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罪/名誉に対する罪

名誉に対する罪の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

名誉に対する罪は、公然と事実を示して人の評価を傷つける名誉毀損と、事実を示さずに人を侮辱する行為を処罰する規定です。公共の利害に関わる事実で真実性が証明された場合の特例や、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪である点も定めています。

名誉に対する罪
条文行為処罰の要否・特例
230条1項公然と事実摘示・名誉毀損事実の真偽を問わず処罰
230条2項死者への名誉毀損虚偽事実の摘示のみ処罰
230条の2公益目的・公共利害事実真実の証明で不処罰
231条事実摘示なしの侮辱公然の侮辱のみで処罰
232条この章の罪の訴追告訴がなければ起訴不可
  • 230条の2第2項:未起訴の犯罪事実は公共の利害に関する事実とみなす
  • 230条の2第3項:公務員・公選候補者に関する事実は真実証明で不処罰
  • 232条2項:天皇等は内閣総理大臣が、外国元首等はその国の代表者が代わって告訴
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名誉に対する罪

名誉に対する罪について、条文は何を定めているか。

第230条名誉毀損公然と事実を示して名誉を傷つけると処罰される2項判例 25件
  • 事実であってもなくても、公然と摘示すれば処罰対象
  • 法定刑は三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金
  • 死者の場合は虚偽の事実を示したときのみ処罰
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第230_2条公共の利害に関する場合の特例公益目的で真実なら名誉毀損でも罰しない特例3項判例なし
  • 公共の利害に関する事実かつ専ら公益目的なら真実証明で不処罰
  • 未起訴の犯罪事実は公共の利害に関する事実とみなす
  • 公務員・公選候補者の事実は真実証明があれば不処罰
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第231条侮辱事実を示さなくても侮辱すれば処罰される1項判例 6件
  • 具体的事実の摘示がなくても公然の侮辱行為で成立
  • 法定刑は一年以下の拘禁刑・三十万円以下の罰金・拘留・科料
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第232条親告罪被害者側の告訴がなければ起訴できない2項判例なし
  • この章の罪は告訴がないと公訴を提起できない
  • 天皇・皇后等は内閣総理大臣が代わって告訴
  • 外国の君主・大統領はその国の代表者が代わって告訴
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第230条刑法

一 人格権又は条理を根拠とするいわゆる反論文掲載請求権の成否

二 新聞紙上における政党間の批判・論評の意見広告につき名誉毀損の不法行為の成立が否定された事例

裁判要旨一 新聞記事に取り上げられた者は、当該新聞紙を発行する者に対し、その記事の掲載により名誉毀損の不法行為が成立するかどうかとは無関係に、人格権又は条理を根拠として、右記事に対する自己の反論文を当該新聞紙に無修正かつ無料で掲載することを求めることはできない。

二 新聞社が新聞紙上に掲載した甲政党の意見広告が、乙政党の社会的評価の低下を狙つたものであるが乙政党を批判・論評する内容のものであり、かつ、その記事中乙政党の綱領等の要約等が一部必ずしも妥当又は正確とはいえないとしても、右要約のための綱領等の引用文言自体は原文のままであり、要点を外したものといえないなど原判示の事実関係のもとでは、右広告の掲載は、その広告が公共の利害に関する事実にかかり専ら公益を図る目的に出たものであり、かつ、主要な点において真実の証明があつたものとして、名誉毀損の不法行為となるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年4月24日 昭和55(オ)1188
登載
民集 第41巻3号490頁
参照法条
憲法21条,民法1条,民法709条,民法710条,民法723条,刑法230条ノ2
論点2第230条刑法

一 出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めと憲法二一条二項前段にいう検閲
二 名誉侵害と侵害行為の差止請求権
三 公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関する出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めの許否
四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合と口頭弁論又は債務者審尋

裁判要旨一 雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、憲法二一条二項前段にいう検閲に当たらない。
二 名誉侵害の被害者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。
三 人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めは、右出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものである場合には、原則として許されず、その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときに限り、例外的に許される。
四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合には、原則として口頭弁論又は債務者の審尋を経ることを要するが、債権者の提出した資料によつて、表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、債権者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があると認められるときは、口頭弁論又は債務者の審尋を経なくても憲法二一条の趣旨に反するものとはいえない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和61年6月11日 昭和56(オ)609
登載
民集 第40巻4号872頁
参照法条
憲法13条,憲法21条,民訴法757条2項,民訴法760条,民法1条ノ2,民法198条,民法199条,民法709条,民法710条,刑法230条ノ2
論点3第230条刑法

