労働関係調整法 / テーマ別まとめ

争議行為

公的資料に現れる論点です。条文と判例から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

労働関係調整法は、労使の主張が対立して起こる争議行為について、政府による自主調整の後押しと、行き過ぎを防ぐための規制を定めています。争議行為・労働争議の定義に加え、安全保持施設の停廃禁止、公益事業での事前通知、内閣総理大臣による緊急調整の決定とその間の争議行為禁止、違反時の罰則までをカバーします。

争議行為
場面求められること違反時
一般の争議行為発生時に届出が必要定めなし
全ての争議行為共通安全保持施設の停廃は不可定めなし
公益事業の争議行為10日前までに通知が必要罰金10万円以下
緊急調整決定後の公益事業通知は50日経過後のみ可罰金10万円以下
  • 緊急調整の対象は公益事業・大規模事業・特別な性質の事業に関する事件に限られる
  • 緊急調整の決定前には内閣総理大臣が中央労働委員会の意見を聴く
  • 決定時は理由を付して公表し、中央労働委員会・関係当事者に通知する
  • 罰金は行為者本人だけでなく法人の役員や団体の代表者にも科され得る
  • 一つの争議行為に科す罰金の総額は10万円が上限
  • 解散した団体も、罰則適用の場面ではなお存続するものとみなす
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争議行為

争議行為について、条文は何を定めているか。

第3条政府は自主調整を助け争議を防ぐ1項判例なし
  • 労使の主張が食い違う時、自主的な解決を政府が後押しする
  • 争議行為をできるだけ防ぐよう政府に努力義務がある
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第35_2条内閣総理大臣が緊急調整を決定できる3項判例なし
  • 公益事業や大規模・特殊な事業で著しい支障の恐れがある時に限る
  • 決定前には中央労働委員会の意見を聴く必要がある
  • 決定時は理由を付して公表し、中央労働委員会と関係当事者に通知
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第36条安全保持施設の停廃は禁止1項判例 1件
  • 工場・事業場の安全保持施設の正常な維持や運行を止めてはいけない
  • 妨げる行為も争議行為としてすることはできない
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第37条公益事業は10日前までに通知2項判例なし
  • 公益事業の争議行為は、実施日の少なくとも10日前に通知が必要
  • 通知先は労働委員会と厚生労働大臣または都道府県知事
  • 緊急調整決定があった事件は、50日の期間経過後でないと通知不可
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第38条決定公表後50日間は争議行為禁止1項判例なし
  • 緊急調整決定の公表日から50日間、争議行為はできない
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第39条予告義務違反への罰則を定める4項判例なし
  • 通知義務(37条〈公益事業に関する事件につき関係当事者が争議行為をするには、その争議行為をしようとする日の少なくとも十日前までに、労働委員…〉)違反は10万円以下の罰金
  • 法人の役員や団体の代表者にも罰則が及ぶ
  • 罰金総額は一つの争議行為につき10万円が上限、解散後も団体は存続扱い
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第6条労働争議の意味を定義する1項判例 5件
  • 主張が一致せず争議行為が発生、または発生の恐れがある状態を指す
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第7条争議行為の意味を定義する1項判例 11件
  • 同盟罷業や怠業、作業所閉鎖などが争議行為に当たる
  • 主張を通す目的の行為と、それに対抗する行為を含む
  • 業務の正常な運営を阻害するものを指す
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第9条争議行為の発生時は届出が必要1項判例なし
  • 争議行為が起きたら直ちに労働委員会か都道府県知事に届け出る
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第36条労働関係調整法

一 精神病院の薬剤師、看護人らが争議行為として投配薬、看護等の業務を放棄することは、労働関係調整法第三六条〈工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことは…〉に違反するか。
二 精神病院従業員の争議行為の正当性の限界。

裁判要旨一 精神病院の薬剤師、看護人、看護婦が争議行為として投配薬、診療の補助、看護等の業務を放棄することは、労働関係調整法第三六条〈工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことは…〉に違反しない。
二 精神病院の従業員が争議行為を行うにあたつては、予め患者の生命・身体の保全に遺憾なきを期するとともに、患者の身体・精神の回復をはかるべき病院の使命に対する管理者側の真摯な努力にもかかわらず、緊急事態発生の客観的危険性が現われた場合には、その善後措置に協力すべき義務があり、右保全の措置を怠りまたは右協力義務に違反すれば、争議行為は、正当性の範囲を逸脱するものと解すべきであるが、単に争議行為により患者の治療に支障を来たす事態が発生したというだけの理由で、直ちにその争議行為が不当になるものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年8月4日 昭和36(オ)1379
登載
民集 第18巻7号1263頁
参照法条
労働関係調整法36条,労働組合法7条1号
論点2第6条労働関係調整法

