民事訴訟法 / テーマ別まとめ

総則/通則

通則の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

民事訴訟の手続について、この法律が定める部分と他の法令や最高裁判所規則に委ねる部分の関係を定めています。あわせて、裁判所と当事者がそれぞれ守るべき基本姿勢を示しています。

通則
条文定める内容誰の責務・権限か
第1条民訴手続は他法令+この法律による―
第2条公正かつ迅速な訴訟運営裁判所の努力義務
第2条信義誠実な訴訟追行当事者の義務
第3条手続の細目は最高裁判所規則で定める最高裁判所
  • 第1条の『他の法令に定めるもの』が優先され、この法律はそれ以外の部分を定める。
  • 第3条の規則制定範囲は『この法律に定めるもののほか』の事項に限られる。
1

通則

通則について、条文は何を定めているか。

第1条趣旨民訴手続の根拠法の優先順位を定める1項判例 1件
  • 他の法令に定めがあればそちらが適用される
  • それ以外の部分をこの法律が定める
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第2条裁判所及び当事者の責務裁判所と当事者、双方の基本姿勢を定める1項判例 12件
  • 裁判所は公正かつ迅速な訴訟運営に努める
  • 当事者は信義に従い誠実に訴訟を追行する義務を負う
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第3条最高裁判所規則法律に定めのない細目は最高裁判所規則による1項判例 2件
  • この法律に定めがない手続事項は最高裁判所規則で定める
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第1条民事訴訟法

一、共同代表の定めと特定の事項について共同代表取締役の意見が合致した場合における代表権行使の委任
二、契約が共同代表の定めに違背し無効であると主張することが信義則に反し許されないとされた事例

裁判要旨一、特定の事項について共同代表取締役の意思が合致した場合において、代表取締役のある者が他の代表取締役に右意思を外部に表示することにつき代表権の行使を委任することは、共同代表の定めに反しない。
二、会社に甲乙、丙の代表取締役があり、共同代表の定めがあるにもかかわらず、甲、乙のみによつて会社所有の物件が売却された場合において、会社が甲の財産の保全、運営のために設立されたものであり、乙、丙はいずれも甲と内縁関係にあつて、会社の業務は専ら甲によつて運営され、実質的には共同代表が行われておらず、右売却にあたつて甲が丙の合意もあると買主を信じさせるような言動をし、かつ、契約締結後約五年の間会社において右契約が無効であるとの主張をしなかつた等判示のような事情があるときは、会社が右売買契約を共同代表の定めに違背し無効であると主張することは、信義則に反し、許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年11月14日 昭和46(オ)90
登載
民集 第28巻8号1605頁
参照法条
商法261条2項,民訴法1条2項
論点2第2条民事訴訟法

1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決に対する再審の訴えと上記確定判決の効力を受ける第三者の原告適格
2 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決と民訴法338条1項3号の再審事由
3 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決に民訴法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地があるとされた事例

裁判要旨1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる。
2 新株発行の無効の訴えの被告とされた株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており,上記訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には,上記確定判決には,民訴法338条1項3号の再審事由がある。
3 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合において,次の(1)〜(4)など判示の事情の下においては,上記訴えの被告とされた株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており,上記訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができないものとして,上記確定判決には民訴法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地がある。
(1) 当該第三者は,上記訴えに係る訴訟の係属を知らず,上記訴訟の審理に関与する機会を与えられなかった。
(2) 当該第三者は,上記訴訟の係属前から,上記株式会社に対して自らが発行を受けた株式につきその発行の有効性を主張するなどしており,仮に上記訴訟の係属を知れば,上記訴訟に参加するなどして株式の発行の無効を求める請求を争うことが明らかな状況にあり,かつ,上記株式会社はそのような状況にあることを十分に認識していた。
(3) 上記株式会社は,上記訴訟において請求を全く争わず,かえって,請求原因事実の追加立証を求める受訴裁判所の訴訟指揮に対し,自ら請求原因事実を裏付ける書証を提出した。
(4) 上記株式会社は,当該第三者に対して上記訴訟の係属を知らせることが容易であったにもかかわらず,これを知らせなかった。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成25年11月21日 平成24(許)43
登載
民集 第67巻8号1686頁
参照法条
(1〜3につき) 会社法828条1項2号,会社法838条 (1につき) 民訴法第1編第3章 当事者,民訴法47条,民訴法338条 (2,3につき) 民訴法2条,民訴法338条1項3号
論点3第2条民事訴訟法

