日本国憲法 / テーマ別まとめ

司法

司法の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

日本国憲法第76条から第82条は、裁判所の組織と裁判官の身分保障、最高裁判所による違憲審査権、裁判公開の原則を定めています。実務上は、特別裁判所の設置禁止や行政機関による終審裁判の禁止、最高裁判所裁判官と下級裁判所裁判官とで任命方法・任期が異なる点を押さえておく必要があります。

司法
項目最高裁判所裁判官下級裁判所裁判官
任命内閣が任命(長官以外)最高裁の名簿から内閣が任命
任期定めなし(定年制)10年、再任可
罷免弾劾裁判・心身故障の裁判、国民審査弾劾裁判・心身故障の裁判
退官法律の定める年齢法律の定める年齢
報酬定期に相当額、減額不可定期に相当額、減額不可
  • 特別裁判所の設置は禁止され、行政機関は終審として裁判を行うことができない(76条2項)
  • 検察官は最高裁判所の定める規則に従わなければならない(77条2項)
  • 下級裁判所に関する規則制定権は下級裁判所に委任できる(77条3項)
  • 最高裁判所長官(その長たる裁判官)の任命方法はこの条文には規定がない
  • 国民審査は任命後最初の衆議院議員総選挙、その後10年経過後の総選挙で実施される(79条2項)
  • 対審の非公開は裁判官全員一致が条件で、政治犯罪・出版に関する犯罪・国民の権利が問題となる事件の対審は常に公開(82条2項)
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司法

司法について、条文は何を定めているか。

第76条司法権は最高裁と下級裁判所に属する3項判例 9件
  • 特別裁判所は設置できない
  • 行政機関は終審として裁判を行うことができない
  • 裁判官は良心に従い独立して判断し、憲法・法律にのみ拘束される
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第77条最高裁が訴訟手続や裁判所内部の規則を定める3項判例 6件
  • 対象は訴訟手続、弁護士、裁判所の内部規律、司法事務処理
  • 検察官も最高裁判所規則に従う義務がある
  • 下級裁判所に関する規則制定権は下級裁判所に委任できる
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第78条裁判官は弾劾か心身故障の裁判でしか罷免されない1項判例なし
  • 罷免は公の弾劾、または裁判で心身の故障と決定された場合に限る
  • 裁判官の懲戒処分を行政機関が行うことはできない
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第79条最高裁裁判官の任命・国民審査・定年を定める6項判例 1件
  • 長官以外の裁判官は内閣が任命する
  • 任命後最初の総選挙、その後10年ごとの総選挙で国民審査を受け、多数が罷免可なら罷免
  • 定年は法律で定める年齢、報酬は在任中減額されない
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第80条下級裁判所裁判官は10年任期で再任可2項判例なし
  • 最高裁が指名した名簿に基づき内閣が任命する
  • 任期は10年で、再任されることができる
  • 法律の定める年齢に達すると退官、報酬は在任中減額されない
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第81条最高裁は法令等の違憲審査をする終審裁判所1項判例 11件
  • 法律・命令・規則・処分が憲法に適合するか決定する権限を持つ
  • この判断について最高裁判所が終審裁判所となる
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第82条裁判の対審・判決は公開法廷で行う2項判例 29件
  • 裁判官全員一致で非公開にできるのは対審のみ、判決は常に公開
  • 公序良俗を害するおそれがある場合に対審を非公開にできる
  • 政治犯罪・出版に関する犯罪・国民の権利が問題となる事件の対審は常に公開
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第76条日本国憲法

一 憲法の無効確認を求める訴の適否
二 最高裁判所に直接提起された憲法の無効確認を求める訴を下級裁判所に移送することなく却下した事例

裁判要旨一 憲法の無効確認を求める訴は、不適法である。
二 最高裁判所に直接提起された憲法の無効確認を求める訴は、下級裁判所に移送するまでもなく、却下を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年5月6日 昭和53(マ)96
登載
集民 第129号633頁
参照法条
民訴法30条,民訴法202条,憲法76条
論点2第76条日本国憲法

刑法二〇五条二項と憲法一三条〈すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法そ…〉、一四条〈すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差…〉、七六条〈すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。〉

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年7月10日 昭和54(あ)499
登載
集刑 第215号69頁
参照法条
憲法13条,憲法14条,憲法76条,刑法205条2項
論点3第76条日本国憲法

刑訴法二四七条、二四八条の規定違憲(七六条〈すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。〉違反)の主張が欠前提として処理された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年7月18日 昭和52(あ)2323
登載
集刑 第211号837頁
参照法条
憲法76条,刑訴法247条,刑訴法248条
論点4第76条日本国憲法

民訴法三九条と憲法七六条〈すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。〉

裁判要旨民訴法三九条は除斥又は忌避についての裁判機関を定めたものであるから、裁判官が憲法七六条三項所定の良心に従つた裁判をすることとはなんら関係がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年12月1日 昭和52(ク)249
登載
集民 第122号279頁
参照法条
憲法76条3項,民訴法39条
論点5第76条日本国憲法

旧酒税法(昭和一五年法律第三五号)第六六条本文の合憲性

裁判要旨旧酒税法(昭和一五年法律第三五号)六六条本文が罰金刑ついて刑法六六条の規定を排除したからといつて、憲法一三条〈すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法そ…〉、七六条三項〈すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。〉に違反するということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月13日 昭和36(あ)2391
登載
集刑 第141号823頁
参照法条
旧酒税法(昭和15年法律35号)66条,憲法13条,憲法76条3項,刑法66条
論点6第76条日本国憲法

一 刑訴法第三五条但書の特別の事情がなくなつたものと認められた事例
二 憲法第九条〈日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争…〉の立法趣旨
三 憲法第九条第二項の戦力不保持の規定の立法趣旨
四 憲法第九条はわが国の自衛権を否定するか
五 憲法はわが国が自国の平和と安全を維持しその存立を全うするための自衛の措置をとることを禁止するか
六 憲法は右自衛のための措置を国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事措置等に限定し、他国にわが国の安全保障を求めることを禁止するか
七 わが国に駐留する外国軍隊は憲法第九条第二項の「戦力」にあたるるか
八 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(以下安保条約と略す。)と司法裁判所の司法審査権
九 安保条約がいわゆる前提問題となつている場合と司法裁判所の司法審査権
一0 安保条約は一見明白に違憲と見められるか
一一 特に国会の承認を経ていない安保条約第三条〈天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。〉に基く行政協定(以下行政協定と略す。)の合憲性