団体行動権の行使と認められない一事例

裁判要旨某会社がその従業員一三名に対し解雇通知および同会社への立入禁止の通告をしたのに対し、同会社労働組合側では右解雇通知の当否を調査し、不当なものについては法定の手続によつて救済を求むべく事後の対策を協議中にもかかわらず、右解雇および立入禁止の通告を受けた二名およびこれを関知した同会社従業員でもなく同会社労働組合員でもない一〇名の者が、同組合の右解雇通知に対する闘争態勢を強化し同会社をして右措置を撤回せしめようと企図して、同組合とかかわりなく同会社本社構内にほしいままに立入つた所為は、団体行動権の行使ということはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和31年10月24日 昭和28(あ)56
登載
刑集 第10巻10号1500頁
参照法条
憲法28条,労働組合法1条2項,労働関係調整法6条,労働関係調整法7条,刑法35条
論点3第6条労働関係調整法

正当な争議行為とは認められない一事例

裁判要旨国鉄当局の業務命令に違反して禁止された電車を運転し、しかもその出発に当つて多数の威力を用いて信号掛を威嚇して進行信号現示のやむなきに至らしめた場合の如きは、正当な争議行為ということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年12月23日 昭和26(あ)5000
登載
刑集 第8巻13号2175頁
参照法条
労働関係調整法6条,労働関係調整法7条,労働組合法1条,公共企業体労働関係法17条,憲法28条
論点4第6条労働関係調整法

労働争議に対する激励行為を逸脱した構内侵入と建造物侵入罪の成立

裁判要旨原判決が証拠に基き適法に確定したところによれば、被告人の本件侵入行為は団体交渉のためではなく、被告人の属するA労働組合でない他の組合である判示B化学工業株式会社D工業所の労働組合の争議に対する激励のためのデモ敢行のためであり、また、本件工場内にはいわゆる賠償工場に指定されているものも点在し前日における再三に亘るデモ隊の行進状況から見て使用者側が右賠償工場等にいかなる危険の及ぶかも測られぬことも危惧して正門を閉ざすことも巳むを得ないところであつて、使用者側が正門を閉してデモ隊の入門を拒否し得る特別の事情があつたのでこれを拒否したところ、被告人等デモ隊員の或る者は工業所人事課調査係員Cの左頬をなぐりその奥歯が折れるような暴行を加え、そのことから双方乱闘に入り斯くて被告人等は同工業所の正門(鉄さく高さ五尺位)を乗り越えて同所構内に侵入した場合には建造物侵入罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年1月17日 昭和26(れ)1952
登載
刑集 第6巻1号93頁
参照法条
憲法28条,刑法130条,労働組合法(昭和24年法律174号による改正前)1条,労働組合法(昭和24年法律174号による改正前)10条,労働関係調整法6条
論点5第6条労働関係調整法

一 正当争議行為にあたらない一事例
二 争議行為にあたらない一事例

裁判要旨一 労働争議中の工場に擅に入場する行為は、たとえ争議目的達成のためなされたしても、憲法第二八条、労働組合法第一条の正当行為にあたらない。
二 労働関係の当事者たる労働組合員以外の者が、労働争議中組合の争議行為を応援するためにした行為は、争議行為にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年7月12日 昭和26(れ)782
登載
刑集 第5巻8号1432頁
参照法条
憲法28条,労働組合法1条(昭和24年法律174号による改正前のもの),労働関係調整法6条,刑法130条
論点6第6条労働関係調整法

一 労働争議にあたらない一場合
二 勞働組合法第一一條違反の所爲があるから提訴すると告知して不當に財物を取得した者の責任

裁判要旨一 労働者が退職後、会社に対して個人的な契約上の主張をして争うことは、労働関係調整法にいわゆる労働争議にあたらない。
二 假りに被告人が被害者Aの所爲は勞働組合法第一一條に違反するとして(原判決は同條に違反すると認定したものではない)これを地方勞働委員會に提訴する權利を有すると考えたとしても、Aにおいて提訴されることは不利益な害惡であるとしてこれを避けようとすることは人情の然らしむるところであるから、其の弱點に乘じて提訴すべき旨を告知して右Aを畏怖せしめ(原判決は畏怖せしめたと認定したものである)適法に取得することのできない財物の交付を受けることは恐喝罪を構成するものと解しなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和24年4月5日 昭和23(れ)1999
登載
刑集 第3巻4号437頁
参照法条
労働関係調整法6条,刑法249條1項
論点7第7条労働関係調整法

