刑法 / テーマ別まとめ

総則/未遂罪

未遂罪の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

未遂罪は、犯罪の実行に着手したがこれを遂げなかった場合の刑の扱いを定めています。未遂を処罰するかどうかは条文ごとの個別規定によって決まり、また自分の意思でやめた場合には扱いが変わります。

未遂罪
区分要件刑の扱い
障害未遂実行に着手したが遂げなかった減軽できる(任意的)
中止犯自己の意思により中止した減軽または免除
未遂の処罰各本条に規定がある場合のみ各本条の定めによる
  • 未遂罪は全犯罪に自動適用されるわけではなく、各本条で処罰すると定めた場合のみ罰せられます。
  • 減軽は必ず行われるものではなく、裁判所の裁量による「できる」規定です。
  • 中止犯は減軽・免除のいずれかであり、両方が常に適用されるわけではありません。
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未遂罪

未遂罪について、条文は何を定めているか。

第43条未遂減免実行に着手して未遂に終わった場合の刑を定める1項判例 26件
  • 着手後に遂げなかった者は刑を減軽することができる
  • 自分の意思で中止したときは減軽または免除となる
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第44条未遂罪未遂を罰するかは各条文ごとに決まる1項判例 1件
  • 未遂を処罰する場合は各本条で個別に定められる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第43条刑法

一 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪における実行の着手
二 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪につき実行の着手があつたとされた事例

裁判要旨一 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪については、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、実行の着手がある。
二 未決の囚人が、逃走の目的をもつて、拘禁場である木造舎房の房壁に設置された換気孔の周辺のモルタル部分を削り取り損壊したが、脱出可能な穴を開けることができず、逃走の目的を遂げなかつた場合(判文参照)には、加重逃走罪の実行の着手があつたといえる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年12月25日 昭和54(あ)965
登載
刑集 第33巻7号1105頁
参照法条
刑法43条,刑法98条
論点2第43条刑法

自動車により婦女を他所へ連行したうえ強姦した場合につき婦女を自動車内に引きずり込もうとした時点において強姦罪の実行の着手があるとされた事例

裁判要旨被告人が、外一名と共謀のうえ、夜間一人で道路を通行中の婦女を強姦しようと企て、共犯者とともに、必死に抵抗する同女を被告人運転のダンプカーの運転席に引きずり込み、発進して同所から約五、八〇〇メートル離れた場所に至り、運転席内でこもごも同女を強姦した本件事実関係(判文参照)のもとにおいては、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした時点において強姦罪の実行の着手があつたものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和45年7月28日 昭和45(あ)619
登載
刑集 第24巻7号585頁
参照法条
刑法43条,刑法177条,刑法179条
論点3第43条刑法

窃盗の着手があつたものと認められた事例。

裁判要旨犯人が被害者方店舗内において所携の懐中電燈により真暗な店内を照らし、電気器具類の積んであることが判つたが、なるべく金を盗りたいので店内煙草売場の方に行きかけた、との事実があれば、窃盗の着手行為があつたものと認めるのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年3月9日 昭和39(あ)2131
登載
刑集 第19巻2号69頁
参照法条
刑法235条,刑法43条
論点4第43条刑法

旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前)第七五条第二項の関税逋脱未遂罪と刑法第四三条但書。

裁判要旨所論は、旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第七五条第二項の関税逋脱未遂につき刑法第四三条但書にいわゆる中止未遂の規定は適用の余地がないとする原判断を論難し、右は法律の解釈適用を誤つたものであると主張する。論旨は単なる法令違反の主張であつて上告適法の理由に当らない。(なお、右に摘示した原判断は正当である。)