裁判要旨一 刑訴規則第二五四条の跳躍上告事件において、審判を迅速に終結せしめる必要上、被告人の選任すべき弁護人の数を制限したところ、その後公判期日および答弁書の提出期日がきまり、かつ弁護人が公判期日に弁論をする弁護人の数を自主的に〇人以内に制限する旨申出たため、審理を迅速に終結せしめる見込がついたときは、刑訴第三五条〈何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な…〉但書の特別の事情はなくなつたものと認めることができる。
二 憲法第九条〈日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争…〉は、わが国が敗戦の結果、ポツダム宣言を受諾したことに伴い、日本国民が過去におけるわが国の誤つて犯すに至つた軍国主義的行動を反省し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、深く恒久の平和を念願して制定したものであつて、前文および第九八条第二項〈この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力…〉の国際協調の精神と相まつて、わが憲法の特色である平和主義を具体化したものである。
三 憲法第九条第二項が戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となつて、これに指揮権、管理権を行使することにより、同条第一項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起すことのないようにするためである。
四 憲法第九条はわが国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定してはいない。
五 わが国が、自国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置を執り得ることは、国家固有の権能の行使であつて、憲法は何らこれを禁止するものではない。
六 憲法は、右自衛のための措置を、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事措置等に限定していないのであつて、わが国の平和と安全を維持するためにふさわしい方式または手段である限り、国際情勢の実情に則し適当と認められる以上、他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではない。
七 わが国が主体となつて指揮権、管理権を行使し得ない外国軍隊はたとえそれがわが国に駐留するとしても憲法第九条第二項の「戦力」には該当しない。
八 安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。
九 安保条約(またはこれに基く政府の行為)が違憲であるか否かが、本件のように(行政協定に伴う刑事特別法第二条〈皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。〉が違憲であるか)前提問題となつている場合においても、これに対する司法裁判所の審査権は前項と同様である。
一0 安保条約(およびこれに基くアメリカ合衆国軍隊の駐留)は、憲法第九条、第九八条第二項および前文の趣旨に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは認められない。
一一 行政協定は特に国会の承認を経ていないが違憲無効とは認められない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和34年12月16日 昭和34(あ)710
登載
刑集 第13巻13号3225頁
参照法条
刑訴法35条,刑訴規則26条,憲法前文,憲法9条1項,憲法9条2項,憲法98条2項,憲法9条,憲法73条3号,憲法76条3項,憲法81条,憲法98条,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約前文,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約1条,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約3条,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約3条に基く行政協定2条1,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約前文,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約1条,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条に基く行政協定2条1,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条に基く行政協定に伴う刑事特別法2条
論点7第76条日本国憲法

刑訴法第三九二条第二項の合憲性

裁判要旨刑訴第三九二条二項が控訴審に職権調査の義務を課さなかつたといつて、憲法第一三条〈すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法そ…〉、第七六条第三項〈すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年9月18日 昭和30(あ)1627
登載
刑集 第11巻9号2340頁
参照法条
刑訴法392条,憲法13条,憲法76条3項
論点8第76条日本国憲法

最高裁判所規則の制定に関する裁判官会議への参加を理由とする忌避申立ての許否

裁判要旨最高裁判所規則の制定をめぐる訴訟において、右制定に関する裁判官会議に参加したことを理由に、最高裁判所の裁判官につき忌避の申立てをすることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成3年2月25日 平成2(行ニ)42
登載
民集 第45巻2号117頁
参照法条
憲法76条1項,憲法76条2項,憲法77条1項,裁判所法12条,民訴法37条1項
論点9第76条日本国憲法

詐欺罪の事案につき宗教上の教義の真偽を判断しているから信教の自由を侵害しているとの違憲主張が欠前提処理された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年8月27日 平成19(あ)170
登載
集刑 第295号1頁
参照法条
憲法20条1項,憲法76条1項,刑法246条1項
論点10第77条日本国憲法

一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)八五条三号の規定と憲法一四条一項、三一条、三二条

二 独禁法八五条三号の規定と憲法七七条一項

三 石油製品の値上げの上限に関し通産省の了承を得させることとする行政指導がある場合と石油製品価格に関する不当な取引制限行為の成否

四 不当な取引制限行為が事業者団体によつて行われた場合と事業者の処罰

五 独禁法二条六項にいう「相互にその事業活動を拘束し」にあたる場合

六 独禁法二条六項にいう「公共の利益に反して」の意義

七 法人の従業者が法人の業務に関して独禁法八九条一項一号〈公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは…〉違反の行為をした場合と右従業者及び法人の処罰

八 独禁法八九条一項一号の罪の既遂時期

九 石油製品価格に関する行政指導の許される範囲

一〇 適法な行政指導に従つて行われた行為と違法性の阻却

一一 独禁法九六条二項所定の告発状の方式

一二 刑訴規則五八条〈両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。〉違反の瑕疵のある告発状の効力

一三 清算の結了による株式会社の法人格消滅の要件

一四 株式会社の吸収合併が不成立ないし不存在とはいえないとされた事例

一五 会社の吸収合併と刑事責任の承継

裁判要旨一 独禁法八九条から九一条までの罪に係る訴訟につき二審制を定めた同法八五条三号の規定は、憲法一四条一項〈すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差…〉、三一条〈何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。〉、三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉に違反しない。

二 独禁法八九条から九一条までの罪に係る訴訟の第一審の裁判権を東京高等裁判所に専属させた同法八五条三号の規定は、憲法七七条一項〈最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。〉に違反しない。

三 石油製品の値上げの上限に関し通産省の了承を得させることとする行政指導が行われており、右行政指導が違法とまではいえない場合であつても、石油製品元売り会社の従業者等が、値上げの上限に関する通産省の了承を得るために右上限についての業界の希望案を合意するに止まらず、その属する事業者の業務に関し、通産省の了承の得られることを前提として、了承された限度一杯まで各社一致して石油製品の価格を引き上げることまで合意したときは、右合意は、独禁法三条、八九条一項一号、九五条一項によつて禁止・処罰される不当な取引制限行為にあたる。

四 独禁法上処罰の対象となる不当な取引制限行為が事業者団体によつて行われた場合であつても、これが同時に事業者団体を構成する各事業者の従業者等によりその業務に関して行われたと観念しうる事情があるときは、右行為に対する刑責を事業者団体のほか各事業者に対して問うことも許される。

五 各事業者の従業者等が、事業者の業務に関し、その内容の実施に向けて努力する意思をもち、かつ、他の事業者もこれに従うものと考えて、製品の価格をいつせいに一定の幅で引き上げる旨の協定を締結したときは、協定の実効性を担保するための制裁等の定めがなくても、独禁法二条六項にいう「相互にその事業活動を拘束し」にあたる。

