会社法 / テーマ別まとめ

有利発行と不公正な発行

特に有利な価額での発行に総会決議が要る理由。不公正な発行への差止めと責任。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

株式の払込金額が引受人にとって特に有利な金額となる場合、既存株主の持分価値が薄まるおそれがあるため、株主総会での決議と取締役による理由説明が必要とされている。株式の発行が法令・定款に違反したり著しく不公正な方法で行われたりする場合、株主はその発行の差止めを請求でき、通謀して不公正な価額で引き受けた者や、現物出資財産を過大に評価させた関係者には金銭の支払義務が生じる。

有利発行・不公正発行・現物出資の過大評価の比較
類型必要な手続差止めの可否責任を負う者
有利発行(特に有利な価額)株主総会決議+理由説明手続違反時は差止め可通謀した引受人
著しく不公正な方法による発行通常の募集手続差止め可(著しく不公正)通謀した引受人
現物出資財産の過大評価総会等で価額決定個別の定めなし引受人・取締役等・証明者
  • 「有利発行」「不公正発行」は条文上の用語ではなく実務上の呼び方であり、条文は「特に有利な金額」「著しく不公正な方法」と表現している
  • 種類株式発行会社が譲渡制限株式を募集する場合は、定款に別段の定めがない限り種類株主総会の決議も必要(199条4項)
  • 公開会社が市場価格のある株式を発行する場合、公正な価額による払込みを実現する決定方法を定めれば足りることがある(201条2項)
  • 公開会社は募集事項を期日の2週間前までに株主へ通知・公告するが、有価証券届出書提出済みなど株主保護に欠けないときは不要(201条3項〜5項)
  • 現物出資財産の価額不足について検査役の調査を経ていた場合、または注意を怠らなかったことを証明した場合、取締役等は責任を負わない(213条2項)
  • 現物出資の価額不足につき善意無重過失の引受人は、引受けの申込みや契約の意思表示を取り消せる(212条2項)
1

特に有利な価額とは

株主総会の決議と取締役の説明

第199条募集事項の決定募集条件は株主総会で決める5項・5号判例 2件
  • 数量・払込金額・期日などを募集のたびに株主総会で決議する
  • 払込金額が特に有利な金額のときは取締役が理由を説明する
  • 現物出資のときは財産の内容と価額を募集事項に定める
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第201条公開会社における募集事項の決定の特則公開会社は取締役会決定でよい特則5項判例 1件
  • 有利な金額での募集にあたる場合を除き取締役会決議で足りる
  • 市場価格のある株式は公正な価額を実現する決定方法でもよい
  • 期日の2週間前までに株主へ募集事項を通知または公告する
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2

発行を止める

法令定款違反・著しく不公正な方法

第210条違反・不公正な発行は差止め請求できる1項・2号判例なし
  • 株主が不利益を受けるおそれがあるときに請求できる
  • 法令または定款に違反する発行は差止めの対象になる
  • 著しく不公正な方法による発行も差止めの対象になる
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3

出てしまった後の責任

引受人と取締役の支払義務

第212条不公正な払込金額で株式を引き受けた者等の責任不公正な引受けをした者の責任2項・2号旧商法 22件
  • 取締役と通じて著しく不公正な価額で引き受けた者は差額を支払う
  • 現物出資財産の価額が著しく不足する場合は不足額を支払う
  • 不足につき善意無重過失なら申込みや契約を取り消せる
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第213条出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任現物出資の不足額は取締役等も負担4項・7号判例なし
  • 募集に関与した業務執行取締役や議案提案取締役も不足額を支払う
  • 検査役の調査を経た場合や無過失を証明した場合は責任を負わない
  • 証明者も無過失なら免責され、義務者どうしは連帯債務となる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第199条会社法

非上場会社が株主以外の者に発行した新株の発行価額が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たらない場合

裁判要旨非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には,その発行価額は,特別の事情のない限り,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成27年2月19日 平成25(受)1080
登載
民集 第69巻1号51頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項,会社法199条3項
論点2第199条会社法

1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けた取締役会が定めた新株予約権の行使条件をその発行後に変更する取締役会決議の効力
2 非公開会社において株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法によってされた募集株式発行の効力
3 非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権の行使条件に反した当該新株予約権の行使による株式発行に無効原因がある場合