(原審判断の理由)旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第七五条によれば、その第一項に、「関税ヲ逋脱シタル者ハ五年以下ノ懲役若ハ五〇万円以下ノ罰金ニ処シ又ハ之ヲ併科ス」と規定され、その第二項に「前項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其ノ予備ヲ為シタル者又ハ同項ノ犯罪ノ実行ニ着手シ之ヲ遂ゲザル者亦同項ニ同ジ」と規定されていて、関税逋脱未遂罪を独立に処罰することと為し、五年以下の懲役もしくは五〇万円以下の罰金またはその併科をもつてこれにのぞむことと定めた結果、右未遂罪については刑法第四三条但書の規定の適用せられる余地がないものといわなければならない(昭和一八年(れ)第三九二号同年一〇月二二日大審院判決、昭和二六年(う)第一一八号、同年一〇月三日福岡高裁判判決参照)ばかりでなく、事実としても、共犯のある場合には、その全員が中止することによつて、結果の発生を防止しなければ、中止犯にはならないと解すべきところ、所論の未遂事件については、このことを認めることができないから、原判決が障碍未遂と認定したことおよび刑法第四三条但書を適用しなかつたことは正当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年10月5日 昭和39(あ)708
登載
集刑 第157号15頁
参照法条
旧関税法(明治32年法律61号)75条1項,旧関税法(明治32年法律61号)75条2項,刑法43条但書
論点5第43条刑法

関税法第一一〇条第二項の合憲性。

裁判要旨関税法第一一〇条第二項の定める刑は、その所定刑期又は罰金額の範囲内で未遂の事情を参酌して、未遂減軽の規定が存する場合と実質的に同一の刑を量定する余地が十分あるのであつて、このような法定刑の定め方を以て一般刑法に比し不合理として憲法第三一条に違反するということはできない。このことは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一〇三三号、同年一二月一五日大法廷判決、集二巻一三号一七八三頁)の趣旨に照らし明らかである。(上告諭旨の要旨=関税法第一一〇条第二項が既遂未遂を同一刑に処するとすることは、憲法第三一条に違反する。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年1月22日 昭和37(あ)1240
登載
集刑 第146号41頁
参照法条
関税法110条1項,関税法110条2項,憲法31条,刑法43条,刑法66条
論点6第43条刑法

覚せい剤製造未遂犯の成立する事例。

裁判要旨原判示のごとく、いやしくも覚せい剤の製造を企て、それに用いた方法が科学的根拠を有し、当該薬品を使用し、当該工程を実施すれば本来覚せい剤の製造が可能であるが、ただその工程中において触媒として使用せる或る種の薬品の量が必要量以下であつたため、成品を得るに至らず、もしこれを二倍量ないし三倍量用うれば覚せい剤の製造が可能であつたと認められる場合には(原判決参照)被告人の所為は覚せい剤製造未遂犯をもつて論ずべく、不能犯と解すべきではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年10月18日 昭和33(あ)2060
登載
刑集 第14巻12号1559頁
参照法条
刑法43条,覚せい剤取締法15条1項,覚せい剤取締法41条1項3号,覚せい剤取締法41条3項,覚せい剤取締法41条の2
論点7第43条刑法

一 覚せい剤取締法違反(不法譲受)罪の実行の着手があつたと認められる事例
二 訴因変更手続を必要としない事例

裁判要旨一 甲、乙間に覚せい剤売買に関する合意が成立し、甲が乙の面前において、情を知らない丙に合札を渡し、荷物預り所に預けてある覚せい剤の受取方を委託し、丙がこれを承諾し、甲または乙に交付するつもりで右覚せい剤を受け取つたときは、乙はその覚せい剤譲受の実行に着手したものと認めることができる。
二 「被告人は法定の除外事由がないのに、昭和二九年一〇月二七日金沢市a町b番地被告人居宅において、覚せい剤二CC入りアンプル六、〇〇〇本を所持していたものである。」旨の訴因に対し、「被告人は法定の除外理由がないのに、右月日AをしてB運輸株式会社C支店より覚せい剤二CC入りアンプル二、八〇〇本を運ばせ、右被告人宅玄関前でこれを受け取り、もつて覚せい剤を所持したものである。」旨の事実を認定するには、訴因変更手続を必要としない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年7月3日 昭和31(あ)4036
登載
集刑 第130号439頁
参照法条
覚せい剤取締法17条3項,覚せい剤取締法41条1項4号,覚せい剤取締法41条3項,刑法43条,刑訴法312条
論点8第43条刑法

