民事保全法 / テーマ別まとめ

保全命令に関する手続/保全取消し

保全取消しの条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

保全命令が発令された後でも、一定の事由があれば債務者の申立てにより保全命令を取り消すことができます。取消し事由は、本案の訴えを提起しない場合(37条)、その後の事情の変更(38条)、仮処分に限られる担保付きの特別の事情(39条)の3つに分かれ、それぞれ対象や要件が異なります。取消しの手続には、保全異議に関する規定の多くが準用されます(40条)。

保全取消し
根拠条文取消事由対象主な要件
37条本案訴訟の不提起仮差押・仮処分期間内に提訴書面未提出
38条事情の変更仮差押・仮処分事情変更を疎明
39条特別の事情仮処分のみ担保を条件に取消し
  • 37条の期間は二週間以上でなければならない
  • 本案提訴後に訴えが取り下げ・却下された場合は書面未提出とみなされる(37条4項)
  • 家事調停・労働審判・仲裁・公害紛争処理の申請も本案の訴え提起とみなす特則がある(37条5項)
  • その手続が調停成立等以外で終了した場合、同一期間内に改めて本案提訴が必要(37条6項)
  • 39条の特別の事情による取消しは仮処分命令に限られ、仮差押命令には適用されない
  • 40条により保全異議の規定が準用されるが、37条1項の裁判には準用されない規定もある
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保全取消し

保全取消しについて、条文は何を定めているか。

第37条本案の訴えの不提起等による保全取消し期間内に本案提訴しないと保全命令取消し8項判例なし
  • 債務者の申立てで、相当な期間内の本案提訴と証明書面提出を命じる
  • その期間は二週間以上でなければならない
  • 期間内に書面未提出なら、裁判所は保全命令を取り消さなければならない
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第38条事情の変更による保全取消し事情が変われば保全命令を取り消せる3項判例 1件
  • 保全すべき権利や必要性の消滅など事情変更があれば、債務者の申立てで取消し可能
  • 事情の変更は疎明しなければならない
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第39条特別の事情による保全取消し仮処分は特別事情があれば担保付きで取消し3項判例なし
  • 仮処分命令により償えない損害のおそれ等、特別の事情が要件
  • 特別の事情は疎明しなければならない
  • 裁判所は担保を立てることを条件に仮処分命令を取り消せる
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第40条保全異議の規定の準用等保全取消しの手続には保全異議の規定を準用2項判例なし
  • 27条〈保全執行の停止の裁判等〉~29条〈保全異議の審理〉、31条〈審理の終結〉、33条〈原状回復の裁判〉~36条〈判事補の権限の特例〉の規定を保全取消しに準用する
  • ただし37条1項〈本案の訴えの不提起等による保全取消し〉の裁判には、27条〈保全執行の停止の裁判等〉~29条〈保全異議の審理〉、31条〈審理の終結〉、33条〈原状回復の裁判〉、34条〈保全命令を取り消す決定の効力〉、36条〈判事補の権限の特例〉は準用されない
  • 取消し申立てを本案裁判所にした場合、記録が保全命令発令裁判所にあればそこでも裁判可能
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第38条民事保全法

保全すべき権利が発令時から存在しなかったものと本案訴訟の判決で判断され,仮処分命令が事情の変更により取り消された場合において,当該仮処分命令の保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき,不当利得返還請求をすることができるか

裁判要旨仮処分命令における保全すべき権利が,本案訴訟の判決において,当該仮処分命令の発令時から存在しなかったものと判断され,このことが事情の変更に当たるとして当該仮処分命令を取り消す旨の決定が確定した場合には,当該仮処分命令を受けた債務者は,その保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき,債権者に対して不当利得返還請求をすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年4月24日 平成20(受)224
登載
民集 第63巻4号765頁
参照法条
民事執行法172条1項,民事保全法38条1項,民事保全法52条,民法703条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民事保全法 第37条(本案の訴えの不提起等による保全取消し) 詳細ページ
(本案の訴えの不提起等による保全取消し)
第三十七条保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面を提出すべきことを命じなければならない。
2前項の期間は、二週間以上でなければならない。
3債権者が第一項の規定により定められた期間内に同項の書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない。
4第一項の書面が提出された後に、同項の本案の訴えが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなす。
5第一項及び第三項の規定の適用については、本案が家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第二百五十七条第一項に規定する事件であるときは家庭裁判所に対する調停の申立てを、本案が労働審判法(平成十六年法律第四十五号)第一条に規定する事件であるときは地方裁判所に対する労働審判手続の申立てを、本案に関し仲裁合意があるときは仲裁手続の開始の手続を、本案が公害紛争処理法(昭和四十五年法律第百八号)第二条に規定する公害に係る被害についての損害賠償の請求に関する事件であるときは同法第四十二条の十二第一項に規定する損害賠償の責任に関する裁定(次項において「責任裁定」という。)の申請を本案の訴えの提起とみなす。
6前項の調停の事件、同項の労働審判手続、同項の仲裁手続又は同項の責任裁定の手続が調停の成立、労働審判(労働審判法第二十九条第二項において準用する民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十六条の規定による調停の成立及び労働審判法第二十四条第一項の規定による労働審判事件の終了を含む。)、仲裁判断又は責任裁定(公害紛争処理法第四十二条の二十四第二項の当事者間の合意の成立を含む。)によらないで終了したときは、債権者は、その終了の日から第一項の規定により定められた期間と同一の期間内に本案の訴えを提起しなければならない。
7第三項の規定は債権者が前項の規定による本案の訴えの提起をしなかった場合について、第四項の規定は前項の本案の訴えが提起され、又は労働審判法第二十二条第一項(同法第二十三条第二項及び第二十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされた後にその訴えが取り下げられ、又は却下された場合について準用する。
8第十六条本文及び第十七条の規定は、第三項(前項において準用する場合を含む。)の規定による決定について準用する。
民事保全法 第38条(事情の変更による保全取消し) 詳細ページ
(事情の変更による保全取消し)
第三十八条保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるときは、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消すことができる。
2前項の事情の変更は、疎明しなければならない。
3第十六条本文、第十七条並びに第三十二条第二項及び第三項の規定は、第一項の申立てについての決定について準用する。
民事保全法 第39条(特別の事情による保全取消し) 詳細ページ
(特別の事情による保全取消し)
第三十九条仮処分命令により償うことができない損害を生ずるおそれがあるときその他の特別の事情があるときは、仮処分命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件として仮処分命令を取り消すことができる。
2前項の特別の事情は、疎明しなければならない。
3第十六条本文及び第十七条の規定は、第一項の申立てについての決定について準用する。
民事保全法 第40条(保全異議の規定の準用等) 詳細ページ
(保全異議の規定の準用等)
第四十条第二十七条から第二十九条まで、第三十一条及び第三十三条から第三十六条までの規定は、保全取消しに関する裁判について準用する。ただし、第二十七条から第二十九条まで、第三十一条、第三十三条、第三十四条及び第三十六条の規定は、第三十七条第一項の規定による裁判については、この限りでない。
2前項において準用する第二十七条第一項の規定による裁判は、保全取消しの申立てが保全命令を発した裁判所以外の本案の裁判所にされた場合において、事件の記録が保全命令を発した裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。
出

一次情報

原文ママ

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