手形法 / テーマ別まとめ

為替手形/時効

時効の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

為替手形上の請求権には短い時効期間が定められており、請求先(引受人・裏書人・振出人)や状況によって起算日と期間が異なります。時効の完成猶予・更新はその事由が生じた相手方に対してのみ効力を生じるため、誰に対して何をしたかを区別して管理する必要があります。

時効
請求権の種類起算日時効期間
引受人に対する請求権満期の日三年
所持人の裏書人・振出人への請求権(通常)拒絶証書の日付一年
所持人の裏書人・振出人への請求権(無費用償還文句あり)満期の日一年
裏書人の他の裏書人・振出人への請求権手形の受戻をした日又は訴えを受けた日六月
  • 「拒絶証書の日付」は適法な時期に作らせたものに限られます。
  • 無費用償還文句がある場合は拒絶証書の作成を要せず満期日が起算日になります。
  • 裏書人からの請求権は、自らが手形を受け戻した日、または訴えを受けた日のいずれかが起算日です。
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時効

時効について、条文は何を定めているか。

第70条請求先ごとに時効の期間と起算日が違う3項判例 7件
  • 引受人への請求権は満期の日から三年で時効になる
  • 所持人から裏書人・振出人への請求権は拒絶証書の日付から一年
  • 無費用償還文句がある場合は満期の日から一年で計算する
  • 裏書人から他の裏書人・振出人への請求権は受戻日か訴え提起日から六月
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第71条時効の完成猶予・更新は相手ごとに個別に効く1項判例 5件
  • ある債務者に生じた完成猶予・更新の効力は他の債務者には及ばない
  • 誰に対して時効が進んでいるかを当事者ごとに管理する必要がある
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第70条手形法

約束手形の裏書人が振出人の手形金支払義務の時効による消滅に伴い自己の所持人に対する償還義務も消滅したとしてその履行を免れようとすることが信義則に反し許されないとされた事例

裁判要旨約束手形の裏書人が、その所持人に対して、自己の償還義務について消滅時効の利益の放棄ないし債務の承認をしたうえ、専ら自己に対する信頼に基づいて右手形を取得した所持人本人及びその代理人である弁護士に対して、再三にわたり、しかも振出人の債務とは必ずしも関係なく自己固有の債務として手形金の支払義務があることを認めるような態度を示し、同人らに確実にその履行がされるものとの期待を抱かせながら、のちに右態度をひるがえし、その信頼を裏切つて償還義務を履行しようとせず、やむなく右所持人より提起された手形金請求訴訟においても当該手形の裏書自体を否認したりその他種々の主張を提出して引延しとみられる抗争をすることによりその審理に長期間を費やさせ、その間に所持人が専ら裏書人を信頼してその義務履行が確実にされるものと期待する余り振出人に対する手形金請求権についての消滅時効中断の措置を怠つたがために振出人の手形金支払義務が消滅したのに乗じ、これに伴い自己の償還義務も当然消滅するに至つたとしてその履行を免れようとする所為に出ることは、信義則に反し許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年7月15日 昭和53(オ)728
登載
民集 第36巻6号1113頁
参照法条
手形法50条1項,手形法70条1項,手形法77条1項4号,手形法77条1項8号,民法1条2項
論点2第70条手形法

約束手形の所持人と裏書人との間において支払猶予の特約がされた場合と所持人の裏書人に対する手形上の請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨約束手形の所持人と裏書人との間において裏書人の手形上の債務につき支払猶予の特約がされた場合には、所持人の裏書人に対する手形上の請求権の消滅時効は、右猶予期間が満了した時から進行する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月30日 昭和54(オ)1104
登載
民集 第34巻3号521頁
参照法条
手形法70条2項,手形法77条1項8号,民法166条1項
論点3第70条手形法

手形の満期が変造された場合と所持人の振出人に対する手形債権の消滅時効の起算点

裁判要旨約束手形の満期が振出後に変造された場合には、右手形の所持人の振出人に対する手形債権の消滅時効は、変造前の満期から進行する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年11月27日 昭和55(オ)801
登載
集民 第131号173頁
参照法条
手形法69条,手形法70条1項,手形法77条1項7号,手形法77条1項8号
論点4第70条手形法

