論点1第233条刑法
マジツクホンと称する電気機器を電話回線に取り付けた行為につき違法性が否定されないとした事例
裁判要旨マジツクホンと称する電気機器を加入電話の回線に取り付けた行為は、たとえ同機器を取り付けた者がただ一回通話を試みただけでこれを取り外した等の事情があつたとしても、違法性が否定されるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年6月24日 昭和58(あ)555
- 登載
- 刑集 第40巻4号292頁
- 参照法条
- 刑法35条,刑法233条,有線電気通信法21条(昭和59年法律87号による改正前のもの)
論点2第233条刑法
一 有線電気通信法二条一項にいう「符号」に当たるとされた事例
二 マジツクホンと称する電気機器を電話回線に取り付けた行為と有線電気通信妨害罪及び偽計業務妨害罪の成否並びにその罪数関係
裁判要旨一 日本電信電話公社の電話回線を通じ、発信側電話の度数計器を作動させるため、受信側から送出される応答信号は、有線電気通信法二条一項にいう「符号」に当たる。
二 マジツクホンと称する電気機器を電話回線に取り付け、応答信号の送出を妨げるとともに、発信側電話の度数計器の作動を不能にした行為は、有線電気通信妨害罪(昭和五九年法律第八七号による改正前の有線電気通信法二一条)及び偽計業務妨害罪に当たり、両罪は観念的競合の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年2月3日 昭和58(あ)612
- 登載
- 刑集 第40巻1号1頁
- 参照法条
- 有線電気通信法2条1項,有線電気通信法21条(昭和59年法律87号による改正前のもの),刑法54条1項前段,刑法233条
論点3第233条刑法
一 有線電気通信法二条一項にいう「符号」にあたるとされた事例
二 有線電気通信法二一条違反及び偽計業務妨害の両罪が成立するとされた事例
裁判要旨一 A公社の架設する電話回線において、発信側電話機に対する課金装置を作動させるため受信側から発信側に送出される応答信号は、有線電気通信法二条一項にいう「符号」にあたる。
二 A公社の架設する電話回線において、発信側電話機に対する課金装置を作動させるため受信側から発信側に送出される応答信号の送出を阻害する機能を有するマジツクホンと称する電気機器を加入電話回線に取り付け使用して、応答信号の送出を妨害するとともに発信側電話機に対する課金装置の作動を不能にした行為は、有線電気通信妨害罪(有線電気通信法二一条)及び偽計業務妨害罪にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和59年4月27日 昭和58(あ)1707
- 登載
- 刑集 第38巻6号2584頁
- 参照法条
- 有線電気通信法2条1項,有線電気通信法21条,刑法233条
論点4第233条刑法
公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた威力業務妨害行為が刑法上の違法性を欠くものではないとされた事例
裁判要旨公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた本件威力業務妨害行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年6月29日 昭和47(あ)758
- 登載
- 刑集 第32巻4号759頁
- 参照法条
- 公共企業体等労働関係法17条1項,刑法35条,刑法233条,刑法234条
論点5第233条刑法
公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた威力業務妨害及び不退去行為が刑法上の違法性を欠くものではないとされた事例
裁判要旨公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた本件威力業務妨害及び不退去行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年3月3日 昭和45(あ)2199
- 登載
- 刑集 第32巻2号97頁
- 参照法条
- 公共企業体等労働関係法17条1項,刑法35条,刑法130条,刑法233条,刑法234条
論点6第233条刑法
公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた威力業務妨害行為が刑法上の違法性を欠くものではないとされた事例
