論点1第38条手形法
一 不渡異議申立手続の委託に伴う預託金の返還請求権が手形債権者に転付きれた場合と支払銀行が手形債務者に対して有する反対債権をもつてする相殺の許否
二 第三債務者が民訴法六〇九条に基づき被差押債権の存在を認め支払意思を表明したことと相殺権の放棄
裁判要旨一 支払銀行に対し、手形の不渡異議申立手続を委託した手形債務者から異議申立提供金に見合う資金として支払銀行に交付された預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合に、支払銀行が右債権の差押前から手形債務者に対して有する反対債権をもつて被転付債権と相殺することが、預託金返還請求権の性質上制限されるものと解すべき理由はない。
二 民訴法六〇九条に基づき、第三債務者が、差押裁判所に対してした陳述において、被差押債権の「存在を認めて支払の意思を表明し将来において相殺する意思がある旨を表明しなかつた場合でも、その後、これを受働債権として相殺に供すること又は時効により消滅したと主張することを妨げるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月12日 昭和54(オ)1134
- 登載
- 集民 第129号637頁
- 参照法条
- 手形法38条,民法511条,民法646条1項,民訴法609条,民訴法748条
論点2第38条手形法
手形の満期が日曜日でその翌日が国民の祝日にあたる場合と手形の支払呈示期間
裁判要旨手形の満期である昭和五二年一〇月九日が日曜日であり、翌一〇月一〇日が体育の日であつて、いずれも法定の休日にあたるときは、右手形の支払呈示期間は同年一〇月一三日までである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年12月20日 昭和54(オ)985
- 登載
- 集民 第128号269頁
- 参照法条
- 手形法38条1項,手形法72条1項,手形法77条1項,手形法87条
論点3第38条手形法
一、約束手形の振出署名者の得た除権判決の効力
二、約束手形の振出署名者の申立にかかる除権判決により手形が無効になつた場合と除権判決前に手形上の権利を取得していた者の権利行使の方法
裁判要旨一、約束手形に振出人として署名したが、これを流通におく前に盗取されまたは紛失した者の得た除権判決は、右振出署名者において、除権判決後その手形を取得した者に対し支払を拒絶しうる効力を有するにとどまり、除権判決前に手形を悪意または重大な過失なく取得し、振出署名者に対して振出人としての責任を追求しえた者の有する実質的権利までも消滅させる効力を有するものではない。
二、約束手形の振出署名者の申立にかかる除権判決により手形が無効となつた場合において、無効となつた手形を所持する実質的権利者は、除権判決前すでに手形上の権利を取得し、除権判決当時手形の適法な所持人であつたことを主張・立証することにより、その権利を行使することができるものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年4月6日 昭和44(オ)118
- 登載
- 民集 第26巻3号455頁
- 参照法条
- 民訴法777条,民訴法778条,民訴法784条,民訴法785条,手形法17条,手形法38条,手形法39条,手形法77条,手形法78条1項
論点4第38条手形法
不渡異議申立手続の委託に伴う預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合と支払銀行が手形債務者に対して有する反対債権をもつてする相殺の許否
裁判要旨手形の不渡異議申立手続を委託した手形債務者から異議申立提供金に見合う資金として支払銀行に交付された預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合に、支払銀行が右債権の差押前から手形債務者に対して有する反対債権をもつて被転付債権と相殺することが、預託金返還請求権の性質上制限されるものと解すべき理由はない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年6月18日 昭和43(オ)778
- 登載
- 民集 第24巻6号527頁
- 参照法条
- 手形法38条,民法646条1項,民法52条
論点5第38条手形法
いわゆる不渡異議申立提供金の預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合と支払銀行が手形債務者に対して有する反対債権をもつてする相殺の許否
裁判要旨いわゆる不渡異議申立提供金の預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合に、支払銀行が右債権の差押前から手形債務者に対して有する反対債権をもつて被転付債権と相殺することは許される。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年10月23日 昭和45(オ)125
- 登載
- 集民 第101号155頁
- 参照法条
- 民法646条1項,民法511条,手形法38条
論点6第38条手形法
受取人欄白地の手形による支払のための呈示の効力
裁判要旨白地手形による支払のための呈示は無効であつてその呈示期間経過後の補充により右呈示が遡つて有効になるものでないことは当裁判所の判例であり(昭三三年三月七日第二小法廷判決、民集一二巻三号五一一頁)、右につき、受取人欄白地の手形を別異に解することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年10月8日 昭和43(オ)679
- 登載
- 集民 第92号501頁
- 参照法条
- 手形法38条,手形法53条,手形法10条,手形法77条
論点7第38条手形法
一 手形の書替と手形上の権利行使の方法
二 手形の書替と手形法第三九条
裁判要旨一 約束手形が書替えられた場合において、旧手形に基づく債務が消滅しないときは、手形の所持人は、新旧いずれの手形によつても手形上の権利を行使することができる。
