論点1第549条民法
死因贈与の主張に対し生前贈与を認定することの許否
裁判要旨相続による特定財産の所有権取得を原因とする登記手続請求訴訟において、被相続人が死亡時までに死因贈与により右財産の所有権を喪失したとの抗弁が提出された場合、裁判所が、右死因贈与の主張には生前贈与の主張をも包含するものと解して生前贈与による所有権喪失を認定しても、当事者の主張しないことを認定した違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年4月27日 昭和56(オ)419
- 登載
- 集民 第135号813頁
- 参照法条
- 民訴法186条,民法549条,民法554条
論点2第549条民法
一、自作農創設特別措置法に基づき国が買収した土地を目的として締結された売買契約と他人の権利の売買
二、他人の財産権を目的とする贈与の効力
裁判要旨一、自作農創設特別措置法に基づいて国が買収し、所有権を取得した土地を目的とし、右土地の被買収者が第三者との間で売買契約を締結することは、民法
五六〇条〈権利移転の対抗要件に係る売主の義務〉にいう「他人ノ権利ヲ以テ売買ノ目的ト為シタルトキ」にあたる。
二、他人の財産権をもつて贈与の目的としたときは、贈与義務者はみずからその財産権を取得して受贈者に移転する義務を負うもので、贈与契約として有効に成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年1月31日 昭和43(オ)821
- 登載
- 集民 第94号167頁
- 参照法条
- 民法549条,民法560条,自作農創設特別措置法12条
論点3第549条民法
一 二筆の土地を一括して賃借した場合に一筆の土地についての用方違反によつて二筆の土地全部の賃貸借契約を解除できるとされた事例。
二 堅固建物への改築が消防署の命によつた場合でも借地の用方違反の違法性は阻却されないとされた事例。
裁判要旨一 道路を隔てて存在する甲乙二筆の土地の賃借人が甲地上にその用方違反となるべき石油貯蔵庫を建築した場合において、右二筆の土地が一括して賃貸借の目的となつていて、賃借人としては右二筆の土地を石油類販売業のため総合的に利用しようとして右貯蔵庫を建築した等原審判示の事情(原判決理由参照)のもとでは、賃貸人は右用方違反を事由として甲乙二筆の土地全体について賃貸借契約を解除することができる。
二 借地の用方を主として貯炭場を設けるためと定め、建物の建築としては木造の小規模のものに限るとの特約のもとでなされた土地賃貸借契約において、賃借人が賃貸人の事前の明白な拒否にもかかわらず、借地上に石油類販売用のコンクリートブロツク造の堅固な石油貯蔵庫を建築することは、賃借物の用方違反をきたすものというべく、当該石油貯蔵庫の建築が消防署の命によつて従前の木造をコンクリートブロツク造に改めたという事情によるものであつても、右事情は用方違反の違法性を阻却する事由とはならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月19日 昭和38(オ)48
- 登載
- 民集 第18巻5号806頁
- 参照法条
- 民法616条,民法549条1項
論点4第549条民法
一 条例で特別職に対する退職金の給付はその都度議会への議決で定めるとしている場合の右退職金の性質
二 退職金の給与を議会の議決で定めた後に右の議決を取り消すことの可否
裁判要旨一 条例で特別職に対する退職金の給付は、その都度議会の決議で定めることにしてあつても、右退職金の給与は公法上の給与であつて、民法上の贈与ではない。
二 退職金の給与を議会の議決で定めた後、右の給与について予算上の措置が講じられていなかつたからといつて、さきの議決を取り消すことはゆるされない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年11月16日 昭和36(オ)873
- 登載
- 集民 第63号247頁
- 参照法条
- 地方自治法205条,地方自治法239条の4第1項,民法549条
論点5第550条民法
贈与者の第三者あて内容証明郵便が民法五五〇条にいる書面に当たるとされた事例
裁判要旨甲から不動産を取得した乙がこれを丙に贈与した場合において、乙が、司法書士に依頼して、登記簿上の所有名義人である甲に対し、右不動産を丙に譲渡したので甲から直接丙に所有権移転登記をするよう求める旨の内容証明郵便を差し出したなど判示の事情があるときは、右内容証明郵便は、民法
五五〇条〈書面によらない贈与の解除〉にいう書面に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和60年11月29日 昭和57(オ)942
- 登載
- 民集 第39巻7号1719頁
- 参照法条
- 民法550条
論点6第550条民法
書面によらない土地の贈与者が受贈者に土地の占有及び登記名義を移転することができない場合において贈与の履行が終了したものとして民法五五〇条に基づく取消の効力が否定された事例