裁判要旨公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた本件威力業務妨害行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年3月3日 昭和46(あ)1330
- 登載
- 刑集 第32巻2号159頁
- 参照法条
- 公共企業体等労働関係法17条1項,刑法35条,刑法233条,刑法234条
論点7第233条刑法
一 国鉄の事業ないし業務は刑法第二三三条第二三四条にいう業務に含まれるか
二 国鉄の業務と民営鉄道の業務との間の法律上の保護の差異と憲法第一四条
裁判要旨一 国定の行なう事業ないし業務は、刑法
第二三三条〈信用毀損及び業務妨害〉、
第二三四条〈威力業務妨害〉にいう業務に含まれる。
二 国鉄の業務が、これに対する妨害に対し、業務妨害罪または公務執行妨害罪の保護を受け、民営鉄道の業務との間に、法律上の保護に差異があることは、憲法第一四条に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和41年11月30日 昭和36(あ)823
- 登載
- 刑集 第20巻9号1076頁
- 参照法条
- 刑法233条,刑法234条,刑法95条1項,憲法14条
論点8第233条刑法
一 刑訴法第四〇〇条但書に違反しない事例
二 国鉄の事業ないし業務は業務妨害罪の対象となるか
裁判要旨一 第一審判決が、被告人は威力を用いて日本国有鉄道(以下国鉄と略称する)の貨物運行業務を妨害した旨の事実を認めながら、刑法
第二三四条〈威力業務妨害〉の業務には国鉄の貨物運行業務の如き公務を含まないものと解して無罪を言い渡した場合において、控訴裁判所が同条の業務中には公務も含まれるものと解し、「第一審判決は法律の解釈適用を誤つた」ものとしてこれを破棄し、自からは何等事実の取調をすることなく、ただ訴訟記録および第一審において取り調べた証拠のみによつて、直ちに被告事件について、第一審判決の確定した事実と具体的に同一性を有する威力業務妨害の犯罪事実を認定して有罪の言渡をしても、刑訴第四〇〇条但書に違反しない。
二 国鉄の行う事業ないし業務は刑法第二三三条、第二三四条の業務妨害罪の対象となる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和35年11月18日 昭和31(あ)3015
- 登載
- 刑集 第14巻13号1713頁
- 参照法条
- 刑訴法400条但書,刑法233条,刑法234条,日本国有鉄道法2条,日本国有鉄道法3条,日本国有鉄道法34条
論点9第233条刑法
一 刑訴法第四一一条第三号にあたる事例
二 ―威力業務妨害に関する事実誤認―
裁判要旨家屋(住宅と店舗)の貸主である被告人甲、その息子である被告人乙、その娘婿である被告人丙の三名が、約束の明渡期限経過後現場に臨み、店舗の無断使用者(商事会社)の代理人とみられる者に明渡を求めたところ、同人において、初めは会社の代表者の不在を理由に明渡の猶予を請うていたが、それまでの折衝の経緯にかんがみ事態やむをえないものとして敢えて明渡拒絶の態度に出なかつたので、被告人側の手で会社の什器類の一部を横の道路に出し、被告人側の商品を搬入した上店舗に施錠したが、その間特に威力を用いた形跡も認められない場合に、これを威力業務妨害にあたるとするのは、判決に影響を及ぼすべき事実誤認の疑いがあつて、刑訴第四一一条第三号により破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年5月22日 昭和31(あ)2842
- 登載
- 集刑 第129号897頁
- 参照法条
- 刑訴法411条3号,刑法233条,刑法234条
論点10第233条刑法
憲法第二八条の保障する争議権の行使にあたらない事例
裁判要旨被告人らが駐留軍横浜陸上輸送部隊と争議中、同部隊バス通用門から争議に参加しなかつた同部隊勤務の日本人運転手A外五人が駐留軍軍人、軍属らを輸送するためa駅に赴くべく各一台のバスを運転し一列縦隊で順次出門しようとするや、右通用門の前にピケラインを張つていた組合員約三〇名位と共謀の上、その出門を阻止しようとして右門前において、組合員数名とともに右Aの運転するバス前面の道路上に寝転んで、その進行を停止せしめたほか、Aに対し暴行を加えるなどしてそのバス運転を不能ならしめると同時に、強いてバスを運転して出門しようとした外五名の出門をも不能ならしめて同人らの運転業務を妨害する所為は、憲法第二八条の保障する争議権の行使であるとはいえない