詐欺の実行の着手が認められる事例。

裁判要旨屑鉄商である被告人が、製鋼会社の屑鉄納入商の下請商に屑鉄を供給するにあたり、右会社計量場における検収に際し、秤量器に操作して同所検収係員を欺罔して水増秤量させ、その結果を実量と誤信させて検収せしめた以上、右下請商に対する水増秤量分の屑鉄代金騙取の実行の着手があつたものと認められる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和34年5月19日 昭和31(あ)1552
登載
集刑 第129号871頁
参照法条
刑法43条,刑法246条,刑法250条
論点9第43条刑法

あへん法四条違反の罪の既遂

裁判要旨あへん法にいうけし栽培者でないのに、けしの種を畑に播いて、これを発芽生育せしめた以上、その後において、あへんを採取することなく、右けしを引き抜いたとしても、同法第四条違反の罪の既遂をもつて処断すべきである
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月17日 昭和31(あ)1319
登載
刑集 第12巻10号2129頁
参照法条
あへん法4条,あへん法51条1項,刑法43条
論点10第43条刑法

障がい未遂と認むべき一事例

裁判要旨被告人の犯行完成の意力を抑圧した原因が、本件のように、犯罪の完成を妨害するに足る性質の障がいに基くものと認められる場合は、いわゆる中止未遂ではなく、障がい未遂にあたると解するを相当とする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年9月10日 昭和30(あ)1418
登載
刑集 第11巻9号2202頁
参照法条
刑法43条但書,刑法203条
論点11第43条刑法

密輸出未遂罪の成立する事例

裁判要旨政府の免許を受けないで貨物を韓国へ密輸出しようと企て、門司市田の浦海上附近で韓国向けの韓国船に貨物を積み換える目的をもつて、宇品港で本邦船に貨物を積載、同港を出港、宇部港に寄港、同港を出港し、田の浦港に入港した際、門司市警察署員に検挙され、その目的を遂げなかつたときは、旧関税法第七六条第二項の密輸出未遂罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年7月19日 昭和29(あ)2062
登載
刑集 第11巻7号1987頁
参照法条
旧関税法76条2項,刑法43条本文
論点12第43条刑法

窃盗の実行に着手したと認められる事例。

裁判要旨電柱に架設中の電話線を切断しようとした以上、窃盗の実行に着手したものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年10月2日 昭和31(あ)2101
登載
集刑 第115号19頁
参照法条
刑法235条,刑法243条,刑法43条
論点13第43条刑法

刑訴第四一一条にあたらない一事例 ―既遂と未遂の認定の誤り―

裁判要旨所論の如く未遂罪であるとしても、只裁判所は減軽を為し得るだけでその他法定刑に変りはなく、その範囲において刑を量定し執行猶予迄言渡した原判決はこれを破棄しなければ著しく正義に反するものとは到底いえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月5日 昭和27(あ)6238
登載
集刑 第104号21頁
参照法条
刑法43条,刑法44条,刑訴法411条
論点14第43条刑法

一 予備罪と中止未遂の関係
二 第一審判決の不定期刑を第二審が定期刑にする場合と旧刑訴第四〇三条

裁判要旨一 予備罪には中止未遂の観念を容れる余地がない。
二 第一審が旧少年法第八条に従い、懲役二年六月以上四年以下の不定期刑を言い渡した被告人が控訴の申立をした事件において、第二審がその判決時において既に成人となつていた被告人に対し、右不定期刑の中間位である三年三月より重い懲役四年の定期刑を言い渡したときは旧刑訴第四〇三条に違反する。註。田中、井上、谷村各裁判官は中間説に同調
裁判
最高裁判所大法廷 昭和29年1月20日 昭和24(れ)1881
登載
刑集 第8巻1号41頁
参照法条
刑法43条,刑法237条,刑法10条,旧刑訴法403条,旧少年法8条
論点15第43条刑法