一 私人の私生活上の行状と刑法二三〇条の二項一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」

二 刑法二三〇条の二第一項〈公共の利害に関する場合の特例〉にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるとされた事例

三 刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かの判断方法

裁判要旨一 私人の私生活上の行状であつても、そのたずさわる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによつては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法二三〇条の二第一項〈公共の利害に関する場合の特例〉にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる場合がある。

二 多数の信徒を擁するわが国有数の宗教団体の教義ないしあり方を批判しその誤りを指摘するにあたり、その例証として摘示した「右宗教団体の会長(当時)の女性関係が乱脈をきわめており、同会長と関係のあつた女性二名が同会長によつて国会に送り込まれていること」などの事実は、同会長が、右宗教団体において、その教義を身をもつて実践すべき信仰上のほぼ絶対的な指導者であつて、公私を問わずその言動が信徒の精神生活等に重大な影響を与える立場にあつたなど判示の事実関係のもとにおいては、刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる。

三 刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断されるべきであり、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、同条にいわゆる公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがらであつて、摘示された事実が「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かの判断を左右するものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年4月16日 昭和55(あ)273
登載
刑集 第35巻3号84頁
参照法条
刑法230条ノ2第1項
論点4第230条刑法

一 名誉毀損の摘示事実につき真実と誤信する相当の根拠がないとされた事例
二 弁護人が被告人の利益擁護のためにした行為と刑法上の違法性の阻却
三 弁護人が被告人の利益擁護のためにした名誉毀損行為につき正当な弁護活動として刑法上の違法性が阻却されないとされた事例

裁判要旨一 被告人以外の特定人が真犯人である旨の名誉毀損の摘示事実(判文参照)については、本件に現われた資料に照らすと、真実と誤信するのが相当であると認めうる程度の根拠は、存在しない。
二 弁護人が被告人の利益を擁護するためにした行為につき刑法上の違法性の阻却を認めるためには、それが弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮して、法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならないのであり、かつ、その判断にあたつては、その行為が法令上の根拠をもつ職務活動であるかどうか、弁護目的の達成との間にどのような関連性をもつか、弁護を受ける被告人自身がこれを行つた場合に刑法上の違法性の阻却を認めるべきどうかの諸点を考慮に入れるのが相当である。
三 被告人以外の特定人が真犯人であることを広く社会に報道して、世論を喚起し、被告人を無罪とするための証拠の収集につき協力を求め、かつ、最高裁判所の職権発動による原判決の破棄ないしは再審請求の途をひらくため、右の特定人が真犯人である旨の事実摘示をした名誉毀損行為(判文参照)は、弁護人の相当な弁護活動として刑法上の違法性を阻却されるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年3月23日 昭和46(あ)758
登載
刑集 第30巻2号229頁
参照法条
刑法35条,刑法230条1項,刑法230条ノ2
論点5第230条刑法

名誉毀損の摘示事実を真実と誤信したことにつき相当の理由がないとされた事例

裁判要旨公然事実を摘示し人の名誉を毀損した者が、摘示事実を真実であると誤信したとしても、その誤信が、係属中の刑事事件の一方の当事者の主張ないし要求または抗議等で断片的な客観性のない資料に基づくものであるときは、右誤信は相当の理由があるものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年10月22日 昭和45(あ)2524
登載
刑集 第25巻7号838頁
参照法条
刑法230条1項,刑法230条ノ2第1項,刑法230条ノ2第3項
論点6第230条刑法

事実を真実と誤信したことにつき相当の理由がある場合と名誉毀損罪の成否

裁判要旨刑法二三〇条ノ〈名誉毀損 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。〉二第一項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和44年6月25日 昭和41(あ)2472
登載
刑集 第23巻7号975頁
参照法条
刑法230条ノ2第1項
論点7第230条刑法

