権利が移転する
  • 白地式裏書の所持人は自己や他人の名義で白地を補充できる
  • 白地式のまま再裏書、または白地を補充せず第三者に譲渡することもできる
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第15条裏書人は引受・支払を担保する2項判例 3件
  • 裏書人は反対の文言がない限り引受と支払を担保する
  • 裏書人は新たな裏書を禁止でき、その場合は以後の被裏書人への担保責任を負わない
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第16条裏書が連続していれば適法な所持人とみなす2項判例 23件
  • 裏書の連続で権利を証明する占有者は適法な所持人とみなされる
  • 最後の裏書が白地式でも同様に扱われ、抹消した裏書はないものとみなす
  • 占有を失った手形でも、悪意・重過失なく取得した所持人は返還義務を負わない
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第17条人的抗弁は原則所持人に対抗できない1項判例 33件
  • 振出人など前者に対する人的関係の抗弁は所持人に対抗できない
  • 所持人が債務者を害すると知って取得した場合は例外的に対抗できる
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第18条取立のための裏書でも権利行使できる3項判例 8件
  • 「回収のため」等の裏書で所持人は一切の権利を行使でき、代理のためのみ再裏書可
  • 債務者は裏書人に対抗できた抗弁の範囲でのみ所持人に対抗できる
  • 委任者の死亡や行為能力の制限があっても委任は終了しない
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第19条質入のための裏書でも権利行使できる2項判例なし
  • 「担保のため」「質入のため」等の裏書で所持人は一切の権利を行使できる
  • 所持人がした裏書は代理のための裏書としての効力のみを持つ
  • 債務者は裏書人に対する人的抗弁を所持人に対抗できない(害意取得の場合を除く)
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第20条満期後の裏書も原則同じ効力を持つ2項判例 7件
  • 満期後の裏書は満期前の裏書と同一の効力を持つ
  • 支払拒絶証書作成後、または作成期間経過後の裏書は債権譲渡の効力のみ
  • 日付のない裏書は拒絶証書作成期間経過前にしたものと推定される
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第11条手形法

手形の表面に裏書禁止文句の記載があるとされた事例

裁判要旨統一手形用紙による約束手形の表面の振出日欄と振出地欄との行間に、ゴム印様のもので押捺された約二ミリメートル大の不動文字からなる「裏書譲渡禁ず」との文言が幅一・二センチメートルにわたり横書で記入されているときは、裏書禁止文句の記載があると認めて妨げない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年3月12日 昭和56(オ)1047
登載
集民 第135号381頁
参照法条
手形法11条
論点2第11条手形法

約束手形の受取人の氏名に続けて「限り」と明白に読みとれる記載がある場合と手形法一一条二項〈為替手形ハ指図式ニテ振出サザルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得〉

裁判要旨統一手形用紙を使用した約束手形の受取人欄に受取人の氏名に続けて「限り」と明白に読みとれる記載がある場合には、右記載は、手形法一一条二項〈為替手形ハ指図式ニテ振出サザルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得〉にいう指図禁止と同一の意義を有する文言の記載にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年10月1日 昭和56(オ)196
登載
集民 第134号1頁
参照法条
手形法11条2項,手形法77条1項
論点3第11条手形法

手形面上印刷された指図文句を抹消することなく指図禁止文句が併記された場合と裏書禁止手形

裁判要旨手形の振出人が、手形用紙に印刷された指図文句を抹消することなく、指図禁止文句を記載したため、手形面上指図文句と指図禁止文句が併記されている場合には、他に特段の事情のない限り、右手形は裏書禁止手形にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年4月24日 昭和53(オ)149
登載
集民 第123号603頁
参照法条
手形法11条2項,手形法77条1項
論点4第11条手形法

裏書によらない手形債権の譲渡の性質

裁判要旨約束手形の受取人甲が、乙からその手形の割引を受け、裏書をしないでこれを乙に交付したときは、甲は、指名債権譲渡の方法によつて乙に右手形債権を譲渡したものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年2月28日 昭和47(オ)1233
登載
民集 第28巻1号121頁
参照法条
手形法11条,民法467条
論点5第11条手形法

手形の受取人として記載されていない者がなした裏書を有効とした事例

裁判要旨手形の受取人として記載されていない者が裏書をなした場合でも、その後に振出人が右手形の受取人名を右裏書人の氏名に訂正し、かつ、裏書人がその裏書に際し受取人名が右のように訂正されることを前提として裏書をしたものであるときは、右裏書は有効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年3月11日 昭和40(オ)925
登載
集民 第82号721頁
参照法条
手形法16条1項,手形法11条
論点6第11条手形法

手形の裏書交付と原因債務についての保証契約の成否。

裁判要旨手形の裏書交付があつたからといつて、原因関係たる貸金債務の保証若しくは連帯保証契約を締結する意思を表示したものと解することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年10月8日 昭和37(オ)1032
登載
集民 第68号293頁
参照法条
手形法11条,民法446条
論点7第11条手形法

期限後裏書と悪意の抗弁。

裁判要旨為替手形を期限内に善意で取得した者が拒絶証書作成期間経過後にこれを裏書譲渡した場合において、その被裏書人が手形を取得した当時悪意であつても、手形引受人は被裏書人たる所持人に対して手形の振出人に対する悪意の抗弁をもつて対抗することができないと解するのを相当とする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年9月7日 昭和34(オ)705
登載
民集 第16巻9号1870頁
参照法条
手形法20条,手形法11条,手形法17条
論点8第11条手形法

約束手形が無効でないものと認められた一事例

裁判要旨約束手形の表面に紙片を附し、振出人が「本手形ハ他人ニ交付又ハ譲渡シタルトキハ無効トスル」旨記載したとしても、約束手形を無効ならしめるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年7月12日 昭和30(オ)173
登載
民集 第11巻7号1247頁
参照法条
手形法75条,手形法76条,手形法77条,手形法11条
論点9第11条手形法

一 特定物の売買においてその物が引渡前空襲により滅失した場合と代金債務支払のために振り出された手形債権の効力
二 手形振出人に対し手形債務の確認とその手形債務を保証する目的でした手形裏書人に対しその債務について給付の判決を求めることの可否

裁判要旨一 特定物の売買においては、その物が引渡前空襲により滅失したとしても、売主の代金債権が消滅する理由がなく、従つてこれにより、その代金支払のために振り出された手形の振出が原因を欠くに至つたものとはいえない。
二 手形の裏書人が振出人の手形債務を保証する目的で裏書をした場合においても、裏書人の債務と振出人の債務とは別個の債務であるから手形債権者が振出人に対して、単に手形債権の確認判決を求め、また裏書人に対しては、手形債務についての給付の判決を求めてもなんら差支えない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和24年5月31日 昭和23(オ)150
登載
民集 第3巻6号226頁
参照法条
民法534条,民法446条,手形法11条
論点10第12条手形法