六 独禁法二条六項の「公共の利益に反して」との文言は、原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを意味するが、現に行われた行為が形式上これに該当するものであつても、右法益と当該行為によつて守られる利益とを比較衡量すれば「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的に実質的には反しないと認められる例外的な場合を、同項にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨を含む。

七 事業者たる法人の従業者である自然人が、法人の業務に関して、独禁法八九条一項一号に違反する行為をした場合には、行為者たる自然人及びその所属する法人は、いずれも、同法九五条一項及び同法八九条一項一号により処罰される。

八 事業者が他の事業者と共同して対価を協議・決定する等相互にその事業活動を拘束すべき合意をした場合において、右合意により、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争が実質的に制限されたものと認められるときは、独禁法八九条一項一号の罪は直ちに既遂に達し、右決定された内容が各事業者によつて実施に移されることや決定された実施時期が現実に到来することなどは、同罪の成立に必要ではない。

九 石油業法に直接の根拠を持たない石油製品価格に関する行政指導であつても、これを必要とする事情がある場合に、これに対処するため社会通念上相当と認められる方法によつて行われるものは、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という独禁法の究極の目的に実質的に抵触しない限り、違法とはいえない。

一〇 価格に関する事業者間の合意は、形式的に独禁法に違反するようにみえる場合であつても、適法な行政指導に従いこれに協力して行われたものであるときは、違法性を阻却される。

一一 独禁法九六条二項所定の告発状の方式には、刑訴規則五八条の適用ないし準用があり、公正取引委員会委員長の署名押印が必要である。

一二 告発状の方式に刑訴規則五八条〈両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。〉違反の瑕疵がある場合でも、その体裁・形式・記載内容などから告発人の真意に基づいて作成されたものであることが容易に推認されうるときは、告発状の訴訟法上の効力は否定されない。

一三 清算の結了により株式会社の法人格が消滅したというためには、商法四三〇条一項、一二四条所定の清算事務が終了しただけでは足りず、清算人が決算報告書を作成してこれを株主総会に提出しその承認を得ることを要する。

一四 解散後清算事務を終了したが商法四二七条一項所定の手続が未了であつた甲株式会社につき会社継続の手続をしたうえ、乙株式会社をこれに吸収する合併契約をする等の手続を履践して行われた本件吸収合併(判文参照)は、これを不成立ないし不存在ということはできない。

一五 乙会社の従業者が会社の業務に関して価格協定に参加したのち、同会社が甲会社との吸収合併により消滅したときは、合併当時甲会社が清算事務を終了しており、かつ、右合併が乙会社の株式の額面金額の変更のみを目的としたものであつたとしても、現に存在する甲会社に対し右従業者の行為を理由としてその刑責を追及することは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年2月24日 昭和55(あ)2153
登載
刑集 第38巻4号1287頁
参照法条
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)1条,独禁法2条6項,独禁法8条1項,独禁法33条,独禁法85条3号,独禁法89条1項(昭和52年法律第63号による改正前のもの),独禁法95条1項(昭和52年法律第63号による改正前のもの),独禁法96条,憲法14条,憲法31条,憲法32条,憲法77条1項,商法124条,商法406条,商法408条,商法415条,商法427条,商法430条1項,刑訴法239条,刑訴法241条,刑訴法339条1項4号,刑訴法490条1項,刑訴規則58条,刑法35条,通商産業省設置法3条2号,石油業法3条,石油業法4条,石油業法7条,石油業法15条,法人ノ役員処罰ニ関スル法律
論点11第77条日本国憲法

いわゆる事件回付の措置と訴訟法に準拠する不服申立

裁判要旨地方裁判所の本庁と支部との間あるいは支部相互間の事件の回付の措置に対しては、当事者は、訴訟法に準拠する不服の申立はできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年3月25日 昭和44(し)3
登載
刑集 第23巻3号212頁
参照法条
憲法32条,憲法37条1項,憲法77条1項,裁判所法31条1項,民訴法31条,民訴法410条,刑訴法19条3項,刑訴法419条,刑訴法420条1項,下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律2条,地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則1条1項
論点12第77条日本国憲法

民訴規則第五〇条の合憲性。

裁判要旨上告理由書の提出期間に関する民訴規則第五〇条は、憲法に違反しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和33年7月10日 昭和32(ク)115
登載
民集 第12巻11号1747頁
参照法条
民訴規則50条,民訴法398条1項,憲法77条
論点13第77条日本国憲法

刑訴規則第四四条の合憲性

裁判要旨第三点は違憲をいうが、刑訴四八条二項〈何人も、同時に両議院の議員たることはできない。〉は公判調書に記載すべき重要事項範囲を最高裁判所規則に一任しているから、所論規則が起訴状朗読の記載を不要としたことは、刑訴法に反するところはなく、従つて違憲の主張は前提を欠き、採るを得ない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年2月17日 昭和29(あ)1517
登載
集刑 第102号775頁
参照法条
刑訴法48条2項,刑訴規則44条,憲法31条,憲法77条
論点14第77条日本国憲法

一 法律が一定の規定の制定を最高裁判所に委任することの合憲性
二 刑訴施行法第一三条〈すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法そ…〉にいわゆる「裁判所の規則」の意議
三 公判期日に提出された被告人の上申書が旧刑訴法第三四二条にいわゆる証拠居類にあたらない事例

裁判要旨一 法律が一定の規定の制定を最高裁判所の規則に委任することは何ら憲法の禁ずるところでないことは、前記第法法廷判決(昭和二四年(れ)第二一二七号、同二五年一〇月二五日判決参照)の趣旨から容易にうかがわれるところである。
二 又論旨は刑訴施行法第一三条〈すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法そ…〉は規則の制定方を最高裁判所だけに委任せず下級裁判所にも委任しているのは憲法第七七条第三項〈最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。〉に違反すると主張する。しかし前記刑訴規則施行規則第三条第三号〈天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。〉は最高裁判所の制定した規則であつて下級裁判所の制定したものではないのであるから所論は本件規則の効力に無関係であるのみならず刑訴施行法第一三条に「裁判所の規則の定めるところによる」とあるいわゆる「裁判所の規則」とは憲法により司法裁判所に制定権を認められた規則の意であつて最高裁判所が憲法第七七条第一項により自ら設定する規則及び最高裁判所の委任に基き下級裁判所の制定する規則を指すことは右刑訴施行法第一三条の解釈上当然である。
三 右上申書なる書面前文を読めば右は被告人が検察官に対し恐喝の事実を自白するに至つた経緯を弁解し後日原審の公判廷において右経緯を立証し弁明しようとすることを予め裁判所に上申する趣旨の書面であつて、その後原審公判廷で裁判長が被告人弁護人に立証を促した際に同弁護人は証人としてA、B、Cの三名の喚問を申請している(右三名のうちB、Cは前記自白の経緯を立証するため申請したものと解される)のに拘らず前記上申書については裁判所に対し証拠調手続をとられたい旨促した形跡も在しないところを見ると右上申書は特に証拠として提出されたものとは認められない。してみれば右上申書は旧刑訴第三四二条にいわゆる証拠書類とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年2月23日 昭和25(れ)718
登載
刑集 第5巻3号450頁
参照法条
憲法77条1項,刑訴施行法13条,起訴規則施行規則3条3号,旧刑訴法342条
論点15第79条日本国憲法

