民法 / テーマ別まとめ

地役権

公的資料に現れる論点です。条文と判例から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

地役権は、設定行為で定めた目的の範囲内で、他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益のために利用できる権利です。要役地の所有権に従って移転し、要役地から切り離して譲渡することはできず、共有者の一人だけでは消滅させられないなど、要役地との一体性が強く保護されています。継続的かつ外形上認識できる行使があれば時効取得でき、逆に承役地が時効取得されたり、一定期間行使されなかったりすると消滅します。

地役権
論点内容
地役権の範囲設定行為の目的の範囲内で認められる
要役地との関係要役地の所有権とともに移転する
分離譲渡・分離した権利設定できない
共有者一人による消滅持分のみでは消滅させられない
土地分割時の地役権各部のために存続(原則)
用水地役権の水の配分生活用を優先し残りを他用途に
同一承役地に複数設定後の地役権者は前者の使用を妨げない
時効取得の要件継続的な行使+外形上認識できること
承役地の時効取得地役権は消滅する
消滅時効の起算点(不継続)最後に行使した時から
消滅時効の起算点(継続的)行使を妨げる事実が生じた時から
  • 280条:公の秩序に関する所有権の限界規定に違反する内容は定められない
  • 281条:設定行為に別段の定めがあれば、要役地の所有権と分離しない原則の例外になる
  • 282条2項:地役権が土地の一部のみに関する性質のときは、分割後の各部に当然には存続しない
  • 285条1項:設定行為に別段の定めがあるときは、生活用優先のルールは適用されない
  • 291条の消滅時効期間は、民法166条2項に規定する期間による
1

地役権

地役権について、条文は何を定めているか。

第285条用水地役権用水地役権は水不足時に生活用を優先する2項判例なし
  • 水が足りないときはまず生活用に使う
  • 残った水を他の用途に使う
  • 同一承役地に複数設定時、後の権利者は先の権利者の使用を妨げられない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第280条地役権の内容地役権は設定目的の範囲内で使える権利1項判例 5件
  • 他人の土地を自分の土地の便益のために使える権利
  • 所有権の限界に関する公序規定には違反できない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第281条地役権の付従性地役権は要役地の所有権とセットで動く2項判例なし
  • 要役地の所有権が移転すると地役権も一緒に移る
  • 地役権だけを要役地から切り離して譲渡できない
  • 設定行為に別段の定めがあれば別扱いになる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第282条地役権の不可分性共有・分割があっても地役権は原則存続2項判例なし
  • 共有者の一人は自分の持分だけで地役権を消せない
  • 土地を分割しても各部のために地役権は存続する
  • 地役権が土地の一部だけに関する性質なら別
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第283条地役権の時効取得継続的で外から分かる利用なら時効取得できる1項判例 3件
  • 継続的に行使され、かつ外形上認識できることが必要
  • この2つを満たさない地役権は時効取得できない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第291条地役権の消滅時効消滅時効の起算点は行使の仕方で変わる1項判例なし
  • 継続的でない地役権は最後に行使した時から起算
  • 継続的な地役権は行使を妨げる事実が生じた時から起算
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第289条承役地の時効取得による地役権の消滅承役地が時効取得されると地役権は消滅する1項判例なし
  • 承役地の占有者が取得時効の要件を満たす占有をした場合に消滅
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第280条民法

共有に属する要役地のために地役権設定登記手続を求める訴えと固有必要的共同訴訟

裁判要旨共有に属する要役地のために地役権設定登記手続を求める訴えは、固有必要的共同訴訟に当たらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成7年7月18日 平成3(オ)1684
登載
民集 第49巻7号2664頁
参照法条
民訴法62条,民法252条,民法280条
論点2第280条民法

通行地役権者が承役地の担保不動産競売による買受人に対し地役権設定登記がなくとも通行地役権を主張することができる場合

裁判要旨通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合において,最先順位の抵当権の設定時に,既に設定されている通行地役権に係る承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,上記抵当権の抵当権者がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは,通行地役権者は,特段の事情がない限り,登記がなくとも,買受人に対し,当該通行地役権を主張することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年2月26日 平成23(受)1644
登載
民集 第67巻2号297頁
参照法条
民事執行法59条2項,民事執行法188条,民法177条,民法280条
論点3第280条民法