手形債権の一部の指名債権譲渡の方法による譲渡の効力

裁判要旨手形債権の金額的一部の指名債権譲渡の方法による譲渡は、無効である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和60年7月2日 昭和60(オ)243
登載
集民 第145号125頁
参照法条
手形法12条2項,手形法77条1項,民法466条
論点11第12条手形法

約束手形の裏書に付加された取立委任文言が抹消された場合と譲渡裏書としての効力を生ずる時期

裁判要旨約束手形の取立委任裏書を受けてこれを所持している者が、裏書人との間で当該手形の譲渡を受ける旨の合意をして、後日右裏書中の取立委任文言を抹消しても、右裏書が譲渡裏書としての効力を生ずるのは、取立委任文言の抹消の時からであつて、譲渡の合意の成立時に遡つてその効力を生ずるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和60年3月26日 昭和57(オ)1382
登載
集民 第144号233頁
参照法条
手形法12条,手形法18条,手形法77条
論点12第12条手形法

手形金額に錯誤のある裏書と悪意の取得者に対する償還義務の範囲

裁判要旨手形の裏書人が、金額一五〇〇万円の手形を金額一五〇万円の手形と誤信し同金額の手形債務を負担する意思のもとに裏書をした場合に、悪意の取得者に対して錯誤を理由に償還義務の履行を拒むことができるのは、右手形金のうち一五〇万円を超える部分についてだけであつて、その全部についてではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年9月6日 昭和53(オ)1281
登載
民集 第33巻5号630頁
参照法条
民法95条,手形法12条2項,手形法17条,手形法77条1項
論点13第13条手形法

倉荷証券の裏書人欄に裏書人である会社の記名及び会社印の押捺はあるがその代表機関の署名ないし記名捺印がない裏書を適式として扱う商慣習法又は商慣習の存否

裁判要旨倉荷証券の裏書人欄に裏書人である会社の記名がされ、かつ、倉荷証券を発行した倉庫営業者にあらかじめ届出がされた右裏書人の会社印が押捺されている場合には、会社の代表機関が会社のためにすることを示して署名ないし記名捺印をしなくても、これを適式の裏書として扱う旨の商慣習法又は商慣習の存在は認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年7月8日 昭和53(オ)1284
登載
集民 第136号429頁
参照法条
民法92条,手形法13条,商法1条,商法519条,商法603条
論点14第13条手形法

法人の裏書の方式としての署名

裁判要旨手形の裏書人が法人である場合には、その代表機関が法人のためにすることを明らかにして自己の署名をすることを要するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年9月13日 昭和39(オ)1379
登載
民集 第20巻7号1359頁
参照法条
手形法13条
論点15第13条手形法

捺印のみの裏書により記名株式の譲渡と会社の株式名簿書換義務の存否

裁判要旨譲渡人の捺印のみで記名を欠く裏書により記名株式の譲渡をうけた者が、記名を補充せずに会社に対し株主名簿の名義書換請求しても、会社はこれに応ずる義務がないと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年10月1日 昭和36(オ)392
登載
民集 第17巻9号1091頁
参照法条
商法205条,商法206条,手形法13条
論点16第13条手形法

被裏書人欄の補充は権利行使のため必要か

裁判要旨被裏書人欄のおよび裏書の日附欄白地の手形所持人は、右白地を補充しないで権利を行使できる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月6日 昭和36(オ)1108
登載
集民 第60号35頁
参照法条
手形法13条2項,手形法16条1項
論点17第14条手形法

権利の承継人として民訴法七四条一項の第三者にあたる場合

裁判要旨約束手形の被裏書人丙が、適法な遡及条件を具備することなく、所持人として、振出人甲に対し手形金請求訴訟を提起し、その係属中に、前裏書人乙が丙から右約束手形の返還を受けたときは、乙は訴訟の目的たる手形金債権の承継人として民訴法七四条一項の第三者にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年3月18日 昭和50(オ)1011
登載
集民 第120号295頁
参照法条
手形法14条,手形法16条,手形法49条,民訴法73条,民訴法74条
論点18第14条手形法

手形金債務の支払につき手形外の保証契約が締結されている場合と裏書によつて手形債権を取得した者の保証人に対する履行請求

裁判要旨約束手形の振出人のため手形金債務の支払につき受取人との間で手形外の保証契約が締結されている場合には、裏書によつて手形債権を取得した者は、これとともに保証債権を取得し、かつ、その取得につき対抗要件を具備することなく、保証人に対し保証債務の履行を求めることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和45年4月21日 昭和44(オ)188
登載
民集 第24巻4号283頁
参照法条
民法446条,民法467条,手形法14条,手形法32条
論点19第14条手形法

訴訟行為をさせることを主たる目的としてされた手形の裏書と手形抗弁

裁判要旨訴訟行為をさせることを主たる目的としてされた手形の裏書は、隠れた取立委任のためにされたものにほかならないが、右の場合には、信託法一一条の規定により、たんに手形外の取立委任の合意が無効となるにとどまらず、裏書自体も無効となり、すべての手形債務者は、被裏書人たる所持人が手形上無権利者であることを主張してその手形上の請求を拒絶することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年3月27日 昭和41(オ)1338
登載
民集 第23巻3号601頁
参照法条
手形法77条1項1号,手形法14条,手形法17条,信託法11条,信託法1条
論点20第14条手形法

裏書の抹消による手形の譲渡が期限後になされた場合と指名債権譲渡の対抗要件を具備することの要否。

裁判要旨裏書の抹消による手形の譲渡が期限後になされた場合に、指名債権譲渡の対抗要件を具備することは必要でない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年4月10日 昭和38(オ)929
登載
集民 第73号83頁
参照法条
手形法14条,手形法20条1項,民法467条
論点21第14条手形法

一 小切手振出の代理権消滅後の手形振出と本人の責任
二 手形の受取人に表見代理の成立する場合と所持人に対する本人の責任

裁判要旨一 当座勘定取引のため小切手を振出す代理権しかない者が、その代理権消滅後、代理人と称して約束手形を振出した場合に、受取人が右代理権の消滅につき善意無過失で、右の者に手形振出の権限があると信じるにつき正当の理由を有するときは、本人は受取人に対し振出人としての責任を免れない。
二 無権代理人の振出した約束手形につき、本人が民法第一一〇条及び第一一二条に基き振出人としての責任を負うときは、受取人からその手形の裏書譲渡を受けた者に対しても、その者の善意悪意を問わず、振出人としての責任を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年12月27日 昭和30(オ)286
登載
民集 第14巻14号3234頁
参照法条
民法110条,民法112条,手形法8条,手形法14条
論点22第14条手形法