裁判要旨書面によらないで土地を贈与した者が、その土地について占有及び登記名義を有しないためこれを受贈者に移転できない場合において、受贈者がその土地の登記名義人に対し所有権移転登記手続を求める訴訟を起こしたのち、その訴訟遂行を助けるため贈与者が受贈者に対しその土地の権利関係に関する証拠書類を交付したなど判示の事実関係があるときは、贈与者は贈与の履行を終つたものであり、贈与者が民法五五〇条の規定に基づいてした贈与の取消は効力を生じない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和56年10月8日 昭和56(オ)434
- 登載
- 集民 第134号29頁
- 参照法条
- 民法550条
論点7第550条民法
書面によらない未登記建物の贈与契約に基づき受贈者名義に所有権保存登記が経由されたときと贈与の履行の終了
裁判要旨未登記建物について書面によらない贈与契約がされた場合でも、贈与者の意思に基づき直接、受贈者名義に所有権保存登記が経由されたときは、贈与の履行が終つたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年9月27日 昭和53(オ)1060
- 登載
- 集民 第127号499頁
- 参照法条
- 民法550条
論点8第550条民法
書面によらない贈与がその履行を終つたのと同視すべき状態にあるとして民法五五〇条に基づく取消が許されないとされた事例
裁判要旨土地の書面によらない贈与が、贈与者の死に臨み実子に対する財産分けとしてされたものであり、その死亡後二〇年余を経たのちにその家督相続人と受贈者が右土地を家督相続人の相続した土地の一部と交換し、家督相続人において右交換土地を分筆し、受贈者との間で仮換地のうち換地処分後に受贈者が取得すべき土地の範囲を定め、その実測図面を作成してこれを受贈者に交付したなど原判決判示のような事情があるときには、右贈与は、遅くとも右実測図面が交付された時には、民法
五五〇条〈書面によらない贈与の解除〉との関係ではその履行を終つたのと同視すべき状態となり、その後に右家督相続人の相続人が同条に基づいてこれを取り消すことは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年3月30日 昭和51(オ)1014
- 登載
- 集民 第123号401頁
- 参照法条
- 民法550条
論点9第550条民法
民法五五〇条〈書面によらない贈与の解除〉所定の書面にあたるとされた事例
裁判要旨甲が乙を相手方として申し立てた財産処分禁止請求調停事件に丙が利害関係人として参加して調停が成立し、調停調書に「乙は、その所有地のうち約四五坪(別紙図面記載の丙所有部分)を除いた部分を処分しようとするときには、甲と約一〇日前に相談のうえでする」旨の条項が記載されたが、右調停調書において丙所有部分として約四五坪の土地が除外されたのは、右調停に際し、乙から丙に対し右土地を贈与する合意が成立したためであるときは、右調停調書は、乙、丙間の贈与について作成された民法五五〇条所定の書面にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年11月30日 昭和53(オ)831
- 登載
- 民集 第32巻8号1601頁
- 参照法条
- 民法550条
論点10第550条民法
書面によらない農地の贈与契約と右農地の引渡後における取消の許否
裁判要旨書面によらない農地の贈与契約は、農地法第三条第一項による知事の許可を受けるまでは、右農地の引渡があつた後でも、取り消すことができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年10月7日 昭和40(オ)1066
- 登載
- 民集 第20巻8号1597頁
- 参照法条
- 民法550条,農地法3条1項
論点11第550条民法
民法第五五〇条第一項第五号〈書面によらない贈与の解除〉の法意
裁判要旨婚姻関係の破綻を生ぜしめた原因が夫婦の双方にあり、その主たる原因がいずれにあるとも断定しえない場合、換言すれば、離婚請求をなしえないほど主たる有責原因が原告に一方的に存するものとは認められないときは、民法
第七七〇条第一項第五号〈裁判上の離婚〉の婚姻を継続し難い重大な事由による離婚請求は認容できる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月10日 昭和40(オ)54
- 登載
- 集民 第80号267頁
- 参照法条
- 民法550条1項5号
論点12第550条民法
不動産の贈与契約に基づく所有権移転登記と贈与の履行の終了。
裁判要旨不動産の贈与契約にもとづいて該不動産の所有権移転登記がなされたときは、その引渡の有無をとわず、民法