一 「モミ」賭博の方法と詐欺罪の成立
二 いわゆる「モミ」賭博による詐欺の実行の着手
三 被害者の金銭の不所持と「モミ」賭博による詐欺未遂罪の成否

裁判要旨一 原審の認定した事実によれば、本件詐欺は俗にモミと称する詐欺賭博によるものであつて、見物人には一の数字を書いた紙玉を落し入れると称して金を賭けさせ、金を賭けたものが一の数字のある紙玉を拾い上げたときは賭金の三倍相当の金をやり、もし他の数字のある紙を拾うたときはその賭金は胴元の所得とするという方法であり、被告人においては一の数字のある紙玉を「数他玉中に落して混ぜるように見せかけ、実際は混入せず巧に自分の手中で他の数字を書いた紙玉と取替え」るというのであるから、賭金した見物人には勝つ機会が全くないに拘らず、その機会があるかのように欺罔して賭金を騙取するのである。論旨は、モミ賭博に手品が介在することは社会常識であるから詐欺にはならないと主張するがかかる場合に客は手品に乗らないつもりで賭けても胴元の手品に引かかるのであるから、やはり錯誤に陥つた結果金銭を交付するのであつて詐欺の要件を具えていることはいうまでもない。
二 原審の認定した本件詐欺の方法は、第一点に説明した通りであつて、原判決の認識した事実は賭金した見物人には勝つ機会が全くないのに拘らずその機会があるように「盛にその方法によつて客に勝負をすすめ、被告人AとB、C等は見物人の中に居て勝負するように見せかけて客を誘う所謂サクラの役をつとめ、被告人Dは見張となつて戒の役をしていると見物人中のEことF(当時二十五年)がうまく欺しの手に乗つて勝負しようと決定し」たというのであるから欺罔着手のあつたことは極めて明白である。
三 旅行中の船客は多少の金銭を所有するのが普通であり又他人から金銭を借りることもできたかも知れないのであるからたまたまFが賭金に足りるだけの金銭を持つていなかつたと仮定しても金銭騙取という結果発生の可能性はあつたのである。されば、詐欺の被害物件がないのに犯罪成立するものとした違法があるとの論旨は理由がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月8日 昭和25(れ)1715
登載
刑集 第5巻6号1004頁
参照法条
刑法246条1項,刑法43条,刑法60条,刑法246条,刑法250条
論点16第43条刑法

一 暴行又は脅迫を以つて婦女の心神を喪失させ若しくは抗拒不能に爲して姦淫した行為の擬律
二 強姦の點が未遂に終つた強姦致死罪の擬律
三 驚愕によつて犯行を中止した場合と中止未遂
四 死因の確実性につき程度の差のある鑑定の結果を綜合して死因を確定することの適否
五 原審において從來の自白を飜した場合における同自白の任意性及び眞實性の有無と裁判所の自由裁量

裁判要旨一 刑法第一七七條は暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、強姦の罪として處罰するを規定し、次に同法第一七八條において、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又はこれをして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫したる者についても、前條の例による旨を規定している。かかる法條の排列から見れば、苟しくも暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、前條に該當するのであつて從つてその暴行又は脅迫によつて、婦女をして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫した者も、また當然これに包含せられるものと解すべきである。
二 強姦致死罪は單一な刑法第一八一條の犯罪を構成するものであつて、強姦の點が未遂であるかどうか及びその未遂が中止未遂であるか障礙未遂であるかということは、單に情状の問題にすぎないのであつて、處斷刑に變更を來たすべき性質のものではにから、本罪に對しては刑法第一八一條を適用すれば足り、未遂減輕に關する同法第四三條本文又は但書を適用すべきものではない。
三 犯罪の実行に着手した後、驚愕によつて犯行を中止した場合においても、その驚愕の原因となつた諸般の状況が、被告人の犯意の遂行を思い止まらしめる障碍の事情として客観性のあるものと認められるときは、障碍未遂であつて中止未遂ではない。
四 致死罪において、甲鑑定人の窒息死と認めるという鑑定の結果と乙鑑定人の窒息死と認めるのが蓋然性が最も多いという鑑定の結果とを、他の証拠と綜合して被害者の死因を窒素死と認定しても、理由齟齬の違法があるとはいえない。
五 被告人が原審において從來の自白を飜し、右は被告人の眞意に出たものではないと辯解した場合に、右自白の任意性並びに眞實性について如何なる範圍において取調を行い、その供述のいづれを措信するかは凡て事實審たる原審の自由な判斷に委ねられているところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年7月9日 昭和23(れ)1252
登載
刑集 第3巻8号1174頁
参照法条
刑法177条,刑法178条,刑法43条,刑法181条,刑法179条,旧刑訴法337条,旧刑訴法410条19号,憲法38条3項,旧刑訴法337条
論点17第43条刑法