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年6月20日 昭和31(あ)306
- 登載
- 刑集 第12巻10号2250頁
- 参照法条
- 憲法28条,刑法234条,刑法233条
論点11第233条刑法
労働争議における労働者側の威力行使の手段(いわゆるピケツト、ライン)と威力業務妨害罪の成立および憲法第二八条
裁判要旨労働争議に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するためにとられた労働者側の威力行使の手段(いわゆるピケツト、ライン)が、諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には、威力業務妨害罪が成立し、したがつて、これを処罰することは、憲法第二八条に違反しない
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和33年5月28日 昭和27(あ)4798
- 登載
- 刑集 第12巻8号1694頁
- 参照法条
- 刑法234条,刑法233条,憲法28条,労働組合法1条2項
論点12第233条刑法
一 刑法第二三四条〈威力業務妨害〉にいう「業務ヲ妨害シタル」ことの意義
二 同条にいう「威力」の意義
裁判要旨一 刑法
第二三四条〈威力業務妨害〉の業務妨害罪にいう「業務ヲ妨害シタル」こととは、具体的な個々の現実に執行している業務の執行を妨害する行為のみならず、被害者の当該業務における地位にかんがみ、その遂行すべき業務の経営を阻害するにたる一切の行為を指称する。
二 同条にいう「威力」とは、犯人の威勢、人数および四囲の状勢よりみて被害者の自由意思を制圧するにたる勢力を指称する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年1月30日 昭和25(れ)1864
- 登載
- 刑集 第7巻1号128頁
- 参照法条
- 刑法234条,刑法233条
論点13第233条刑法
一 生産管理と威力による業務妨害罪の成立
二 生産管理の違法性
三 労働関係調整法第七条と争議行為の適法性
裁判要旨一 生産管理として多数の威力をもつて会社の事業の管理即ち支配を排除した以上、刑法
第二三四条〈威力業務妨害〉の業務妨害が成立する。
二 経営権と労働権との対等を保障している現行の法律秩序からすれば、両者の間に労働協約による特別の定めがないかぎり、企業経営、生産行程の指揮命令は使用者側の権限に属するのであるから、同盟罹業が有効でないからといつて使用者側に属する生産手段の管理を排除してそれを組合側の実力支配の下におくところの、いわゆる生産管理は適法の争議行為といえない。
三 労働関係調整法第七条は争議行為の定義を掲げただけであるから、具体的争議行為の適法性は別個の観点から判断すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年2月22日 昭和25(れ)1902
- 登載
- 刑集 第6巻2号288頁
- 参照法条
- 労働関係調整法7条,労働組合法(昭和24年法律174号による改正前のもの)1条,刑法234条,刑法233条
論点14第233条刑法
1 現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的でした営業中の銀行支店出張所への立入りと建造物侵入罪の成否
2 現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮するためのビデオカメラを設置した現金自動預払機の隣にある現金自動預払機を,一般の利用客を装い相当時間にわたって占拠し続けた行為が,偽計業務妨害罪に当たるとされた事例
裁判要旨1 現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入った場合,その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客と異なるものでなくても,建造物侵入罪が成立する。
2 現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮するためのビデオカメラを設置した現金自動預払機の隣にある現金自動預払機を,あたかも入出金や振込等を行う一般の利用客のように装い,適当な操作を繰り返しながら,1時間30分間以上にわたって占拠し続けた行為は,偽計業務妨害罪に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成19年7月2日 平成18(あ)2664
