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労働契約の成立及び変更

労働契約の成立及び変更の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

労働契約法6条から13条は、労働契約がどのように成立し、その内容がどう決まり、どう変更されるかを定めています。契約は労働者と使用者の合意で成立するのが原則ですが、合理的な就業規則が周知されていれば契約内容は就業規則によることになり、就業規則を変更して労働条件を労働者に不利益に変更する場合には一定の要件が課されます。就業規則が就業規則自体の基準、法令、労働協約に反する場合の優先関係も定められています。

労働契約の成立及び変更
場面要件効果
労働契約の成立(6条)労働・使用と賃金支払に合意労働契約が成立する
契約内容(就業規則)(7条)合理的な就業規則を周知就業規則の内容が契約内容になる
合意による内容変更(8条)労働者と使用者の合意労働条件を変更できる
就業規則による不利益変更(9条)労働者の合意が必要合意なければ変更できない
就業規則変更の合理性(10条)周知+変更の合理性変更後の就業規則が契約内容になる
変更手続(11条)労基法89条・90条の手続その定めに従う
就業規則違反の契約(12条)就業規則の基準に達しないその部分は無効、基準による
法令・労働協約との関係(13条)就業規則が法令等に反する7条・10条・12条は適用せず
  • 7条:就業規則と異なる合意をした部分は、12条に該当する場合を除き、その合意が契約内容になる。
  • 10条:就業規則の変更によっては変更しないと合意していた部分は、12条に該当する場合を除き、変更後の就業規則より優先される。
  • 9条のただし書により、10条の要件を満たす場合は労働者の合意なしに就業規則変更で不利益変更ができる。
  • 13条による適用除外は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との労働契約に限られる。
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労働契約の成立及び変更

労働契約の成立及び変更について、条文は何を定めているか。

第6条労働契約の成立労使の合意で労働契約が成立する1項判例 3件
  • 労働して賃金を得ることについて労使が合意すれば契約が成立する
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第7条合理的な就業規則が契約内容になる1項判例 1件
  • 合理的な就業規則を周知していれば、その内容が労働契約の内容になる
  • 就業規則と異なる合意をした部分は、12条〈就業規則違反の労働契約〉の場合を除きその合意が優先する
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第8条労働契約の内容の変更労使の合意で労働条件を変更できる1項判例 2件
  • 労働者と使用者が合意すれば、労働条件を変更できる
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第9条就業規則による労働契約の内容の変更就業規則だけでの不利益変更は原則不可1項判例 1件
  • 使用者は労働者の合意なしに、就業規則変更で不利益に労働条件を変えられない
  • ただし10条〈使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、…〉の場合(合理的な変更)は例外となる
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第10条合理的な変更なら就業規則の変更が有効1項判例 1件
  • 変更後の就業規則を周知し、変更が合理的であれば有効になる
  • 合理性は不利益の程度・必要性・内容の相当性・交渉状況等で判断
  • 就業規則の変更によらないと合意した部分は、12条〈就業規則違反の労働契約〉の場合を除き優先
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第11条就業規則の変更に係る手続変更手続は労基法89条・90条による1項判例なし
  • 就業規則の変更手続は、労働基準法89条・90条の定めに従う
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第12条就業規則違反の労働契約就業規則の基準未満の契約は無効1項判例なし
  • 就業規則より低い労働条件を定めた部分は無効になる
  • 無効になった部分は、就業規則で定める基準になる
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第13条法令及び労働協約と就業規則との関係就業規則が法令等に反すれば適用除外1項判例なし
  • 就業規則が法令又は労働協約に反する部分は、7条〈労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させてい…〉・10条〈使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、…〉・12条〈就業規則違反の労働契約〉の規定が適用されない
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第6条労働契約法

私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約が3年の更新限度期間の満了後に期間の定めのないものとなったとはいえないとされた事例