人の噂であるという表現を用いて名誉を毀損した場合と刑法第二三〇条ノ二にいわゆる事実の証明の対象

裁判要旨「人の噂であるから真偽は別として」という表現を用いて公務員の名誉を毀損する事実を摘示した場合において、刑法第二三〇条ノ〈名誉毀損 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。〉二所定の事実の証明の対象となるのは、風評そのものの存在ではなく、その風評の内容たる事実が真実であることと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年1月18日 昭和42(あ)361
登載
刑集 第22巻1号7頁
参照法条
刑法230条ノ2
論点8第230条刑法

一 人権侵害、労働基準法違反等の疑があるとして関係官庁において調査を開始したという事実の報道と名誉毀損罪の成否
二 刑訴法第四一一条第一号にあたる事例

裁判要旨一 苟も人権侵害、労働基準法違反等の疑があるとして関係官庁において該事実の有無について調査を開始したという事実の如きは公益に影響を及ぼすべき問題であるから報道機関としての新聞紙がこれを取り上げ報道することは許容さるべきところである。註第一、二審判決は高等裁判所判例集第一〇巻一号五〇頁に登載されている。
二 名誉毀損幇助被告事件において、控訴事実となつている被告人の談話の記事がK新聞の「年少者も酷使?N営業所人権問題労基署でも調査へ」なる見出のもとに掲載された社会ニユース記事の一部分をなし、そのニユース記事の構造上これを綜合的全体的に考察するを相当とする場合に、単に被告人の談話部分のみを名誉毀損罪の成否の対象とするにととまり、右ニユース記事を取材した記者及びその編集責任者に同罪の正犯としての要件がそなわつているか否の点についての審理を尽さず、たやすく被告人のした談話をもつて名誉毀損罪の幇助に当るものとしたときは、刑訴第四一一条第一号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年12月16日 昭和32(あ)523
登載
刑集 第14巻14号2126頁
参照法条
刑法230条,刑法230条1項,刑法62条1項,昭和20年9月19日附連合国最高司令官の日本政府に対する覚書「新聞規則」,刑訴法411条1号
論点9第230条刑法

刑法第二三〇条第一項〈名誉毀損〉または第二三一条〈侮辱〉にいう「公然」にあたらない事例―検事取調室における被告訴人の告訴人に対する発言。

裁判要旨甲の乙に対する発言が、乙のほかに、同人が甲を被告訴人として告訴した脅迫被疑事件の取調担当検事および検察事務官の二人だけが捜査担当官として在室中の検事取調室内で行われたときは、刑法二三〇条第一項〈名誉毀損〉または第二三一条〈侮辱〉にいう「公然」なされたものということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和34年2月19日 昭和34(し)6
登載
刑集 第13巻2号186頁
参照法条
刑法230条1項,刑法231条
論点10第230条刑法

刑法第二三〇条第一項〈名誉毀損〉または第二三一条〈侮辱〉にいう「公然」にあたらない事例。

裁判要旨甲の乙に対する発言が、甲のほかに同人の母および妻の二人だけが居合わせた甲の自宅玄関内で行われたときは、刑法第二三〇条第一項〈名誉毀損〉または第二三一条〈侮辱〉にいう「公然」なされたものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和34年12月25日 昭和34(し)49
登載
刑集 第13巻13号3360頁
参照法条
刑法230条1項,刑法231条
論点11第230条刑法

名誉毀損罪として起訴された事実を侮辱罪と認定する場合と公訴の時効

裁判要旨検察官が犯行後一年一月余を経過したときに名誉毀損罪として公訴を提起した公訴事実を裁判所が侮辱罪に該当する所為と認めるときは、被告人に対し公訴の時効が完成したものとして免訴の言渡をなすべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年4月12日 昭和30(あ)1305
登載
刑集 第10巻4号540頁
参照法条
刑訴法250条,刑訴法337条4号,刑訴法411条1号,刑法230条,刑法231条
論点12第230条刑法