白地裏書人が手形を受戻した後、さきの白地裏書に記載した裏書を利用して右手形を第三者に譲渡した場合と裏書人としての責任の有無

裁判要旨甲から白地裏書により乙に、乙から記名裏書により丙に、順次交付された手形が甲に返還され、かつ乙のなした裏書が適法に抹消された後において、甲がさきの白地裏書の記載をそのまま利用して、右手形を丁に譲渡したときは、甲は丁に対し、裏書人としての手形上の責任を負担する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年7月12日 昭和30(オ)207
登載
民集 第10巻7号845頁
参照法条
手形法14条2項,手形法16条1項,手形法43条前段,手形法77条
論点23第14条手形法

一 隠れたる取立委任裏書と手形上の権利移転の有無
二 裏書の連続を欠く手形上の権利行使の許否

裁判要旨一 隠れたる取立委任裏書により、手形上の権利は、裏書人から被裏書人へ移転するものと解すべきである。
二 手形所持人は、たとえ手形が裏書の連続を欠くため形式的資格を有しなくても、実質的権利を証明するときは、手形上の権利を行使することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年2月7日 昭和29(オ)86
登載
民集 第10巻2号27頁
参照法条
手形法14条,手形法18条,手形法40条3項,手形法77条1項1号,手形法16条1項,手形法77条1項1号3号
論点24第15条手形法

手形に保証の趣旨で裏書をした場合に原因債務についての民事保証を推認することの可否

裁判要旨金銭を借用するにあたり、借主甲が、借受金の弁済確保のため甲の振り出す約束手形になんぴとか確実な保証人の裏書をもらつてくるよう貸主乙から要求されたため、丙に依頼して右手形に丙の裏書を受けたうえ、これを乙に手交して金銭の貸渡しを受けたという事実関係があるだけでは、右手形が金融を得るために用いられることを丙において認識していた場合であつても、丙が手形振出の原因となつた甲乙間の消費貸借上の債務を保証したものと推認することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年11月15日 昭和51(オ)1187
登載
民集 第31巻6号900頁
参照法条
民訴法185条,民法446条,手形法15条,手形法77条
論点25第15条手形法

手形に白地式による裏書の署名をした者が譲受人に手形を交付せず、振出人に返還した場合において手形債務の負担が認められた事例

裁判要旨手形受取人は、裏書譲渡の意思で被裏書人白地のまま当該手形に署名をした場合には、原判決判示の事情(原判決理由参照)により手形を譲受人に交付することなくそのまま振出人に返還した場合でも、右手形の適法の所持人に対し手形債務を負担する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年2月3日 昭和41(オ)969
登載
民集 第21巻1号103頁
参照法条
手形法15条
論点26第15条手形法

手形に保証の趣旨で裏書をした者が原因債務につき保証をしたものと推認するのが相当とされた事例

裁判要旨甲が乙から三回にわたって金銭を借り受けた場合に、丙が、乙とは旧知の仲で右貸借の紹介老でもあり、その貸借の都度、甲に同行して乙と直接会い、その場において、乙の求めに応じ、甲振出の約束手形に保証の趣旨で裏書をして乙に交付し、甲の支払拒絶後は、右三回目の貸金の弁済を求める乙の強い意向に沿う行動をとるなど判示の事情があるときは、丙は、他に特段の事情がない限り、乙に対し、右三回目の貸金債務につき保証をしたものと推認するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成2年9月27日 昭和63(オ)1570
登載
民集 第44巻6号1007頁
参照法条
民法446条,手形法15条,手形法77条,民訴法185条
論点27第16条手形法

手形の被裏書人の記載の抹消と裏書の効力

裁判要旨約束手形の裏書のうち被裏書人の記載のみが抹消された場合、当該裏書は、裏書の連続の関係においては、右抹消が権限のある者によつてされたことを証明するまでもなく、白地式裏書となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和61年7月18日 昭和59(オ)1453
登載
民集 第40巻5号977頁
参照法条
手形法16条1項,手形法77条1項1号
論点28第16条手形法

裏書の連続を欠く手形による手形金請求の訴えの提起と消滅時効の中断

裁判要旨裏書の連続を欠く手形による手形金請求の訴えを提起した場合でも、手形所持人がその実質的権利を証明するときは、右手形債権の消滅時効は中断する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年4月1日 昭和56(オ)783
登載
集民 第135号633頁
参照法条
手形法16条,手形法71条,手形法77条1項8号,民法147条
論点29第16条手形法

手形の裏書の連続があるとされた事例

裁判要旨約束手形の受取人「D商品株式会社」と第一裏書人「D商品株式会社E」との間には裏書の連続がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和56年7月17日 昭和56(オ)218
登載
集民 第133号395頁
参照法条
手形法16条1項,手形法77条
論点30第16条手形法

盗難手形の取得者に手形法一六条二項但書の重大な過失があるとされた事例

裁判要旨手形の譲受人において、手形受取名義人が当該手形の所持人であることにつき疑念を懐いて然るべき原判決理由説示のような事情があるのに、手形振出名義人又は支払担当銀行に照会するなどなんらかの方法で手形振出の真否につき調査をしなかつたのは、重大な過失があるということができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年6月20日 昭和51(オ)1041
登載
集民 第121号45頁
参照法条
手形法16条2項
論点31第16条手形法

約束手形の受取人欄の変造と手形法一六条一項の適用

裁判要旨約束手形の受取人欄が変造された場合であつても、その手形面上変造後の受取人から現在の所持人へ順次連続した裏書の記載があるときは、右所持人は、振出人に対する関係においても手形法七七条一項一号、一六条一項により適法な所持人と推定される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年12月24日 昭和48(オ)931
登載
民集 第28巻10号2140頁
参照法条
手形法16条1項,手形法69条,手形法77条1項
論点32第16条手形法

手形の裏書が抹消されたものではないとされた事例

裁判要旨手形の裏書欄中、裏書人の名下の捺印部分に重ねて、同印の約三分の一の直径の、通常会計帳簿に使用される「済」なる印が青色インクで押捺されているが、裏書人の記名は存置されていて、判示のようなこれを抹消する通常の手段がとられていない場合には、右裏書は抹消されたものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年4月25日 昭和47(オ)89
登載
集民 第105号863頁
参照法条
手形法16条1項
論点33第16条手形法