1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことと憲法15条1項〈公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。〉、79条2項〈最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣で…〉、3項
2 国が在外国民に対して次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認を求める訴えの適否
3 国会において在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことが国家賠償法1条1項〈天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。〉の適用上違法の評価を受けるとされた事例

裁判要旨1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項〈公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。〉、79条2項〈最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣で…〉、3項に違反する。
2 国が在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に対して国外に住所を有することをもって次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において審査権の行使をさせないことが憲法15条1項、79条2項、3項等に違反して違法であることの確認を求める訴えは、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法である。
3 国会において在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことは、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、平成29年10月22日に施行された上記審査の当時において、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける。
⑴ 国会においては、平成10年、在外国民に国政選挙の選挙権の行使を認める制度を創設する法律案に関連して、在外国民に審査権の行使を認める制度についての質疑がされた。
⑵ 平成17年、最高裁判所大法廷判決により在外国民に対する選挙権の制約に係る憲法適合性について判断が示され、これを受けて、同18年の法改正により在外国民に国政選挙の選挙権の行使を認める制度の対象が広げられ、同19年、在外国民に憲法改正についての国民の承認に係る投票の投票権の行使を認める法律も制定された。
⑶ 在外国民に審査権の行使を認める制度の創設に当たり検討すべき課題があったものの、その課題は運用上の技術的な困難にとどまり、これを解決することが事実上不可能ないし著しく困難であったとまでは考え難い。
(1、2につき、補足意見がある。)
裁判
最高裁判所大法廷 令和4年5月25日 令和2(行ツ)255
登載
民集 第76巻4号711頁
参照法条
(1~3につき) 憲法79条2項、憲法79条3項、憲法79条4項、最高裁判所裁判官国民審査法4条、最高裁判所裁判官国民審査法8条 (1、3につき) 憲法15条1項 (2につき) 行政事件訴訟法4条 (3につき) 国家賠償法1条1項
論点16第81条日本国憲法

刑訴法四〇五条が憲法八一条〈最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。〉に違反する旨の主張が原判決に対する論難ではないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和62年9月7日 昭和62(あ)605
登載
集刑 第247号1頁
参照法条
憲法81条,刑訴法405条
論点17第81条日本国憲法

刑訴法四〇五条は憲法八一条〈最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。〉に違反する旨の主張が「欠前提」とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年2月5日 昭和56(あ)1547
登載
集刑 第225号651頁
参照法条
憲法81条,刑訴法405条
論点18第81条日本国憲法

原判決の刑の量定に対する非難を上告理由として認めるか否かは立法政策の問題であるとして処理された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年9月9日 昭和52(あ)1045
登載
集刑 第205号515頁
参照法条
憲法81条,憲法29条1項,関税法118条2項,刑訴法408条
論点19第81条日本国憲法

一 電話による通知と裁判官の転補発令の効力
二 転補発令後の裁判官の関与した評議に基づく裁判が憲法第三七条第一項〈すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。〉の「公平な裁判所の裁判」でないとはいえないとされた事例
三 再審を開始するか否かを定める手続は憲法第八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉の「裁判の対審及び判決」に含まれるか
四 原決定の手続が憲法に違反する旨の主張が刑訴応急措置法第一八条〈何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。〉による抗告の適法な理由として採り上げられた事例

裁判要旨一 裁判官に対し、電話で、転補の発令があつた旨の通知がされたときは、辞令書の交付前であつても、右転補の発令は効力を生ずる。
二 転補の発令が効力を生じた後の裁判官が評議に関与した場合でも、その裁判官が評議に関与したのが、転補発令の通知を正式のものではないと考えていたためであり、かつ、その裁判官が、いつでもその裁判所の裁判官の職務の代行を命ぜられうる資格のある者である等、判文記載の具体的事情のもとでは、形式上職務代行の発令がなくても、右評議に基づく裁判を、憲法第三七条第一項〈すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。〉の「公平な裁判所の裁判」でないということはできない。
三 再審を開始するか否かを定める手段は、憲法八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉の「裁判の対審及び判決」に含まれない。
四 原決定の手続が憲法に違反する旨の主張は、原決定がその点について特に判断を示していない場合でも、刑訴応急措置法第一八条による抗告の適法な理由として採り上げることができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和42年7月5日 昭和40(し)98
登載
刑集 第21巻6号764頁
参照法条
憲法37条1項,憲法82条,憲法81条,裁判所法47条,裁判所法19条1項,裁判所法75条,刑訴法445条,旧刑訴法503条,日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律18条
論点20第81条日本国憲法

一 訴訟判決に対する上訴と民事訴訟用印紙法第五条〈皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規…〉
二 民事訴訟用印紙法第五条の合憲性

裁判要旨一 民事訴訟用印紙法第五条〈皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規…〉は、原裁判が実体判決であると訴訟判決であるとにかかわりなく、その上訴状について、適用があるものと解すべきである。
二 訴訟判決に対する上訴審において請求の当否に関する審判をしないからといつて、前項の民事訴訟用印紙法第五条の規定をもつて憲法に違反するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年4月19日 昭和39(オ)1137
登載
集民 第83号225頁
参照法条
民事訴訟用印紙法5条,民訴法388条,憲法81条
論点21第81条日本国憲法

民訴法第三九九条の合憲性。

裁判要旨原裁判所の決定によつて上告却下ができる旨規定した民訴法第三九九条は、違憲ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年12月25日 昭和39(ク)326
登載
集民 第76号779頁
参照法条
民訴法399条,憲法81条
論点22第81条日本国憲法

