論点1第623条民法
宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事故につき会社に安全配慮義務の違背に基づく損害賠償責任があるとされた事例
裁判要旨会社が、夜間においても、その社屋に高価な反物、毛皮等を多数開放的に陳列保管していながら、右社屋の夜間の出入口にのぞき窓やインターホンを設けていないため、宿直員においてくぐり戸を開けてみなければ来訪者が誰であるかを確かめることが困難であり、そのため来訪者が無理に押し入ることができる状態となり、これを利用して盗賊が侵入し宿直員に危害を加えることのあるのを予見しえたにもかかわらず、のぞき窓、インターホン、防犯チェーン等の盗賊防止のための物的設備を施さず、また、宿直員を新入社員一人としないで適宜増員するなどの措置を講じなかつたなど判示のような事実関係がある場合において、一人で宿直を命ぜられた新入社員がその勤務中にくぐり戸から押し入つた盗賊に殺害されたときは、会社は、右事故につき、安全配慮義務に違背したものとして損害賠償責任を負うものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和59年4月10日 昭和58(オ)152
- 登載
- 民集 第38巻6号557頁
- 参照法条
- 民法415条,民法623条
論点2第623条民法
無効な休職処分により就労を拒否された労働者の右期間中の賃金請求につき平均査定配分額の限度で賃金協定中の賃上額のいわゆる査定部分に関する協定の効力が右労働者にも及ぶものとして賃上額による賃金請求権が認められた事例
裁判要旨(省略)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和53年7月18日 昭和52(オ)398
- 登載
- 集民 第124号441頁
- 参照法条
- 民法623条,労働基準法24条,労働組合法16条
論点3第623条民法
ロツクアウトの継続が違法とされた事例
裁判要旨組合がその組合員数を半減し力も弱くなつていたのに対し、会社(タクシー会社)はD組合員等によつてタクシーの車両数も増やして平常に近い営業を行い、その経営内容も著しく改善されるなど判示の事情があるときは、組合の就労要求を拒否した時点以降会社が継続したロツクアウトは、使用者の正当な争議行為と認められず、会社は右時点以降の賃金支払義務を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年2月28日 昭和47(オ)440
- 登載
- 集民 第120号185頁
- 参照法条
- 労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
論点4第623条民法
使用者の行う企業秩序違反事件の調査と労働者の協力義務
裁判要旨労働者は、使用者の行う他の労働者の企業秩序違反事件の調査について、これに協力することがその職責に照らし職務内容となつていると認められる場合でないか、又は調査対象である違反行為の性質・内容右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、右調査に協力することが労務提供義務を履行するうえで必要かつ合理的であると認められる場合でない限り、協力義務を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年12月13日 昭和49(オ)687
- 登載
- 民集 第31巻7号1037頁
- 参照法条
- 民法623条,労働基準法第2章
論点5第623条民法
いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)が正当性を欠くとしてその期間中における使用者の賃金支払義務が認められた事例
裁判要旨省略
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年7月17日 昭和48(オ)267
- 登載
- 集民 第115号465頁
- 参照法条
- 労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
論点6第623条民法
一、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)の正当性
二、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)とその期間中における使用者の賃金支払義務
裁判要旨一、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)は、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過組合側の争議行為の態様、それによつて使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められる場合には、使用者の正当な争議行為として是認される。
二、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)をした使用者は、それが正当な争議行為として是認される場合には、その期間中における対象労働者に対する賃金支払義務を免れる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年4月25日 昭和44(オ)1256
