甲が乙に対し売買代金債権を有し、乙が右支払のため甲の代理人丙に乙振出甲宛の約束手形二通を交付したところ、丙は、そのうち一通を甲に交付し、他の一通の手形(以下、本件手形という。)については、乙に申し入れて、受取人を甲とする記載部分の抹消を受け、勝手に丙名義に補充してこれを満期に呈示したのであるが、右呈示前、乙は、甲から書面により「本件手形は、丙が引渡しを拒んで所持しているが、甲が受取人とされているから、甲の裏書を偽造しないかぎり丙は手形上の権利を行使できない筈である。したがつて丙らから取立があつても支払わないよう」との申入れを受け、かつ、前記のように、本件手形の受取人欄を白地として丙に交付していたのであるから、乙が、何ら調査をすることなく、慢然、委託銀行をして本件手形金を呈示者丙に支払わしめたことについては、少なくとも、手形法
四〇条三項〈為替手形ノ所持人ハ満期前ニハ其ノ支払ヲ受クルコトヲ要セズ〉にいう重大な過失がある。