裁判要旨1 取締役会が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けて新株予約権の行使条件を定めた場合において,新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がないときは,当該新株予約権の発行後に上記行使条件を変更する取締役会決議は,上記行使条件の細目的な変更をするにとどまるものであるときを除き,無効である。
2 非公開会社において株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合,当該特別決議を欠く瑕疵は上記株式発行の無効原因になる。
3 非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権に株主総会によって行使条件が付された場合に,この行使条件が当該新株予約権を発行した趣旨に照らして当該新株予約権の重要な内容を構成しているときは,上記行使条件に反した新株予約権の行使による株式の発行には,無効原因がある。
(1〜3につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年4月24日 平成22(受)1212
登載
民集 第66巻6号2908頁
参照法条
(1につき)商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ20第2項6号,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項 (2,3につき)会社法828条1項2号 (2につき)会社法199条,会社法201条1項 (3につき)会社法238条,会社法240条1項
論点3第212条旧商法下の裁判例

商法二八〇条ノ一五第一項にいう「発行ノ日」の意義

裁判要旨商法二八〇条ノ一五第一項にいう「発行ノ日」とは、新株発行による変更の登記の日ではなく、新株発行の効力の発生日である新株の払込期日の翌日をいう。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年3月28日 昭和52(オ)1332
登載
集民 第123号307頁
参照法条
商法280条ノ15
論点4第212条旧商法下の裁判例

株主以外の第三者に対する株式のいわゆる時価発行における発行価額が「著シク不公正ナル発行価額」にあたらない場合

裁判要旨普通株式を発行しその株式が証券取引所に上場されている株式会社において額面普通株式を株主以外の第三者に対していわゆる時価発行をする場合の発行価額が価額決定直前の株価より低額であつても、価額決定にあたつて発行価額決定前の当該会社の株価、右株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状態、収益状態、配当状況、発行ずみ株式数、新たに発行される株式数、株式市況の動向、これらから予測される新株の消化可能性等の諸事情が客観的資料に基づいて斟酌され、価額決定のためにとられた算定方法が合理的であるということができ、かつ、発行価額が価額決定直前の株価に近接している場合は、右価額は、特別の事情がないかぎり、商法二八〇条の一一第一項に定める「著シク不公正ナル発行価額」にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年4月8日 昭和48(オ)198
登載
民集 第29巻4号350頁
参照法条
商法280条ノ2第2項,商法280条ノ11第1項
論点5第212条旧商法下の裁判例

株式会社の代表取締役が株主総会の特別決議を経ることなく株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもつて新株を発行した場合と新株発行無効原因の有無

裁判要旨株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもつて発行されたものであつても、その瑕疵は、新株発行無効の原因とはならないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年7月16日 昭和46(オ)396
登載
集民 第103号407頁
参照法条
商法280条ノ2
論点6第212条旧商法下の裁判例

取締役会の決議により株主に新株引受権を付与するにあたり株式申込の際に払込金額と同額の申込証拠金を添えることを要する等の条件を定めることは許されるか

裁判要旨株式会社が、取締役会の決議により株主に新株引受権を付与するにあたり、株主が新株引受権を行使する条件として、右会社の資金計画を予定どおり達成するための手続を行なうに必要最少限度の期間を見込み、払込期日よりも若干前の日を申込期間の末日としたうえ、株式申込の際に払込金額と同額の申込証拠金を添えることを要することと定め、かつ、その申込証拠金が払込期日に払込金に充当されるまでの期間中これに利息をつけない旨を定めることは許される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年11月12日 昭和45(オ)71
登載
民集 第24巻12号1901頁
参照法条
商法280条ノ2,商法280条ノ4,商法280条ノ5,商法280条ノ7,商法280条ノ9
論点7第212条旧商法下の裁判例

株式会社の役員であつた者に対する退職慰労金についてその具体的な金額などの決定を取締役会に任せた株主総会の決議の効力

裁判要旨株式会社の役員であつた者に対する退職慰労金について、株主総会の決議により、その金額などの決定をすべて無条件に取締役会に一任することは許されないというべきであるが、これと異なり、株主総会の決議において、明示的もしくは黙示的に、その支給に関する基準を示し、具体的な金額、支払期日、支払方法などは右基準によつて定めるべきものとして、その決定を取締役会に任せることは差しつかえなく、かような決議をもつて無効と解すべきではない(最高裁昭和三八年(オ)第一二〇号、同三九年一二月一一日第二小法廷判決、民集一八巻一〇号二一四三頁参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年10月28日 昭和44(オ)609
登載
集民 第97号95頁
参照法条
商法269条,商法280条
論点8第212条旧商法下の裁判例