被告人の防禦権の行使と名誉毀損罪の成立

裁判要旨誣告被告事件の公判廷において、被告人が弁解として故意に虚偽の事実を陳述して、公然誣告の相手方の名誉を毀損することは、被告人としての防禦権を濫用するものであつて、その行為につき名誉毀損罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月7日 昭和26(れ)1931
登載
刑集 第6巻3号441頁
参照法条
旧刑訴法135条,旧刑訴法338条,刑法230条,刑法35条
論点13第230条刑法

公立小学校における通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とするビラの配布行為が名誉侵害としての違法性を欠くとされた事例

裁判要旨公立小学校教師の氏名・住所・電話番号等を記載し、かつ、有害無能な教職員等の表現を用いた大量のビラを繁華街等で配布した場合において、右ビラの内容が、一般市民の間でも大きな関心事になつていた通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とする意見表明であつて、専ら公益を図る目的に出たものに当たらないとはいえず、その前提としている客観的事実の主要な点につき真実の証明があり、論評としての域を逸脱したものでないなど判示の事実関係の下においては、右配布行為は、名誉侵害としての違法性を欠く。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年12月21日 昭和60(オ)1274
登載
民集 第43巻12号2252頁
参照法条
民法709条,民法723条,刑法230条ノ2第1項,刑法230条ノ2第3項
論点14第230条刑法

一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損において行為者が右事実を真実と信ずるにつき相当の理由がある場合の不法行為の成否
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事における事実の摘示と意見ないし論評の表明との区別
三 特定の者について新聞報道等により犯罪の嫌疑の存在が広く知れ渡っていたこととその者が当該犯罪を行ったと公表した者において右のように信ずるについての相当の理由

裁判要旨一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に、行為者において右意見等の前提としている事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは、その故意又は過失は否定される。
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事が、意見ないし論評の表明に当たるかのような語を用いている場合にも、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や記事の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは、右記事は、右事項についての事実の摘示を含むものというべきである。
三 特定の者が犯罪を犯したとの嫌疑が新聞等により繰り返し報道されていたため社会的に広く知れ渡っていたとしても、このことから、直ちに、右嫌疑に係る犯罪の事実が実際に存在したと公表した者において、右事実を真実であると信ずるにつき相当の理由があったということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年9月9日 平成6(オ)978
登載
民集 第51巻8号3804頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点15第230条刑法

新聞社が通信社からの配信に基づき自己の発行する新聞に記事を掲載するに当たり当該記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があるといえる場合

裁判要旨新聞社が,通信社からの配信に基づき,自己の発行する新聞に記事を掲載した場合において,少なくとも,当該通信社と当該新聞社とが,記事の取材,作成,配信及び掲載という一連の過程において,報道主体としての一体性を有すると評価することができるときは,当該通信社が当該配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があるのであれば,当該新聞社が当該配信記事に摘示された事実の真実性に疑いを抱くべき事実があるにもかかわらずこれを漫然と掲載したなど特段の事情のない限り,当該新聞社が自己の発行する新聞に掲載した記事に摘示された事実を真実と信ずるについても相当の理由があり,以上の理は,新聞社が掲載した記事に,これが通信社からの配信に基づく記事である旨の表示がない場合であっても異なるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成23年4月28日 平成21(受)2057
登載
民集 第65巻3号1499頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点16第230条刑法

1 インターネットの個人利用者による名誉毀損と摘示事実を真実と誤信したことについての相当の理由
2 インターネットの個人利用者による名誉毀損行為につき,摘示事実を真実と誤信したことについて相当の理由がないとされた事例

裁判要旨1 インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても,他の表現手段を利用した場合と同様に,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって,より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきではない。
2 インターネットの個人利用者が,摘示した事実を真実であると誤信してした名誉毀損行為について,その根拠とした資料の中には一方的立場から作成されたにすぎないものもあることなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,上記誤信について,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成22年3月15日 平成21(あ)360
登載
刑集 第64巻2号1頁
参照法条
(1,2につき) 刑法230条1項,刑法230条の2第1項
論点17第230条刑法

我が国における加熱血液製剤の製造承認等に関する雑誌記者等の執筆者がその記事等に摘示されている事実を真実であると信じたことには相当の理由があるとして名誉毀損による不法行為の成立が否定された事例