通行地役権者が承役地の一部に車両を恒常的に駐車させている者に対しその禁止を求めることができるとされた事例

裁判要旨宅地分譲に際し分譲業者が公道から各分譲地に至る通路として開設した土地の幅員全部につき,分譲業者と宅地の分譲を受けた者との間の合意に基づいて自動車による通行を目的とする通行地役権が設定されたこと,同土地の現況が舗装されたいわゆる位置指定道路であり,通路以外の利用が考えられないことなど判示の事情の下においては,上記地役権の内容は,通行の目的の限度において,同土地全体を自由に使用できるというものであって,地役権者は,同土地に車両を恒常的に駐車させている者に対し,残余の幅員が3m余りあるとしても,そのような行為により車両の通行を妨害することの禁止を求めることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年3月29日 平成15(受)1590
登載
集民 第216号421頁
参照法条
民法280条
論点4第280条民法

設定登記のされていない通行地役権について承役地の譲受人が登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないと解すべき場合

裁判要旨通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年2月13日 平成9(オ)966
登載
民集 第52巻1号65頁
参照法条
民法177条,民法280条
論点5第280条民法

通行地役権の承役地の譲受人が地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない場合に地役権者が譲受人に対して地役権設定登記手続を請求することの可否

裁判要旨通行地役権の承役地の譲受人が地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない場合には、地役権者は、譲受人に対し、同権利に基づいて地役権設定登記手続を請求することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年12月18日 平成8(オ)2343
登載
民集 第52巻9号1975頁
参照法条
民法177条,民法280条
論点6第283条民法

通行地役権時効取得における「継続」の要件

裁判要旨民法第二八三条〈地役権の時効取得〉にいう「継続」の要件をみたすには、承役地たるべき土地の上に通路の開設があつただけでは足りず、その開設が要役地所有者によつてなされたことを要する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年2月14日 昭和31(オ)311
登載
民集 第12巻2号268頁
参照法条
民法283条
論点7第283条民法

通行地役権の時効取得の「継続」の要件

裁判要旨通行地役権の時効取得に関する「継続」の要件としては、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によつてなされることを要するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年12月26日 昭和28(オ)1178
登載
民集 第9巻14号2097頁
参照法条
民法283条
論点8第283条民法

要役地の所有者によって通路が開設されたとして通行地役権の時効取得が認められた事例

裁判要旨公道に接する土地を所有する甲が、乙に対して右公道の拡幅のためにその所有地の一部を提供するよう働きかける一方、自らも所有地の一部を提供する等の負担をし、甲のこれらの行為の結果として、右公道全体が拡幅され、乙の右所有地も拡幅部分の一部として通行の用に供されるようになったなど判示の事実関係の下においては、乙の右所有地については、要役地の所有者である甲によって通路が開設されたものとして、通行地役権の時効取得が認められる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成6年12月16日 平成6(オ)414
登載
集民 第173号517頁
参照法条
民法283条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第285条(用水地役権) 詳細ページ
(用水地役権)
第二百八十五条用水地役権の承役地(地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいう。以下同じ。)において、水が要役地及び承役地の需要に比して不足するときは、その各土地の需要に応じて、まずこれを生活用に供し、その残余を他の用途に供するものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2同一の承役地について数個の用水地役権を設定したときは、後の地役権者は、前の地役権者の水の使用を妨げてはならない。
民法 第280条(地役権の内容) 詳細ページ
(地役権の内容)
第二百八十条地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
民法 第281条(地役権の付従性) 詳細ページ
(地役権の付従性)
第二百八十一条地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
民法 第282条(地役権の不可分性) 詳細ページ
(地役権の不可分性)
第二百八十二条土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。
2土地の分割又はその一部の譲渡の場合には、地役権は、その各部のために又はその各部について存する。ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでない。
民法 第283条(地役権の時効取得) 詳細ページ
(地役権の時効取得)
第二百八十三条地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
民法 第291条(地役権の消滅時効) 詳細ページ
(地役権の消滅時効)
第二百九十一条第百六十六条第二項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。
民法 第289条(承役地の時効取得による地役権の消滅) 詳細ページ
(承役地の時効取得による地役権の消滅)
第二百八十九条承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権は、これによって消滅する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。