- 登載
- 民集 第29巻4号481頁
- 参照法条
- 労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
論点7第623条民法
政治活動をしないことを条件とする雇傭契約と基本的人権の制限
裁判要旨憲法で保障されたいわゆる基本的人権も絶対のものではなく、自己の自由意思に基く特別な公法関係または私法関係上の義務によつて制限を受けるものであつて、自己の自由意思により、校内において政治活動をしないことを条件として教員として学校に雇われた場合には、その契約は無効ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年2月22日 昭和25(オ)7
- 登載
- 民集 第6巻2号258頁
- 参照法条
- 憲法19条,憲法20条,憲法21条,民法623条
論点8第623条民法
労働者の死亡と労働契約上の地位確認請求訴訟の承継の成否
裁判要旨労働者の提起した労働契約上の地位を有することの確認を求める訴訟は、当該労働者の死亡により当然終了する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年9月22日 平成1(オ)812
- 登載
- 集民 第157号645頁
- 参照法条
- 民法623条,民訴法208条
論点9第623条民法
管理者に準ずる地位にある職員が組合員バッジの取外し命令に従わないため点呼執行業務から外して営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令が違法とはいえないとされた事例
裁判要旨自動車営業所の管理者に準ずる地位にある職員が、取外し命令を無視して組合員バッジの着用をやめないため、同人を通常業務である点呼執行業務から外し、営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令は、右作業が職場環境整備等のために必要な作業であり、従来も職員が必要に応じてこれを行うことがあったなど判示の事情の下においては、違法なものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成5年6月11日 平成1(オ)1631
- 登載
- 集民 第169号117頁
- 参照法条
- 民法623条,民法709条,労働基準法13条
論点10第623条民法
元請企業につき下請企業の労働者に対する安全配慮義務が認められた事例
裁判要旨下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備工具等を用い、事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の従業員とほとんど同じであったなど原判示の事実関係の下においては、元請企業は、信義則上、右労働者に対し安全配慮義務を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成3年4月11日 平成1(オ)516
- 登載
- 集民 第162号295頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条,民法623条,民法632条
論点11第623条民法
請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,上記の派遣を違法な労働者派遣と解すべき場合に,注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえないとされた事例
裁判要旨請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,上記の派遣を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」に違反する労働者派遣と解すべき場合において,(1)上記雇用契約は有効に存在していたこと,(2)注文者が請負人による当該労働者の採用に関与していたとは認められないこと,(3)当該労働者が請負人から支給を受けていた給与等の額を注文者が事実上決定していたといえるような事情はうかがわれないこと,(4)請負人が配置を含む当該労働者の具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったことなど判示の事情の下では,注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年12月18日 平成20(受)1240
- 登載
- 民集 第63巻10号2754頁
- 参照法条
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律2条1号,職業安定法4条6項,労働契約法6条,民法623条,民法632条
論点12第623条民法
1 学校法人がその設置,運営する大学に勤務する教授に対し同教授の地元新聞紙上における発言等を理由としてした戒告処分が無効とされた事例
2 学校法人がその設置,運営する大学に勤務する教授に対し教授会への出席その他の教育諸活動をやめるよう求めた要請が業務命令に当たるとして,その無効確認を求める訴えが適法とされた事例