ロツクアウトが違法とされた事例

裁判要旨A原子力研究所の労働組合が、D研究所における動力試験炉の連続運転に関する交替制の勤務体制の変更に反対して、二四時間を三分した勤務時間帯の一つに勤務すべき組合員につき連日ストライキを実施し、これにより動力試験炉の運転が完全に停止することとなつたため、A原子力研究所はこれに対抗して右動力試験炉の管理部門に所属する組合員に対しロックアウトを行つたが、右勤務体制の変更は労働協約に違反し労働条件を不利益に変更するものであり、これに関する労使間の交渉経過からみて労働組合の態度のみを一方的に非難することはできず、また、右ストライキは目的、態様において不当又は不公正なものとはいえず、これにより同研究所の被る損失、打撃の程度もさほど大きなものではないなど、判示の事実関係のもとにおいては、使用者側が、ロックアウトの開始時においても、その後においても、著しく不利な圧力を受けるような場合であつたとはいえず、右ロックアウトは、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を欠き、違法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年6月13日 昭和53(行ツ)29
登載
民集 第37巻5号636頁
参照法条
労働組合法8条,労働関係調整法7条
論点8第7条労働関係調整法

一 ロックアウトが違法とされた事例
二 ロックアウトの一部を部分ロックアウトとして可分的に効力を判断することが許されないとされた事例

裁判要旨一 一般放送事業等を営む株式会社の労働組合が十数波にわたる時限ないし指名ストライキ及び放送業務の中枢部門における新勤務拒否闘争等の争議行為を行つたが、会社はこれらのストライキの一部を事前に予測して応急措置を講ずることができ、また、新勤務拒否闘争によつて具体的な放送業務の障害又は放送事故は発生せず、そのような事故等の発生する具体的な緊迫した危険もなかつたなど、判示の事実関係のもとでは、ロックアウト突入当時の会社の全部門の観点からみれば、いまだ労使の勢力の均衡が破れて使用者側が著しく不利な圧力を受けている情勢にあつたということはできず、右争議行為に対して会社が本柱社屋全体についてした全面ロックアウトは、組合の争議行為に対する対抗防衛手段として相当性を欠き、違法である。
二 会社が本社社屋の重要部分をバリケード及び有刺鉄線で囲んで組合員の立入りを禁止したなど判示の事実関係のもとでは、本社社屋全体について一体不可分のロックアウトがされたものというべきであるから、本件ロックアウトの一部を部分ロックアウトとして可分的にその効力を判断することは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年4月11日 昭和51(オ)541
登載
民集 第34巻3号330頁
参照法条
労働組合法8条,労働関係調整法7条
論点9第7条労働関係調整法

一 威力業務妨害罪によつて保護されるべき業務にあたるとされた事例
二 バス会社のストライキに際し組合側の争議手段として行われたいわゆる車両確保行為が威力業務妨害罪又は建造物侵入罪の違法性に欠けるところがないとされた事例

裁判要旨一 バス会社がストライキに参加しない従業員によつて操業を継続するために必要とした本件車両の分散及び保全看守は、それが操業を阻止する手段として組合側の計画していた車両の確保に対する対抗措置として行われたものであつても、威力業務妨害罪によつて保護されるべき業務にあたる。
二 バス会社のストライキに際し、多数人による暴力を伴う威力を用いて会社が回送中又は路上に駐車中のバスを奪つて組合側の支配下に置きあるいは多数の威力を示して会社が取引先の整備工場又は系列下の自動車学校に預託中のバスを搬出しようとして建造物に侵入した本件車両確保行為は、判示のような諸般の事情に照らし法秩序全体の見地からみるとき、威力業務妨害罪又は建造物侵入罪の違法性に欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和53年11月15日 昭和52(あ)583
登載
刑集 第32巻8号1855頁
参照法条
刑法35条,刑法130条,刑法234条,労働関係調整法7条,労働組合法1条
論点10第7条労働関係調整法