即時抗告申立書の写しを即時抗告の相手方に送付するなどして相手方に攻撃防御の機会を与えることなく,相手方の申立てに係る文書提出命令を取り消し,同申立てを却下した抗告裁判所の審理手続に違法があるとして職権により破棄された事例

裁判要旨時間外勤務手当の支払を求める訴訟を提起したXの申立てにより,受訴裁判所が,使用者であるYに対し,Xのタイムカードの提出を命ずる決定をしたため,Yが上記タイムカードを所持している事実を争って即時抗告をした場合において,次の(1)〜(4)など判示の事情の下では,抗告裁判所が,即時抗告申立書の写しをXに送付するなどしてXに攻撃防御の機会を与えることのないまま,上記タイムカードが存在していると認めるに足りないとして,上記決定を取り消し,上記申立てを却下するというXに不利益な判断をしたことは,明らかに民事訴訟における手続的正義の要求に反するというべきであり,その審理手続には,裁量の範囲を逸脱した違法がある。
(1) 上記訴訟において,上記タイムカードは,Xが労働に従事した事実及び労働時間を証明する上で極めて重要な書証である。
(2) Yが上記タイムカードを所持しているとの事実の存否の判断は,当事者の主張やその提出する証拠に依存するところが大きい。
(3) 上記即時抗告申立書には,Yが上記タイムカードを所持していると認めた上記決定に対する反論が具体的な理由を示して記載され,かつ,上記理由を裏付ける証拠として,上記決定後にその写しが提出された書証が引用されていた。
(4) Xにおいて,Yが即時抗告をしたことを知っていた事実や,そのことを知らなかったことにつきXの責めに帰すべき事由があることはうかがわれない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成23年4月13日 平成22(ク)1088
登載
民集 第65巻3号1290頁
参照法条
民訴法2条,民訴法221条1項,民訴法223条1項,民訴法223条7項,民訴法286条1項,民訴法289条1項,民訴法331条本文,民訴規則47条1項
論点4第2条民事訴訟法

簡易生命保険契約の保険金受取人が無断で保険金等の支払を受けた者に対し不法行為に基づく損害賠償を請求する場合において上記の者が損害の発生を否認して請求を争うことが信義誠実の原則に反し許されないとされた事例

裁判要旨簡易生命保険契約の保険金受取人であるXが,無断で保険金等の支払を受けたY1及びY2に対し不法行為に基づく損害賠償を請求する場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,上記支払が有効な弁済とはならず,Xが依然として上記保険金等の支払請求権を有しているとしても,Y1及びY2がXに損害が発生したことを否認してXの損害賠償請求を争うことは,信義誠実の原則に反し許されない。
(1) Y1及びY2は,郵便局員から上記保険金等の支払請求権がXに帰属する旨の説明を受けていながら,Xに無断で,X名義の支払請求書兼受領証を作成するなどして,支払請求手続きを執った。
(2) Y1及びY2が上記保険金等の支払を受けた後,Xは,日本郵政公社に上記保険金等の支払を請求したが拒絶された。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成23年2月18日 平成21(受)216
登載
集民 第236号147頁
参照法条
民法1条2項,民法478条,民法709条,民法719条,民訴法2条
論点5第2条民事訴訟法

業務上の過重負荷と基礎疾患とが共に原因となって従業員が死亡した場合において,使用者の不法行為を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり,使用者による過失相殺の主張が訴訟上の信義則に反するとして民法722条2項の規定を類推適用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨業務上の過重負荷と従業員Aの基礎疾患とが共に原因となってAが急性心筋虚血により死亡した場合において,(1)Aは,虚血性心疾患の危険因子となる家族性高コレステロール血症にり患し,冠状動脈の2枝に障害があり,陳旧性心筋梗塞の合併症を有していたこと,(2)使用者は,原審(控訴審)において初めて過失相殺の主張をしたが,第1審の段階ではAが家族性高コレステロール血症にり患していた事実を認識していなかったことがうかがわれることなど判示の事情の下では,使用者の不法行為を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり,上記過失相殺の主張が訴訟上の信義則に反するとして民法722条2項の規定を類推適用しなかった原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成20年3月27日 平成18(受)1870
登載
集民 第227号585頁
参照法条
民法722条2項,民訴法2条
論点6第2条民事訴訟法

原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律等に基づき健康管理手当の支給認定を受けた被爆者が外国へ出国したことに伴いその支給を打ち切られたため未支給の健康管理手当の支払を求める訴訟において支給義務者が地方自治法236条所定の消滅時効を主張することが信義則に反し許されないとされた事例