一 強姦に際し婦女に傷害の結果を與えた行爲の擬律
二 強姦の共謀者中傷害の結果について認識を缺く者と強姦致傷罪の成立
三 二人以上共謀して暴行傷害を爲した場合と刑法第二〇七條の適用の有無
四 強姦致傷の被害者が告訴を取下げた場合と公訴棄却の裁判の有無
五 共犯者が順次同一人を強姦した所爲は單純一罪でなく連續犯であるとする上告理由の適否
六 不法監禁罪と強姦致傷罪とを併合罪として處罰した判決と牽連犯の成否
七 刑法第一七七條の法意
八 沒収の言渡をしながら法條を適用しない判決の違法
九 数名共謀による強姦致傷罪と共犯者の一人の犯行の中止
一〇 審判の公開を禁止した旨の記載を缺く公判調書と審判公開の有無

裁判要旨一 強姦に際し婦女に傷害の結果を與えれば姦淫が未遂であつても強姦致傷罪の既遂となり、強姦致傷罪の未遂という觀念を容れることはできない。
二 被告人等は同女を強姦しようと共謀して判示犯行をとげたのであり、そして強姦致傷罪は結果的加重犯であつて、暴行脅迫により姦淫をする意志があれば、傷害を與えることについて認識がなくとも同罪は成立するのであるから共謀者全員が強姦致死罪の共同正犯として責を負わなければならない。
三 所論刑法第二〇七條は數人が共謀することなくして暴行をなし人を傷害した場合に關する規定であつて二人以上共謀して暴行をなし人を傷害した場合に適用はない、從つて被告人等が共謀して強姦をなし且つ傷害を與えた本件に同條の適用のないことは明白である。
四 被告人等の行爲が強姦致傷罪を構成する場合にはたとい被害者が告訴を取下げたとしても所論親告罪でない本件において公訴を棄却すべき理由はない。
五 被告人等は原審相被告人等と共謀して同一機會にFを順次に強姦したのであるから、(眞野兼二を除く)被告人等は自分の姦淫行為の外他の被告人等の姦淫行為についても共同正犯として責を負わなければならない。かような場合は一人で數回姦淫した場合と同様、連續犯となるという考え方もあると思はれるが數人が同一の機會に同一人を姦淫したのであつても全體を單一犯罪と見られないことはない。所論のように本件は連續犯と見るべきものであるとしても結局一罪として處罰されることになるのであるから、原判決が單一罪として處罰したのと同一結果となるわけであつて原判決に影響を及ぼさないから、破毀の理由とならない。
六 不法監禁罪と強姦致傷罪とは、たまたま手段結果の關刑にあるが、通常の場合においては、不法監禁罪は通常強姦罪の手段であるとはいえないから、被告人等の犯した不法監禁罪と強姦致傷罪は、牽連犯ではない。從つて右二罪を併合罪として處斷した原判決は、法令の適用を誤つたものではない。
七 論旨は刑法第一七七條の法意は一三歳以上の婦女を強姦した場合は、強姦の爲め處女膜裂傷の結果を生じても之れを放任行為となし、強姦罪が成立するだけであつて強姦致傷罪は成立しないという趣旨であると主張する。しかし強姦に際して婦女の身體の如何なる部分に傷害を與えても強姦致傷罪は成立するのである。
八 原判決は七首二振を沒収する旨言渡しながら、法律適用の部では沒収に關する法條を適用していないから、理由不備の違法があり、破毀をまぬがれない。
九 甲が他の数名の者と同一帰女を強姦しようと共謀し、右数名の者が同女を強いて姦淫し、因つて同女に傷害の結果を与えたときは、甲が自己の意思により姦淫することを中止したとしても、甲は他の共犯者と同様強姦致傷罪の共同正犯の責を負い、中止未遂とはならない。
一〇 公判調書に公開を禁止した旨の記載がないから原審公判は公開されたものと認めなければならない。(昭和二三年(れ)第一〇七號、同年六月三日大法廷判決參照)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和24年7月12日 昭和24(れ)933
登載
刑集 第3巻8号1237頁
参照法条
刑法181條,刑法177條,刑法60條,刑法207條,刑法220條,刑法54條,刑法19條,刑法43条,舊刑訴法364條5號,舊刑訴法409條,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法60條2項,舊刑訴法64條,舊刑訴法10條7號,刑55條
論点18第43条刑法