裁判要旨血液学者で加熱血液製剤の治験統括医であった甲が血液製剤市場の最大手で加熱血液製剤の開発が遅れていた製薬会社に合わせて加熱血液製剤の治験を遅らせ,その結果,我が国における加熱血液製剤の製造承認が米国より2年4か月遅れた事実,治験の時期に甲が製薬会社各社から資金提供を受けていた事実等が,乙の執筆した雑誌記事等において摘示された場合につき,甲が新聞社のインタビュー等に対し,開発が遅れていた上記製薬会社に合わせて加熱血液製剤の治験を遅らせたことを認める旨の発言をしていたこと,甲の上記発言内容を裏付ける事実が存在したこと,甲が講演において自己が設立の準備をしている血友病治療にかかわる財団法人への寄付を募っている旨の発言をしており,同財団法人への寄付を製薬会社各社に要求しているとのうわさがあるとの指摘に対してもその事実を否定しなかったことなど判示の事実関係の下においては,乙が上記記事等において摘示した事実を真実であると信じたことには相当の理由があり,名誉毀損による不法行為の成立は否定される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年6月16日 平成15(受)900
登載
集民 第217号139頁
参照法条
民法709条,刑法230条の2第1項
論点18第230条刑法

名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明と意見ないし論評の表明

裁判要旨名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明は,判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても,事実を摘示するものとはいえず,意見ないし論評の表明に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年7月15日 平成15(受)1793
登載
民集 第58巻5号1615頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点19第230条刑法

1 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについての判断基準
2 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについての判断基準
3 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された特定産地の野菜のダイオキシン類汚染に関する事実についてその重要な部分が真実であることの証明があるとはいえないとされた事例

裁判要旨1 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきである。
2 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準とし,その番組の全体的な構成,これに登場した者の発言の内容,画面に表示された文字情報の内容を重視し,映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して判断すべきである。
3 テレビジョン放送をされた報道番組において,乙市産の野菜のダイオキシン類汚染に関し,丙研究所の調査結果によれば乙市産の野菜のダイオキシン類濃度が1g当たり0.64〜3.80ピコグラムである旨記載されたフリップが示され,その野菜がほうれん草をメインとする乙市産の葉っぱ物であるとの説明がされたなど判示の事実関係の下では,その番組により摘示された事実の重要な部分は,ほうれん草を中心とする乙市産の葉物野菜が全般的にダイオキシン類による高濃度の汚染状態にあり,その測定値が上記数値で示される高い水準にあることとみるべきであり,別の調査結果において乙市産のラベルが付けられた白菜1検体から上記最高値に比較的近似した測定値が得られたことなどをもって,上記摘示された事実の重要な部分について真実であることの証明があるとはいえない。
(3につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成15年10月16日 平成14(受)846
登載
民集 第57巻9号1075頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点20第230条刑法

通信社から配信を受けた記事をそのまま掲載した新聞社にその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例

裁判要旨判示の事実関係の下においては,新聞に掲載された記事が一般的には定評があるとされる通信社から配信された記事に基づくものであるという理由によっては,新聞社において配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについての相当の理由があったと認めることはできない。
(意見及び反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成14年3月8日 平成8(オ)852
登載
集民 第206号1頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点21第230条刑法

通信社から配信を受けた記事をそのまま掲載した新聞社にその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例

裁判要旨新聞社が通信社から配信を受けて自己の発行する新聞紙にそのまま掲載した記事が私人の犯罪行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を内容とするものである場合には,当該記事が取材のための人的物的体制が整備され,一般的にはその報道内容に一定の信頼性を有しているとされる通信社から配信された記事に基づくものであるとの一事をもって,当該新聞社に同事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成7(オ)1421
登載
民集 第56巻1号185頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点22第230条刑法

名誉毀損に該当する事実の真実性についての判断の基準時及び認定のための証拠の範囲

裁判要旨裁判所は,名誉毀損に該当する事実の真実性につき,事実審の口頭弁論終結時において客観的な判断をすべきであり,その際に名誉毀損行為の時点では存在しなかった証拠を考慮することも許される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成8(オ)576
登載
集民 第205号233頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点23第230条刑法