裁判要旨原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律又は原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づき健康管理手当の支給認定を受けた被爆者が外国へ出国したことに伴いその支給を打ち切られたため未支給の健康管理手当の支払を求める訴訟において,支給義務者が地方自治法236条所定の消滅時効を主張することは,(1)上記被爆者がその申請に基づき上記健康管理手当の受給権を具体的な権利として取得したこと,(2)法令上の根拠がないのに,被爆者が国外に居住地を移した場合に健康管理手当の受給権につき失権の取扱いとなるものと定めた違法な通達に基づき,上記支給義務者が支給を打ち切ったこと,(3)上記通達の定めは我が国を出国した被爆者に出国の時点から適用されるものであり,失権取扱い後の権利行使が通常困難となる者を対象としていること,(4)上記被爆者については上記失権の取扱いに対し訴訟を提起するなどして自己の権利を行使することが合理的に期待できたなどの事情が見当たらないことなど判示の事情の下では,信義則に反し許されない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年2月6日 平成18(行ヒ)136
登載
民集 第61巻1号122頁
参照法条
原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律5条,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成11年法律第160号による改正前のもの)27条,地方自治法236条2項,民訴法2条,民法1条2項
論点7第2条民事訴訟法

郵政事務官として採用された者が,禁錮以上の刑に処せられたという失職事由が発生した後も約26年11か月にわたり事実上勤務を継続した場合に,国(旧日本郵政公社,郵便事業株式会社が逐次その地位を承継)において上記の者が国家公務員法76条,38条2号〈共同訴訟の要件〉に基づき失職した旨を主張することが,信義則に反し権利の濫用に当たるということはできないとされた事例

裁判要旨郵政事務官として採用された者が,禁錮以上の刑に処せられたという失職事由が発生した後も約26年11か月にわたり勤務を継続した場合に,国(旧日本郵政公社,郵便事業株式会社が逐次その地位を承継)において上記の者が国家公務員法76条,38条2号〈共同訴訟の要件〉に基づき失職した旨を主張することは,上記の者が上記失職事由の発生を隠して事実上勤務を継続し給与の支給を受け続けていたにすぎないという事情の下では,信義則に反し権利の濫用に当たるということはできない。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年12月13日 平成18(行ツ)171
登載
集民 第226号507頁
参照法条
国家公務員法38条2号,国家公務員法76条,民訴法2条,民法1条2項,民法1条3項
論点8第2条民事訴訟法

被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において被告が同土地がみなし道路であることを否定することは信義則上許されないとされた事例

裁判要旨被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして同土地周辺の建物所有者である原告らが提起した人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において,被告が同土地がみなし道路であることを否定することは,被告が,建物を建築するに際し,同土地がみなし道路であることを前提に建築確認を得,同土地に幅員4mの道路を開設し,その後5年以上同土地がみなし道路であることを前提に建物を所有してきた上,同土地は公衆用道路として非課税とされているという事実関係の下では,信義則上許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年3月23日 平成15(受)1886
登載
集民 第219号967頁
参照法条
民法1条2項,民法2条,民法198条,民訴法2条,建築基準法42条2項,憲法13条
論点9第2条民事訴訟法

1 株主総会の決議を経ずに支払われた役員報酬について事後に株主総会の決議を経た場合における当該役員報酬の支払の効力
2 株主総会の決議を経ずに役員報酬が支払われたことを理由として当該報酬相当額の賠償を求める株主代表訴訟において被告とされた役員らが同訴訟提起後に当該報酬につき株主総会の決議を経たことを主張することと訴訟上の信義

裁判要旨1 株主総会の決議を経ずに支払われた役員報酬について事後に株主総会の決議を経た場合には,当該決議の内容等に照らして商法(平成14年法律第44号による改正前のもの)269条及び商法279条1項の規定の趣旨目的を没却するような特段の事情があると認められない限り,当該役員報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになる。
2 株主総会の決議を経ずに役員報酬が支払われたことを理由として当該報酬相当額の賠償を求める株主代表訴訟において,被告とされた役員らが同訴訟提起後に当該報酬につき株主総会の決議を経たことを主張することは,当該決議に同訴訟を同役員らの勝訴に導く意図があったとしても,それだけでは訴訟上の信義に反して許されないものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年2月15日 平成15(受)995
登載
集民 第216号303頁
参照法条
商法(平成13年法律第128号による改正前のもの)267条,商法(平成14年法律第44号による改正前のもの)269条,商法279条1項,民訴法2条,民法1条2項
論点10第2条民事訴訟法