一、振出日白地の手形による訴提起と時効中断
二、満期が記載されている白地手形の白地補充権の消滅時効

裁判要旨一、振出日白地の約束手形の所持人が、その満期から三年以内に、振出人に対して、右白地部分を補充しないまま手形金請求の訴を提起し、その後右訴の事実審口頭弁論終結時までに右白地部分を補充したときは、たとえその補充の時が満期から三年を経過したのちであつたとしても、右手形上の権利の時効は、右訴の提起の時に中断されたものと解すべきである。
二、満期が記載されている白地手形の白地補充権は、手形上の権利と別個独立に時効によつて消滅するものではなく、手形上の権利が消滅しないかぎりこれを行使しうるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和45年11月11日 昭和43(オ)753
登載
民集 第24巻12号1876頁
参照法条
手形法10条,手形法70条1項,手形法71条,手形法77条1項,民法149条
論点5第70条手形法

満期白地の手形の補充権の消滅時効期間

裁判要旨満期白地の手形の補充権は、五年の時効によつて消滅する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年2月20日 昭和43(オ)709
登載
民集 第23巻2号427頁
参照法条
商法522条,手形法10条,手形法77条1項8号,手形法70条1項
論点6第70条手形法

時効による債務の消滅と不当利得の成否

裁判要旨約束手形の振出人が、手形上の債務を時効によつて免かれた場合には、手形上の権利者に対し不当利得償還義務を負わない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年10月12日 昭和38(オ)222
登載
集民 第80号705頁
参照法条
民法703条,手形法77条1項8号,手形法70条
論点7第70条手形法

白地手形の満期が補充された場合とその他の手形要件の白地補充権の消滅時効

裁判要旨満期及びその他の手形要件を白地として振り出された手形の満期が補充された場合は、右手形のその他の手形要件の白地補充権は、手形上の権利と別個独立に時効によって消滅することなく、手形上の権利が消滅しない限りこれを行使することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成5年7月20日 平成3(オ)1715
登載
民集 第47巻7号4652頁
参照法条
手形法10条,手形法70条1項,手形法77条1項
論点8第71条手形法

裏書の連続を欠く手形による手形金請求の訴えの提起と消滅時効の中断

裁判要旨裏書の連続を欠く手形による手形金請求の訴えを提起した場合でも、手形所持人がその実質的権利を証明するときは、右手形債権の消滅時効は中断する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年4月1日 昭和56(オ)783
登載
集民 第135号633頁
参照法条
手形法16条,手形法71条,手形法77条1項8号,民法147条
論点9第71条手形法

主たる債務が手形債務である連帯保証人に対する裁判上の請求と手形債務の消滅時効の中断

裁判要旨手形債務を主たる債務として手形外の連帯保証契約が締結されている場合において、連帯保証人に対し裁判上の請求がされたときは、手形債務についても消滅時効が中断する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年9月7日 昭和46(オ)774
登載
集民 第110号13頁
参照法条
民法147条1号,民法149条,民法434条,民法458条,手形法71条
論点10第71条手形法

主たる債務者の手形債務の時効消滅と手形保証債務の消滅

裁判要旨主たる債務者の手形債務について消滅時効が完成したときは、手形保証債務も消滅する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年6月18日 昭和45(オ)18
登載
民集 第24巻6号544頁
参照法条
手形法32条,手形法71条,手形法77条1項8号,手形法77条3項
論点11第71条手形法

白地手形による訴提起と時効の中断

裁判要旨白地手形のまま手形金請求の訴を提起した場合でも、右訴提起の時に時効の中断があつたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和41年11月2日 昭和38(オ)1301
登載
民集 第20巻9号1674頁
参照法条
手形法10条,手形法71条,民法149条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

手形法 第70条 詳細ページ
第七十条引受人ニ対スル為替手形上ノ請求権ハ満期ノ日ヨリ三年ヲ以テ時効ニ罹ル
2所持人ノ裏書人及振出人ニ対スル請求権ハ適法ノ時期ニ作ラシメタル拒絶証書ノ日附ヨリ、無費用償還文句アル場合ニ於テハ満期ノ日ヨリ一年ヲ以テ時効ニ罹ル
3裏書人ノ他ノ裏書人及振出人ニ対スル請求権ハ其ノ裏書人ガ手形ノ受戻ヲ為シタル日又ハ其ノ者ガ訴ヲ受ケタル日ヨリ六月ヲ以テ時効ニ罹ル
手形法 第71条 詳細ページ
第七十一条時効ノ完成猶予又ハ更新ハ其ノ事由ガ生ジタル者ニ対シテノミ其ノ効力ヲ生ズ
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。