民法 明治二十九年法律第八十九号 現行施行 2026-06-24 条文取得 2026-09-05

第109条代理権授与の表示による表見代理等

原文解釈概要・一覧表・実務注記は当サイトによる解釈です。条文原文と判例は転記です。

この条文が出てくる場面

原文整理テーマ別まとめ
代理ステップ 1 / 1 代理代理について、条文は何を定めているか。法律行為/代理ステップ 1 / 1 代理代理について、条文は何を定めているか。

概要

原文解釈
  • 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内でその他人が第三者との間でした行為について責任を負う。
  • ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、表示者は責任を負わない。
  • その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をした場合は、範囲内の行為であれば第1項により責任を負うべき場合であることを前提に、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、表示者が責任を負う。
  • 第1項は代理権の範囲内の行為、第2項は代理権の範囲外の行為をそれぞれ対象とし、要件の厳格さが異なる。

代理権授与の表示による表見代理等の要件(民法第109条)

原文解釈横スクロールできます
区分対象行為責任発生の前提免責・限定要件
第1項表示された代理権の範囲内において、その他人が第三者との間でした行為第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示したこと第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、責任を負わない
第2項表示された代理権の範囲外において、その他人が第三者との間でした行為範囲内の行為をしたとすれば第1項の規定により責任を負うべき場合であること第三者が、その行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、責任を負う

主要な判例

原文ママ裁判所が付した参照法条による機械照合で選定
民法保証債務履行
位置づけ
最高裁 / 民集登載
事件番号
昭和60(オ)289
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和62年7月7日 破棄差戻
登載
民集 第41巻5号1133頁
参照法条
民法109条,民法110条,民法113条,民法117条1項,民法117条2項
判示事項
一 民法一一七条二項にいう「過失」と重大な過失 二 無権代理人が民法一一七条一項所定の責任を免れる事由として表見代理の成立を主張することの許否
裁判要旨一 民法一一七条二項にいう「過失」は、重大な過失に限定されるものではない。

二 無権代理人は、民法一一七条一項所定の責任を免れる事由として、表見代理の成立を主張することはできない。
民法所有権移転登記手続請求
位置づけ
最高裁 / 民集登載
事件番号
昭和44(オ)174
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和45年7月28日 破棄差戻
登載
民集 第24巻7号1203頁
参照法条
民法109条,民法110条
判示事項
白紙委任状および売渡証書などが濫用された場合に民法一〇九条、一一〇条の適用があるとされた事例
裁判要旨甲が、その所有の不動産を乙に売り渡し、乙の代理人丙を介して白紙委任状、名宛人白地の売渡証書など登記関係書類を交付したところ、右不動産の所有権を取得した乙から、これを丁所有の不動産と交換することを委任されて右各書類の交付を受けた丙が、これを濫用し、甲の代理人名義で丁との間で交換契約を締結したときは、丁において丙に代理権があると信じたことに正当の理由があるかぎり、甲は、丁に対し民法一〇九条、一一〇条によつて右契約につき責に任ずべきである。
民法売買代金請求
位置づけ
最高裁 / 民集登載
事件番号
昭和45(オ)112
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和45年12月15日 破棄差戻
登載
民集 第24巻13号2072頁
参照法条
民訴法58条,民訴法45条,民訴法388条,民訴法389条,民法109条,商法262条
判示事項
一、会社の訴訟上の代表者の確定と民法一〇九条、商法二六二条の適用の有無 二、控訴裁判所が被告会社代表者の代表権限の欠缺を看過してなされた第一審判決を取り消す場合の措置
裁判要旨一、民法一〇九条、商法二六二条は、会社を訴訟上代表する権限を有する者を定めるにあたつては、適用されない。
二、控訴裁判所が被告会社代表者の代表権限の欠缺を看過してなされた第一審判決を取り消す場合には、原告に対し訴状の補正を命じさせるため、事件を第一審裁判所に差し戻すべきであり、ただちに訴を不適法として却下すべきではない。

実務注記

原文解釈
  1. 表示の相手方は「第三者」であること本条は「第三者に対して」他人に代理権を与えた旨を表示した場合を要件としており、条文上この表示の相手方が第三者であることが前提となっている。
  2. 第1項の免責事由は悪意又は過失範囲内の行為については、第三者が代理権を与えられていないことを「知り」(悪意)、又は「過失によって知らなかった」ときは、表示者は責任を負わないとされている。
  3. 第2項は第1項の責任発生を前提とする構造第2項は、範囲内の行為であれば第1項により責任を負うべき場合であることを前提としたうえで、範囲外の行為に適用される規定である。
  4. 範囲外行為には「正当な理由」が必要代理権の範囲外の行為については、第三者にその行為について他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、責任を負うとされている。
  5. 第1項と第2項で要件の文言が異なる第1項は「知り、又は過失によって知らなかったとき」という免責事由の定め方であるのに対し、第2項は「正当な理由があるときに限り」という限定的な定め方になっている。

条文原文

原文ママ
民法 第109条(代理権授与の表示による表見代理等)
(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

一次情報