3 学校法人がその設置,運営する大学に勤務する教授に対し業務命令として教授会への出席その他の教育諸活動をやめるよう求めた要請が無効とされた事例
裁判要旨1 学校法人が,その設置,運営する大学に勤務する教授に対し,同教授の地元新聞紙上における発言等を理由として戒告処分をした場合において,上記発言が新聞紙上に掲載されても上記学校法人の社会的評価の低下毀損を生じさせるとは認め難いなど判示の事情の下では,上記戒告処分は懲戒権を濫用するものとして無効である。
2 学校法人が,その設置,運営する大学に勤務する教授に対し,教授会の決議を受けて,教授会への出席その他の教育諸活動をやめるよう求める要請をした場合において,上記学校法人の規程上,業務命令権の行使が教授会等の機関に専権的に委任されているとは認められないなど判示の事情の下では,上記要請は上記学校法人が使用者としての立場から上記教授に発した業務命令に当たり,その無効確認を求める訴えは適法である。
3 学校法人が,その設置,運営する大学に勤務する教授に対し,業務命令として,教授会への出席その他の教育諸活動をやめるよう求める要請をした場合において,それが制裁的意図に基づく差別的取扱いとみられてもやむを得ない行為であるなど判示の事情の下では,上記要請は,業務上の必要性を欠き,社会通念上著しく合理性を欠くものであって,業務命令権を濫用するものとして無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成19年7月13日 平成18(受)347
- 登載
- 集民 第225号117頁
- 参照法条
- (1につき)労働基準法89条 (2,3につき)民法623条,労働基準法第2章 労働契約 (2につき)民訴法134条
論点13第623条民法
会社の執行役員を退任した者が会社に対し退職慰労金の支払を請求することができないとされた事例
裁判要旨会社の従業員であった者が退職して執行役員に就任し,その後退任した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,会社が従前支給してきた内規所定の金額の退職慰労金は,功労報償的な性格が極めて強く,執行役員退任の都度,代表取締役の裁量的判断により支給されてきたにすぎないものであり,上記の者が会社に対し退職慰労金の支払を請求することはできない。
(1) 会社の導入した執行役員制度の下において,執行役員は,従前は取締役が就いていた職務上の地位に就任し,報酬その他の待遇面においても,従前の取締役と同等の待遇が保障されていた。
(2) 上記制度の下において,従業員であった者が執行役員に就任する場合,いったん退職した上で,取締役会からの委任により執行役員に就任するものとされていた。
(3) 退職慰労金の支給金額を定めた上記内規は,代表取締役の決裁で作成,改定されるものであり,上記内規には,退任する執行役員に対し退職慰労金を支給する場合に適用する旨が定められていたにすぎず,これを必ず支給する旨の規定は置かれていなかった。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成19年11月16日 平成19(受)478
- 登載
- 集民 第226号317頁
- 参照法条
- 民法623条,民法643条,民法648条1項,労働基準法11条,労働基準法89条3号の2
論点14第623条民法
労働者が疾病のためその命じられた義務のうち一部の労務の提供ができなくなったことから直ちに債務の本旨に従った労務の提供をしなかったものと断定することはできないとされた事例
裁判要旨建設会社に雇用されて以来二一年以上にわたり建築工事現場における現場監督業務に従事してきた労働者が、疾病のため右業務のうち現場作業に係る労務の提供ができなくなった場合であっても、労働契約上その職種や業務内容が右業務に限定されていたとはいえず、事務作業に係る労務の提供は可能であり、かつ、その提供を申し出ていたときには、同人の能力、経験、地位、右会社の規模、業種、右会社における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして同人が配置される現実的可能性があると認められる業務が他にあったかどうかを検討した上でなければ、同人が債務の本旨に従った労務の提供をしなかったものと断定することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成10年4月9日 平成7(オ)1230
- 登載
- 集民 第188号1頁
- 参照法条
- 民法493条,民法623条,労働基準法第2章労働契約
論点15第624条民法
ストライキを理由とする賃金の削減ができる固定給と認めた判断に審理不尽の違法があるとされた事例。
裁判要旨月掛生命保険外務職員のストライキを理由として、当該職員に支給すべき給与のうちから特定項目の給料を削減したことの適否を判断するにあたり、かかる削減を行なうことのできる特段の事情があるかどうか、それがないとすれば、右給料が拘束された勤務時間に応じて支払われる賃金としての性格を有するかどうかを審究することなく、単に、勤務時間拘束の制度が仕事の成果に応ずる能率給の実を挙げるために設けられたものではなく、また右給料が一定の資格にとどまる間その期間中における募集、集金の成果と関係なく支給されるということから、これをいわゆる固定給と認めてストライキによる削減を適法と判断したことは、審理不尽の違法をおかしたものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年2月5日 昭和37(オ)1452