株式会社の取締役または監査役の任期満了または辞任による退任により法律または定款に定める取締役または監査役の員数を欠くに至つた場合と退任による変更登記

裁判要旨株式会社の取締役または監査役の任期満了または辞任による退任により法律または定款に定める取締役または監査役の員数を欠くに至つた場合においては、右退任による変更登記は、あらたに選任された取締役または監査役の就職するまで許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和41(行ツ)65
登載
民集 第22巻13号3334頁
参照法条
商法188条3項,商法258条1項,商法280条,商業登記法24条10号
論点9第212条旧商法下の裁判例

親株の取戻権者の破産管財人に対する配当金および子株の返還請求の許否

裁判要旨株式の取戻権者が株券引渡の訴を提起した後に右株式につき生じた配当金および右株式につき株主に割り当てられた新株を破産管財人において取得した場合には、右取戻権者は、破産管財人に対し不当利得に基づく財団債権として右配当金および新株の返還を請求することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年12月12日 昭和39(オ)496
登載
民集 第22巻13号2943頁
参照法条
破産法47条5号,民法704条,商法206条1項,商法280条ノ21項5号,商法280条ノ4,商法293条
論点10第212条旧商法下の裁判例

一 新株の発行があつた場合と新株発行に関する株主総会決議無効確認の訴の利益。
二 確定判決で無効でないと確認された決議の内容を再確認した決議に関する株主総会決議無効確認の訴と訴の利益。

裁判要旨一 新株がすでに発行された後は、新株発行無効の訴を提起しないかぎり、当該新株の発行を無効とするに由なく、新株発行に関する株主総会決議無効確認の訴は、確認の利益がない。
二 株主総会決議無効確認の訴を提起して請求棄却の確定判決を受けた者が、後の株主総会で行なわれた右決議内容再確認の決議に対し、更に無効確認の訴を提起しても、訴の利益はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年6月29日 昭和38(オ)992
登載
民集 第19巻4号1045頁
参照法条
商法252条,商法280条ノ2,商法280条ノ15,民訴法225条
論点11第212条旧商法下の裁判例

新株引受権を株主以外の者に付与することについて株主総会の特別決議を経ない新株発行の効力。

裁判要旨株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、新株引受権を株主以外の者に付与することについての株主総会の特別決議を経ることなく右株主以外の者に引受権を付与して発行されたものであつても、その瑕疵は新株発行無効の原因とならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年10月8日 昭和39(オ)1062
登載
民集 第19巻7号1745頁
参照法条
商法280条ノ2第2項,商法280条ノ15
論点12第212条旧商法下の裁判例

株主総会特別決議取消の訴の係属中訴の利益を欠くに至つたと認められた事例

裁判要旨株主以外の者に新株引受権を与える旨の株主総会特別決議につき決議取消の訴が係属する間に、右決議に基づき新株の発行が行なわれてしまつた場合には、右訴の利益は消滅するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年1月19日 昭和33(オ)1097
登載
民集 第16巻1号76頁
参照法条
商法247条,商法280条ノ2第2項,商法280条ノ15,民訴法第2編第1章訴(223条以下)
論点13第212条旧商法下の裁判例

有効な取締役会の決議を経ない新株発行の効力。

裁判要旨株式会社を代表する権限のある取締役が新株を発行した以上、これにつき有効な取締役会の決議がなくても、右新株の発行は有効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年3月31日 昭和32(オ)79
登載
民集 第15巻3号645頁
参照法条
商法280条ノ2
論点14第212条旧商法下の裁判例

新株発行不存在確認の訴えの被告適格

裁判要旨新株発行不存在確認の訴えは、会社を被告としてのみ提起することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年1月28日 平成5(オ)316
登載
民集 第51巻1号40頁
参照法条
商法280条ノ15,民訴法45条
論点15第212条旧商法下の裁判例

商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠くことと新株発行の無効原因

裁判要旨新株発行に関する事項について商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠くことは、新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年1月28日 平成5(オ)317
登載
民集 第51巻1号71頁
参照法条
商法280条ノ3ノ2,商法280条ノ10,商法280条ノ15
論点16第212条旧商法下の裁判例

