会社法 / テーマ別まとめ

決議の瑕疵を争う訴え

取消し・無効確認・不存在確認。3つの訴えの使い分けと、裁量棄却。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

株主総会等の決議に問題があるとき、会社法は決議取消しの訴え・決議無効確認の訴え・決議不存在確認の訴えという3種類の争い方を用意している。瑕疵の内容によってどの訴えを使うかが分かれ、取消しの訴えには提訴期間や提訴権者の限定があるのに対し、無効確認・不存在確認にはこうした限定は条文上定められていない。また、招集手続や決議方法の違反が軽微で決議に影響しない場合、裁判所は取消しの請求を棄却できる。

決議取消し・無効確認・不存在確認の対比
訴えの種類事由提訴期間提訴権者判決の効力
決議取消しの訴え手続違反・内容の定款違反・特別利害関係人の行使決議の日から三箇月以内株主等認容判決の効力は第三者にも及ぶ
決議無効確認の訴え決議の内容が法令に違反条文上の期間制限なし条文上の定めなし認容判決の効力は第三者にも及ぶ
決議不存在確認の訴え決議が存在しないこと条文上の期間制限なし条文上の定めなし認容判決の効力は第三者にも及ぶ
  • 取消しの訴えは、決議によって株主・取締役・監査役・清算人等になる者も提起できる
  • 取消しの訴えでは、監査等委員会設置会社の監査等委員である取締役とそれ以外の取締役を区別して規定している
  • 創立総会・種類創立総会の決議については、株主等のほか設立時株主・設立時取締役・設立時監査役も提訴できる
  • 取消しの請求棄却(実務上「裁量棄却」と呼ばれる)は、招集手続・決議方法が法令又は定款に違反する場合に限られ、決議内容の違反には適用されない
  • 838条がいう効力は、請求を認容する確定判決についてのものである
1

取消しを求める

3つの取消事由と3か月の期間

第831条株主総会等の決議の取消しの訴え手続や内容の瑕疵は取消しの訴えで争う2項・3号判例 2件
  • 決議の日から三箇月以内に訴えを起こす必要がある
  • 対象は手続の法令・定款違反や著しい不公正、内容の定款違反、特別利害関係人の議決権行使
  • 違反が軽微で決議に影響なければ棄却できる(一般に裁量棄却と呼ぶ)
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
2

無効・不存在を主張する

期間の制限がない訴え

第830条株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え決議が存在しない・無効なら確認を求められる2項判例 1件
  • 決議が存在しないときは、決議不存在の確認を訴えで求められる
  • 決議の内容が法令に違反するときは、決議無効の確認を訴えで求められる
  • 831条〈株主総会等の決議の取消しの訴え〉と異なり、出訴期間や提訴権者の限定は条文上定められていない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
3

判決の効力

対世効と裁量棄却

第838条認容判決の効力が及ぶ者の範囲認容判決の効力は第三者にも及ぶ1項判例 2件
  • 組織に関する訴えで請求が認められた確定判決は、第三者にも効力が及ぶ
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第831条株主総会等の決議の取消しの訴え手続や内容の瑕疵は取消しの訴えで争う2項・3号判例 2件
  • 決議の日から三箇月以内に訴えを起こす必要がある
  • 対象は手続の法令・定款違反や著しい不公正、内容の定款違反、特別利害関係人の議決権行使
  • 違反が軽微で決議に影響なければ棄却できる(一般に裁量棄却と呼ぶ)
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第831条会社法

ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えの適否

裁判要旨ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成28年3月4日 平成27(受)1431
登載
民集 第70巻3号827頁
参照法条
会社法831条
論点2第831条会社法

事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに同選挙が取り消されるべきものであることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙の効力を争う訴えが併合されている場合における先行の選挙の取消しを求める訴えの利益

裁判要旨事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに,同選挙が取り消されるべきものであることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙の効力を争う訴えが併合されている場合には,後行の選挙がいわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り,先行の選挙の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和2年9月3日 平成31(受)558
登載
民集 第74巻6号1557頁
参照法条
中小企業等協同組合法54条,会社法831条,民訴法第2編第1章訴え
論点3第830条会社法

株式会社の取締役等の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けた場合における訴えの利益の消長

裁判要旨株式会社の取締役又は監査役の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても,上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年4月17日 平成20(受)951
登載
集民 第230号395頁
参照法条
会社法830条,破産法30条,民法653条,民訴法第2編第1章訴え
論点4第838条会社法

1 株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決に対する再審の訴えと上記確定判決の効力を受ける第三者の原告適格
2 当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの独立当事者参加の申出の適否

裁判要旨1 株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる。
2 独立当事者参加の申出は,参加人が参加を申し出た訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず,単に当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されない。
(2につき意見及び反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年7月10日 平成25(ク)1158
登載
集民 第247号49頁
参照法条
(1,2につき)民訴法47条 (1につき)会社法833条1項,会社法838条,民訴法第1編第3章 当事者,民訴法338条
論点5第838条会社法

1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決に対する再審の訴えと上記確定判決の効力を受ける第三者の原告適格
2 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決と民訴法338条1項3号の再審事由
3 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決に民訴法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地があるとされた事例

裁判要旨1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる。
2 新株発行の無効の訴えの被告とされた株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており,上記訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には,上記確定判決には,民訴法338条1項3号の再審事由がある。
3 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合において,次の(1)〜(4)など判示の事情の下においては,上記訴えの被告とされた株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており,上記訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができないものとして,上記確定判決には民訴法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地がある。
(1) 当該第三者は,上記訴えに係る訴訟の係属を知らず,上記訴訟の審理に関与する機会を与えられなかった。
(2) 当該第三者は,上記訴訟の係属前から,上記株式会社に対して自らが発行を受けた株式につきその発行の有効性を主張するなどしており,仮に上記訴訟の係属を知れば,上記訴訟に参加するなどして株式の発行の無効を求める請求を争うことが明らかな状況にあり,かつ,上記株式会社はそのような状況にあることを十分に認識していた。
(3) 上記株式会社は,上記訴訟において請求を全く争わず,かえって,請求原因事実の追加立証を求める受訴裁判所の訴訟指揮に対し,自ら請求原因事実を裏付ける書証を提出した。
(4) 上記株式会社は,当該第三者に対して上記訴訟の係属を知らせることが容易であったにもかかわらず,これを知らせなかった。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成25年11月21日 平成24(許)43
登載
民集 第67巻8号1686頁
参照法条
(1〜3につき) 会社法828条1項2号,会社法838条 (1につき) 民訴法第1編第3章 当事者,民訴法47条,民訴法338条 (2,3につき) 民訴法2条,民訴法338条1項3号
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第831条(株主総会等の決議の取消しの訴え) 詳細ページ
(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
2前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。
会社法 第830条(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え) 詳細ページ
(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)
第八百三十条株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第九百三十七条第一項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
2株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。
会社法 第838条(認容判決の効力が及ぶ者の範囲) 詳細ページ
(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)
第八百三十八条会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。