ロツクアウトの継続が違法とされた事例

裁判要旨組合がその組合員数を半減し力も弱くなつていたのに対し、会社(タクシー会社)はD組合員等によつてタクシーの車両数も増やして平常に近い営業を行い、その経営内容も著しく改善されるなど判示の事情があるときは、組合の就労要求を拒否した時点以降会社が継続したロツクアウトは、使用者の正当な争議行為と認められず、会社は右時点以降の賃金支払義務を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年2月28日 昭和47(オ)440
登載
集民 第120号185頁
参照法条
労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
論点11第7条労働関係調整法

いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)が正当性を欠くとしてその期間中における使用者の賃金支払義務が認められた事例

裁判要旨省略
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年7月17日 昭和48(オ)267
登載
集民 第115号465頁
参照法条
労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
論点12第7条労働関係調整法

一、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)の正当性
二、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)とその期間中における使用者の賃金支払義務

裁判要旨一、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)は、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過組合側の争議行為の態様、それによつて使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められる場合には、使用者の正当な争議行為として是認される。
二、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)をした使用者は、それが正当な争議行為として是認される場合には、その期間中における対象労働者に対する賃金支払義務を免れる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年4月25日 昭和44(オ)1256
登載
民集 第29巻4号481頁
参照法条
労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
論点13第7条労働関係調整法

一 生産管理と威力による業務妨害罪の成立
二 生産管理の違法性
三 労働関係調整法第七条〈この法律において争議行為とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ…〉と争議行為の適法性

裁判要旨一 生産管理として多数の威力をもつて会社の事業の管理即ち支配を排除した以上、刑法第二三四条の業務妨害が成立する。
二 経営権と労働権との対等を保障している現行の法律秩序からすれば、両者の間に労働協約による特別の定めがないかぎり、企業経営、生産行程の指揮命令は使用者側の権限に属するのであるから、同盟罹業が有効でないからといつて使用者側に属する生産手段の管理を排除してそれを組合側の実力支配の下におくところの、いわゆる生産管理は適法の争議行為といえない。
三 労働関係調整法第七条〈この法律において争議行為とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ…〉は争議行為の定義を掲げただけであるから、具体的争議行為の適法性は別個の観点から判断すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年2月22日 昭和25(れ)1902
登載
刑集 第6巻2号288頁
参照法条
労働関係調整法7条,労働組合法(昭和24年法律174号による改正前のもの)1条,刑法234条,刑法233条
論点14第7条労働関係調整法

一 労働関係調整法第七条〈この法律において争議行為とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ…〉と正当争議行為
二 生産管理開始のときから占有していた物を後に領得した行為の擬律
三 労働組合法第一条第二項と刑法第三五―争議行為の正当性
四 生産管理において労働者の団体が工場、設備、資材等を接収してその占有下においた場合には会社側の占有を完全に離脱するか
五 労働者が生産管理中の工場から争議期間中の賃金支払にあてる目的をもつて工場資材を工場外に搬出した行為と窃盗罪の成立
六 生産管理と同盟罷業との関係―生産管理の違法性
七 憲法と勤労者の争議権―争議行為の正当性の限界
八 生産管理と労働関係調整法第七条にいわゆる「その他」の行為