通信社が新聞社に記事を配信するに当たりその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例

裁判要旨通信社が,殺人未遂罪で逮捕された甲が7,8年前に自宅で大麻を所持しており,その事実を捜査機関が突き止めた旨の事実を記事にして配信し,新聞社がこれを掲載した場合に,甲が自宅に大麻を所持していた事実の裏付けになる資料は甲と離婚した乙の供述のみであること,捜査の対象となっていない大麻所持についての報道であること,甲以外の関係者からそのころの甲と大麻とのかかわりについて取材することが不可能であった状況がうかがえないこと,捜査官が甲の大麻所持についていかなる事実を把握し,どのような心証を持ち,どのように判断しているのかについての取材内容が明らかでないことなど判示の事情の下においては,乙の供述が一貫し,甲が大麻と深いつながりがあることを自ら認めており,記事作成の時点で甲が既に逮捕され,甲に対する取材が不可能であった等の事情が存するときであっても,通信社に上記配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成9(オ)1371
登載
集民 第205号289頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点24第230条刑法

名誉毀損の行為者が刑事第一審の判決を資料として事実を適示した場合と右事実を真実と信ずるについての相当の理由

裁判要旨名誉毀損の行為者において刑事第一審の判決を資料としてその認定事実と同一性のある事実を真実と信じて摘示した場合には、特段の事情がない限り、摘示した事実を真実と信ずるについて相当の理由がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年10月26日 平成9(オ)411
登載
民集 第53巻7号1313頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点25第230条刑法

論評中の他人の著作物の引用紹介に適切を欠く部分があっても全体として正確性を欠くとまではいえないとして右論評に名誉毀損としての違法性があるということはできないとされた事例

裁判要旨他人の著作物に対する論評中に、右著作物の記述が第三者の談話をそのまま紹介したものではなく著作者自身の認識判断であるかのような適切を欠く引用紹介部分があっても、他の部分を併せて読むならば、右論評は専ら著作者が第三者の談話をその真偽を確認しないでそのまま紹介したことを批判するものであって、このことは右論評を通読する一般読者にとって明白であり、右適切を欠く引用紹介部分の内容が右批判の前提となっているわけでもないという事情の下においては、右著作物の引用紹介が全体として正確性を欠くとまではいえないから、右論評に名誉毀損としての違法性があるということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年7月17日 平成6(オ)1082
登載
集民 第189号267頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点26第231条刑法

法人を被害者とする侮辱罪の成否

裁判要旨侮辱罪は、法人を被害者とする場合においても成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年11月1日 昭和58(あ)960
登載
刑集 第37巻9号1341頁
参照法条
刑法231条
論点27第231条刑法

侮辱と憲法二一条

裁判要旨「市民諸君阿呆につける薬があつたら、この市長につけてやつて下さい」「三田市長Bは公団、県のいぬ的存在」「B市長の頭脳の空ラツポさ……」などと記載した新聞一万部を市民に頒布して公然他人を侮辱する行為が憲法の保障する言論の自由の範囲内に属するものでないことは、当裁判所昭和三一年七月四日大法廷判決(民集一〇巻七号七八五頁)の趣旨に照らして明らかである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年6月5日 昭和47(あ)2303
登載
集刑 第189号259頁
参照法条
刑法231条,憲法21条
論点28第231条刑法

侮辱と憲法二一条

裁判要旨「A吸血鬼」「暴力所長Bを追放せよ」と記載したビラを乗用車の車体に貼付して市内の目抜通りを行進するように公然他人を侮辱する行為は、言論の自由の乱用であつて、憲法二一条の保障する言論の自由の範囲内に属すると認めることができないことは当裁判所の判例(昭和二八年(オ)第一二四一号、同三一年七月四日大法廷判決、民集一〇巻七号七八五頁)の趣旨に照らして明らかである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年10月23日 昭和44(あ)806
登載
集刑 第173号561頁
参照法条
刑法231条,憲法21条
原

条文原文

原文ママ

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刑法 第230条(名誉毀損) 詳細ページ
(名誉毀損)
第二百三十条公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
2死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
刑法 第230_2条(公共の利害に関する場合の特例) 詳細ページ
(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
刑法 第231条(侮辱) 詳細ページ
(侮辱)
第二百三十一条事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法 第232条(親告罪) 詳細ページ
(親告罪)
第二百三十二条この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。
出

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