不当利得返還請求訴訟において不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張して請求を争うことが信義誠実の原則に反するとされた事例

裁判要旨甲が,乙と共に相続した預金債権のうちの乙の法定相続分に当たる部分について何らの受領権限もないのに受領権限があるものとして金融機関から払戻しを受けていながら,その払戻しに係る金員について乙が提起した不当利得返還請求訴訟において,一転して,上記払戻しは民法478条の弁済として有効であるとはいえず,乙が上記金融機関に対して乙の法定相続分に当たる預金債権を有していることに変わりはなく,乙には不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張するに至ったなど判示の事情の下では,甲が上記主張をして乙の不当利得返還請求を争うことは,信義誠実の原則に反し許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年10月26日 平成16(受)458
登載
集民 第215号473頁
参照法条
民法1条2項,民法478条,民法703条,民法899条,民訴法2条
論点11第2条民事訴訟法

貸金の支払を求める訴訟において,前訴でその貸金に係る消費貸借契約の成立を主張していた被告が同契約の成立を否認することは信義則に反するとの原告の主張を採用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨XがAからYに対する貸金返還請求権を譲り受けたとしてYに対し貸金の支払を求める訴訟において,YがAから金員を受領したことを認めたが同金員に係る金銭消費貸借契約の成立を否認した場合において,次の⑴,⑵など判示の事情の下では,これらの各前訴の訴訟経過等に係る事情を十分考慮せず,Yが各前訴では自らAの面前で金銭消費貸借契約書に署名押印したこと等を積極的かつ具体的に主張していたなどのXの主張について審理判断することもなく,Yが上記の否認をすることは信義則に反するとのXの主張を採用しなかった原審の判断には違法がある。
⑴ AがYに対して建物の明渡し等を求めて提起した前訴において,Aは,Yを売主,Aを買主とする上記建物の売買契約を締結しその代金として上記金員を交付したと主張し,Yは,上記売買契約の締結を否認し,上記金員はAと締結した金銭消費貸借契約に基づく貸金として受領したものであると主張したところ,裁判所は,上記売買契約の成立を認めることはできないとして,Aの建物明渡請求を棄却する判決をし,同判決は確定した。
⑵ 上記⑴の判決後にXがYに対して上記建物の明渡し等を求めて提起した前訴において,Xは,AがYと上記建物につき譲渡担保設定予約をし,予約完結権を行使した上,譲渡担保権を実行して上記建物をXに売却したと主張し,Yは,Aと締結したのは金銭消費貸借契約であると主張しつつ,譲渡担保設定予約の成立を否認したところ,裁判所は,Xの主張する譲渡担保設定予約の成立を認めることはできないとして,Xの建物明渡請求を棄却する判決をし,同判決は確定した。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和元年7月5日 平成30(受)1387
登載
集民 第262号1頁
参照法条
民訴法2条
論点12第2条民事訴訟法

訴状が最高裁判所に提出された場合に当該訴えが訴訟上の信義則に反するとして却下すべきものとされた事例

裁判要旨訴状が最高裁判所に提出された場合に、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、当該訴えは、訴訟上の信義則に反するとして却下すべきものである。
⑴ 上記訴状には、上記訴えに係る訴訟を最高裁判所とは異なる特定の裁判所へ移送することを求める旨の記載がある。
⑵ 上記訴訟が上記裁判所の管轄に属することをうかがわせる事情はない。
⑶ 上記訴状は弁護士によって作成され提出されたものである。
⑷ 上記弁護士は上記訴えの提起以前にも殊更にこれと同様の行為を繰り返してきた。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和8年1月28日 令和7(マ)244
登載
―
参照法条
民訴法2条、民訴法16条1項、民訴法317条1項
論点13第2条民事訴訟法

相続人YがAの遺産について相続分を有することを前提とする前訴判決が他の相続人Xとの間で確定し,また,XがYに対してAのXに対する債務をYが法定相続分の割合により相続したと主張してその支払を求める訴えを提起していた場合において,Xが自己に遺産全部を相続させる旨のAの遺言の有効確認をYに対して求める訴えを提起することが信義則に反するとはいえないとされた事例