第五五〇条〈書面によらない贈与の解除〉にいう履行が終つたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年3月26日 昭和39(オ)370
- 登載
- 民集 第19巻2号526頁
- 参照法条
- 民法550条
論点13第550条民法
家屋の贈与につき履行が終つたものとされた事例。
裁判要旨病気のため入院中の内縁の夫が、同棲に使用していたその所有家屋を妻に贈与するに際して、自己の実印を該家屋を買受けたときの契約書とともに妻に交付する等判示事実関係のもとにおいては、簡易の引渡による該家屋の占有移転があつたものとみるべきであるから、これにより、右贈与の履行が終つたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年5月26日 昭和38(オ)31
- 登載
- 民集 第18巻4号667頁
- 参照法条
- 民法550条,民法182条2項
論点14第550条民法
書面によらない負担付贈与契約の一方の履行と取消。
裁判要旨書面によらない負担付贈与契約に基づき当事者の一方が債務を履行したときは、書面によらない贈与であることを理由にこれを取消すことはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年9月3日 昭和36(オ)601
- 登載
- 集民 第67号399頁
- 参照法条
- 民法550条,民法553条
論点15第550条民法
民法第五五〇条〈書面によらない贈与の解除〉の書面に当るとされた事例
裁判要旨県知事に対する農地所有権移転許可申請書に、譲渡人、譲渡人と表示して各記名捺印がなされ、「権利を移転しようとする事由の詳細」の項に本件農地を贈与することにした旨、「権利を移転しようとする契約の内容」の項に無償贈与とする旨の各記載がある以上、該申請書は民法第五五〇条の書面に当る。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和37年4月26日 昭和36(オ)1228
- 登載
- 民集 第16巻4号1002頁
- 参照法条
- 民法550条
論点16第550条民法
書面によらない贈与を認める判決が確定した後の民法第五五〇条による右贈与の取消の可否。
裁判要旨書面によらない贈与による権利の移転を認める判決が確定した後は、既判力の効果として民法第五五〇条による取消権を行使して右贈与による権利の存否を争うことは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年12月12日 昭和35(オ)1017
- 登載
- 民集 第15巻11号2778頁
- 参照法条
- 民法550条,民訴法199条,民訴法545条2項
論点17第550条民法
書面によらない不動産の贈与において履行の終了ありと認められる場合
裁判要旨書面によらない不動産の贈与において、所有権の移転があつただけでは履行を終つたものとすることは出来ず、その占有の移転があつたときに履行を終つたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年1月27日 昭和29(オ)195
- 登載
- 民集 第10巻1号1頁
- 参照法条
- 民法550条
論点18第550条民法
新民法施行前の離婚の際になされた贈与契約の取消
裁判要旨新民法施行前に協議上の離婚をするに際し財産分与の契約をした場合においては、たとえばそれが書面によらないものであつても、新民法施行後は、これを取り消すことができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月6日 昭和25(オ)224
- 登載
- 民集 第6巻5号506頁
- 参照法条
- 民法550条,新民法附則10条
論点19第553条民法
負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合と民法一〇二二条、一〇二三条〈前の遺言と後の遺言との抵触等〉の規定の準用の有無
裁判要旨負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合には、右契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし右契約の全部又は一部を取り消すことがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、民法
一〇二二条〈遺言の撤回〉、
一〇二三条〈前の遺言と後の遺言との抵触等〉の各規定は準用されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和57年4月30日 昭和56(オ)487
- 登載
- 民集 第36巻4号763頁
- 参照法条
- 民法553条,民法554条,民法1022条,民法1023条
論点20第553条民法
負担附贈与と贈与税の課税価格