裁判要旨私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約は,①当該労働契約において,3年の更新限度期間の満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは,これを希望する教員の勤務成績を考慮して当該大学を運営する学校法人が必要であると認めた場合である旨が明確に定められており,当該教員もこのことを十分に認識した上で当該労働契約を締結したものとみることができること,②大学の教員の雇用については一般に流動性のあることが想定されていること,③当該学校法人が運営する三つの大学において,3年の更新限度期間の満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった教員も複数に上っていたことなど判示の事情の下においては,当該労働契約に係る上記3年の更新限度期間の満了後に期間の定めのないものとなったとはいえない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年12月1日 平成27(受)589
登載
集民 第254号21頁
参照法条
労働契約法6条,労働契約法18条
論点2第6条労働契約法

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条2項〈就業規則による労働契約の内容の変更〉所定の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に基づく再雇用の制度を導入した事業主とその従業員との間に,当該制度に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係の存続が認められた事例

裁判要旨高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条2項〈就業規則による労働契約の内容の変更〉所定の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め,継続雇用を希望する高年齢者のうち当該基準を満たす者を再雇用する旨の制度を導入した事業主が,継続雇用を希望する高年齢者たる従業員につき,当該基準を満たしていないとして再雇用しなかった場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,当該事業主と当該従業員との間に,従前の雇用契約の終了後も当該制度に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当である。
(1) 当該基準は,高年齢者の在職中の業務実態及び業務能力に係る査定等の内容を所定の方法で点数化し,総点数が0点以上の高年齢者を再雇用するというものであり,当該制度においては,再雇用される高年齢者の継続雇用の最長期限及び労働時間の上限が定められ,従前の基本給の額及び再雇用後の労働時間から所定の計算式で算出される金額が本給の最低基準とされていた。
(2) 当該従業員は,在職中の業務実態及び業務能力に係る査定等の内容を上記方法で点数化すると,総点数が1点となり,当該基準を満たす者であった。
(3) 従前の雇用契約の終期の到来により当該従業員の雇用が終了したものとすることをやむを得ないものとみるべき特段の事情はうかがわれない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成24年11月29日 平成23(受)1107
登載
集民 第242号51頁
参照法条
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条,労働契約法6条
論点3第6条労働契約法

請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,上記の派遣を違法な労働者派遣と解すべき場合に,注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえないとされた事例

裁判要旨請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,上記の派遣を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」に違反する労働者派遣と解すべき場合において,(1)上記雇用契約は有効に存在していたこと,(2)注文者が請負人による当該労働者の採用に関与していたとは認められないこと,(3)当該労働者が請負人から支給を受けていた給与等の額を注文者が事実上決定していたといえるような事情はうかがわれないこと,(4)請負人が配置を含む当該労働者の具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったことなど判示の事情の下では,注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年12月18日 平成20(受)1240
登載
民集 第63巻10号2754頁
参照法条
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律2条1号,職業安定法4条6項,労働契約法6条,民法623条,民法632条
論点4第7条労働契約法

1 郵便関連業務に従事する期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めが労働契約法7条にいう合理的な労働条件を定めるものであるとされた事例
2 郵政民営化法に基づき設立されて日本郵政公社の業務等を承継した株式会社がその設立時に定めた就業規則により同公社当時の労働条件を変更したものとはいえないとされた事例
3 期間雇用社員に係る有期労働契約が雇止めの時点において実質的に期間の定めのない労働契約と同視し得る状態にあったということはできないとされた事例