裁判要旨Aの相続人Yが他の相続人Xに対してAが所有していた不動産についてのXに対する所有権移転登記の抹消登記手続等を求めて提起した前訴において,YがAの遺産について相続分を有することを前提として上記の請求を一部認容する判決が確定し,また,Xが,AのXに対する立替金債務をYが法定相続分の割合により相続したと主張して,Yに対してその支払を求める反訴を提起していた場合において,Xが自己に遺産全部を相続させる旨のAの遺言が有効であることの確認をYに対して求める訴えを提起することは,次の⑴~⑷など判示の事実関係の下においては,信義則に反するとはいえない。
⑴ 上記前訴において,Xは,上記不動産はAとの売買等により取得したものであるなどと主張して本訴請求を争っており,その判決においては,上記の主張の当否が判断されたにとどまり,上記遺言の有効性について判断されることはなかった。
⑵ 上記本訴請求はAの遺産の一部を問題とするものにすぎなかった。
⑶ 上記前訴において,受訴裁判所によって上記本訴請求についての抗弁等として取り上げられることはなかったものの,Xは,上記遺言が有効であると主張しており,上記反訴に関しては上記遺言が無効であることを前提とする上記本訴請求に対応して提起したにすぎない旨述べていた。
⑷ 上記前訴において,Xによる立替払の事実が認められないとして,反訴請求を棄却する判決がされた。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和3年4月16日 令和2(受)645
登載
集民 第265号129頁
参照法条
民訴法2条
論点14第3条民事訴訟法

米国法人がウェブサイトに掲載した記事による名誉等の毀損を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求訴訟について,民訴法3条の9にいう「特別の事情」があるとされた事例

裁判要旨日本法人とその取締役であるXらが米国法人Yに対してYがインターネット上のウェブサイトに掲載した記事による名誉等の毀損を理由とする不法行為に基づく損害賠償を請求する訴訟について,当該訴訟がその提起当時に既に米国の裁判所に訴訟が係属していたYの株式の強制的な償還等に関するXらとYとの間の紛争から派生したものであり,本案の審理において想定される主な争点についての証拠方法が主に米国に所在するなど判示の事情の下においては,民訴法3条の9にいう「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し,又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情」があるというべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年3月10日 平成26(受)1985
登載
民集 第70巻3号846頁
参照法条
民訴法3条の3第8号,民訴法3条の9
論点15第3条民事訴訟法

1 人事に関する訴え以外の訴えにおける民訴法118条1号のいわゆる間接管轄の有無の判断基準
2 違法行為により権利利益を侵害され又は侵害されるおそれがある者が提起する差止請求に関する訴えと民訴法3条の3第8号の「不法行為に関する訴え」
3 違法行為により権利利益を侵害され又は侵害されるおそれがある者が提起する差止請求に関する訴えにおける民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」の意義
4 違法行為により権利利益を侵害され又は侵害されるおそれがあるとして差止請求を認めた外国裁判所の判決について民訴法118条1号のいわゆる間接管轄の有無を判断する場合において,民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」が当該外国裁判所の属する国にあるというために証明すべき事項

裁判要旨1 人事に関する訴え以外の訴えにおける民訴法118条1号のいわゆる間接管轄の有無については,基本的に我が国の民訴法の定める国際裁判管轄に関する規定に準拠しつつ,個々の事案における具体的事情に即して,外国裁判所の判決を我が国が承認するのが適当か否かという観点から,条理に照らして判断すべきである。
2 民訴法3条の3第8号の「不法行為に関する訴え」は,違法行為により権利利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者が提起する差止請求に関する訴えをも含む。
3 違法行為により権利利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者が提起する差止請求に関する訴えについては,民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」は,違法行為が行われるおそれのある地や,権利利益を侵害されるおそれのある地をも含む。
4 違法行為により権利利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあるとして差止請求を認めた外国裁判所の判決について民訴法118条1号のいわゆる間接管轄の有無を判断する場合において,民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」が当該外国裁判所の属する国にあるというためには,被告が原告の権利利益を侵害する行為を同国内で行うおそれがあるか,原告の権利利益が同国内で侵害されるおそれがあるとの客観的事実関係が証明されれば足りる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年4月24日 平成23(受)1781
登載
民集 第68巻4号329頁
参照法条
(1,4につき)民訴法118条1号,民事執行法22条6号,民事執行法24条 (2〜4につき)民訴法3条の3第8号
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民事訴訟法 第1条(趣旨) 詳細ページ
(趣旨)
第一条民事訴訟に関する手続については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
民事訴訟法 第2条(裁判所及び当事者の責務) 詳細ページ
(裁判所及び当事者の責務)
第二条裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
民事訴訟法 第3条(最高裁判所規則) 詳細ページ
(最高裁判所規則)
第三条この法律に定めるもののほか、民事訴訟に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。