破産法 / テーマ別まとめ

破産手続の機関/保全管理人

保全管理人の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

破産手続開始の申立てがあった段階で、債務者の財産管理が失当な場合などに、裁判所が保全管理人を選任して開始決定までの間その財産を管理させる制度を定めています。保全管理人の権限、必要な許可、任務終了時の報告、代理の選任についてもあわせて規定しています。

保全管理人
項目内容
選任者裁判所(申立てまたは職権)
選任される時期破産手続開始の申立てから決定まで
人数1人または数人
権限債務者財産の管理処分権(専属)
常務に属しない行為裁判所の許可が必要
任務終了時遅滞なく書面で計算報告
代理の選任自己の責任、裁判所の許可が必要
  • 常務に属しない行為の許可を得ずにした行為は無効だが、善意の第三者には対抗できない
  • 破産手続開始の申立てを棄却する決定への即時抗告があった場合にも、選任等の規定が準用される
  • 保全管理命令の変更・取消しの裁判に対する即時抗告は執行停止の効力を持たない
  • 保全管理人が欠けたときの計算報告は後任の保全管理人または破産管財人が行う
  • 保全管理命令の公告については、第10条第4項の規定は適用されない
  • 保全管理命令の発効・失効に応じ、訴訟手続や行政庁係属事件についても規定が準用される
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保全管理人

保全管理人について、条文は何を定めているか。

第91条保全管理命令破産手続開始前に保全管理人を選任できる6項判例なし
  • 財産管理が失当な時等、開始決定までの間、保全管理人による管理を命じられる
  • 命令では保全管理人を1人または数人選任しなければならない
  • 命令の変更・取消しの裁判に即時抗告ができる(執行停止の効力なし)
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第92条保全管理命令に関する公告及び送達保全管理命令は公告し、裁判書は送達する3項判例 2件
  • 保全管理命令を発した時はその旨を公告する
  • 変更・取消しの決定があった場合も同様に公告する
  • 命令等についての裁判があった時は裁判書を当事者に送達する
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第93条保全管理人の権限財産の管理処分権は保全管理人に専属する3項判例 1件
  • 国内外を問わず債務者財産の管理処分権は保全管理人に専属する
  • 常務に属しない行為をするには裁判所の許可が必要
  • 許可を得ずにした行為は無効(善意の第三者には対抗できない)
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第94条保全管理人の任務終了の場合の報告義務任務終了後は遅滞なく裁判所へ報告する2項判例なし
  • 任務が終了した時は遅滞なく書面で計算報告をする
  • 保全管理人が欠けた時は後任の保全管理人や破産管財人が報告する
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第95条保全管理人代理保全管理人代理は自己の責任で選任できる2項判例 4件
  • 必要がある時、自己の責任で1人または数人の代理を選任できる
  • 代理の選任には裁判所の許可が必要
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第96条準用破産管財人等の規定を保全管理人に準用する2項・2号判例 2件
  • 破産管財人に関する規定の多くを保全管理人にも準用する
  • 保全管理人代理についても一部の規定を準用する
  • 保全管理命令の発効・失効に応じ、訴訟手続や行政庁係属事件にも規定を準用する
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第92条破産法

債務者が破産宣告を受けた場合と先取特権者の物上代位権

裁判要旨先取特権者は、債務者が破産宣告を受けた場合であつても、目的債権を差し押えて物上代位権を行使することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年2月2日 昭和56(オ)927
登載
民集 第38巻3号431頁
参照法条
民法304条1項但書,破産法92条
論点2第92条破産法

一 動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使が認められた事例
二 動産譲渡担保権の設定者が破産宣告を受けた後における右譲渡担保権に基づく物上代位権行使の可否

裁判要旨一 銀行甲が、輸入業者乙のする商品の輸入について信用状を発行し、約束手形の振出しを受ける方法により乙に輸入代金決済資金相当額を貸し付けるとともに、乙から右約束手形金債権の担保として輸入商品に譲渡担保権の設定を受けた上、乙に右商品の貸渡しを行ってその処分権限を与えたところ、乙が、右商品を第三者に転売した後、破産の申立てをしたことにより右約束手形金債務につき期限の利益を失ったという事実関係の下においては、甲は、右商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、転売された右商品の売買代金債権を差し押さえることができる。
二 動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使は、右譲渡担保権の設定者が破産宣告を受けた後においても妨げられない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成11年5月17日 平成10(許)2
登載
民集 第53巻5号863頁
参照法条
民法304条,民法369条(譲渡担保),破産法92条
論点3第93条破産法

