破産法 / テーマ別まとめ

相続財産の破産等に関する特則/相続人の破産

相続人の破産の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

相続人が破産手続開始の決定を受けた場合に、その相続財産と相続人固有の財産をどう扱うかを整理した規定です。単純承認・相続放棄の効力の扱い、限定承認や財産分離の手続との関係、相続債権者・受遺者と相続人の債権者の優先順位、既に弁済を受けた債権者の扱い、財産の分別管理までをカバーしています。

相続人の破産
場面相続財産(相続人破産財団)相続人の固有財産
相続人のみ破産(通常時)相続債権者等が全額で参加可特に規定なし
相続人・相続財産とも破産相続人の債権者が優先特に規定なし
225条期間内の申立てで破産相続債権者等が優先相続人の債権者が優先
相続人が限定承認した場合全額で参加可(240条1項)相続債権者等は行使不可
  • 225条期間内の申立てによる破産人の優先関係は、その期間内にされた申立てによる決定の場合に限る規定です。
  • 相続債権者等が固有財産について権利行使できないのは、相続人が限定承認をした場合(238条1項で限定承認扱いになる場合を含む)です。
  • 239条の手続中止は、当該相続人のみが債務弁済に必要な行為の権限を有するときに限られます。
  • 241条2項の「他の同順位の破産債権者が受けた弁済」は、相続人が数人ある場合はその相続人の相続分に応じた部分に限ります。
  • 238条2項の申述期限は、相続の放棄があったことを知った時から3か月以内です。
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相続人の破産

相続人の破産について、条文は何を定めているか。

第238条破産者の単純承認又は相続放棄の効力等破産後の単純承認は限定承認扱いになる2項判例なし
  • 破産手続開始決定前に相続が開始した場合が対象
  • 決定後の単純承認・相続放棄は、破産財団との関係では限定承認の効力を持つ
  • 管財人は相続放棄の効力を認めることができ、知った時から3か月以内に家裁へ申述
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第239条限定承認又は財産分離の手続との関係相続人破産でも限定承認・財産分離は可能1項判例なし
  • 相続人が破産しても、限定承認や財産分離の手続は妨げられない
  • 相続人のみが弁済に必要な行為の権限を持つ場合は、破産手続の終了等まで中止する
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第240条相続債権者、受遺者及び相続人の債権者の地位相続財産と固有財産で債権者の優先順位が変わる4項判例 3件
  • 相続債権者・受遺者は、財産分離や相続財産の破産があっても債権全額で参加できる
  • 相続人の固有財産と相続財産とで、相続人の債権者と相続債権者等の優先順位が場合により変わる(詳細は表参照)
  • 相続人が限定承認した場合、相続債権者等は相続人の固有財産について権利行使できない
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第241条限定承認又は財産分離の手続において相続債権者等が受けた弁済限定承認等で先に弁済を受けても破産手続に参加できる3項判例なし
  • 限定承認・財産分離の手続で弁済を受けていても、弁済前の債権額で破産手続に参加できる
  • 同順位の他の破産債権者と同じ割合の配当を受けるまでは配当を受けられない
  • 弁済を受けた債権額については議決権を行使できない
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第242条限定承認又は財産分離等の後の相続財産の管理及び処分等限定承認・財産分離後は固有財産と分けて管理する3項判例 1件
  • 限定承認や財産分離があったときは、管財人は相続財産を相続人の固有財産と分けて管理・処分する
  • 管理処分後に残余財産があれば、相続人に帰属する部分は固有財産とみなす(財産目録等を補充)
  • 238条1項〈破産者の単純承認又は相続放棄の効力等〉の限定承認扱いの場合や240条3項〈相続債権者、受遺者及び相続人の債権者の地位〉の場合にも、同様の規定が準用される
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第240条破産法