新株発行無効の訴えにおいて出訴期間経過後に新たな無効事由を追加して主張することの許否

裁判要旨新株発行無効の訴えにおいて、商法二八〇条ノ一五第一項所定の出訴期間経過後に新たな無効事由を追加して主張することは、許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成6年7月18日 平成3(オ)1807
登載
集民 第172号967頁
参照法条
商法280条ノ15第1項
論点17第212条旧商法下の裁判例

著しく不公正な方法によってされた新株発行の効力

裁判要旨株式会社を代表する権限のある取締役によって行われた新株の発行は、それが著しく不公正な方法によってされたものであり、かつ、右会社の取締役がその新株を引き受けて現に保有し、右会社が小規模で閉鎖的な会社であるなど原判示の事情がある場合でも、有効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成6年7月14日 平成2(オ)391
登載
集民 第172号771頁
参照法条
商法280条ノ15
論点18第212条旧商法下の裁判例

一 新株発行差止請求の訴えから変更された新株発行無効の訴えが出訴期間の遵守に欠けるところがないとされた事例
二 新株発行差止めの仮処分命令に違反したことと新株発行無効の訴えの無効原因

裁判要旨一 新株発行差止請求の訴えが新株発行無効の訴えにその出訴期間経過後に変更された場合であっても、右新株発行差止請求の訴えが、持株比率の減少等の不利益を受けると主張する株主によって、新株発行を阻止する目的の下に新株発行差止めの仮処分命令を得た上で提起されたものであるなど判示の事実関係の下においては、仮処分命令違反を無効原因とする変更後の新株発行無効の訴えは、出訴期間の遵守に欠けるところがない。
二 新株発行差止めの仮処分命令に違反して新株発行がされたことは、新株発行無効の訴えの無効原因となる。
(一、二につき補足意見、反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成5年12月16日 平成1(オ)666
登載
民集 第47巻10号5523頁
参照法条
商法280条ノ10,商法280条ノ15,民訴法235条
論点19第212条旧商法下の裁判例

株主であると主張する者が提起した新株発行不存在確認の訴えが訴えの利益を欠き不適法とされた事例

裁判要旨株主であると主張する者が提起した新株発行不存在確認の訴えは、その者が、株主でなく、当該新株発行につき他に格別の利害関係を有しないときは、訴えの利益を欠き、不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成4年10月29日 昭和63(オ)958
登載
集民 第166号477頁
参照法条
商法280条ノ15,民訴法225条
論点20第212条旧商法下の裁判例

新株の引受人が会社から第三者を通じて間接的に融資を受けた資金によってした新株の払込みが無効であるとして商業登記簿の原本である電磁的記録に増資の記録をさせた行為につき電磁的公正証書原本不実記録罪の成立が認められた事例

裁判要旨甲社の増資の際,新株の引受人である乙社が,甲社から丙社,丙社から乙社へと順次融資により移動した甲社の資金により新株の払込みをし,上記融資により甲社が取得した丙社に対する債権が丙社との合意などから甲社の実質的な資産と評価することができないなど判示の事情の下においては,上記払込みは無効であり,甲社の商業登記簿の原本である電磁的記録に上記増資の記録をさせた行為は,電磁的公正証書原本不実記録罪に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年12月13日 平成17(あ)204
登載
刑集 第59巻10号1938頁
参照法条
商法280条の7,刑法157条1項
論点21第212条旧商法下の裁判例

1 新株発行不存在確認の訴えの認められる場合
2 新株発行不存在確認の訴えの出訴期間

裁判要旨1 新株発行の実体がないのにその外観が存する場合には,新株発行不存在確認の訴えにより,対世効のある判決をもってその不存在の確定を求めることができる。
2 新株発行不存在確認の訴えに出訴期間の制限はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成15年3月27日 平成12(受)469
登載
民集 第57巻3号312頁
参照法条
商法109条1項,商法280条ノ15,商法280条ノ16
論点22第212条旧商法下の裁判例

商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠く新株発行につき著しく不公正な方法によるものではないとはいえず無効原因があるとされた事例