裁判要旨1 郵便関連業務に従事する期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めは,次の⑴,⑵など判示の事情の下においては,労働契約法7条〈労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させてい…〉にいう合理的な労働条件を定めるものである。
⑴ 上記期間雇用社員の従事する業務は屋外業務,立った状態での作業,機動車の乗務,機械操作等であるところ,当該就業規則の定めは,高齢の期間雇用社員について,これらの業務に対する適性が加齢により逓減し得ることを前提に,その雇用管理の方法を定めたものである。
⑵ 当該就業規則の定めの内容は,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に抵触するものではない。
2 日本郵政公社の非常勤職員であった者が郵政民営化法に基づき設立されて同公社の業務等を承継した株式会社と有期労働契約を締結して期間雇用社員として勤務している場合において,当該株式会社は,当該株式会社が同公社とは法的性格を異にしていること,当該者が同公社の解散する前に同公社を退職していることなど判示の事情の下においては,期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨をその設立時の就業規則に定めたことにより,同公社当時の労働条件を変更したものということはできない。
3 期間雇用社員に係る有期労働契約は,満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めが当該労働契約の内容になっていること,期間雇用社員が雇止めの時点で満65歳に達していたことなど判示の事情の下においては,当該時点において,実質的に期間の定めのない労働契約と同視し得る状態にあったということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年9月14日 平成29(受)347
登載
集民 第259号89頁
参照法条
(1につき)労働契約法7条,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律8条,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項 (2につき)労働契約法10条,郵政民営化法167条 (3につき)労働契約法19条1号
論点5第8条労働契約法

1 就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無についての判断の方法
2 合併により消滅する信用協同組合の職員が,合併前の就業規則に定められた退職金の支給基準を変更することに同意する旨の記載のある書面に署名押印をした場合において,上記変更に対する当該職員の同意があるとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨1 就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきである。
2 合併により消滅する信用協同組合の職員が,合併前の就業規則に定められた退職金の支給基準を変更することに同意する旨の記載のある書面に署名押印をした場合において,その変更は上記組合の経営破綻を回避するための上記合併に際して行われたものであったが,上記変更後の支給基準の内容は,退職金総額を従前の2分の1以下とした上で厚生年金制度に基づく加算年金の現価相当額等を控除するというものであって,自己都合退職の場合には支給される退職金額が0円となる可能性が高かったことなど判示の事情の下で,当該職員に対する情報提供や説明の内容等についての十分な認定,考慮をしていないなど,上記署名押印が当該職員の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から審理を尽くすことなく,上記署名押印をもって上記変更に対する当該職員の同意があるとした原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成28年2月19日 平成25(受)2595
登載
民集 第70巻2号123頁
参照法条
(1,2につき)労働基準法2条1項,労働契約法3条1項,労働契約法8条,労働契約法9条
論点6第8条労働契約法

労働者と使用者との間に当該労働者の職種及び業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合において、使用者が当該労働者に対してした異なる職種等への配置転換命令につき、配置転換命令権の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨労働者と使用者との間に当該労働者の職種及び業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合において、使用者が当該労働者に対してその同意を得ることなくした異なる職種等への配置転換命令につき、使用者が同命令をする権限を有していたことを前提として、その濫用に当たらないとした原審の判断には、違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和6年4月26日 令和5(受)604
登載
集民 第271号109頁
参照法条
労働契約法3条1項、労働契約法8条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

労働契約法 第6条(労働契約の成立) 詳細ページ
(労働契約の成立)
第六条労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
労働契約法 第7条 詳細ページ
第七条労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
労働契約法 第8条(労働契約の内容の変更) 詳細ページ
(労働契約の内容の変更)
第八条労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
労働契約法 第9条(就業規則による労働契約の内容の変更) 詳細ページ
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
労働契約法 第10条 詳細ページ
第十条使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
労働契約法 第11条(就業規則の変更に係る手続) 詳細ページ
(就業規則の変更に係る手続)
第十一条就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第八十九条及び第九十条の定めるところによる。
労働契約法 第12条(就業規則違反の労働契約) 詳細ページ
(就業規則違反の労働契約)
第十二条就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
労働契約法 第13条(法令及び労働協約と就業規則との関係) 詳細ページ
(法令及び労働協約と就業規則との関係)
第十三条就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第七条、第十条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。