犯行現場での逮捕と強盜既遂罪の成立

裁判要旨被告人等第在宅の家人五人全部を縛り上げ目隠をした後一時間に亘り家内の金品を取出し現金をポケツトに入れ衣類等或は行李、リツクサツクにつめ込み、或は風呂敷に包み、或は着込み又は懐中したときは金品を自己の実力支配内においたことは明らかであるから被告人等が右金品を戸外に持出す前現場で逮捕されたことは強盜既遂罪の成立に影響がない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年12月3日 昭和24(れ)971
登載
刑集 第3巻12号1865頁
参照法条
刑法236条,刑法43条
論点19第43条刑法

詐欺罪につき実行の着手があるとされた事例

裁判要旨現金を被害者宅に移動させた上で,警察官を装った被告人に現金を交付させる計画の一環として述べられた嘘について,その嘘の内容が,現金を交付するか否かを被害者が判断する前提となるよう予定された事項に係る重要なものであり,被害者に現金の交付を求める行為に直接つながる嘘が含まれ,被害者にその嘘を真実と誤信させることが,被害者において被告人の求めに応じて即座に現金を交付してしまう危険性を著しく高めるといえるなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,当該嘘を一連のものとして被害者に述べた段階で,被害者に現金の交付を求める文言を述べていないとしても,詐欺罪の実行の着手があったと認められる。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成30年3月22日 平成29(あ)322
登載
刑集 第72巻1号82頁
参照法条
刑法43条,刑法246条,刑法250条
論点20第43条刑法

関税法111条3項,1項1号の無許可輸出罪につき実行の着手があるとされた事例

裁判要旨航空機に機内預託手荷物として積載するスーツケースに隠匿する方法でうなぎの稚魚を無許可で輸出しようとした行為について,入口にエックス線検査装置が設けられ,周囲から区画された国際線チェックインカウンターエリア内にある保安検査済みシールを貼付された手荷物は,そのまま機内預託手荷物として航空機に積載される扱いになっていたなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,被告人らが,同スーツケースを機内持込手荷物と偽って入口での保安検査を回避して同エリア内に持ち込み,不正に入手していた保安検査済みシールを貼付した時点では,既に関税法111条3項,1項1号の無許可輸出罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成26年11月7日 平成25(あ)1333
登載
刑集 第68巻9号963頁
参照法条
刑法43条,関税法111条3項,関税法111条1項1号
論点21第43条刑法

関税法111条3項,1項1号の無許可輸出罪につき実行の着手があるとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成26年11月7日 平成25(あ)1334
登載
集刑 第315号137頁
参照法条
刑法43条,関税法111条3項,関税法111条1項1号
論点22第43条刑法

船舶から海上に投下し回収する方法により覚せい剤を輸入しようとした行為につき,覚せい剤取締法41条の輸入罪及び関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条1項,3項の禁制品輸入罪の実行の着手があったとはいえないとされた事例