盗難手形を取得した金融機関に手形法一六条二項の重過失がないとされた事例

裁判要旨第一裏書人が白地裏書をしたまま保管中盗取された約束手形につき、金融機関が同手形の所持人から金融取引によりこれを取得するに当たつて右所持人等につき原判決理由説示のような調査をしたときは、右所持人が当該手形を所持することにつき疑念を抱かず、かつ、当該手形の振出人および第一裏書人に対し直接照会をしなかつたとしても、右金融機関に重過失があるということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和47年11月10日 昭和47(オ)762
登載
集民 第107号169頁
参照法条
手形法16条2項,手形法77条1項1号
論点34第16条手形法

盗難・紛失により流通におかれた約束手形に振出人として署名した者の手形上の責任

裁判要旨流通におく意思で約束手形に振出人として署名または記名捺印をした者は、右手形が盗難・紛失等のため自己の意思によらずに流通におかれた場合でも、連続した裏書のある右手形の所持人に対しては、悪意または重大な過失によつて同人がこれを取得したことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年11月16日 昭和41(オ)568
登載
民集 第25巻8号1173頁
参照法条
手形法16条2項,手形法77条1項1号,手形法78条
論点35第16条手形法

手形法一六条一項〈為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ…〉の適用を求める主張があると解すべき場合

裁判要旨原告が、連続した裏書の記載のある手形を所持し、その手形に基づき手形金の請求をしている場合には、当然に、手形法一六条一項〈為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ…〉の適用を求める主張があるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和45年6月24日 昭和42(オ)747
登載
民集 第24巻6号712頁
参照法条
手形法16条1項,手形法77条1項1号,民訴法186条
論点36第16条手形法

裏書の連続が認められた事例

裁判要旨約束手形の受取人として「D株式会社」と記載され、第一裏書人として「E株式会社」と記載されているときは、裏書の連続があると解することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月17日 昭和43(オ)899
登載
集民 第93号701頁
参照法条
手形法16条1項
論点37第16条手形法

手形法第一六条第一項〈為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ…〉による推定を覆すために主張すべき事項

裁判要旨手形法第一六条第一項〈為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ…〉による推定を覆すためには、手形取得者に同条第二項但書所定の事実が存在することの主張を要する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年6月21日 昭和40(オ)293
登載
民集 第20巻5号1084頁
参照法条
手形法16条
論点38第16条手形法

裏書連続の主張

裁判要旨手形法第一六条第一項〈為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ…〉の適用を主張するには、連続した裏書の記載のある手形を所持する事実を主張することを要し、これをもつて足りる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年3月4日 昭和40(オ)820
登載
民集 第20巻3号406頁
参照法条
手形法16条1項,民訴法186条
論点39第16条手形法

裏書の連続を欠く手形の所持人について実質的権利関係があつたものとは認められないとした事例。

裁判要旨約束手形の最後の被裏書人と所持人との間に裏書の連続が欠く場合において、最後の被裏書人、その裏書人および手形所持人との間で、手形を右被裏書人から裏書人に受け戻したうえこれを同人から所持人に譲渡し右所持人の委任に基づいて裏書人が右手形金を取り立てる旨の合意が成立したなど判示の事実関係のもとでは、右手形の所持について、手形上の権利を行使しうる実質上権利関係があつたものと認めることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年4月1日 昭和39(オ)333
登載
集民 第78号469頁
参照法条
手形法16条1項,民訴法395条1項6号
論点40第16条手形法

偽造裏書と手形の連続。

裁判要旨手形の裏書のうちに偽造のものがあるからといつて、裏書の連続を欠くものとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年2月13日 昭和38(オ)364
登載
集民 第72号161頁
参照法条
手形法16条1項
論点41第16条手形法

裏書の連続の意義。

裁判要旨手形法第一六条第一項〈為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ…〉にいう裏書の連続は、その形式によりこれを判定すれば足り、裏書が真正なものかどうかは問うところではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年5月21日 昭和37(オ)1154
登載
集民 第66号113頁
参照法条
手形法16条,手形法77条1項1号
論点42第16条手形法

一 隠れたる取立委任裏書の性質
二 形式的資格を欠く場合の手形権利者の権利行使方法

裁判要旨一 隠れたる取立委任の場合、取立委任の合意は単に当事者間の人的抗弁事由に止まる。
二 形式的資格を欠く場合でも、手形所持人が債務者に対し実質的権利者であることを証明した場合は、債務者は支払を拒否することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年12月7日 昭和35(オ)1283
登載
集民 第63号445頁
参照法条
手形法16条,手形法18条
論点43第16条手形法

中間裏書の実質的無効と手形所持人の権利取得。

裁判要旨第一裏書が実質的要件を欠くため無効であつても、第二裏書により手形を取得した手形所持人は、取得に際し善意かつ重大な過失がないときは、振出人に対する手形上の権利を取得する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年6月23日 昭和32(オ)169
登載
民集 第15巻6号1669頁
参照法条
手形法16条2項,手形法7条
論点44第16条手形法

手形について除権判決の言渡しがあったこととこれよりも前に当該手形を善意取得した者の手形上の権利

裁判要旨手形について除権判決の言渡しがあったとしても,これよりも前に当該手形を善意取得した者は,当該手形に表章された手形上の権利を失わない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成13年1月25日 平成10(受)562
登載
民集 第55巻1号1頁
参照法条
公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律785条,手形法16条2項,手形法77条1項1号
論点45第17条手形法

約束手形の第一裏書人及び第二裏書人がいずれも保証の趣旨で裏書したものである場合に手形を受戻した第二裏書人に対し第一裏書人が負うべき遡求義務の範囲

裁判要旨約束手形の第一裏書人及び第二裏書人がいずれも振出人の手形債務を保証する趣旨で裏書したものである場合において、第二裏書人が所持人から手形を受戻したうえ第一裏書人に対し遡求したときは、第一裏書人は民法四六五条一項の規定の限度においてのみ遡求に応じれば足り、右の遡求義務の範囲の基準となる裏書人間の負担部分につき特約がないときは、負担部分は平等である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和57年9月7日 昭和56(オ)851
登載
民集 第36巻8号1607頁
参照法条
民法427条,民法442条,民法465条1項,手形法17条,手形法30条1項,手形法47条1項,手形法47条3項,手形法49条,手形法77条1項1号,手形法77条1項4号,手形法77条3項
論点46第17条手形法

期限後裏書の被裏書人に対抗しうべき人的抗弁の範囲

裁判要旨期限後裏書の被裏書人に対しては、その裏書の裏書人に対する人的抗弁をもつて対抗することができるが、右期限後裏書が戻裏書と同一に評価しうるような特段の事情がない限り、右裏書人の前者に対する人的抗弁をもつて対抗することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年9月30日 昭和57(オ)296
登載
集民 第137号261頁
参照法条
手形法17条,手形法20条1項,手形法77条1項1号
論点47第17条手形法