一 手形につき商事留置権を有する者が債務者に対する破産宣告の後に破産管財人からの手形の返還請求を拒むことの可否
二 手形につき商事留置権を有する銀行が債務者に対する破産宣告の後に右手形を手形交換制度によって取り立てて被担保債権の弁済に充当する行為が破産管財人に対する不法行為とならないとされた事例

裁判要旨一 手形につき商事留置権を有する者は、債務者が破産宣告を受けた後においても、右手形を留置する権能を有し、破産管財人からの手形の返還請求を拒むことができる。
二 手形につき商事留置権を有する甲銀行が債務者乙に対する破産宣告の後に右手形を手形交換制度によって取り立てて被担保債権の弁済に充当する行為は、乙が債務を履行しないときは甲が占有している乙の手形等を取り立て又は処分して債権の弁済に充当できる旨の銀行取引約定書四条四項〈破産事件の管轄〉による合意が甲乙間に存在し、被担保債権の履行期が既に到来し、債権額も手形金額を超えており、右手形について甲に優先する他の特別の先取特権者が存在することをうかがわせる事情もないなど判示の事実関係の下においては、乙の破産管財人に対する不法行為となるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成10年7月14日 平成7(オ)264
登載
民集 第52巻5号1261頁
参照法条
破産法93条,破産法95条,破産法204条,商法521条,民事執行法136条,民事執行法192条,民法91条,民法709条
論点4第95条破産法

破産者所有の不動産に対する競売手続における交付要求に係る配当金を交付すべき相手方

裁判要旨破産者所有の不動産に対する競売手続において交付要求がされたときは、交付要求に係る請求権に基づき破産宣告前に国税徴収法又は国税徴収の例による差押え又は参加差押えがされている場合を除き、交付要求に係る配当金は、破産管財人に交付すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年11月28日 平成7(オ)1937
登載
民集 第51巻10号4172頁
参照法条
民事執行法84条,民事執行法87条1項,民事執行法188条,破産法47条2号,破産法49条,破産法51条1項,破産法71条1項,破産法95条,国税徴収法82条
論点5第95条破産法

破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして上記賃料等の現実の支払を免れたことにより敷金返還請求権の質権者に対し不当利得返還義務を負う場合において破産管財人が悪意の受益者であるとはいえないとされた事例

裁判要旨破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際して破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をし,上記賃料等の現実の支払を免れたことにより,敷金返還請求権の質権者に対し不当利得返還義務を負う場合において,法律上の原因の有無が,破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と質権設定者が質権者に対して負う目的債権の担保価値を維持すべき義務との関係をどのように解するかによって結論の異なり得る問題であって,この点について論ずる学説や判例も乏しかったことや,破産管財人が上記合意をするにつき破産裁判所の許可を得ているという事情の下では,破産管財人を悪意の受益者であるということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年12月21日 平成17(オ)184
登載
集民 第222号643頁
参照法条
民法362条,民法619条2項,民法703条,民法704条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条7号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条8号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)49条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)50条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)95条,破産法65条,破産法148条1項7号,破産法148条1項8号,破産法151条
論点6第95条破産法

1 破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことが質権設定者の質権者に対する目的債権の担保価値を維持すべき義務に違反するとされた事例
2 破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害しても質権者に対して善管注意義務違反の責任を負うとはいえないとされた事例
3 破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして上記賃料等の現実の支払を免れた場合において破産管財人は敷金返還請求権の質権者に対して不当利得返還義務を負うとされた事例

裁判要旨1 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際し,賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことは,当時破産財団に上記賃料等を支払うのに十分な銀行預金が存在しており,これを現実に支払うことに支障がなかったなど判示の事情の下では,質権設定者の質権者に対する目的債権の担保価値を維持すべき義務に違反する。
2 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際して賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことが,質権設定者の質権者に対する目的債権の担保価値を維持すべき義務に違反する場合であっても,その義務違反の有無が,破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と質権設定者が質権者に対して負う上記義務との関係をどのように解するかによって結論の異なり得る問題であって,この点について論ずる学説や判例も乏しかったことや,破産管財人が上記合意をするにつき破産裁判所の許可を得ているという事情の下では,破産管財人は,質権者に対し,善管注意義務違反の責任を負うということはできない。
3 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際し,賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,上記賃料等の現実の支払を免れた場合において,当時破産財団には上記賃料等を支払うのに十分な銀行預金が存在しており,これを現実に支払うことに支障がなかったなど判示の事情の下では,破産管財人は,敷金返還請求権の質権者に対し,敷金返還請求権の発生が阻害されたことにより優先弁済を受けることができなくなった金額につき不当利得返還義務を負う。
(2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年12月21日 平成17(受)276
登載
民集 第60巻10号3964頁
参照法条
(1〜3につき)民法362条,民法619条2項,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条7号,8号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)49条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)50条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)95条,破産法65条1項,破産法148条1項7号,8号,破産法151条
論点7第96条破産法