裁判要旨外国で覚せい剤を密輸船に積み込んだ上,海上に投下し,回収担当者において小型船舶で回収して本邦に陸揚げするという方法による覚せい剤輸入を計画し,本邦内海の湾内に至って覚せい剤を投下したが,悪天候等のため,回収できなかったなど判示の事実関係の下では,覚せい剤が陸揚げされる客観的危険性が発生しておらず,覚せい剤取締法41条の輸入罪及び関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条1項,3項の禁制品輸入罪の実行の着手があったとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年3月4日 平成19(あ)1659
登載
刑集 第62巻3号123頁
参照法条
覚せい剤取締法13条,覚せい剤取締法41条,関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条1項,関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条3項,刑法43条
論点23第43条刑法

いわゆる瀬取り方式による覚せい剤の輸入行為につき覚せい剤取締法41条の輸入罪及び関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条1項,3項の禁制品輸入罪の実行の着手があったとはいえないとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年3月4日 平成19(あ)2081
登載
集刑 第293号685頁
参照法条
覚せい剤取締法13条,覚せい剤取締法41条,関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条1項,関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条3項,刑法43条
論点24第43条刑法

いわゆる瀬取り方式による覚せい剤の輸入行為につき覚せい剤取締法41条の輸入罪及び関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条1項,3項の禁制品輸入罪の実行の着手があったとはいえないとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年3月4日 平成19(あ)1985
登載
集刑 第293号683頁
参照法条
覚せい剤取締法13条,覚せい剤取締法41条,関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条1項,関税法(平成17年法律第22号による改正前のもの)109条3項,刑法43条
論点25第43条刑法

1 被害者を失神させた上自動車ごと海中に転落させてでき死させようとした場合につき被害者を失神させる行為を開始した時点で殺人罪の実行の着手があるとされた事例
2 いわゆる早過ぎた結果の発生と殺人既遂の成否

裁判要旨1 クロロホルムを吸引させて失神させた被害者を自動車ごと海中に転落させてでき死させようとした場合において,クロロホルムを吸引させて失神させる行為が自動車ごと海中に転落させる行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠であり,失神させることに成功すれば,それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったなど判示の事実関係の下では,クロロホルムを吸引させる行為を開始した時点で殺人罪の実行の着手があったと認められる。
2 クロロホルムを吸引させて被害者を失神させた上自動車ごと海中に転落させるという一連の殺人行為に着手して,その目的を遂げた場合には,犯人の認識と異なり,海中に転落させる前の時点でクロロホルムを吸引させる行為により被害者が死亡していたとしても,殺人の故意に欠けるところはなく,殺人の既遂となる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年3月22日 平成15(あ)1625
登載
刑集 第58巻3号187頁
参照法条
刑法38条1項,刑法43条,刑法199条,刑法203条
論点26第43条刑法

いわゆるキャッシュカードすり替え型の窃盗罪につき実行の着手があるとされた事例

裁判要旨被害者に電話をかけキャッシュカードを封筒に入れて保管することが必要でありこれから訪れる者が作業を行う旨信じさせ,被害者宅を訪れる被告人が封筒に割り印をするための印鑑を被害者に取りに行かせた隙にキャッシュカード入りの封筒と偽封筒とをすり替えてキャッシュカードを窃取するという犯行計画に基づいて,すり替えの隙を生じさせる前提となり,被告人が被害者宅を訪問し虚偽の指示等を行うことに直接つながるとともに,被害者に被告人の指示等に疑問を抱かせることなくすり替えの隙を生じさせる状況を作り出すようなうそが述べられ,被告人が被害者宅付近路上まで赴いたなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,被告人が被害者に対してキャッシュカード入りの封筒から注意をそらすための行為をしていないとしても,当該うそが述べられ被告人が被害者宅付近路上まで赴いた時点では,窃盗罪の実行の着手が既にあったと認められる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和4年2月14日 令和2(あ)1087
登載
刑集 第76巻2号101頁
参照法条
刑法43条,刑法243条,刑法235条
原

条文原文

原文ママ

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刑法 第43条(未遂減免) 詳細ページ
(未遂減免)
第四十三条犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
刑法 第44条(未遂罪) 詳細ページ
(未遂罪)
第四十四条未遂を罰する場合は、各本条で定める。
出

一次情報

原文ママ

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