執行力のある債務名義又は終局判決を有しない破産債権者の届出債権に対する債権調査期日における破産管財人又は他の債権者の異議と右破産債権届出の時効中断の効力

裁判要旨執行力のある債務名義又は終局判決を有しない破産債権者の届出債権に対する債権調査期日における破産管財人又は他の債権者の異議は、右破産債権届出の時効中断の効力に影響を及ぼすものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年1月29日 昭和55(オ)666
登載
民集 第36巻1号105頁
参照法条
民法152条,破産法240条1項
論点2第240条破産法

一 主たる債務者の破産手続において債権全額を代位弁済した保証人が債権の届出名義の変更の申出をした場合における求償権の消滅時効の中断
二 主たる債務者の破産手続において債権全額を代位弁済した保証人が債権調査期日の後に債権の届出名義の変更の申出をした場合における求償権の消滅時効期間

裁判要旨一 債権者が主たる債務者の破産手続において債権全額の届出をした後、右債権全額を代位弁済した保証人が、破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときは、右代位弁済により保証人が取得した求償権の消滅時効は、右求償権の全部について右届出名義の変更の申出の時から破産手続の終了に至るまで中断する。
二 債権者が主たる債務者の破産手続において債権全額の届出をした後、右債権全額を代位弁済した保証人が、債権調査期日の後になって破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときは、債権調査期日において届出債権について破産管財人、破産債権者及び破産者に異議がなかったときであっても、求償権の消滅時効期間は、民法一七四条ノ二第一項により一〇年に変更されるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年9月9日 平成7(オ)740
登載
集民 第185号287頁
参照法条
民法147条,民法152条,民法174条ノ2第1項,民法501条,破産法26条2項,破産法240条1項,破産法287条1項
論点3第240条破産法

一 主たる債務者の破産手続の債権調査期日終了後に債権全額を弁済した保証人が債権の届出名義の変更の申出をした場合における右保証人の求償権の消滅時効の中断
二 主たる債務者の破産手続の債権調査期日において債権者の届出債権につき異議がなく保証人がその後に債権全額を弁済した場合における求償権の消滅時効期間

裁判要旨一 債権者が主たる債務者の破産手続において債権全額の届出をし、保証人が、債権調査期日終了後に債権全額を弁済した上、破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときは、右弁済により保証人が取得した求償権の消滅時効は、右求償権の全部について右届出名義の変更の時から破産手続の終了に至るまで中断する。
二 主たる債務者の破産手続の債権調査期日において債権者の届出債権につき破産管財人、破産債権者及び破産者に異議がなく、保証人が、その後に債権全額を弁済した上、破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときであっても、右弁済により保証人が取得した求償権の消滅時効期間は、民法一七四条ノ二第一項により一〇年に変更されるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成7年3月23日 平成3(オ)1493
登載
民集 第49巻3号984頁
参照法条
民法147条,民法152条,民法501条,民法174条ノ2第1項,破産法26条2項,破産法240条1項,破産法287条1項
論点4第242条破産法

一、破産手続において債権表に記載された債権の消滅時効期間
二、退職金債権と一般の先取特権

裁判要旨一、確定債権についての債権表の記載は確定判決と同一の効力を有するから、右債権表に記載された債権の消滅時効については、民法一七四条ノ二第一項により、その時効期間は一〇年であると解すべきである。
二、給料の後払いとしての性格を有する退職金債権については、その最後の六か月間の給料相当額について一般の先取特権があると解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年9月2日 昭和43(オ)1095
登載
民集 第23巻9号1641頁
参照法条
民法174条ノ2,民法306条,民法308条,破産法242条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

