論点1第985条民法
一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の判断にあたり原告の相続分が生前贈与等によりなくなるか否かを考慮することの可否
二 遺言無効確認訴訟が固有必要的共同訴訟にあたらないとされた事例
三 同一の証書に記載された二人の遺言の一方に方式違背がある場合と民法九七五条
裁判要旨一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の存否を判断するにあたつては、原則として、原告の相続分が被相続人から受けた生前贈与等によりなくなるか否かを考慮すべきものではない。
二 単に相続分及び遺産分割の方法を指定したにすぎない遺言の無効確認を求める訴は、固有必要的共同訴訟にあたらない。
三 同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方につき氏名を自書しない方式の違背があるときでも、右遺言は、民法
九七五条〈共同遺言の禁止〉により禁止された共同遺言にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年9月11日 昭和54(オ)1208
- 登載
- 民集 第35巻6号1013頁
- 参照法条
- 民法902条,民法903条1項,民法903条2項,民法908条,民法968条1項,民法975条,民法985条,民訴法62条,民訴法225条
論点2第985条民法
指名債権の特定遺贈と債務者に対する対抗要件
裁判要旨指名債権が特定遺贈された場合、遺贈義務者の債務者に対する通知又は債務者の承諾がなければ、受遺者は、遺贈による債権の取得を債務者に対抗することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和49年4月26日 昭和48(オ)1226
- 登載
- 民集 第28巻3号540頁
- 参照法条
- 民法467条1項,民法964条,民法985条1項
論点3第985条民法
遺言無効確認の訴の適否
裁判要旨遺言無効確認の訴は、その遺言が有効であるとすればそれから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しない.ことの確認を求めるものと解される場合で、原告がかかる確認を求める法律上の利益を有するときは、適法と解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年2月15日 昭和43(オ)627
- 登載
- 民集 第26巻1号30頁
- 参照法条
- 民訴法225条,民法985条
論点4第985条民法
新民法施行後における旧民法による家督相続人選定親族会決議無効確認の訴の利益の有無
裁判要旨新民法施行後は、旧民法によつてされた家督相続人選定親族会決議の無効確認を求める訴の利益はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年4月28日 昭和40(オ)467
- 登載
- 集民 第87号341頁
- 参照法条
- 旧民法951条,旧民法985条,民法附則23条,民法附則25条,民訴法225条
論点5第985条民法
一 家督相続人指定の遺言をなした者が改正民法施行後に死亡した場合における右遺言の効力
二 家督相続人指定の遺言を包括遺贈と見ることができるか
三 遺言執行者に対する訴の適否
裁判要旨一 家督相続人指定の遺言をなした者が改正民法施行後に死亡した場合には、右遺言は、特段の事情のないかぎり、なんらの効力を生じない。
二 家督相続人指定の遺言書中に、甲を家督相続人に指定する旨および乙等に対し財産の一部を遺贈する旨の記載があるにとどまり、他に遺言者に包括遺贈の意思があつたことを看取するに足る表示行為と目すべき事実上の記載がないときは、右遺言に包括遺贈の効力を認めることはできない。
三 相続人は、被相続人の遺言執行者を被告となし、遺言の無効を主張して、相続財産につき持分を有することの確認を求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年9月18日 昭和29(オ)875
- 登載
- 民集 第10巻9号1160頁
- 参照法条
- 旧民法(昭和22年法律222号による改正前のもの)979条,民法985条,民法附則4条,民法附則985条,民法附則990条,民法附則119条,民法1012条,民法1013条,民訴法45条
論点6第985条民法
遺言者生前の遺言無効確認の訴の適否
裁判要旨遺言者の生前の遺言無効確認の訴は不適法である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年10月4日 昭和30(オ)95
- 登載
- 民集 第10巻10号1229頁
- 参照法条
- 民訴法225条,民法985条
論点7第985条民法
一 旧民法第九八五条第三項の裁判所の許可の時期。
二 裁判所の許可を得ることを条件とする旧民法第九八五条第三項の親族会の決議の効力と右決議が有効となる時期。