自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人が右原因債権の完済後に振出人に対してする手形金請求と権利の濫用

裁判要旨自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人は、その後右債権の完済を受けて裏書の原因関係が消滅したときは、特別の事情のない限り、振出人に対し手形金を請求するのは権利の濫用にあたり、振出人は、右所持人に対し手形金の支払を拒むことができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和57年7月20日 昭和56(オ)1108
登載
集民 第136号737頁
参照法条
手形法17条,手形法77条1項,民法1条2項,民法1条3項
論点48第17条手形法

一 手形の裏書が裏書人を告とする詐害行為取消一一訟において取り消された場合と右被裏書人から隠れた取立委任裏書を受けていた者の地位

二 約束手形の振出人を原告としその受取人による裏書の被裏書人を被告とする右裏書に対する詐害行為取消の訴と右被裏書人から更に取立委任裏書を受けた者の振出人に対する手形金請求の訴とが併合審理された場合に詐害行為の成立が認められるときは手形金請求を棄却すべきものとされた事例

裁判要旨一 約束手形の振出人甲が原告となりその受取人乙から裏書を受けた丙を被告として提起した右裏書についての詐害行為取消の訴において、甲の請求が認容された場合には、甲は、丙から隠れた取立委任裏書を受けていた丁に対し、丁の善意・悪意を問わず、乙丙間の裏書が詐害行為として取り消された事実を援用して、丁の手形金請求を拒むことができる。

二 約束手形の振出人甲を原告としその受取人乙から裏書を受けた丙を被告とする右裏書に対する詐害行為取消の訴と、丙から更に裏書を受けた丁を原告とし甲を被告とする右手形金請求の訴とが同一裁判所に係属し、後者の訴訟において、甲が、抗弁として、右詐害行為の事実及び丙丁間の裏書が隠れた取立委任裏書であり詐害行為としての取消をもつて丁に対抗しうる旨を主張し、両訴訟が併合審理された結果、甲の主張事実が認められたときは、裁判所は、甲の丙に対する詐害行為取消請求を認容するとともに、丁の甲に対する手形金請求を棄却する裁判をすべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年4月6日 昭和50(オ)999
登載
民集 第33巻3号329頁
参照法条
民法424条,手形法17条,手形法18条,民訴法227条
論点49第17条手形法

手形の書替により新旧両手形の所持人となつた者が一方の手形の支払を受けた場合と他方の手形の支払請求の可否

裁判要旨支払延期のため旧手形がこれを回収せずに新手形に書き替えられた場合に、新旧両手形の所持人となつた者が新手形を書替手形と知つて取得した悪意の取得者であるときは、右所持人は、いずれか一方の手形の支払を受けたのちに、振出人に対し重ねて他方の手形の支払を求めることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年10月12日 昭和53(オ)1375
登載
集民 第128号1頁
参照法条
手形法1条,手形法17条,手形法77条1項
論点50第17条手形法

理事が権限を濫用して振り出した約束手形の第三取得者に対する農業協同組合の手形上の責任

裁判要旨農業協同組合の理事が自己又は第三者の利益をはかるため代表権限を濫用して約束手形を振り出した場合において、受取人が右権限濫用の事実を知り又は知りうべかりし状態のもとに手形の交付を受けたときは、民法九三条但書の規定の類推適用により、農業協同組合は理事の振出行為を無効として受取人に対する手形上の責任を免れることができるが、右受取人がさらに手形を他に裏書譲渡したときは、農業協同組合は、手形法一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉但書の規定により、第三取得者が受取人の右知情について悪意であることを立証した場合に限つて、右第三取得者に対する手形上の責任を免れることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年2月16日 昭和52(オ)1109
登載
集民 第123号65頁
参照法条
農業協同組合法41条,民法53条,民法93条,手形法17条,手形法77条1項1号
論点51第17条手形法

人的抗弁の存在につき手彫所持人の前者が善意であつても、信義則上、人的抗弁をもつて所持人に対抗することができるとされた事例

裁判要旨甲会社の乙銀行に対する借入金債務を連帯保証人丙及び丁が弁済し、右借入金債務の担保として甲会社が乙銀行に裏書譲渡していた約束手形を丙及び丁が乙銀行から無担保裏書を受けて取得した場合において、甲会社が丙の主宰するワンマン会社ないしは同族会社であつて、丁は丙の三女で本件手形に関する限り丙と実質上も経済上も一体とみることができるなど、判示のような事情があるときは、乙銀行から丙及び丁への裏書は、信義則上、乙銀行から甲会社への戻裏書と同一に評価すべきであり、振出人は、甲会社に対抗することができる人的抗弁をもつて、善意の乙銀行の介在にかかわらず、丙及び丁に対しても対抗することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年9月22日 昭和50(オ)766
登載
集民 第121号251頁
参照法条
民法1条2項,手形法17条
論点52第17条手形法

融通手形の所持人の振出人に対する不当仮差押と振出人につき生じた損害との間の因果関係の認定に理由不備があるとされた事例

裁判要旨約束手形の振出人が融通手形であることを理由としてその支払を拒絶した場合に、右振出人が同一の被融通者に対し額面合計五六七万円余に及ぶ七通の融通手形を振出しており、しかも右被融通者が既に支払を停止しているときは、これらの事実を知つた金融機関は右振出人との金融取引を警戒、敬遠するのが一般であるから、当該手形の所持人の右振出人に対する仮差押の申請、執行が右振出人の無資力であることにつき虚偽の疏明資料を用いたものであるとしても、右振出人が支払拒絶後金融取引に支障を生じたことに因り被つた損害が右不当仮差押によるものというためには、他に特別な事情が存在することを必要とするものと解すべきであり、かかる特別事情をなんら認定しないで右不当仮差押と右損害との間に因果関係があると即断することは、理由不備にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年3月15日 昭和47(オ)720
登載
集民 第111号387頁
参照法条
手形法77条,手形法17条,民法709条
論点53第17条手形法

受取人欄白地の手形の振出人とこれを補充した所持人との間に人的抗弁の対抗を受ける当事者としての関係がない場合

裁判要旨数人の手を経由して受取人欄白地の手形の交付を受けた所持人が受取人として自己の氏名を補充した場合、その手形上の形式的記載にかかわらず、右所持人は、振出人との関係においては、原因関係欠缺の人的抗弁の対抗を受ける直接の当事者にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年12月19日 昭和46(オ)876
登載
集民 第113号647頁
参照法条
手形法10条,手形法17条,手形法77条
論点54第17条手形法