裁判要旨一 労働関係調整法第七条〈この法律において争議行為とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ…〉は、争議行為の定義を掲げただけであつて、争議行為の正当性は別個の観点から判断すべきものである。
二 被告人等が本件生産管理開始のときから判示鉄板を占有していたとしても、それは違法の占有であるから、後にこれを領得しても横領罪とはならず窃盗罪となる。
三 労働組合法第一条第二項は、労働組合の団体交渉その他の行為について無条件に刑法第三五条の適用があることを規定しているのではなく唯労働組合法所定の目的達成のために為した正当な行為についてのみ適用を認めているに過ぎない(昭和二二年(れ)第三一九号同二四年五月一八日最高裁判所大法廷判決参照)。如何なる争議行為を以て正当とするかは、具体的に個々の争議につき、争議の目的並びに争議手段としての各個の両面に亘つて、現行法秩序全体との関連において決すべきである。従つて至産管理及び生産管理中の個々の行為が、すべて当然に正当行為であるとの論旨は理由がない。
四 原判決が、生産管理においては労働者の団体が工場、設備、資材等一切のものを接収してその占有下におくと判示し、本件においては被告人が既に生産管理に入つたものであることを認めながら、而も他方において判示鉄板は「会社の占有を完全に離脱したものでない」と判示したのは、生産管理開始により労働者の図体が工場、設備、資材等一切のものを自己の支配下におき占有を取得したと言つても、個々の資材物件等については、それが会社構内に存置せられる以上、会社側にもなお占有が存するという趣旨に解すべきである。
五 論旨は、原判決が、本件鉄板は会社の占有を完全に離脱したものではないので被告人等が壇にこれを工場外に搬出した行為は会社の所持を奪つたものであり、窃盗の罪責を免れない、と判示したことを非難し生産管理の下においては占有の所持は労働者側にあり、会社は観念上間接占有を有するに過ぎないから、所持の奪取即ち窃盗はあり得ないい。被告人等には占有奪取の意思もなく、不正領得の意思もなかつたと主張する。しかし労働者側がいわゆる生産管理開始のとき工場、設備、資材等をその占有下においたのは違法の占有であり、判示鉄板についてもそのとき会社側の占有に対して占有の侵奪があつたというべきであるが、原判決はこれを工場外に搬出したとき不法領得の実現行為があつたものと認定したものである。これを証拠に照らし合わせて考えてみても、被告人等が争議期間中の労働者の賃金支払等に充てるために売却する目的を以て、会社側の許可なくしてこれを工場外に運び出し、自己の事実上の支配内に收めた行為は、正に不法領得の意思を以て会社の所持を奪つたものというべきであつて、原判決が窃盗罪にあたるものとしたのは当然である。
六 論旨は生産管理が同盟罷業と性質を異にするものでないということを理由として、生産管理も同盟罷業と同様に違法性を阻却される争議行為であると主張する。しかしわが国現行の法律秩序は私有財産制度を基幹として成り立つており、企業の利益と損失とは資本家に帰する。従つて企業の経営、生産行程の指揮命令は、資本家又はその代理人たる経営担当者の権限に属する。労働者が所論のように企業者と並んで企業の担当者であるとしても、その故に当然に労働者が企業の使用收益権を有するのでもなく、経営権に対する権限を有するものでもないい。従つて労働者側が企業者側の私有財産の基幹を揺がすような争議手段は許されない。なるほど同盟罷業も財産権の侵害を生ずるけれども、それは労働力の給付が積務不履行となるに過ぎない。然るに本件のようないわゆる生産管理に於ては、企業経営の権能を権利者の意思を排除して非権利者が行うのである。それ故に同盟罷業も生産管理も財産権の侵害である点においては同様であるからとて、その相違点を無視するわけにはゆかない。前者において違法性が阻却されるからとて、後者においてもそうだという理由はない。
七 論旨は、憲法が労働者の争議権を認めたことを論拠として、従来の市民法的個人法的観点を楊棄すべきことを説き、かような立場から労働者が争議によつて使用者たる資本家の意思を抑圧してその要求を貫徹することは不当でもなく違法でもないと主張する。しかし憲法は勤労者に対して団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障すると共に、すべての国民に対して平等権、自由権、財産権等の基本的人権を保障しているのであつて、是等諸々の基本的人権が労働者の争議権の無制限な行使の前に悉く排除されることを認めているのでもなく、後者が前者に対して絶対的優位を有することを認めているのでもない。寧ろこれ等諸々の一般的基本的人権と労働者の権利との調和をこそ期待しているのであつて、この調和を破らないことが、即ち争議権の正当性の限界である。その調和点を何処に求めるべきかは、法律制度の精神を全般的に考察して決すべきである。固より使用者側の自由権や財産権と雖も絶対無制限ではなく、労働者の団体行動権等のためある程度の制限を受けるのは当然であるが、原判決の判示する程度に、使用者側の自由意思を抑圧し、財産に対する支配を阻止することは、許さるべきでないと認められる。それは労働者側の争議権を偏重して使用者側の権利を不当に侵害し、法が求める調和を破るものだからである。
八 論旨は、原判決を以て、生産管理の本質を誤り、生産管理が争議権行使の一方法であることを否認し、争議権行使の方法を制限した違法あるものとして、非難すると共に、生産管理が労働関係調整法第七条にいわゆる「その他」の行為の中に含まれるということを論拠として、労働者が争議方法として生産管理を行うことには何等の制限を受くべきでないと主張する。しかし右の法条は争議行為の定義を掲げただけであつて、争議行為又はそれに伴う諸々の行為がすべて適法又は正当であると言つているのではない。従つて生産管理が右の「その他」の行為の中に含まれるとしても、そのことだけから、生産管理を行う自由があると即断することはできない。具体的争議行為の適法性の限界については、別個の観点から判断されなければならない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和25年11月15日 昭和23(れ)1049
登載
刑集 第4巻11号2257頁
参照法条
労働関係調整法7条,刑法235条,刑法252条,刑法35条,労働組合法1条2項,労働組合法1条,憲法12条,憲法28条,憲法29条
論点15第7条労働関係調整法