破産法 第238条(破産者の単純承認又は相続放棄の効力等) 詳細ページ
(破産者の単純承認又は相続放棄の効力等)
第二百三十八条破産手続開始の決定前に破産者のために相続の開始があった場合において、破産者が破産手続開始の決定後にした単純承認は、破産財団に対しては、限定承認の効力を有する。破産者が破産手続開始の決定後にした相続の放棄も、同様とする。
2破産管財人は、前項後段の規定にかかわらず、相続の放棄の効力を認めることができる。この場合においては、相続の放棄があったことを知った時から三月以内に、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
破産法 第239条(限定承認又は財産分離の手続との関係) 詳細ページ
(限定承認又は財産分離の手続との関係)
第二百三十九条相続人についての破産手続開始の決定は、限定承認又は財産分離を妨げない。ただし、当該相続人のみが相続財産につき債務の弁済に必要な行為をする権限を有するときは、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定し、又は破産手続終結の決定があるまでの間は、限定承認又は財産分離の手続は、中止する。
破産法 第240条(相続債権者、受遺者及び相続人の債権者の地位) 詳細ページ
(相続債権者、受遺者及び相続人の債権者の地位)
第二百四十条相続人について破産手続開始の決定があった場合には、相続債権者及び受遺者は、財産分離があったとき、又は相続財産について破産手続開始の決定があったときでも、その債権の全額について破産手続に参加することができる。
2相続人について破産手続開始の決定があり、かつ、相続財産について破産手続開始の決定があったときは、相続人の債権者の債権は、相続人の破産財団については、相続債権者及び受遺者の債権に優先する。
3第二百二十五条に規定する期間内にされた破産手続開始の申立てにより相続人について破産手続開始の決定があったときは、相続人の固有財産については相続人の債権者の債権が相続債権者及び受遺者の債権に優先し、相続財産については相続債権者及び受遺者の債権が相続人の債権者の債権に優先する。
4相続人について破産手続開始の決定があり、かつ、当該相続人が限定承認をしたときは、相続債権者及び受遺者は、相続人の固有財産について、破産債権者としてその権利を行使することができない。第二百三十八条第一項の規定により限定承認の効力を有するときも、同様とする。
破産法 第241条(限定承認又は財産分離の手続において相続債権者等が受けた弁済) 詳細ページ
(限定承認又は財産分離の手続において相続債権者等が受けた弁済)
第二百四十一条相続債権者又は受遺者は、相続人について破産手続開始の決定があった後に、限定承認又は財産分離の手続において権利を行使したことにより、破産債権について弁済を受けた場合であっても、その弁済を受ける前の債権の額について破産手続に参加することができる。相続人の債権者が、相続人について破産手続開始の決定があった後に、財産分離の手続において権利を行使したことにより、破産債権について弁済を受けた場合も、同様とする。
2前項の相続債権者若しくは受遺者又は相続人の債権者は、他の同順位の破産債権者が自己の受けた弁済(相続人が数人ある場合には、当該破産手続開始の決定を受けた相続人の相続分に応じた部分に限る。次項において同じ。)と同一の割合の配当を受けるまでは、破産手続により、配当を受けることができない。
3第一項の相続債権者若しくは受遺者又は相続人の債権者は、前項の弁済を受けた債権の額については、議決権を行使することができない。
破産法 第242条(限定承認又は財産分離等の後の相続財産の管理及び処分等) 詳細ページ
(限定承認又は財産分離等の後の相続財産の管理及び処分等)
第二百四十二条相続人について破産手続開始の決定があった後、当該相続人が限定承認をしたとき、又は当該相続人について財産分離があったときは、破産管財人は、当該相続人の固有財産と分別して相続財産の管理及び処分をしなければならない。限定承認又は財産分離があった後に相続人について破産手続開始の決定があったときも、同様とする。
2破産管財人が前項の規定による相続財産の管理及び処分を終えた場合において、残余財産があるときは、その残余財産のうち当該相続人に帰属すべき部分は、当該相続人の固有財産とみなす。この場合において、破産管財人は、その残余財産について、破産財団の財産目録及び貸借対照表を補充しなければならない。
3第一項前段及び前項の規定は、第二百三十八条第一項の規定により限定承認の効力を有する場合及び第二百四十条第三項の場合について準用する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。