手形法一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉但書にあたるとされた事例

裁判要旨約束手形を裏書によつて取得した者が、取得の際、右手形が請負代金の前渡金として振り出されたものであり、かつ、請負人の財産状態が悪化して仕事の完成が期待しえないことを知つていたときには、手形法一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉但書にいわゆる「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキ」にあたると解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年3月22日 昭和47(オ)1211
登載
集民 第108号487頁
参照法条
手形法17条
論点55第17条手形法

約束手形の裏書を受けた手形所持人が裏書の原因関係である法律行為が無効であるときに振出人に対してする手形金請求と権利濫用

裁判要旨約束手形の裏書を受けた手形所持人が、裏書の原因関係である法律行為が無効であるにかかわらず、手形を所持していることを奇貨として振出人に対し手形金を請求することは、特段の事情のないかぎり、権利の濫用として許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年11月16日 昭和47(オ)104
登載
民集 第27巻10号1391頁
参照法条
手形法77条,手形法17条,民法1条2項,民法1条3項
論点56第17条手形法

一、約束手形の振出署名者の得た除権判決の効力
二、約束手形の振出署名者の申立にかかる除権判決により手形が無効になつた場合と除権判決前に手形上の権利を取得していた者の権利行使の方法

裁判要旨一、約束手形に振出人として署名したが、これを流通におく前に盗取されまたは紛失した者の得た除権判決は、右振出署名者において、除権判決後その手形を取得した者に対し支払を拒絶しうる効力を有するにとどまり、除権判決前に手形を悪意または重大な過失なく取得し、振出署名者に対して振出人としての責任を追求しえた者の有する実質的権利までも消滅させる効力を有するものではない。
二、約束手形の振出署名者の申立にかかる除権判決により手形が無効となつた場合において、無効となつた手形を所持する実質的権利者は、除権判決前すでに手形上の権利を取得し、除権判決当時手形の適法な所持人であつたことを主張・立証することにより、その権利を行使することができるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年4月6日 昭和44(オ)118
登載
民集 第26巻3号455頁
参照法条
民訴法777条,民訴法778条,民訴法784条,民訴法785条,手形法17条,手形法38条,手形法39条,手形法77条,手形法78条1項
論点57第17条手形法

手形の振出が法人のためにされたものであるとも代表者個人のためにされたものであるとも解しうる場合における法律関係

裁判要旨手形上の記載からは、手形の振出が法人のためにされたものであるとも、代表者個人のためにされたものであるとも解しうる場合には、手形所持人は、法人および代表者個人のいずれに対しても手形金の請求をすることができ、他方、請求を受けた者は、その振出が真実いずれの趣旨でされたかを知つていた直接の相手方に対しては、その旨の人的抗弁を主張することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年2月10日 昭和46(オ)209
登載
民集 第26巻1号17頁
参照法条
手形法8条,手形法17条,手形法75条
論点58第17条手形法

振出および裏書の原因関係がともに消滅した場合における人的抗弁の対抗

裁判要旨手形振出人は、受取人から手形所持人に対する裏書の原因関係が消滅し、所持人が手形の支払を求めるなんらの経済的利益も有しないときは、受取人との間における振出の原因関係消滅の抗弁をもつて、手形所持人に対抗することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年7月16日 昭和45(オ)16
登載
民集 第24巻7号1077頁
参照法条
手形法17条,手形法77条1項1号
論点59第17条手形法

将来発生することあるべき債務の担保のために振り出された約束手形の受取人が右債務の不発生が確定した後に振出人のための手形保証人に対してする手形金請求と権利の濫用

裁判要旨将来発生することあるべき債務の担保のために振り出され、振出人のために手形保証のなされた約束手形の受取人は、手形振出の右原因関係上の債務の不発生が確定したときは、特別の事情のないかぎり、以後手形保証人に対して手形上の権利を行使すべき実質的理由を失つたものであつて、右手形を返還せず、手形が自己の手裡に存するのを奇貨として手形保証人に対し手形金を請求するのは、権利の濫用にあたり、手形保証人は受取人に対し手形金の支払を拒むことができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和45年3月31日 昭和44(オ)1118
登載
民集 第24巻3号182頁
参照法条
手形法77条,手形法32条1項,手形法32条2項,手形法17条,民法1条2項,民法1条3項
論点60第17条手形法

信用組合の表見参事が権限なくして約束手形を振り出した場合と信用組合の手形所持人に対する人的抗弁

裁判要旨手形振出の代理権を有しない信用組合の表見参事が代理資格を冒用して約束手形を振り出した場合において、手形受取人および同人の被裏書人がいずれも右代理権のないことを知つて手形を取得したときには、信用組合は被裏書人である手形所持人に対し、右表見参事が右代理権を有しなかつたことをもつて対抗することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年3月27日 昭和42(オ)848
登載
集民 第98号565頁
参照法条
商法38条3項,手形法17条,手形法77条1項1号,中小企業等協同組合法44条
論点61第17条手形法

約束手形所持人の振出人に対する手形債権に基づく詐害行為取消請求と手形裏書の原因関係の消滅時効

裁判要旨約束手形の所持人が、その振出人に対する手形債権に基づき、右振出人と第三者との間の行為を詐害行為としてその取消を求める訴訟において、右所持人への裏書の原因関係上の債務につき消滅時効が完成していても、その債務の債務者が時効を援用していないかぎり、被告たち受益者は、右債務の消滅を主張して、右所持人の権利の行使を拒むことができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年1月23日 昭和42(オ)608
登載
集民 第98号33頁
参照法条
民法145条,民法424条,手形法77条,手形法17条
論点62第17条手形法

一、代理人が権限を濫用して振り出した約束手形と第三取得者に対する本人の手形抗弁
二、手形行為は農業協同組合の目的たる事業の範囲に含まれるか

裁判要旨一、代理人が自己または第三者の利益をはかるため、代理権限を濫用して約束手形を振り出した場合において、権限濫用の事実を知りまたは知りうべかりし状態で右手形の交付を受けた受取人が、これを他に裏書譲渡したときは、本人は、手形法一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉但書の規定により、第三取得者が受取人の右知情について悪意であることを立証した場合にかぎり、右第三取得者に対する手形上の責任を免れることができると解するのが相当である。
二、手形行為は、農業協同組合の目的たる事業の範囲に含まれる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年4月3日 昭和42(オ)602
登載
民集 第23巻4号737頁
参照法条
手形法77条1項1号,手形法17条,民法43条,民法93条,農業協同組合法10条
論点63第17条手形法