憲法違反の主張に対し判断を示したものと認められる一事例

裁判要旨死刑が違憲である旨の主張があつた場合に、原判決が選択刑として規定している刑法第二四〇条後段を適用挙示して被告人を死刑に処した第一審判決の量刑につき、これを不当とする事由を発見することができない旨を判示したときは、死刑は憲法に適合するとの判断を示したものと解することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年6月27日 昭和31(あ)3799
登載
集刑 第119号675頁
参照法条
憲法81条,刑訴法392条1項
論点23第81条日本国憲法

一 刑法第九八条、同法第一〇二条〈この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、こ…〉の合憲性
二 違憲審査権の限界(違憲の主張のない法令の違憲審査はできるか)

裁判要旨一 しかし憲法は理由があれば被疑者が拘禁され抑留されうることを認め且犯罪による処罰の場合には犯人に肉体的拘束が加えられることを是認している(憲法第三四条〈何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当…〉、三一条〈何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。〉)。従つて所論未決若しくは既決の囚人が拘禁の苦痛を免れようとする衝動から逃走するのは、憲法が保障する自由を回復する行為ではない。なぜならば未決、既決の囚人がその身体の自由を制限されている場合には法律の定める手続によらなければ右自由を回復しえないものだからである。そしてかかる囚人の自己逃走を処罰するために設けられた前記刑法第九八条〈この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力…〉及び同法第一〇二条の規定は公共の福祉を保持するために自由の制限を認めたものであつて、所論のごとき違憲のかどは認められないから論旨は採用できない。
二 (少数意見要旨)裁判官栗山茂
憲法上立法権の専断的行使を抑制(チエック)する一方法として裁判所は訴訟の形式においてだけ違憲法律の審判ができることになつているのである。これを通俗に司法の優位と呼んだからといつて憲法上の機関として司法権が立法権に優位するのではないから、裁判所は争訟がないのに(争訟がないということは当事者から違憲性の主張がないということと同じである。)法律が憲法に適合するかしないかについて調査をしてその意見を表示する権限までも含むものではない。されば裁判所は当事者から法律の違憲について主張がないにもかかわらず、性質上適憲性が推定されている法条を解釈適用するに当つて、一々該法条が適憲であるかどうかを判断した上で事案を処理しなければならないものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年7月11日 昭和25(あ)1545
登載
刑集 第5巻8号1419頁
参照法条
刑法98条,刑法102条,憲法11条,憲法13条,憲法81条
論点24第81条日本国憲法

1 民法900条4号ただし書前段の規定と憲法14条1項
2 民法900条4号ただし書前段の規定を違憲とする最高裁判所の判断が他の相続における上記規定を前提とした法律関係に及ぼす影響

裁判要旨1 民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項〈すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差…〉に違反していた。
2 民法900条4号ただし書前段の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとする最高裁判所の判断は,上記当時から同判断時までの間に開始された他の相続につき,同号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所大法廷 平成25年9月4日 平成24(ク)984
登載
民集 第67巻6号1320頁
参照法条
(1,2につき)憲法14条1項,民法900条 (2につき)憲法81条
論点25第81条日本国憲法

逃亡犯罪人引渡法10条1項3号の決定に対する不服申立ての許否

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和元年11月12日 令和1(し)699
登載
集刑 第327号1頁
参照法条
逃亡犯罪人引渡法10条1項,刑訴法433条,裁判所法7条,裁判所法8条,憲法31条,憲法81条
論点26第82条日本国憲法

民事執行法八三条による引渡命令の裁判と憲法三二条、八二条

裁判要旨民事執行法八三条による引渡命令の裁判は、憲法三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉、八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年10月6日 昭和63(ク)304
登載
集民 第155号1頁
参照法条
民事執行法83条,憲法32条,憲法82条
論点27第82条日本国憲法

国選弁護人に支給すべき報酬の額の決定と憲法三二条、八二条

裁判要旨国選弁護人に支給すべき報酬の額の決定は、公開の法廷における審理を経なくても、憲法三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉、八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和61年9月8日 昭和58(行ツ)27
登載
集民 第148号425頁
参照法条
刑事訴訟費用等に関する法律8条2項,刑訴法38条2項,憲法32条,憲法82条
論点28第82条日本国憲法

家事審判法九条一項乙類九号の二の寄与分を定める処分の審判の合憲性

裁判要旨家事審判法九条一項乙類九号の二の寄与分を定める処分の審判は、憲法三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉、八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和60年7月4日 昭和60(ク)226
登載
集民 第145号131頁
参照法条
家事審判法9条1項乙類9号の2,民法904条の2,憲法32条,憲法82条
論点29第82条日本国憲法

更生計画認否の裁判に対する抗告審の裁判と憲法三二条、八二条

裁判要旨更生計画認否の裁判に対する抗告審の裁判は、公開・対審の手続によらなくても、憲法三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉、八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和60年1月22日 昭和59(ク)258
登載
集民 第144号61頁
参照法条
会社更生法232条,会社更生法237条,憲法32条,憲法82条
論点30第82条日本国憲法

家事審判法九条一項乙類九号の推定相続人廃除に関する処分の審判の合憲性

裁判要旨家事審判法九条一項乙類九号の推定相続人廃除に関する審判は、憲法八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉、三一条〈何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年3月22日 昭和57(ク)329
登載
集民 第141号379頁
参照法条
家事審判法9条1項乙類9号,民法892条,憲法31条,憲法82条
論点31第82条日本国憲法

家事審判法九条一項乙類四号所定の子の監護に関する処分にかかる審判についての規定の合憲性

裁判要旨家事審判法九条一項乙類四号所定の子の監護に関する処分にかかる審判についての規定は、憲法三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉、八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年12月20日 昭和59(ク)112
登載
集民 第143号481頁
参照法条
民法766条2項,家事審判法9条1項乙類4号,憲法32条,憲法82条
論点32第82条日本国憲法

準起訴手続の審理及び裁判と憲法八二条

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年9月12日 昭和55(し)101
登載
集刑 第218号325頁
参照法条
憲法82条,刑訴法262条,刑訴法265条
論点33第82条日本国憲法

推定相続人廃除請求事件の性質

裁判要旨民法八九二条の推定相続人廃除の規定は、被相続人に対し実体法の相続人廃除権ないし廃除請求権を付与したものではなく、右推定相続人廃除請求の手続は、非訟事件たる性質を有する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年7月10日 昭和54(ク)149
登載
集民 第130号205頁
参照法条
憲法32条,憲法82条,民法892条,家事審判法9条1項乙類9号
論点34第82条日本国憲法