三 旧民法第九八五条三項の裁判所の許可前同一親族会が同一事項につきなした前の決議(裁判所の許可を得ることを条件とする旧民法第九八五条第二項の決議)と内容において牴触する決議の効力。
裁判要旨一 家督相続人選定のために招集された親族会において、他人を家督相続人に選定する場合における裁判所の許可は、決議をなした後においてこれを得ることを妨げない。
二 家督相続人選定のために招集された親族会が、裁判所の許可を条件として他人を家督相続人に選定する旨を決議したときは、右の決議は無効ではなく、右の決議はその後裁判所の許可があつたときから有効となる。
三 裁判所の許可を条件として他人を家督相続人に選定する旨の決議をなした親族会が、右の決議に対する裁判所の許可前同一事項につき右の決議と内容において抵触する決議をしたときは、その決議は無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年8月31日 昭和24(オ)267
- 登載
- 民集 第5巻9号522頁
- 参照法条
- 旧民法985条3項
論点8第985条民法
一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言の解釈
二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合における当該遺産の承継
裁判要旨一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきである。
二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成3年4月19日 平成1(オ)174
- 登載
- 民集 第45巻4号477頁
- 参照法条
- 民法908条,民法964条,民法985条
論点9第985条民法
「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合における当該遺言の効力
裁判要旨遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成23年2月22日 平成21(受)1260
- 登載
- 民集 第65巻2号699頁
- 参照法条
- 民法887条,民法908条,民法985条
論点10第985条民法
「相続させる」趣旨の遺言による不動産の取得と登記
裁判要旨「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得については,登記なくして第三者に対抗することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成14年6月10日 平成11(受)271
- 登載
- 集民 第206号445頁
- 参照法条
- 民法177条,民法908条,民法985条
論点11第985条民法
心神喪失の常況にある遺言者の生存中に推定相続人が提起した遺贈を内容とする遺言の無効確認の訴えの適否
裁判要旨遺言者の生存中に推定相続人が提起した遺贈を内容とする遺言の無効確認の訴えは、遺言者が心神喪失の常況にあって、遺言者による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ないとしても、不適法である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成11年6月11日 平成7(オ)1631
- 登載
- 集民 第193号369頁
- 参照法条
- 民訴法134条,民法964条,民法985条,民法1022条
論点12第986条民法
一、遺贈の承認放棄に関する規定の死因贈与への準用の有無
二、権利移転の過程において実体と異なるが現在の実体的権利関係に合致しているため登記の抹消請求が許されないとされた事例
裁判要旨一、遺贈の承認および放棄に関する規定は死因贈与に準用されない。
二、甲の所有していた不動産について、その相続人でない乙に相続を原因とする所有権移転登記がされ、乙から丙に贈与を原因とする所有権移転登記がされているが、実体上は甲から丙に右不動産が死因贈与され、現在丙がその所有者である場合には、甲の相続人が乙および丙に対し右各登記の抹消を請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年6月6日 昭和42(オ)560
- 登載
- 集民 第91号219頁
- 参照法条
- 民法986条,民法554条,民法177条
論点13第986条民法
家督相続により家屋所有権を取得した者は右家屋の占有権を承継するか
裁判要旨被相続人の死亡による家督相続により家屋所有権を取得した者は、右家屋に対す被相続人の占有権を承継したものと認むべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年4月24日 昭和26(オ)535
- 登載
- 民集 第7巻4号414頁
- 参照法条
- 民法180条,民法187条,旧民法986条