裁判要旨負担附贈与がされた場合における贈与税の課税価格は、右贈与にかかる財産の時価から当該負担額を控除した価額である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年6月26日 昭和54(行ツ)136
- 登載
- 集民 第133号187頁
- 参照法条
- 相続税法2条の2,相続税法21条の2,民法553条
論点21第554条民法
死因贈与の取消ができないとされた事例
裁判要旨土地の登記簿上の所有名義人である甲が、右土地を占有耕作する乙に対してその引渡を求めた訴訟の第一審で敗訴し、その第二審で成立した裁判上の和解において、乙から登記名義どおりの所有権の承認を受ける代わりに、乙及びその子孫に対して右土地を無償で耕作する権利を与え、しかも、右権利を失わせるような一切の処分をしないことを約定するとともに、甲が死亡したときは右土地を乙及びその相続人に贈与することを約したなど、判示の事実関係のもとでは、右死因贈与は、甲において自由には取り消すことができない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和58年1月24日 昭和57(オ)194
- 登載
- 民集 第37巻1号21頁
- 参照法条
- 民法554条,民法1022条
論点22第554条民法
死因贈与の取消と民法一〇二二条
裁判要旨死因贈与の取消については、民法
一〇二二条〈遺言の撤回〉がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年5月25日 昭和46(オ)1166
- 登載
- 民集 第26巻4号805頁
- 参照法条
- 民法554条,民法1022条
論点23第554条民法
贈与の主張に対し死因贈与を認定することの適否
裁判要旨係争家屋の所有権を贈与により取得したとして贈与者の相続人らに対し贈与を原因とする所有権移転登記を求めたのに対し、裁判所が、右贈与の主張は死因贈与の主張を包含するものと解して、死因贈与による所有権移転を認定しても、当事者の主張しない事実を認定したものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年9月12日 昭和42(オ)246
- 登載
- 集民 第92号231頁
- 参照法条
- 民訴法186条,民法554条
論点24第554条民法
一、遺贈の承認放棄に関する規定の死因贈与への準用の有無
二、権利移転の過程において実体と異なるが現在の実体的権利関係に合致しているため登記の抹消請求が許されないとされた事例
裁判要旨一、遺贈の承認および放棄に関する規定は死因贈与に準用されない。
二、甲の所有していた不動産について、その相続人でない乙に相続を原因とする所有権移転登記がされ、乙から丙に贈与を原因とする所有権移転登記がされているが、実体上は甲から丙に右不動産が死因贈与され、現在丙がその所有者である場合には、甲の相続人が乙および丙に対し右各登記の抹消を請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年6月6日 昭和42(オ)560
- 登載
- 集民 第91号219頁
- 参照法条
- 民法986条,民法554条,民法177条
論点25第554条民法
死因贈与の方式と遺贈に関する規定準用の有無
裁判要旨死因贈与の方式については、遺贈に関する規定の準用はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年5月21日 昭和30(オ)392
- 登載
- 民集 第11巻5号732頁
- 参照法条
- 民法554条
論点26第554条民法
贈与の主張に対し死因贈与を認定したことの適否
裁判要旨係争家屋の所有権を取得したと抗争する被告が、その取得の原因として「被告は原告の亡先代から右家屋の贈与を受けた」旨主張している場合弁論の全趣旨から右贈与の主張が死因贈与の主張を包含すると認められる以上、たとい死因贈与を受けた旨の明示的主張がなくても、裁判所が被告は原告先代から右家屋の死因贈与を受けその所有権を取得したと認定しても、当事者の主張しない事実を認定したものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年2月22日 昭和24(オ)277
- 登載
- 民集 第5巻3号106頁
- 参照法条
- 民訴法186条,民法554条
論点27第554条民法
限定承認をした相続人が死因贈与による不動産の取得を相続債権者に対抗することの可否
裁判要旨不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成10年2月13日 平成8(オ)2168
- 登載
- 民集 第52巻1号38頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法177条,民法554条,民法922条,民法931条