株式買取価格の決定と憲法三二条、八二条

裁判要旨商法二四五条の三第三項による株式買取価格の決定は、非訟事件の裁判であつて、該事件を非訟事件手続法により審理裁判することは、憲法三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉、八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年3月1日 昭和47(ク)5
登載
民集 第27巻2号161頁
参照法条
憲法32条,憲法82条,商法245条ノ3,商法349条,非訟事件手続法132条ノ6
論点35第82条日本国憲法

親権者変更の審判と憲法三二条八二条

裁判要旨家事審判法九条一項乙類七号に規定する親権者の変更の審判は、本質的に非訟事件の裁判であつて、公開の法廷における対審および判決によつてする必要はなく、したがつて、公開の法廷における口頭弁論に基づかないでされた右審判に対する抗告事件についてされた決定は、憲法三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉、八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年7月8日 昭和46(ク)52
登載
集民 第103号385頁
参照法条
憲法32条,憲法82条,家事審判法9条1項乙類7号,民法819条6項
論点36第82条日本国憲法

破産宣告決定およびこれに対する抗告事件についての抗告棄却決定と憲法八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉

裁判要旨破産宣告決定およびこれに対する抗告事件についての抗告棄却決定は、口頭弁論を経ないでなされても、憲法八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和45年6月24日 昭和41(ク)402
登載
民集 第24巻6号610頁
参照法条
破産法126条,破産法110条,破産法112条,憲法82条
論点37第82条日本国憲法

刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をすることと憲法第三七条第一項〈すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。〉

裁判要旨刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審が口頭弁論を開くことなく非公開の裁判をしても憲法第三七条第一項〈すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。〉に違反しないことは、昭和四〇年(し)第九八号同四二年七月五日大法廷決定の趣旨に照らし明らかである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年8月1日 昭和42(し)36
登載
集刑 第164号1頁
参照法条
憲法37条1項,憲法82条1項,刑法26条,刑法26条ノ2,刑訴法349条,刑訴法419条
論点38第82条日本国憲法

受命裁判官による証拠調と公開

裁判要旨受命裁判官による証拠調を公開法廷で行なわなくても、憲法第八二条第一項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年4月22日 昭和40(オ)182
登載
集民 第83号323頁
参照法条
民訴法265条,憲法82条1項
論点39第82条日本国憲法

一 家事審判法第九条第一項〈日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争…〉乙類第一号の夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する処分の審判についての規定の合憲性
二 夫婦の同居義務等に関する審判の効力

裁判要旨一 家事審判法第九条第一項〈日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争…〉乙類第一号の夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する処分の審判についての規定は、憲法第三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉、第八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
二 夫婦の同居義務等を前提とする審判が確定した場合でも右同居義務等自体については、別に訴を提起することを妨げるものではない。

(補足意見および意見がある。)
裁判
最高裁判所大法廷 昭和40年6月30日 昭和36(ク)419
登載
民集 第19巻4号1089頁
参照法条
憲法32条,憲法82条,民法752条,家事審判法9条1項乙類1号,家事審判法7条,家事審判法15条
論点40第82条日本国憲法

一 家事審判法第九条第一項〈日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争…〉乙類第三号の婚姻費用の分担に関する処分の審判の合憲性。
二 婚姻費用の分担に関する審判の効力。
三 家庭裁判所は審判時から過去に遡つて婚姻費用の分担に関する処分をすることができるか。

裁判要旨一 家事審判法第九条第一項〈日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争…〉乙類第三号の婚姻費用の分担に関する処分の審判は、憲法第三二条〈何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。〉、第八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
二 婚姻費用分担義務を前提とする審判がなされた場合でも、右分担義務の存否については、別に訴を提起することを妨げない。
三 家庭裁判所は、審判時から過去に遡つて、婚姻費用の分担に関する処分をすることができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和40年6月30日 昭和37(ク)243
登載
民集 第19巻4号1114頁
参照法条
憲法32条,憲法82条,民法760条,家事審判法9条1項乙類3号,家事審判法7条,家事審判法15条,家事審判規則6条
論点41第82条日本国憲法

一 控訴審の公判と憲法第三七条第一項〈すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。〉および第八二条第一項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉。
二 量刑過重の控訴趣意と量刑過軽の控訴趣旨がいずれも理由ありとした控訴審判決の説示と理由そごの有無。

裁判要旨一 控訴審における公判の審理が、単に、控訴趣意書に基く陳述とこれに対する相手方の答弁だけであつても、被告人に対しては、右公判に出頭する機会が適法に与えられ、しかも検察官が出席し、弁護人が出頭して、弁論をしている以上、憲法第三七条第一項〈すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。〉、第八二条第一項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反しない。
二 第一審の有罪判決に対し、検察官、被告人双方共控訴を申し立て、控訴趣意として、検察官は第一審判決の量刑が軽きにすぎると主張し、被告人は、その量刑が重きに過ぎると主張している場合に、控訴審の判決が、「第一審の科刑は不当であると思われるので、論旨は結局においていずれも理由がある」と説示しても、理由そごの違法はない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和33年7月2日 昭和27(あ)276
登載
刑集 第12巻11号2377頁
参照法条
憲法37条1項,憲法82条1項,刑訴法389条,刑訴法390条,刑訴法400条但書,刑訴法378条4号,刑訴法397条1項,刑訴法381条
論点42第82条日本国憲法

一 再審を開始するか否かの手続は憲法にいう「裁判の対審」か
二 刑訴法第四三五条第六号の「明らかな証拠」の意義
三 同号の「原判決において認めた罪より軽い罪」の意義

裁判要旨一 確定判決に対する再審を開始するか否かの手続は、憲法にいう「裁判の対審」に当たらない
二 刑訴法第四三五条第六号にいう「明らかな証拠」というのは証拠能力もあり証明力も高度のものをいい、被告人が弁護人に宛てた書信の如きを含まない
三 同条同号の「原判決において認めた罪より軽い罪」というのは法定刑の軽い罪をいい、心神耗弱の主張を含まない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年5月27日 昭和33(し)14
登載
刑集 第12巻8号1683頁
参照法条
憲法37条1項,憲法82条1項,刑訴法435条6号,刑訴法445条,刑法39条2号,刑訴規則283条
論点43第82条日本国憲法

一 罹災都市借地借家臨時処理法第一五条〈公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。〉による借地権設定に関する裁判の合憲性
二 裁判上の和解と既判力
三 罹災都市借地借家臨時処理法第一五条による裁判と既判力