論点14第988条民法
女戸主のした財産留保が確定日付けを欠く場合の効力
裁判要旨旧民法第九八八条による女戸主の財産留保は、入夫との合意のもとになされたときは、確定日付けがなくとも、当事者間においては効力があるものと解すべきであるが、第三者に対する関係においては、確定日付けのある証書によつてのみ、その効力を生ずるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和43年9月27日 昭和40(オ)1417
- 登載
- 集民 第92号407頁
- 参照法条
- 旧民法988条
論点15第988条民法
一 隠居者と家督相続人との合意の下になされた、確定日附のない財産留保の効力
二 民法第一六二条第二項〈所有権の取得時効〉の無過失の一事例
三 隠居者が相続財産全部を保留した場合の効力
裁判要旨一 隠居者の財産保留は、家督相続人との合意の下になされたときは、確定日附がなくとも、当事者間においては効力があるものと解するを相当とする。
二 隠居者が確定日附ある証書による財産保留をしなかつたため、家督相続人において建物の所有権を相続したとしても、原審認定の事実(原判決参照)の下に、隠居者がこれを有効に保留し得たものと信じたのは過失がない。
三 隠居者の財産全部の保留は、相続人の遺留分について問題を生ずるだけで、保留を全面的に無効ならしめるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和27(オ)368
- 登載
- 民集 第8巻12号2271頁
- 参照法条
- 旧民法988条,民法162条2項,民法90条
論点16第990条民法
遺言執行者がある場合に包括受遺者が遺贈義務の履行を求める訴の被告適格
裁判要旨遺言執行者がある場合に、包括受遺者が遺言の執行として目的不動産の所有権移転登記手続を求める訴の被告としての適格を有する者は、遺言執行者に限られる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和51年7月19日 昭和51(オ)190
- 登載
- 集民 第118号315頁
- 参照法条
- 民法990条,民法1012条,民法1013条,民訴法45条
論点17第990条民法
遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合と民法九五一条にいう「相続人のあることが明かでないとき」
裁判要旨遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、民法
九五一条〈相続財産法人の成立〉にいう「相続人のあることが明かでないとき」に当たらない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成9年9月12日 平成6(オ)2052
- 登載
- 民集 第51巻8号3887頁
- 参照法条
- 民法951条,民法964条,民法990条
論点18第990条民法
1 遺言執行者は、共同相続人の相続分を指定する旨の遺言を根拠として、平成30年法律第72号の施行日前に開始した相続に係る相続財産である不動産についてされた所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えの原告適格を有するか
2 相続財産の全部又は一部を包括遺贈する旨の遺言がされた場合における、上記の包括遺贈が効力を生じてからその執行がされるまでの間に包括受遺者以外の者に対してされた不動産の所有権移転登記の抹消登記手続又は一部抹消(更正)登記手続を求める訴えと遺言執行者の原告適格
3 複数の包括遺贈のうちの一つがその効力を生ぜず、又は放棄によってその効力を失った場合における、その効力を有しない包括遺贈につき包括受遺者が受けるべきであったものの帰すう
裁判要旨1 遺言執行者は、共同相続人の相続分を指定する旨の遺言を根拠として、平成30年法律第72号の施行日前に開始した相続に係る相続財産である不動産についてされた所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えの原告適格を有するものではない。
2 相続財産の全部又は一部を包括遺贈する旨の遺言がされた場合において、遺言執行者は、上記の包括遺贈が効力を生じてからその執行がされるまでの間に包括受遺者以外の者に対する所有権移転登記がされた不動産について、上記登記のうち上記不動産が相続財産であるとすれば包括受遺者が受けるべき持分に関する部分の抹消登記手続又は一部抹消(更正)登記手続を求める訴えの原告適格を有する。
3 複数の包括遺贈のうちの一つがその効力を生ぜず、又は放棄によってその効力を失った場合、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときを除き、その効力を有しない包括遺贈につき包括受遺者が受けるべきであったものは、他の包括受遺者には帰属せず、相続人に帰属する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和5年5月19日 令和4(受)540