二 約束手形の書替をした者が、新旧いずれか一方の手形による手形金請求を受けた場合には、右手形振出人は、新旧両手形をともに返還すべきことを請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和42年3月28日 昭和39(オ)860
- 登載
- 集民 第86号735頁
- 参照法条
- 手形法38条,手形法39条
論点8第38条手形法
為替手形の支払呈示期間経過後に支払場所にした呈示の効力
裁判要旨為替手形の支払呈示期間経過後における支払のための呈示は、支払地内にある手形の主たる債務者の営業所または住所においてすることを要し、支払場所に呈示しても、手形債務者を遅滞に付する効力を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和42年11月8日 昭和38(オ)1240
- 登載
- 民集 第21巻9号2300頁
- 参照法条
- 手形法1条,手形法4条,手形法38条,商法516条2項,商法517条
論点9第38条手形法
受取人白地の約束手形による手形金請求の許否。
裁判要旨受取人白地のままの約束手形によつては、手形金の請求をすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年6月16日 昭和41(オ)329
- 登載
- 民集 第20巻5号1046頁
- 参照法条
- 手形法10条,手形法38条
論点10第38条手形法
手形を所持しないでされた手形金請求が認容された事例
裁判要旨振出人甲、受取人兼裏書人乙、被裏書人丙という約束手形について甲、乙および丙間において書替の合意がされ、甲において乙を受取人とする新手形を振り出し、従前の手形は丙から甲に返還されたが、右新手形が乙の手許で破棄されたため、丙において手形上の権利を取得できなかつた場合には、従前の手形がすでに甲によつて破棄されて滅失していたときであつても、丙は甲に対し従前の手形に基づく手形金の請求をすることができ、甲は除権判決のないことを理由に右手形金請求を拒むことはできないと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年4月22日 昭和39(オ)100
- 登載
- 民集 第20巻4号734頁
- 参照法条
- 手形法38条,手形法39条
論点11第38条手形法
振出日白地の確定日払手形による呈示の効力
裁判要旨確定日払の手形の所持人は、振出日白地のまま満期に支払のため呈示したとしても、裏書人に対する手形上の権利を行使することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年10月13日 昭和39(オ)960
- 登載
- 民集 第20巻8号1632頁
- 参照法条
- 手形法1条,手形法38条,手形法43条
論点12第38条手形法
約束手形の善意取得者は振出人に対する手形金請求権を失わないために支払呈示期間内に手形の呈示を必要とするか。
裁判要旨約束手形の善意取得者は支払呈示期間内に手形の呈示をしなければ振出人に対する手形請求権を失うと解しなければならない理はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年1月19日 昭和38(オ)242
- 登載
- 集民 第77号49頁
- 参照法条
- 手形法38条1項,手形法78条1項
論点13第38条手形法
手形金債務の承認による消滅時効の中断。
裁判要旨手形金債務の消滅時効が承認により中断せられるためには、該手形の呈示を伴う手形金の請求がなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月24日 昭和37(オ)683
- 登載
- 集民 第75号93頁
- 参照法条
- 手形法38条,民法147条3号
論点14第38条手形法
一 手形の振出と民法第一一〇条にいう第三者。
二 約束手形の所持人が該手形を満期に支払場所で所持していれば呈示があったとみられるか。
裁判要旨一 手形の振出について民法第一一〇条を適用する場合において、受取人が振出代理人の機関として振出人の氏名を記載したとしても、当該手形の受取人を同条にいう「第三者」と解するにさまたげない。
二 約束手形の所持人が該手形の満期にこれを支払場所で所持していた場合には、振出人が出頭しないときでも、適法な提示があったものとみるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年6月25日 昭和37(オ)412
- 登載
- 集民 第74号195頁
- 参照法条
- 民法110条,手形法38条
論点15第38条手形法
手形の呈示を伴わない催告による時効中断の効力の有無。
裁判要旨手形の呈示を伴わない催告にも、手形債権の時効を中断する効力がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年1月24日 昭和37(オ)1429
- 登載
- 集民 第71号309頁
- 参照法条
- 民法147条,民法153条,手形法38条1項
論点16第38条手形法
手形を所持しない手形権利者の裁判上の請求と時効中断の有無。
裁判要旨手形権利者が手形を所持しないでなした裁判上の請求によつても、時効中断の効力がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年11月24日 昭和37(オ)522
- 登載
- 民集 第18巻9号1952頁
- 参照法条
- 民法147条1号,手形法38条1項,手形法39条1項
論点17第38条手形法
手形の呈示を伴わない催告による時効中断の効力の有無。
裁判要旨手形の呈示を伴わない催告にも、手形債権の時効を中断する効力がある。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和38年1月30日 昭和35(オ)533
- 登載
- 民集 第17巻1号99頁
- 参照法条
- 民法147条1号,民法153条,手形法38条1項,手形法9条1項