裁判要旨一 罹災都市借地借家臨時処理法第一五条〈公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。〉による借地権設定に関する裁判は憲法第三二条、第八二条に違反しない。
二 裁判上の和解は確定判決と同一の効力を有し既判力を有するものと解すべきである。
三 罹災都市借地借家臨時処理法第一五条による裁判については、それが実質的理由によつて賃借権設定申立を却下する裁判であつても、その既判力を否定すべきではない。
(少数意見がある)
裁判
最高裁判所大法廷 昭和33年3月5日 昭和24(オ)182
登載
民集 第12巻3号381頁
参照法条
罹災都市借地借家臨時処理法15条,罹災都市借地借家臨時処理法18条,罹災都市借地借家臨時処理法25条,非訟事件手続法,憲法32条,憲法82条,民訴法203条,民訴法199条
論点44第82条日本国憲法

付審判請求棄却決定に対する抗告棄却決定と憲法第八二条にいう「裁判の対審」

裁判要旨所論は憲法八二条違反をいうけれども、本件における決定(付審判請求棄却決定に対する抗告を棄却する決定)の如きは同条にいわゆる「裁判の対審」に当らないことは当裁判所の判例(昭和二三年(つ)第二五号、同年一一月八日大法廷決定、集二巻一二号一四九八頁参照)の趣旨に徴し明らかであるから右違憲の主張はその前提を欠くものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年12月23日 昭和32(し)57
登載
集刑 第122号807頁
参照法条
憲法82条,刑訴法262条,刑訴法266条,刑訴法419条,刑訴法426条,刑訴法433条
論点45第82条日本国憲法

一 麻薬取締法第六七条〈内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。〉等の合憲性
二 書面審理と憲法第八二条第一項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉
三 包括一罪を構成する一部の行為に対する追起訴状の提出と二重起訴
四 旧麻薬取締法の一部を改正する昭和二七年法律第一五二号の施行期日の前後にまたがる常習行為の適条

裁判要旨一 麻薬取締法第六七条〈内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。〉等は憲法第二二条第一項に違反しない。
二 一審裁判所は、被告人、弁護人の出頭した公開の公判廷で審理を行い、被告人は犯罪事実をすべて自認し、弁護人同意の下に証拠書類について適法に証拠調を終つた上、弁論を終結して判決し、控訴審もまた公開した公判廷において出頭した弁護人の控訴趣意書に基く弁論並びにこれに対する検察官の意見をきいた上結審して、控訴を理由ないものとして棄却する旨の判決を宣告した以上憲法第八二条〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉に違反するところはない。
三 麻薬取締法違反の常習営利の一罪を構成する行為について追起訴状が提出されても、それが右一罪を構成する行為で起訴状に洩れたものを追加補充する趣旨でなされたものと認められる以上、二重起訴の違法はない。
四 旧麻薬取締法の一部を改正して、常習行為の加重処罰を規定した昭和二七年法律第一五二号の施行期日の前後にまたがる行為は、それが不可分の関係にあつて一罪と認められる場合でないかぎり、これをその前後によつて区分し、それぞれ行為時法に従つて法律上の処遇を判断すべきものと解するを相当とする。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和31年12月26日 昭和29(あ)1400
登載
刑集 第10巻12号1746頁
参照法条
麻薬取締法67条,麻薬取締法66条,麻薬取締法64条,麻薬取締法12条,麻薬取締法附則第2項,16項,憲法22条1項,憲法82条1項,憲法39条,刑訴法312条,刑訴法309条2項,刑訴法338条3号,刑訴規則209条,刑訴規則205条2項,旧麻薬取締法(昭和27年法律152号による改正後のもの)57条ノ3,旧麻薬取締法(昭和27年法律152号による改正後のもの)57条ノ4,旧麻薬取締法(昭和27年法律152号による改正後のもの)附則2項
論点46第82条日本国憲法

一 公判の公開と公判調書の記載
二 公開禁止の決定の効力
三 裁判官が「合議の上」裁判の公開を禁止した旨の公判調書の記載と憲法第八二條
四 強盗行爲に對し必死に反抗中の被害者から腕時計を奪取した行爲と強盗罪の成立

裁判要旨一 判決宣告期日の公判調書に、公開を禁じた旨の記載がない限り、判決の宣告は、公開法廷で行われたものと認めることができる。
二 審理が風俗を害する虞があるとして、裁判所が公判の公開を禁じた場合には、その公開禁止の効力は、結審後の判決宣告期日の公判には及ばないものと解すべきである。
三 裁判が公開の法廷において公正な裁判所によつてなさるべきことは所論のごとく憲法の明定するところである。ただ公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある場合には、裁判官の全員一致で對審を公開しないで行うことができることは、憲法第八二條第二項の定めているところである。そして、本件記録を調査すると(イ)所論のように「裁判長は合議の上爾後の審理は風俗を害する虞あるにより公開を禁止する旨を告げ非公開とした」との記載が昭和二二年九月三〇日の公判調書に明記されている。かくとごとく裁判所が非公開で審理をした場合には「裁判官の全員一致で」公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決定した旨を明確な表現で調書に記載しておくことが大切である。そこで本件調書に「合議の上」風俗を害する虞あるにより公開を禁止した旨を告げ非公開としたとの記載は嚴格にいえば稍不正確の嫌があるがしかしなお裁判所法にいわゆる評議を經て裁判官全員の意見が合致して非公開を決定したものと認め得るのである強いて所論のように評議の結果多數決をもつて公開を禁止したものと解すべき根據は全記録の何處にも見當らない。
四 判決宣告期日の公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り判決の宣告は、公開法廷で行われたものを認むべきである。
五 論旨は被害者が強姦行爲に對し力一杯反抗した證據と被害者が畏怖し抗拒不能となつているのに乘じて右手の腕時計をもぎ取つて強取した犯罪事實との間は重要な齟齬があるというのであるが、本件被害者は「ぐずぐずしておれば強姦され私の一生は臺無にされると思い私は力一杯の元氣を出して反抗しました處相手は私に馬乘りになつた儘左手にはめていた腕時計をもぎ取り」し旨を供述しているのであつて、婦人が強姦に對し本能的に強く反抗したからといつて前記状態において畏怖を感じ腕時計の強奪に對し抗拒不能であつたと原審が認定したことは常識上むしろ當然であつて毫も所論のような齟齬を存在しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年6月23日 昭和22(れ)219
登載
刑集 第2巻7号680頁
参照法条
刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑訴法410条7号,憲法82条,刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑法177条,刑法236条
論点47第82条日本国憲法