- 登載
- 刑集 第61巻5号379頁
- 参照法条
- (1につき)刑法130条前段 (2につき)刑法233条
論点15第233条刑法
販売される商品の品質に対する社会的な信頼と刑法233条にいう「信用」
裁判要旨販売される商品の品質に対する社会的な信頼は,刑法
233条〈信用毀損及び業務妨害〉にいう「信用」に含まれる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成15年3月11日 平成14(あ)1198
- 登載
- 刑集 第57巻3号293頁
- 参照法条
- 刑法233条
論点16第234条刑法
県議会委員会の条例案採決等の事務と威力業務妨害罪にいう[業務]
裁判要旨県議会委員会の条例案採決等の事務は、威力業務妨害罪にいう[業務]に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和62年3月12日 昭和59(あ)627
- 登載
- 刑集 第41巻2号140頁
- 参照法条
- 刑法234条
論点17第234条刑法
弁護士の業務用鞄の奪取隠匿行為が刑法二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」た場合にあたるとされた事例
裁判要旨弁護士からその業務にとつて重要な書類が在中する鞄を奪取して隠匿する行為は、刑法
二三四条〈威力業務妨害〉にいう「威力ヲ用ヒ」た場合にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和59年3月23日 昭和57(あ)987
- 登載
- 刑集 第38巻5号2030頁
- 参照法条
- 刑法234条,軽犯罪法1条31号
論点18第234条刑法
銀行に対する一円振込み行動が憲法二八条の権利行使にあたらないとされた事例
裁判要旨銀行に対する本件一円振込み行動は、使用者対被使用者の関係を前提とする憲法二八条の権利行使にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年12月13日 昭和56(あ)233
- 登載
- 集刑 第232号1145頁
- 参照法条
- 憲法28条,刑法234条
論点19第234条刑法
一 威力業務妨害罪によつて保護されるべき業務にあたるとされた事例
二 バス会社のストライキに際し組合側の争議手段として行われたいわゆる車両確保行為が威力業務妨害罪又は建造物侵入罪の違法性に欠けるところがないとされた事例
裁判要旨一 バス会社がストライキに参加しない従業員によつて操業を継続するために必要とした本件車両の分散及び保全看守は、それが操業を阻止する手段として組合側の計画していた車両の確保に対する対抗措置として行われたものであつても、威力業務妨害罪によつて保護されるべき業務にあたる。
二 バス会社のストライキに際し、多数人による暴力を伴う威力を用いて会社が回送中又は路上に駐車中のバスを奪つて組合側の支配下に置きあるいは多数の威力を示して会社が取引先の整備工場又は系列下の自動車学校に預託中のバスを搬出しようとして建造物に侵入した本件車両確保行為は、判示のような諸般の事情に照らし法秩序全体の見地からみるとき、威力業務妨害罪又は建造物侵入罪の違法性に欠けるところはない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年11月15日 昭和52(あ)583
- 登載
- 刑集 第32巻8号1855頁
- 参照法条
- 刑法35条,刑法130条,刑法234条,労働関係調整法7条,労働組合法1条
論点20第234条刑法
威力業務妨害罪によつて保護されるべき業務にあたるとされた事例
バス会社のストライキに際し組合側の争議手段として行われたいわゆる車両確保行為が威力業務妨害罪又は建造物侵入罪の違法性に欠けるところがないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年11月15日 昭和52(あ)469
- 登載
- 集刑 第213号569頁
- 参照法条
- 刑法234条,刑法35条,刑法130条,労調法7条,労組法1条1項,労組法1条2項
論点21第234条刑法
一、公労法一七条が憲法に違反しないとの原判決の憲法解釈の当否が原判決の結論に影響するものでないことがその判示自体において明らかであるとして違憲の主張が不適法とされた事例
