会社法 / テーマ別まとめ

株式会社による自己の株式の取得/全部取得条項付種類株式の取得

全部取得条項付種類株式の取得の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

全部取得条項付種類株式の取得は、種類株式発行会社が株主総会の決議により全部取得条項付種類株式の全部を取得する手続です。決議では取得対価の内容・株主への割当て・取得日を定める必要があり、取得の前後には対価等に関する書面の備置き・閲覧や、反対株主等による価格決定の申立て・取得の差止め請求など株主保護の手続が用意されています。

全部取得条項付種類株式の取得
段階時期内容
①総会決議総会決議時取得対価・割当・取得日を決議
②書面備置(事前)総会2週間前~取得日後6ヶ月取得対価等の書面を備置き
③価格決定申立て取得日20日前~前日反対株主等が裁判所へ申立て
④通知・公告取得日20日前まで全部取得する旨を通知/公告
⑤効力発生取得日会社が全部取得し対価交付
⑥書面備置(事後)取得日後6ヶ月間取得結果に関する書面を備置き
  • 取得対価の割当ては、株主の保有する株式数に応じて行う必要があります(171条2項)。
  • 総会では取締役が全部取得を必要とする理由を説明しなければなりません(171条3項)。
  • 価格決定の申立てをした株主は、取得日に対価を受け取る対象から除かれます(173条2項)。
  • 通知は公告をもって代えることができます(172条3項)。
  • 価格が確定するまでの間、会社は公正な価格と認める額を株主に支払うことができます(172条5項)。
  • 書面の閲覧以外の請求(謄本交付等)には会社が定めた費用がかかります(171条の2第2項・173条の2第3項)。
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全部取得条項付種類株式の取得

全部取得条項付種類株式の取得について、条文は何を定めているか。

第171条全部取得条項付種類株式の取得に関する決定総会決議で全部取得の内容を決める3項・3号判例なし
  • 取得対価の種類・数・算定方法などを決議で定める
  • 対価は株主の保有株式数に応じて割り当てる
  • 取締役は総会で全部取得を必要とする理由を説明する
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第171_2条全部取得条項付種類株式の取得対価等に関する書面等の備置き及び閲覧等取得対価等の書面を備置き閲覧させる2項・6号判例なし
  • 総会2週間前等から取得日後6箇月経過日まで本店に備置き
  • 株主は営業時間内いつでも閲覧・謄本交付を請求できる
  • 謄本交付等の請求には会社が定めた費用がかかる
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第171_3条全部取得条項付種類株式の取得をやめることの請求法令・定款違反なら取得の差止めを請求できる1項判例なし
  • 取得が法令・定款に違反し株主が不利益を受けるおそれがある場合に請求できる
  • 請求先は全部取得を行う株式会社
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第172条裁判所に対する価格の決定の申立て反対株主等が裁判所に価格決定を申し立てられる5項・2号判例 2件
  • 申立ては取得日20日前から前日までの間に行う
  • 会社は取得日20日前までに株主へ通知する(公告で代替可)
  • 裁判所決定価格には取得日後の法定利率による利息が付く
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第173条効力の発生取得日に全部取得し株主等の地位が変わる2項・4号判例なし
  • 会社は取得日に全部取得条項付種類株式の全部を取得する
  • 対価の定めに応じ株主は株式・社債・新株予約権等の権利者になる
  • 価格決定の申立てをした株主は対価付与の対象から除かれる
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第173_2条全部取得条項付種類株式の取得に関する書面等の備置き及び閲覧等取得後に取得内容の書面を作成し備置きする3項・4号判例なし
  • 取得日後遅滞なく取得株式数等を記載した書面を作成する
  • 取得日から6箇月間、本店に備置きする
  • 株主等は営業時間内いつでも閲覧・謄本交付を請求できる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第172条会社法

株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,上記公開買付けが一般に公正と認められる手続により行われた場合における会社法(平成26年法律第90号による改正前のもの)172条1項にいう「取得の価格」

裁判要旨株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど当該株主又は当該株式会社と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ,公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も公開買付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されているなど一般に公正と認められる手続により上記公開買付けが行われ,その後に当該株式会社が上記買付け等の価格と同額で全部取得条項付種類株式を取得した場合には,上記取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り,裁判所は,上記株式の取得価格を上記公開買付けにおける買付け等の価格と同額とするのが相当である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年7月1日 平成28(許)4
登載
民集 第70巻6号1445頁
参照法条
会社法(平成26年法律第90号による改正前のもの)172条1項
論点2第172条会社法