一 法定で傍聴人がメモを取ることと憲法八二条一項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉
二 法廷で傍聴人がメモを取ることと憲法二一条一項〈集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。〉
三 法廷警察権行使についての裁量の範囲
四 法廷でメモを取ることを報道機関の記者に対してのみ許可することと憲法一四条一項〈すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差…〉
五 法廷警察権の行使と国家賠償法一条一項〈天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。〉の違法性

裁判要旨一 憲法八二条一項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉は、法廷で傍聴人がメモを取ることを権利として保障しているものではない。
二 法廷で傍聴人がメモを取ることは、その見聞する裁判を認識記憶するためにされるものである限り、憲法二一条一項〈集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。〉の精神に照らし尊重に値し、故なく妨げられてはならない。
三 法廷警察権の行使は、裁判長の広範な裁量に委ねられ、その行使の要否、執るべき措置についての裁判長の判断は、最大限に尊重されなければならない。
四 法廷でメモを取ることを司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ許可し、一般傍聴人に対して禁止する裁判長の措置は、憲法一四条一項〈すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差…〉に違反しない。
五 法廷警察権の行使は、法廷警察権の目的、範囲を著しく逸脱し、又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情のない限り、国家賠償法一条一項にいう違法な公権力の行使ということはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 平成元年3月8日 昭和63(オ)436
登載
民集 第43巻2号89頁
参照法条
憲法14条1項,憲法21条1項,憲法82条1項,裁判所法71条,刑訴法288条2項,国家賠償法1条1項
論点48第82条日本国憲法

裁判の執行に関する異議の手続の審理及び裁判と憲法32条、82条

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年5月27日 平成9(し)67
登載
集刑 第270号609頁
参照法条
憲法32条,憲法82条,刑訴法502条,刑訴法504条
論点49第82条日本国憲法

刑事確定訴訟記録の閲覧に関し憲法82条2項ただし書の解釈の誤りをいう主張が刑事確定訴訟記録法4条2項,刑訴法53条3項の解釈,適用の誤りをいう単なる法令違反の主張とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成4年12月7日 平成4(し)114
登載
集刑 第261号303頁
参照法条
憲法82条,刑事確定訴訟記録法4条2項,刑訴法53条3項
論点50第82条日本国憲法

平成28年法律第54号による改正前の刑訴法157条の3,157条の4と憲法37条1項〈すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。〉,2項前段,82条1項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成31年4月19日 平成30(あ)1333
登載
集刑 第325号95頁
参照法条
憲法37条1項,憲法37条2項,憲法82条1項,刑訴法(平成28年法律第54条による改正前のもの)157条の3,刑訴法(平成28年法律第54条による改正前のもの)157条の4
論点51第82条日本国憲法

刑訴法461条以下の略式手続の規定違憲の主張が原判決の結論に影響のない事項に関するものであるとして不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成27年10月16日 平成27(あ)1105
登載
集刑 第318号1頁
参照法条
憲法31条,憲法32条,憲法37条,憲法38条3項,憲法82条,刑訴法405条,刑訴法461条以下
論点52第82条日本国憲法

刑訴法157条の3,157条の4と憲法82条1項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉,37条1項〈すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。〉,2項前段

裁判要旨刑訴法157条の3,157条の4は,憲法82条1項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉,37条1項〈すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。〉,2項前段に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年4月14日 平成16(あ)1618
登載
刑集 第59巻3号259頁
参照法条
憲法37条1項,憲法37条2項,憲法82条1項,刑訴法157条の3,刑訴法157条の4
論点53第82条日本国憲法

一 裁判所法五二条一号〈国会の常会は、毎年一回これを召集する。〉にいう「積極的に政治運動をすること」の意義
二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法五二条一号と憲法二一条一項〈集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。〉
三 裁判官が積極的に政治運動をしたとされた事例
四 裁判官が積極的に政治運動をしたことがその職務上の義務に違反するとして当該裁判官に対し戒告がされた事例
五 裁判官分限事件への憲法八二条一項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉の適用の有無
六 民事訴訟又は非訟の手続において期日に立ち会う代理人の数を制限することの可否

裁判要旨一 裁判所法五二条一号〈国会の常会は、毎年一回これを召集する。〉にいう「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものをいい、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、行為の内容、行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。
二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法五二条一号の規定は、憲法二一条一項〈集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。〉に違反しない。
三 裁判官が、その取扱いが政治的問題となっていた法案を廃案に追い込もうとする党派的な運動の一環として開かれた集会において、会場の一般参加者席から、裁判官であることを明らかにした上で、「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」との趣旨の発言をした行為は、判示の事実関係の下においては、右集会の参加者に対し、右法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという同人の意見を伝えるものというべきであり、右集会の開催を決定し右法案を廃案に追い込むことを目的として共同して行動している諸団体の組織的、計画的、継続的な反対運動を拡大、発展させ、右目的を達成させることを積極的に支援しこれを推進するものであって、裁判所法五二条一号が禁止している「積極的に政治運動をすること」に該当する。
四 裁判官が積極的に政治運動をしたことは、裁判所法四九条所定の懲戒事由である職務上の義務違反に該当し、当該行為の内容、その後の態度等判示の事情にかんがみれば、当該裁判官を戒告することが相当である。
五 裁判官分限事件には、憲法八二条一項〈裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。〉は適用されない。
六 民事訴訟又は非訟の手続を主宰する裁判所は、その手続を円滑に進行させるために与えられた指揮権に基づいて、期日を開く場所の収容能力、当該期日に予定されている手続の内容、裁判所の法廷警察権ないし指揮権行使の難易等を考慮して、必要かつ相当な場合には、期日に立ち会う代理人の数を合理的と認められる限度にまで制限することができる。
裁判
最高裁判所大法廷 平成10年12月1日 平成10(分ク)1
登載
民集 第52巻9号1761頁
参照法条
裁判所法49条,裁判所法52条1項,憲法21条1項,憲法82条1項,裁判官分限法2条,裁判官の分限事件手続規則7条,非訟事件手続法6条,非訟事件手続法13条,民訴法55条,民訴法148条,刑訴法35条,刑訴規則26条,刑訴規則27条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

日本国憲法 第76条 詳細ページ
第七十六条すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
日本国憲法 第77条 詳細ページ
第七十七条最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
日本国憲法 第78条 詳細ページ
第七十八条裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
日本国憲法 第79条 詳細ページ
第七十九条最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
日本国憲法 第80条 詳細ページ
第八十条下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
日本国憲法 第81条 詳細ページ
第八十一条最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
日本国憲法 第82条 詳細ページ
第八十二条裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。