二、国鉄職員による列車の一時進行阻止行為が威力業務妨害罪の成立に必要な違法性に欠けるところはないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和51年6月15日 昭和50(あ)1927
- 登載
- 集刑 第201号27頁
- 参照法条
- 憲法28条,憲法31条,憲法18条,刑法234条,刑法35条
論点22第234条刑法
争議中の労働組合員が会社側管理職員の行つているテレビ生放送に騒音を混入せしめた威力業務妨害行為が刑法上の違法性及び責任に欠けるところはないとされた事例
裁判要旨争議中の労働組合員が、争議のため職場を離れた労働組合員に代つて会社側管理職員が予定の放送業務を行つているスタジオ出入口扉前に集まり、一斉に労働歌を高唱し、拍手し、シユプレヒコールを行う等してテレビ生放送に騒音を混入せしめた威力業務妨害行為(判文参照)は、動機・目的その他諸般の事情を考慮に入れても、法秩序全体の見地からみて、刑法上、違法性及び責任を欠くものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和51年5月6日 昭和47(あ)1436
- 登載
- 刑集 第30巻4号519頁
- 参照法条
- 刑法35条,刑法234条,労働組合法1条2項
論点23第234条刑法
公共企業体等職員の労働争議の際のピケツテイングが違法であるとしてこれを鎮圧排除しようとした警察官の実力行使に対してなされた暴行が公務執行妨害罪を構成するとされた事例
裁判要旨争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について刑法上違法性阻却事由の有無を判断するにあたつては、その行為が争議行為に際して行なわれたものであるという事実をも含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かが判定されなければならない(最高裁昭和四三年(あ)第八三七号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻三号四一八頁参照)のであつて、かかる見地から本件をみると、被告人両名を含む本件ピケ隊によるピケツテイングは、原判決判示の事実関係に徴すると、法秩序全体の立場から許容されるものとはいい難く、刑法上違法性を欠くものではないから、これについて威力業務妨害罪の成立を認め、これを鎮圧排除しようとした警察官の実力行使に対してなされた被告人両名の本件暴行が公務執行妨害罪を構成するとした原判決の判断は、結論において正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和49年7月4日 昭和47(あ)2295
- 登載
- 集刑 第193号1頁
- 参照法条
- 刑法95条1項,刑法234条,刑法35条
論点24第234条刑法
いわゆるピケツテイングなどによつて旅客列車の発進を一時不能ならしめた所為につき威力業務妨害罪の成立が認められた事例
裁判要旨被告人が、A労働組合組合員約一五〇名と共謀し、多数乗客を乗せて駅に入構した旅客列車の前方斬条上に共にスクラムを組んでうずくまるなどし、また乗務員をその腕を抱えるなどして強いて下車させ、これによつて午後八時ころから同八時四四分ころまでの間右列車の発進を不能ならしめた所為は、その目的が原認定(原判文参照)のとおりであり、右乗務員が前記A労働組合所属のものである事情を考慮しても、法秩序全体の見地から許容しがたい不法な威力の行使による業務の妨害にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年7月16日 昭和45(あ)2373
- 登載
- 刑集 第28巻5号216頁
- 参照法条
- 刑法35条,刑法234条
論点25第234条刑法
市電の出庫を阻止したピケツテイングが正当な行為とされた事例