破産者が株式会社である場合において破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき破産者の破産宣告当時の代表取締役に対してした別除権放棄の意思表示の効力

裁判要旨破産者が株式会社である場合において,破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき,別除権者が破産者の破産宣告当時の代表取締役に対してした別除権放棄の意思表示は,これを有効とみるべき特段の事情の存しない限り,無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年10月1日 平成16(許)5
登載
集民 第215号199頁
参照法条
破産法96条,破産法197条12号,破産法277条,商法254条3項,商法417条,民法653条
論点8第96条破産法

破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき放棄の意思表示をすべき相手方

裁判要旨破産者が株式会社である場合を含め、破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき別除権者がその放棄の意思表示をすべき相手方は、破産者である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年4月28日 平成11(許)40
登載
集民 第198号193頁
参照法条
破産法96条・破産法197条12号・破産法277条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

破産法 第91条(保全管理命令) 詳細ページ
(保全管理命令)
第九十一条裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、債務者(法人である場合に限る。以下この節、第百四十八条第四項及び第百五十二条第二項において同じ。)の財産の管理及び処分が失当であるとき、その他債務者の財産の確保のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる。
2裁判所は、前項の規定による処分(以下「保全管理命令」という。)をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理人を選任しなければならない。
3前二項の規定は、破産手続開始の申立てを棄却する決定に対して第三十三条第一項の即時抗告があった場合について準用する。
4裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
5保全管理命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
破産法 第92条(保全管理命令に関する公告及び送達) 詳細ページ
(保全管理命令に関する公告及び送達)
第九十二条裁判所は、保全管理命令を発したときは、その旨を公告しなければならない。保全管理命令を変更し、又は取り消す旨の決定があった場合も、同様とする。
2保全管理命令、前条第四項の規定による決定及び同条第五項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
3第十条第四項の規定は、第一項の場合については、適用しない。
破産法 第93条(保全管理人の権限) 詳細ページ
(保全管理人の権限)
第九十三条保全管理命令が発せられたときは、債務者の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属する。ただし、保全管理人が債務者の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
2前項ただし書の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3第七十八条第二項から第六項までの規定は、保全管理人について準用する。
破産法 第94条(保全管理人の任務終了の場合の報告義務) 詳細ページ
(保全管理人の任務終了の場合の報告義務)
第九十四条保全管理人の任務が終了した場合には、保全管理人は、遅滞なく、裁判所に書面による計算の報告をしなければならない。
2前項の場合において、保全管理人が欠けたときは、同項の計算の報告は、同項の規定にかかわらず、後任の保全管理人又は破産管財人がしなければならない。
破産法 第95条(保全管理人代理) 詳細ページ
(保全管理人代理)
第九十五条保全管理人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で一人又は数人の保全管理人代理を選任することができる。
2前項の規定による保全管理人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならない。
破産法 第96条(準用) 詳細ページ
(準用)
第九十六条第四十条の規定は保全管理人の請求について、第四十七条、第五十条及び第五十一条の規定は保全管理命令が発せられた場合について、第七十四条第二項、第七十五条、第七十六条、第七十九条、第八十条、第八十二条から第八十五条まで、第八十七条第一項及び第二項並びに第九十条第一項の規定は保全管理人について、第八十七条第一項及び第二項の規定は保全管理人代理について準用する。この場合において、第五十一条中「第三十二条第一項の規定による公告」とあるのは「第九十二条第一項の規定による公告」と、第九十条第一項中「後任の破産管財人」とあるのは「後任の保全管理人、破産管財人」と読み替えるものとする。
2債務者の財産に関する訴訟手続及び債務者の財産関係の事件で行政庁に係属するものについては、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める規定を準用する。
一保全管理命令が発せられた場合第四十四条第一項から第三項まで
二保全管理命令が効力を失った場合(破産手続開始の決定があった場合を除く。)第四十四条第四項から第六項まで
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。