論点18第38条手形法
手形の呈示を伴わない催告による時効中断の効力の有無。
裁判要旨手形の呈示を伴わない催告には、手形債権の時効を中断する効力がない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和36年7月20日 昭和34(オ)471
- 登載
- 民集 第15巻7号1892頁
- 参照法条
- 民法147条1号,民法153条,手形法38条1項,手形法39条1項
論点19第38条手形法
手形呈示義務免除の効力。
裁判要旨支払のためにする手形の呈示義務の免除は、口頭でなされたものであつても、なお、免除者とその相手方との間においては、その効力を有すると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年5月29日 昭和32(オ)977
- 登載
- 民集 第13巻5号621頁
- 参照法条
- 手形法38条
論点20第38条手形法
白地手形による支払のための呈示の効力
裁判要旨白地手形による支払のための呈示は無効であり、その呈示期間経過後の補充により右呈示が遡つて有効になるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年3月7日 昭和31(オ)529
- 登載
- 民集 第12巻3号511頁
- 参照法条
- 手形法38条,手形法53条,手形法10条
論点21第38条手形法
一 手形の「依頼返還」の効力
二 弁済期到来前の受働債権の譲渡または転付と債務者の相殺
三 受働債権の譲渡と債務者の相殺の意思表示の相手方
裁判要旨一 手形交換所における手形の呈示後、手形振出人の依頼に基きこれをして取引停止処分を免れさせるため、手形持出銀行がその受入銀行から手形のいわゆる「依頼返還」を受けたとしても、そのために一たんなされた手形の呈示および支払拒絶の効力は失われない。
二 弁済期到来前に受働債権の譲渡または転付があつた場合でも、債務者が右の譲渡通知または転付命令送達の当時すでに弁済期の到来している反対債権を有する以上、右譲受または転付債権者に対し相殺をもつて対抗することができる。
三 債務者が受働債権の譲受人に対し相殺をもつて対抗する場合には、その相殺の意思表示はこれを右譲受人に対してなすべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年7月19日 昭和29(オ)723
- 登載
- 民集 第11巻7号1297頁
- 参照法条
- 手形法38条,民法468条2項,民法506条1項
論点22第39条手形法
金融機関が手形貸付債権又は手形買戻請求権をもつて転付された預金債権を相殺した場合と手形の返還先
裁判要旨金融機関が預金者から第三者に転付された預金債権を右預金者に対する手形貸付債権又は手形買戻請求権をもつて相殺した結果預金債権が転付前に遡つて消滅した場合には、金融機関は、手形貸付けについて振り出された手形又は買戻の対象となつた手形を右預金者に返還すべきであり、預金債権の転付を受けた第三者に返還すべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年9月25日 昭和46(オ)1110
- 登載
- 民集 第29巻8号1287頁
- 参照法条
- 民法468条,民法511条,民訴法601条,手形法39条,手形法50条,手形法77条
論点23第39条手形法
手形振出人の一人が支払により手形を受け戻した上更に第三者に交付した場合における他の振出人の責任。
裁判要旨甲乙共同振出にかかる受取人白地の約束手形を、甲が満期後手形金を支払つて受け戻し、更にこれを丙に交付した場合には、乙は丙に対し手形金の支払をなす義務はない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年9月11日 昭和31(オ)1047
- 登載
- 民集 第12巻13号1998頁
- 参照法条
- 手形法20条,手形法39条
論点24第40条手形法
手形法四〇条三項〈為替手形ノ所持人ハ満期前ニハ其ノ支払ヲ受クルコトヲ要セズ〉にいう重大な過失があるとされた事例
裁判要旨甲が乙に対し売買代金債権を有し、乙が右支払のため甲の代理人丙に乙振出甲宛の約束手形二通を交付したところ、丙は、そのうち一通を甲に交付し、他の一通の手形(以下、本件手形という。)については、乙に申し入れて、受取人を甲とする記載部分の抹消を受け、勝手に丙名義に補充してこれを満期に呈示したのであるが、右呈示前、乙は、甲から書面により「本件手形は、丙が引渡しを拒んで所持しているが、甲が受取人とされているから、甲の裏書を偽造しないかぎり丙は手形上の権利を行使できない筈である。したがつて丙らから取立があつても支払わないよう」との申入れを受け、かつ、前記のように、本件手形の受取人欄を白地として丙に交付していたのであるから、乙が、何ら調査をすることなく、慢然、委託銀行をして本件手形金を呈示者丙に支払わしめたことについては、少なくとも、手形法
四〇条三項〈為替手形ノ所持人ハ満期前ニハ其ノ支払ヲ受クルコトヲ要セズ〉にいう重大な過失がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年9月12日 昭和43(オ)827
- 登載
- 集民 第96号553頁
- 参照法条
- 手形法77条1項3号,手形法40条3項
論点25第40条手形法
一 隠れたる取立委任裏書と手形上の権利移転の有無
二 裏書の連続を欠く手形上の権利行使の許否
裁判要旨一 隠れたる取立委任裏書により、手形上の権利は、裏書人から被裏書人へ移転するものと解すべきである。
二 手形所持人は、たとえ手形が裏書の連続を欠くため形式的資格を有しなくても、実質的権利を証明するときは、手形上の権利を行使することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年2月7日 昭和29(オ)86
- 登載
- 民集 第10巻2号27頁
- 参照法条
- 手形法14条,手形法18条,手形法40条3項,手形法77条1項1号,手形法16条1項,手形法77条1項1号3号