- 登載
- 民集 第77巻4号1007頁
- 参照法条
- (1、2につき)民法(平成30年法律第72号による改正前のもの)1012条、民法(平成30年法律第72号による改正前のもの)1013条、民法(平成30年法律第72号による改正前のもの)1015条、民訴法第1編第3章 当事者 (1につき)民法(平成30年法律第72号による改正前のもの)902条1項 (2につき)民法(平成30年法律第72号による改正前のもの)964条 (3につき)民法990条、民法995条
論点19第993条民法
一 旧民法下の遺産相続による共同相続人の一人によつて相続権を侵害された他の共同相続人が右侵害排除を求める場合と相続回復請求権の規定の適用
二 旧民法下の遺産相続による共同相続人の一人によつて相続権を侵害された他の共同相続人の右侵害排除を求める請求について相続回復請求権の規定が適用されるべき一場合
裁判要旨一 旧民法下の遺産相続による共同相続人の一人甲が、相続財産のうち自己の本来の相続持分を超える部分について他の共同相続人乙の相続権を否定し、その部分もまた自己の相続持分に属すると称してこれを占有管理し、乙の相続権を侵害しているため、乙が右侵害の排除を求める場合には、相続回復請求権の規定の適用があるが、甲においてその部分が乙の持分に属することを知つているとき、又はその部分につき甲に相続による持分があると信ぜられるべき合理的な事由がないときは、同規定の適用が排除される。
二 旧民法下の遺産相続による共同相続人の一人乙女が遺産分割前に他の共同相続人甲男を家督相続人に指定して隠居したが、右隠居時に乙に胎児がいたことにより右指定が無効であり、乙が遺産相続権を失わないため、甲において相続財産のうち乙の相続部分もまた右指定により自己に帰属したとして同部分に対し占有管理を続けたことが乙の遺産相続権に対する侵害となる場合においても、胎児が生後まもなく死亡したため、甲において右指定の無効を知りえず、かつ、その無効を知りえなかつたことが客観的にも無理からぬものであるときは、乙の甲に対する右侵害排除を求める請求について、相続回復請求権の規定の適用がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和54年7月10日 昭和50(オ)878
- 登載
- 民集 第33巻5号457頁
- 参照法条
- 旧民法966条,旧民法993条,民法884条
論点20第993条民法
相続権を侵害された者の相続人が右侵害者に対して有する相続回復請求権の消滅時効の起算点。
裁判要旨甲の相続権を乙が侵害している場合、甲の相続人丙の乙に対する相続回復請求権の消滅時効の期間二〇年の起算点は、丙の相続開始の時ではなく、甲の相続開始の時と解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年2月27日 昭和37(オ)1258
- 登載
- 民集 第18巻2号383頁
- 参照法条
- 民法884条,旧民法966条,旧民法993条
論点21第994条民法
民法応急措置法施行中に相続が開始した場合と被相続人の兄弟姉妹の直系卑属の代襲相続権の有無
裁判要旨日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律の施行中に相続が開始し、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合において、同人らが右相続開始前に死亡していたときは、同人らの直系卑属は代襲相続権を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和43年11月22日 昭和41(オ)106
- 登載
- 民集 第22巻12号2777頁
- 参照法条
- 日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律1条,日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律7条,旧民法994条,旧民法995条,旧民法996条,民法887条,民法889条
論点22第1002条民法
一 相続財産の共有の性質
二 遺産分割の方法
裁判要旨一 相続財産の共有は、民法改正の前後を通じ、民法
二四九条〈共有物の使用〉以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではない。
二 遺産の分割に関しては、民法
二五六条〈共有物の分割請求〉以下の規定が適用せられる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月31日 昭和28(オ)163
- 登載
- 民集 第9巻6号793頁
- 参照法条
- 民法898条,民法256条,民法258条,民法906条,民法907条,旧民法1002条,家事審判法9条乙類10号,家事審判規則104条,家事審判規則107条