労働契約法 / テーマ別まとめ

労働契約の継続及び終了

労働契約の継続及び終了の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

このテーマは、労働契約が続いている間に使用者が労働者に対して行う出向命令・懲戒と、労働契約を終える解雇について、それぞれどのような場合に無効となるかを定めています。出向・懲戒・解雇のいずれも、使用者に一定の権限があることを前提としつつ、その行使が行き過ぎた場合には無効になる、という共通の枠組みで規律されている点がポイントです。

労働契約の継続及び終了
場面条文上の判断基準無効となる効果
出向命令必要性・人選事情等に照らし権利濫用出向命令が無効
懲戒行為の性質・態様等に照らし合理的理由なし・社会通念上相当でない懲戒が無効
解雇客観的合理的理由を欠き社会通念上相当でない解雇が無効
  • 出向は「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合」であることが前提。
  • 懲戒は「使用者が労働者を懲戒することができる場合」であることが前提。
  • 出向・懲戒は「その他の事情」も考慮要素に含まれる。
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労働契約の継続及び終了

労働契約の継続及び終了について、条文は何を定めているか。

第14条出向出向命令が行き過ぎなら無効になる1項判例なし
  • 出向を命じられる場合でも、必要性や対象者の選び方などから見て行き過ぎなら無効
  • 権利濫用と判断されると、その出向命令自体が無効になる
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第15条懲戒懲戒が重すぎ・不相当なら無効になる1項判例 2件
  • 懲戒できる場合でも、行為の中身や態様などに照らして理由が客観的に合理的でないと無効
  • 社会通念上相当と言えない懲戒も権利濫用として無効になる
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第16条解雇解雇に合理的理由・相当性がなければ無効1項判例 2件
  • 解雇は客観的に合理的な理由を欠くと権利濫用として無効になる
  • 理由があっても社会通念上相当と言えなければ同様に無効になる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第15条労働契約法

職場における性的な内容の発言等によるセクシュアル・ハラスメント等を理由としてされた懲戒処分が懲戒権を濫用したものとはいえず有効であるとされた事例

裁判要旨会社の管理職である男性従業員2名が同一部署内で勤務していた女性従業員らに対してそれぞれ職場において行った性的な内容の発言等によるセクシュアル・ハラスメント等を理由としてされた出勤停止の各懲戒処分は,次の(1)~(4)など判示の事情の下では,懲戒権を濫用したものとはいえず,有効である。
(1) 上記男性従業員らは,①うち1名が,女性従業員Aが執務室において1人で勤務している際,同人に対し,自らの不貞相手に関する性的な事柄や自らの性器,性欲等についての極めて露骨で卑わいな内容の発言を繰り返すなどし,②他の1名が,当該部署に異動した当初に上司から女性従業員に対する言動に気を付けるよう注意されていながら,女性従業員Aの年齢や女性従業員A及びBが未婚であることなどを殊更に取り上げて著しく侮蔑的ないし下品な言辞で同人らを侮辱し又は困惑させる発言を繰り返し,女性従業員Aの給与が少なく夜間の副業が必要であるなどとやゆする発言をするなど,同一部署内で勤務していた派遣労働者等の立場にある女性従業員Aらに対し職場において1年余にわたり多数回のセクシュアル・ハラスメント等を繰り返した。
(2) 上記会社は,職場におけるセクシュアル・ハラスメントの防止を重要課題と位置付け,その防止のため,従業員らに対し,禁止文書を周知させ,研修への毎年の参加を義務付けるなど種々の取組を行っており,上記男性従業員らは,上記の研修を受けていただけでなく,管理職として上記会社の方針や取組を十分に理解して部下職員を指導すべき立場にあった。
(3) 上記(1)①及び②の各行為によるセクシュアル・ハラスメント等を受けた女性従業員Aは,上記各行為が一因となって,上記会社での勤務を辞めることを余儀なくされた。
(4) 上記出勤停止の期間は,上記(1)①の1名につき30日,同②の1名につき10日であった。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成27年2月26日 平成26(受)1310
登載
集民 第249号109頁
参照法条
労働契約法15条
論点2第15条労働契約法

従業員の欠勤が就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤に当たるとしてされた諭旨退職の懲戒処分が無効であるとされた事例

裁判要旨従業員が,被害妄想など何らかの精神的な不調のために,実際には事実として存在しないにもかかわらず,約3年間にわたり盗撮や盗聴等を通じて自己の日常生活を子細に監視している加害者集団が職場の同僚らを通じて自己に関する情報のほのめかし等の嫌がらせを行っているとの認識を有しており,上記嫌がらせにより業務に支障が生じており上記情報が外部に漏えいされる危険もあると考えて,自分自身が上記の被害に係る問題が解決されたと判断できない限り出勤しない旨をあらかじめ使用者に伝えた上で,有給休暇を全て取得した後,約40日間にわたり欠勤を続けたなど判示の事情の下では,上記欠勤は就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤に当たるとはいえず,上記欠勤が上記の懲戒事由に当たるとしてされた諭旨退職の懲戒処分は無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年4月27日 平成23(受)903
登載
集民 第240号237頁
参照法条
労働基準法89条,労働契約法15条,労働契約法16条
論点3第16条労働契約法

1 労働審判に対し適法な異議の申立てがあったため訴訟に移行した場合において,当該労働審判は民訴法23条1項6号にいう「前審の裁判」に当たるか
2 統括事業部長を兼務する取締役の地位にある従業員に対して会社がした普通解雇が,当該従業員に対する不法行為を構成するとはいえないとされた事例

裁判要旨1 労働審判に対し適法な異議の申立てがあったため訴訟に移行した場合において,当該労働審判は民訴法23条1項6号にいう「前審の裁判」に当たらない。
2 統括事業部長を兼務する取締役の地位にある従業員が,その勤務態度は他の従業員や取引先から会社に対し苦情が寄せられるほどであり,これはその飲酒癖に起因するものであったのに,代表取締役社長から注意されても飲酒を控えることがなく,取引先の担当者と打合せをする予定のある日に欠勤した上,その日の夜に同社長と電話で話をした際,酒に酔った状態で「(自分を)辞めさせたらどうですか。」と述べたなど判示の事実関係の下では,当該従業員に対して会社がした普通解雇は,懲戒処分などの解雇以外の方法を採ることなくされたとしても,当該従業員に対する不法行為を構成するものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年5月25日 平成21(オ)1727
登載
集民 第234号99頁
参照法条
(1につき)民訴法23条1項6号,労働審判法20条1項,労働審判法22条(2につき)民法709条,労働基準法(平成19年法律第128号による改正前のもの)18条の2,労働契約法16条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

労働契約法 第14条(出向) 詳細ページ
(出向)
第十四条使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。
労働契約法 第15条(懲戒) 詳細ページ
(懲戒)
第十五条使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
労働契約法 第16条(解雇) 詳細ページ
(解雇)
第十六条解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。