裁判要旨株式会社甲が商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠いたまま新株を発行した場合において、それにより、代表取締役戊の姉乙、その夫である監査役丙、同人が代表取締役を務める株式会社丁ら合計すれば当時甲の発行済株式の総数の過半数を所有していた株主らの持株が過半数を割り込むことになり、他方、戊の持株は過半数を上回ることになって、甲に対する支配関係が逆転するものであり、戊は右新株発行について甲の取締役に他言しないように頼んでおり、右新株発行が取締役会で決議されたのは、商法の一部を改正する法律(平成二年法律第六四号)の施行日の直前であって、もし右施行日後に右決議がされていれば、株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定めのある甲の株主乙らは新株引受権を有することになったはずである上、新株の払込期日は右決議の約二箇月も先の日と定められ、甲が右決議の当時、資金を緊急に調達する必要があったとはいい難いなど判示の事情の下においては、右新株発行は商法二八〇条ノ一〇所定の「著シク不公正ナル方法」によるものではないとは到底いえず、差止の事由がないとは認められないから、右新株発行には無効原因がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年7月17日 平成8(オ)280
登載
集民 第189号395頁
参照法条
商法280条ノ3ノ2,商法280条ノ10,商法280条ノ15
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第199条(募集事項の決定) 詳細ページ
(募集事項の決定)
第百九十九条株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
二募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
三金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
五株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
4種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
5募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。
会社法 第201条(公開会社における募集事項の決定の特則) 詳細ページ
(公開会社における募集事項の決定の特則)
第二百一条第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。
2前項の規定により読み替えて適用する第百九十九条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定める場合において、市場価格のある株式を引き受ける者の募集をするときは、同条第一項第二号に掲げる事項に代えて、公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法を定めることができる。
3公開会社は、第一項の規定により読み替えて適用する第百九十九条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、同条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項(前項の規定により払込金額の決定の方法を定めた場合にあっては、その方法を含む。以下この節において同じ。)を通知しなければならない。
4前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5第三項の規定は、株式会社が募集事項について同項に規定する期日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項から第三項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。
会社法 第210条 詳細ページ
第二百十条次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第百九十九条第一項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。
一当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合
二当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合
会社法 第212条(不公正な払込金額で株式を引き受けた者等の責任) 詳細ページ
(不公正な払込金額で株式を引き受けた者等の責任)
第二百十二条募集株式の引受人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める額を支払う義務を負う。
一取締役(指名委員会等設置会社にあっては、取締役又は執行役)と通じて著しく不公正な払込金額で募集株式を引き受けた場合当該払込金額と当該募集株式の公正な価額との差額に相当する金額
二第二百九条第一項の規定により募集株式の株主となった時におけるその給付した現物出資財産の価額がこれについて定められた第百九十九条第一項第三号の価額に著しく不足する場合当該不足額
2前項第二号に掲げる場合において、現物出資財産を給付した募集株式の引受人が当該現物出資財産の価額がこれについて定められた第百九十九条第一項第三号の価額に著しく不足することにつき善意でかつ重大な過失がないときは、募集株式の引受けの申込み又は第二百五条第一項の契約に係る意思表示を取り消すことができる。
会社法 第213条(出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任) 詳細ページ
(出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任)
第二百十三条前条第一項第二号に掲げる場合には、次に掲げる者(以下この条において「取締役等」という。)は、株式会社に対し、同号に定める額を支払う義務を負う。
一当該募集株式の引受人の募集に関する職務を行った業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役。以下この号において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるもの
二現物出資財産の価額の決定に関する株主総会の決議があったときは、当該株主総会に議案を提案した取締役として法務省令で定めるもの
三現物出資財産の価額の決定に関する取締役会の決議があったときは、当該取締役会に議案を提案した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、取締役又は執行役)として法務省令で定めるもの
2前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、取締役等は、現物出資財産について同項の義務を負わない。
一現物出資財産の価額について第二百七条第二項の検査役の調査を経た場合
二当該取締役等がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合
3第一項に規定する場合には、第二百七条第九項第四号に規定する証明をした者(以下この条において「証明者」という。)は、株式会社に対し前条第一項第二号に定める額を支払う義務を負う。ただし、当該証明者が当該証明をするについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
4募集株式の引受人がその給付した現物出資財産についての前条第一項第二号に定める額を支払う義務を負う場合において、次の各号に掲げる者が当該現物出資財産について当該各号に定める義務を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
一取締役等第一項の義務
二証明者前項本文の義務
出

一次情報

原文ママ

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