時限ストライキ等の争議行為のため受注を返上せざるを得なくなったことなどにより損害を被った生コンクリート製造販売業者のしたロックアウトが使用者の正当な争議行為と認められた事例

裁判要旨生コンクリート製造販売業者が時限ストライキ等の争議行為に対しロックアウトをした場合において,上記時限ストライキの態様から,上記業者は,取引慣行上,その日の受注の全部を返上するなどして,終日事実上休業の状態にせざるを得ず,時限ストライキが解除された後に従業員が提供した労務は,就労しなかった時間に係る減額がされた後の賃金にも到底見合わないものであったこと,上記業者は,上記争議行為が開始された後,受注が減少して資金繰りが著しく悪化し,納入先の信用も損なわれ,甚大な損害を被ったこと,上記争議行為における従業員らの要求は,同人ら全員が以前所属していた組合と上記業者との間に成立していた合意を,同人らが上記組合を脱退した直後に覆そうとするものであることなど判示の事情の下では,上記ロックアウトは,衡平の見地からみて,上記争議行為に対する対抗防衛手段として相当であり,使用者の正当な争議行為と認められる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年4月18日 平成15(受)723
登載
民集 第60巻4号1548頁
参照法条
労働組合法8条,労働関係調整法7条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

労働関係調整法 第3条 詳細ページ
第三条政府は、労働関係に関する主張が一致しない場合に、労働関係の当事者が、これを自主的に調整することに対し助力を与へ、これによつて争議行為をできるだけ防止することに努めなければならない。
労働関係調整法 第35_2条 詳細ページ
第三十五条の二内閣総理大臣は、事件が公益事業に関するものであるため、又はその規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるために、争議行為により当該業務が停止されるときは国民経済の運行を著しく阻害し、又は国民の日常生活を著しく危くする虞があると認める事件について、その虞が現実に存するときに限り、緊急調整の決定をすることができる。
2内閣総理大臣は、前項の決定をしようとするときは、あらかじめ中央労働委員会の意見を聴かなければならない。
3内閣総理大臣は、緊急調整の決定をしたときは、直ちに、理由を附してその旨を公表するとともに、中央労働委員会及び関係当事者に通知しなければならない。
労働関係調整法 第36条 詳細ページ
第三十六条工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。
労働関係調整法 第37条 詳細ページ
第三十七条公益事業に関する事件につき関係当事者が争議行為をするには、その争議行為をしようとする日の少なくとも十日前までに、労働委員会及び厚生労働大臣又は都道府県知事にその旨を通知しなければならない。
2緊急調整の決定があつた公益事業に関する事件については、前項の規定による通知は、第三十八条に規定する期間を経過した後でなければこれをすることができない。
労働関係調整法 第38条 詳細ページ
第三十八条緊急調整の決定をなした旨の公表があつたときは、関係当事者は、公表の日から五十日間は、争議行為をなすことができない。
労働関係調整法 第39条 詳細ページ
第三十九条第三十七条の規定の違反があつた場合においては、その違反行為について責任のある使用者若しくはその団体、労働者の団体又はその他の者若しくはその団体は、これを十万円以下の罰金に処する。
2前項の規定は、そのものが、法人であるときは、理事、取締役、執行役その他法人の業務を執行する役員に、法人でない団体であるときは、代表者その他業務を執行する役員にこれを適用する。
3一個の争議行為に関し科する罰金の総額は、十万円を超えることはできない。
4法人、法人でない使用者又は労働者の組合、争議団等の団体であつて解散したものに、第一項の規定を適用するについては、その団体は、なほ存続するものとみなす。
労働関係調整法 第6条 詳細ページ
第六条この法律において労働争議とは、労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致しないで、そのために争議行為が発生してゐる状態又は発生する虞がある状態をいふ。
労働関係調整法 第7条 詳細ページ
第七条この法律において争議行為とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ行為及びこれに対抗する行為であつて、業務の正常な運営を阻害するものをいふ。
労働関係調整法 第9条 詳細ページ
第九条争議行為が発生したときは、その当事者は、直ちにその旨を労働委員会又は都道府県知事に届け出なければならない。
出

一次情報

原文ママ

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