手形取得の経路についての事実認定に審理不尽・理由不備の違法があるとされた事例

裁判要旨手形が甲(振出人)―乙―丙(所持人)の経路で丙によつて取得されたものでなく、甲−乙−丁の経路で丁が取得したが、丁は訴訟信託の目的で丙に譲渡したものであるから、丙に対しては支払義務がない旨の訴訟信託の抗弁を審理するに際し、丁は乙の債権者として右手形を取得する事情があるのに対し、丙にはそのような事情がなく、また丁と丙とは親戚関係にあつて判示のような密接な生活関係を有するほか、丙が手形を入手するについては振出人甲の信用状態等を調査したこともない等判示のような事実関係を確定し、他方該手形を譲り受けるに際し乙に交付したと丙の供述する割引金額は手形の額面金額をこえていることが証拠上窺われるのにかかわらず、特段の事情を示すことなく、右手形は甲―乙―丙の経路で丙が裏書譲渡を受けたものと認定することは、審理不尽・理由不備の違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年9月19日 昭和42(オ)479
登載
集民 第92号305頁
参照法条
手形法17条,民訴法185条,民訴法395条1項6号
論点64第17条手形法

同一債権の支払方法として引き受けられた新旧二通の為替手形を所持する債権者の旧手形に基づく権利行使が認められた事例

裁判要旨(省略)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年2月1日 昭和42(オ)1000
登載
集民 第90号187頁
参照法条
手形法1条,手形法17条
論点65第17条手形法

自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人が右原因債権の完済後に振出人に対してする手形金請求と権利の濫用

裁判要旨自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人は、その後右債権の完済を受けて裏書の原因関係が消滅したときは、特別の事情のないかぎり、以後右手形を保持すべき正当の権原を有しないことになり、手形上の権利を行使すべき実質的理由を失つたものであつて、右手形を返還しないで自己が所持するのを奇貨として、自己の形式的権利を利用し振出人に対し手形金を請求するのは、権利の濫用にあたり、振出人は、右所持人に対し手形金の支払を拒むことができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和43年12月25日 昭和38(オ)330
登載
民集 第22巻13号3548頁
参照法条
手形法77条,手形法17条,民法1条2項,民法1条3項
論点66第17条手形法

原因債務の時効消滅と手形抗弁

裁判要旨手形債務者は、原因債務が時効消滅したことを理由として、原因関係上の当事者たる手形所持人からの手形金請求を拒むことができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年12月12日 昭和43(オ)638
登載
集民 第93号585頁
参照法条
手形法17条,民法173条1号
論点67第17条手形法

振出人との間で手形債務を負担しないことを約して手形保証をした者の受取人に対する抗弁の対抗

裁判要旨甲が乙に対して振り出した約束手形上に、丙が当該手形金の支払を負担しないことを甲に約して手形保証としての署名をした場合において、乙が右の事情を知つているかぎり、丙は乙に対し手形金の支払を拒むことができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年3月23日 昭和41(オ)977
登載
集民 第86号647頁
参照法条
手形法17条,手形法30条
論点68第17条手形法

約束手形振出の意思表示が所持人の強迫によることを理由として同人に対し右意思表示の取消がなされた事例。

裁判要旨(添付、原審判決理由参照)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年1月26日 昭和39(オ)163
登載
集民 第77号145頁
参照法条
民法96条,手形法17条
論点69第17条手形法

手形債務者は隠れた取立委任裏書の裏書人に対して有する人的抗弁事由をもつてその被裏書人に対抗しうるか。

裁判要旨手形債務者は隠れた取立委任裏書の裏書人に対して有する人的抗弁事由をもつてその被裏書人に対抗しうる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年10月16日 昭和36(オ)1270
登載
民集 第18巻8号1727頁
参照法条
手形法17条,手形法18条
論点70第17条手形法

支払延期のため新手形の振出と旧手形上の権利。

裁判要旨支払延期のために、旧手形の回収なしに、新手形が振出された場合、所持人は新旧両手形上の権利を有する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年6月8日 昭和35(オ)379
登載
集民 第61号91頁
参照法条
手形法1条,手形法17条
論点71第17条手形法

手形所持人の過失の有無と手形法第一七条。

裁判要旨債務者を害することを知らないで手形の所持人となつた者に対しては、重大な過失があると否とを問わず、前者に対する人的抗弁をもつて対抗することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年10月25日 昭和33(オ)762
登載
民集 第14巻12号2720頁
参照法条
手形法17条,小切手法22条
論点72第17条手形法

手形の書替により旧手形に基く債務は消滅するか

裁判要旨手形の書替がなされた場合、その目的が支払延期のためであり、かつ旧手形はこれを新手形の見返り担保とする意味で回収されなかつた以上、旧手形に基く債務は、直接の当事者間においても、右書替により消滅することはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年4月27日 昭和29(オ)802
登載
民集 第10巻4号459頁
参照法条
手形法1条,手形法17条
論点73第17条手形法

期間後裏書の被裏書人に対抗しうべき人的抗弁の範囲

裁判要旨期間後裏書の被裏書人に対しては、その裏書の裏書人に対する人的抗弁をもつて対抗することができるが、右裏書人の前者に対する人的抗弁をもつて対抗することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年3月11日 昭和27(オ)1263
登載
民集 第8巻3号688頁
参照法条
手形法20条1項,手形法17条
論点74第17条手形法

貸金債権の未発生の利息の支払のために振り出された約束手形であることを知って右手形を取得した行為と手形法一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉ただし書

裁判要旨約束手形の所持人が手形を裏書によって取得する際に当該手形が貸金債権の未発生の利息の支払のために振り出されたものであることを知っていたとしても、貸金債権の元本が弁済期より前に弁済されることによって右利息債権が発生しないであろうことを知っていたなどの特段の事情がない限り、手形法一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉ただし書にいう「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキ」には当たらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成7年7月14日 平成6(オ)1719
登載
集民 第176号403頁
参照法条
手形法17条,手形法77条
論点75第18条手形法

振出日白地の確定日払の為替手形の取立委任を受けた銀行に白地補充等の義務がないとされた事例

裁判要旨振出日白地の確定日払の為替手形の取立委任を受けた銀行と取立委任者との間に白地補充について特段の合意がなく、かつ、各種金融機関が取立委任を受ける確定日払の手形には振出日白地のものが多数あり、金融機関は、手形所持人に白地補充を促したり、自ら補充したりしないでそのまま取立に回すのが慣習であり、手形交換所の定めにおいても確定日払の手形の振出日の白地は「形式的不備」に該当しないものとされていたなど、原判示の事実関係のもとにおいては、銀行は委任者に対し、右白地の補充を促し又は自ら補充する義務を負うものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年10月14日 昭和54(オ)771
登載
集民 第131号1頁
参照法条
手形法1条7号,手形法10条,手形法18条,民法644条
論点76第18条手形法