社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合における,社債等振替法154条3項所定の通知の要否

裁判要旨社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年12月7日 平成22(許)9
登載
民集 第64巻8号2003頁
参照法条
会社法172条1項,(社債等振替法)社債,株式等の振替に関する法律128条1項,(社債等振替法)社債,株式等の振替に関する法律154条3項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第171条(全部取得条項付種類株式の取得に関する決定) 詳細ページ
(全部取得条項付種類株式の取得に関する決定)
第百七十一条全部取得条項付種類株式(第百八条第一項第七号に掲げる事項についての定めがある種類の株式をいう。以下この款において同じ。)を発行した種類株式発行会社は、株主総会の決議によって、全部取得条項付種類株式の全部を取得することができる。この場合においては、当該株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一全部取得条項付種類株式を取得するのと引換えに金銭等を交付するときは、当該金銭等(以下この条において「取得対価」という。)についての次に掲げる事項
イ当該取得対価が当該株式会社の株式であるときは、当該株式の種類及び種類ごとの数又はその数の算定方法
ロ当該取得対価が当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ当該取得対価が当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ当該取得対価が当該株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ当該取得対価が当該株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
二前号に規定する場合には、全部取得条項付種類株式の株主に対する取得対価の割当てに関する事項
三株式会社が全部取得条項付種類株式を取得する日(以下この款において「取得日」という。)
2前項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該株式会社を除く。)の有する全部取得条項付種類株式の数に応じて取得対価を割り当てることを内容とするものでなければならない。
3取締役は、第一項の株主総会において、全部取得条項付種類株式の全部を取得することを必要とする理由を説明しなければならない。
会社法 第171_2条(全部取得条項付種類株式の取得対価等に関する書面等の備置き及び閲覧等) 詳細ページ
(全部取得条項付種類株式の取得対価等に関する書面等の備置き及び閲覧等)
第百七十一条の二全部取得条項付種類株式を取得する株式会社は、次に掲げる日のいずれか早い日から取得日後六箇月を経過する日までの間、前条第一項各号に掲げる事項その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
一前条第一項の株主総会の日の二週間前の日(第三百十九条第一項の場合にあっては、同項の提案があった日)
二第百七十二条第二項の規定による通知の日又は同条第三項の公告の日のいずれか早い日
2全部取得条項付種類株式を取得する株式会社の株主は、当該株式会社に対して、その営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
一前項の書面の閲覧の請求
二前項の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四前項の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
会社法 第171_3条(全部取得条項付種類株式の取得をやめることの請求) 詳細ページ
(全部取得条項付種類株式の取得をやめることの請求)
第百七十一条の三第百七十一条第一項の規定による全部取得条項付種類株式の取得が法令又は定款に違反する場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、当該全部取得条項付種類株式の取得をやめることを請求することができる。
会社法 第172条(裁判所に対する価格の決定の申立て) 詳細ページ
(裁判所に対する価格の決定の申立て)
第百七十二条第百七十一条第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、次に掲げる株主は、取得日の二十日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、株式会社による全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てをすることができる。
一当該株主総会に先立って当該株式会社による全部取得条項付種類株式の取得に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該取得に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二当該株主総会において議決権を行使することができない株主
2株式会社は、取得日の二十日前までに、全部取得条項付種類株式の株主に対し、当該全部取得条項付種類株式の全部を取得する旨を通知しなければならない。
3前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
4株式会社は、裁判所の決定した価格に対する取得日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
5株式会社は、全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社がその公正な価格と認める額を支払うことができる。
会社法 第173条(効力の発生) 詳細ページ
(効力の発生)
第百七十三条株式会社は、取得日に、全部取得条項付種類株式の全部を取得する。
2次の各号に掲げる場合には、当該株式会社以外の全部取得条項付種類株式の株主(前条第一項の申立てをした株主を除く。)は、取得日に、第百七十一条第一項の株主総会の決議による定めに従い、当該各号に定める者となる。
一第百七十一条第一項第一号イに掲げる事項についての定めがある場合同号イの株式の株主
二第百七十一条第一項第一号ロに掲げる事項についての定めがある場合同号ロの社債の社債権者
三第百七十一条第一項第一号ハに掲げる事項についての定めがある場合同号ハの新株予約権の新株予約権者
四第百七十一条第一項第一号ニに掲げる事項についての定めがある場合同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
会社法 第173_2条(全部取得条項付種類株式の取得に関する書面等の備置き及び閲覧等) 詳細ページ
(全部取得条項付種類株式の取得に関する書面等の備置き及び閲覧等)
第百七十三条の二株式会社は、取得日後遅滞なく、株式会社が取得した全部取得条項付種類株式の数その他の全部取得条項付種類株式の取得に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成しなければならない。
2株式会社は、取得日から六箇月間、前項の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
3全部取得条項付種類株式を取得した株式会社の株主又は取得日に全部取得条項付種類株式の株主であった者は、当該株式会社に対して、その営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
一前項の書面の閲覧の請求
二前項の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四前項の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。