- 登載
- 民集 第19巻1号52頁
- 参照法条
- 労働基準法24条,民法624条,民訴法395条1項6号
論点16第625条民法
いわゆる在籍出向中の労働者に対する復帰命令と当該労働者の同意の要否
裁判要旨使用者が労働者に対し、雇用契約上の身分を保有させながら第三者の指揮監督の下に労務を提供させる形態のいわゆる在籍出向を命じている場合に、右出向関係を解消して復帰を命ずるためには、特段の事由のない限り、当該労働者の同意を得ることを必要としない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和60年4月5日 昭和56(オ)856
- 登載
- 民集 第39巻3号675頁
- 参照法条
- 民法625条1項
論点17第625条民法
いわゆる転属と労働者の承諾の要否
裁判要旨従来からの会社との間の雇用関係を終了させ、移籍先の会社との間に新たに雇用関係を生ぜしめるいわゆる転属は、労働者の承諾があつてはじめてその効力を生ずる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年4月12日 昭和43(オ)1122
- 登載
- 集民 第109号53頁
- 参照法条
- 民法625条,労働基準法第2章
論点18第625条民法
未登記立木に対する強制執行の方法
裁判要旨未登記立木に対する強制執行は、民訴法六二五条に基づき、立木を伐採する権利を差し押え、これを換価する方法によるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和46年6月24日 昭和42(オ)692
- 登載
- 民集 第25巻4号574頁
- 参照法条
- 民法625条
論点19第625条民法
使用者が労働者に対し個別的同意なしにいわゆる在籍出向を命ずることができるとされた事例
裁判要旨出向命令の内容が,使用者が一定の業務を協力会社に業務委託することに伴い,委託される業務に従事していた労働者に対していわゆる在籍出向を命ずるものであって,就業規則及び労働協約には業務上の必要によって社外勤務をさせることがある旨の規定があり,労働協約には社外勤務の定義,出向期間,出向中の社員の地位,賃金その他処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定があるという事情の下においては,使用者は,当該労働者に対し,個別的同意なしに出向を命ずることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年4月18日 平成11(受)805
- 登載
- 集民 第209号495頁
- 参照法条
- 民法625条1項,労働基準法第2章 労働契約
論点20第627条民法
一、就業規則所定の懲戒事由があることを理由に普通解雇に付する場合の解雇の要件
二、寝過しにより定時ラジオニュースを放送することができなかつたアナウンサーに対する解雇が解雇権の濫用として無効とされた事例
裁判要旨一、就業規則所定の懲戒事由があることを理由に普通解雇をする場合には、普通解雇の要件を備えていれば足り、懲戒解雇の要件をみたすことを要しない。
二、要旨省略
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年1月31日 昭和49(オ)165
- 登載
- 集民 第120号23頁
- 参照法条
- 民法627条,労働基準法20条
論点21第627条民法
除名が無効な場合におけるユニオン・ショップ協定に基づく解雇の効力
裁判要旨労働組合から除名された労働者に対し使用者がユニオン・ショップ協定に基づく労働組合に対する義務の履行として行う解雇は、右除名が無効な場合には、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年4月25日 昭和43(オ)499
- 登載
- 民集 第29巻4号456頁
- 参照法条
- 労働組合法第2章,労働組合法第3章,民法627条
論点22第627条民法
証券業者の外務員につき労働基準法第二〇条の適用がないとされた事例。
裁判要旨証券業者と外務員間の契約により、外務員は右業者の顧客から株式その他の有価証券の売買又はその委託の媒介、取次又はその代理の注文を受けた場合これを業者に通じて売買その他の有価証券取引を成立させるいわゆる外務行為に従事すべき義務を負担し、業者はこれに対する報酬として出来高に応じ賃金を支払うと共に外務員のした有価証券の売買委託を受理すべき義務を負担しておるときは、業者の右契約解除につき労働基準法第二〇条の適用はない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和36年5月25日 昭和33(オ)1023
- 登載
- 民集 第15巻5号1322頁
- 参照法条
- 労働基準法20条,証券取引法56条,民法627条,民法651条