手形の取立委任と信託法第一一条

裁判要旨手形の取立委任をしたからといつて、当然に信託法第一一条に違反するとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年2月2日 昭和36(オ)934
登載
集民 第58号509頁
参照法条
信託法11条,手形法18条
論点77第18条手形法

会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行が,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を銀行取引約定に基づき同会社の債務の弁済に充当することの可否

裁判要旨会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を,法定の手続によらず同会社の債務の弁済に充当し得る旨を定める銀行取引約定に基づき,同会社の債務の弁済に充当することができる。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成23年12月15日 平成22(受)16
登載
民集 第65巻9号3511頁
参照法条
民事再生法53条1項,民事再生法53条2項,民事再生法85条1項,商法521条,手形法18条,手形法77条1項1号,民法91条
論点78第20条手形法

不渡の符箋等により満期後の支払拒絶が手形面上明らかにされたのちの裏書と手形法二〇条一項〈満期後ノ裏書ハ満期前ノ裏書ト同一ノ効力ヲ有ス但シ支払拒絶証書作成後ノ裏書又ハ支払拒絶証書作成期間経過後ノ裏書ハ民法第三編…〉

裁判要旨約束手形の支払拒絶証書作成前でその作成期間の経過前にされた裏書は、不渡の符箋等により満期後の支払拒絶の事実が手形面上明らかにされたのちのものであつても、満期前の裏書と同一の効力を有する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月18日 昭和54(オ)271
登載
民集 第34巻7号942頁
参照法条
手形法20条1項,手形法77条1項1号
論点79第20条手形法

手残り手形上の権利と新手形金の弁済との関係。

裁判要旨書替え後のいわゆる手残手形(旧手形)の期限後裏書譲渡をうけた者は、その後新手形について弁済があつたことにより手形債権を喪失する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年11月6日 昭和38(オ)1475
登載
集民 第76号1頁
参照法条
手形法20条
論点80第20条手形法

手形振出人の一人が支払により手形を受け戻した上更に第三者に交付した場合における他の振出人の責任。

裁判要旨甲乙共同振出にかかる受取人白地の約束手形を、甲が満期後手形金を支払つて受け戻し、更にこれを丙に交付した場合には、乙は丙に対し手形金の支払をなす義務はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年9月11日 昭和31(オ)1047
登載
民集 第12巻13号1998頁
参照法条
手形法20条,手形法39条
原

条文原文

原文ママ

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手形法 第11条 詳細ページ
第十一条為替手形ハ指図式ニテ振出サザルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得
2振出人ガ為替手形ニ「指図禁止」ノ文字又ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記載シタルトキハ其ノ証券ハ民法(明治二十九年法律第八十九号)第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル債権ノ譲渡ニ関スル方式ニ従ヒ且其ノ効力ヲ以テノミ之ヲ譲渡スコトヲ得
3裏書ハ引受ヲ為シタル又ハ為サザル支払人、振出人其ノ他ノ債務者ニ対シテモ之ヲ為スコトヲ得此等ノ者ハ更ニ手形ヲ裏書スルコトヲ得
手形法 第12条 詳細ページ
第十二条裏書ハ単純ナルコトヲ要ス裏書ニ附シタル条件ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス
2一部ノ裏書ハ之ヲ無効トス
3持参人払ノ裏書ハ白地式裏書ト同一ノ効力ヲ有ス
手形法 第13条 詳細ページ
第十三条裏書ハ為替手形又ハ之ト結合シタル紙片(補箋)ニ之ヲ記載シ裏書人署名スルコトヲ要ス
2裏書ハ被裏書人ヲ指定セズシテ之ヲ為シ又ハ単ニ裏書人ノ署名ノミヲ以テ之ヲ為スコトヲ得(白地式裏書)此ノ後ノ場合ニ於テハ裏書ハ為替手形ノ裏面又ハ補箋ニ之ヲ為スニ非ザレバ其ノ効力ヲ有セズ
手形法 第14条 詳細ページ
第十四条裏書ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ移転ス
2裏書ガ白地式ナルトキハ所持人ハ
一自己ノ名称又ハ他人ノ名称ヲ以テ白地ヲ補充スルコトヲ得
二白地式ニ依リ又ハ他人ヲ表示シテ更ニ手形ヲ裏書スルコトヲ得
三白地ヲ補充セズ且裏書ヲ為サズシテ手形ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得
手形法 第15条 詳細ページ
第十五条裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ引受及支払ヲ担保ス
2裏書人ハ新ナル裏書ヲ禁ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ裏書人ハ手形ノ爾後ノ被裏書人ニ対シ担保ノ責ヲ負フコトナシ
手形法 第16条 詳細ページ
第十六条為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ抹消シタル裏書ハ此ノ関係ニ於テハ之ヲ記載セザルモノト看做ス白地式裏書ニ次デ他ノ裏書アルトキハ其ノ裏書ヲ為シタル者ハ白地式裏書ニ因リテ手形ヲ取得シタルモノト看做ス
2事由ノ何タルヲ問ハズ為替手形ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ手形ヲ返還スル義務ヲ負フコトナシ但シ所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
手形法 第17条 詳細ページ
第十七条為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所持人ガ其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
手形法 第18条 詳細ページ
第十八条裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得但シ所持人ハ代理ノ為ノ裏書ノミヲ為スコトヲ得
2前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル
3代理ノ為ノ裏書ニ依ル委任ハ委任者ノ死亡又ハ其ノ者ガ行為能力ノ制限ヲ受ケタルコトニ因リ終了セズ
手形法 第19条 詳細ページ
第十九条裏書ニ「担保ノ為」、「質入ノ為」其ノ他質権ノ設定ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得但シ所持人ノ為シタル裏書ハ代理ノ為ノ裏書トシテノ効力ノミヲ有ス
2債務者ハ裏書人ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所持人ガ其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
手形法 第20条 詳細ページ
第二十条満期後ノ裏書ハ満期前ノ裏書ト同一ノ効力ヲ有ス但シ支払拒絶証書作成後ノ裏書又ハ支払拒絶証書作成期間経過後ノ裏書ハ民法第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル債権ノ譲渡ノ効力ノミヲ有ス
2日附ノ記載ナキ裏書ハ支払拒絶証書作成期間経過前ニ之ヲ為シタルモノト推定ス
出

一次情報

原文ママ

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