裁判要旨札幌市役所関係労働組合連合会所属の被告人らが、他の約四〇名とともに、車庫内において市電の前に立ちふさがり、その出庫を阻止して業務を妨害した場合においても、その行為が、市当局の長期間にわたる不当な団体交渉の拒否等に対処し、団体交渉における労使の実質的対等を確保するため、やむなくなされた市電等への乗務拒否を主眼とする同盟罷業中に、これから脱落した組合員が、当局側の業務命令に従つて市電を運転して車庫外に出ようとしたので、組合の団結がみだされ同盟罷業がその実効性を失うのを防ぐ目的で、とつさに市電の前に立ちふさがり、市電を出さないように叫んで翻意を促し、これを腕力で排除しようとした当局側の者ともみ合い、前後約三〇分間、乗客のいない車庫内で市電の出庫を阻止したものであつて、その間直接暴力に訴えるというようなことがなかつた等の事情(判文参照)があるときは、これを正当な行為ということができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年6月23日 昭和42(あ)1373
- 登載
- 刑集 第24巻6号311頁
- 参照法条
- 刑法35条,刑法234条,労働組合法1条2項,地方公営企業労働関係法4条,地方公営企業労働関係法11条1項
論点26第234条刑法
タクシー会社の労働争議において組合側が会社のタクシーの車検およびキーを抑留保管しあるいはタクシーの車輪を取りはずすなどする行為の正当性
裁判要旨組合員の多数の者が暴力によつて会社のタクシーの車検およびキーを奪取し、あるいは多衆共同してその車輪を取りはずすなどする行為、ならびに会社社長の返還要求にもかかわらず、人の意思を制圧する勢力を示して、非組合員の乗務する車両を含め会社のタクシーの車検およびキーの返還を拒絶し組合側において抑留保管する行為は、正当な争議行為の範囲を超えるものであつて、威力業務妨害罪および暴力行為等処罰に関する法律違反の罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年12月17日 昭和44(あ)446
- 登載
- 集刑 第178号897頁
- 参照法条
- 刑法234条,刑法261条,刑法35条,暴力行為等処罰に関する法律1条1項,労働組合法1条2項
論点27第234条刑法
一、公選投票賄賂罪の規定の公職選挙法施行後における効力
二、公選投票賄賂罪の規定の合憲性
裁判要旨一、旧刑法二編四章九節
二三四条〈威力業務妨害〉のいわゆる公選投票賄賂罪の規定は、公職選挙法施行後においても、同法の適用または準用のない公選の投票に対する関係では、依然として刑罰法規としての効力をもつている。
二、旧刑法二編四章九節
二三四条のいわゆる公選投票賄賂罪の規定は、憲法一五条四項に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年12月15日 昭和44(あ)1125
- 登載
- 刑集 第24巻13号1738頁
- 参照法条
- 旧刑法234条,刑法施行法25条,憲法15条4項
論点28第234条刑法
一 いわゆる電源ストについて原判決に理由不備、事実誤認の疑があるとされた事例。
二 ピケツテイングについて理由のくいちがい、真実誤認の疑があるとされた事例。
裁判要旨一 本件電源ストにおいて被告人らが排水門、制水門を開放して水力発電所の用水を放流した積極的な所為が、電源職場における被告人ら従業員の労務提供義務不履行行為にあたる理由を説示するところなく無罪とした原判決は、理由不備ないし重大な事実誤認の疑がある。
二 原判決が一面ピケツテイングは平和的説得ないし団結の示威を建前とすると判示しながら、他面本件電源ストにおいて説得前すでに会社側臨時人夫ら非組合員の現場立入をスクラムによるピケツテイングにより阻止しても違法でないと判示したのは、理由にくいちがいがあるかまたは重大な事実誤認の疑がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年12月25日 昭和31(あ)3844
- 登載
- 刑集 第12巻16号3555頁
- 参照法条
- 刑法35条,刑法234条,刑法123条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,労働組合法1条2項
論点29第234条刑法
労働組合法第一条第一項の目的達成のための正当行為と認められない事例
裁判要旨鉱山会社の企業整備に伴う人員解雇の撤回要求貫徹のため、同会社の労働組合執行委員たる被告人が、執務中の同会社鉱務課長を強いて会社事務所外の組合本部前広場まで連行した上爾後約三時間四〇分の長きに亘り、組合員数百名と円陣を作つて取り囲み、その脱出を不能ならしめた上マイクを突きつけて解雇反対に協力方を執拗に迫り或は組合員大衆のデモ隊の先頭に立たせて数百米の間を強いて駈足行進させる等、もつて同課長を多衆の包囲と威圧下において、その自由を拘束し、業務を妨害したという事実関係の下においては、被告人の所為が労働組合法第一条第一項の目的を達成するためにした正当な行為であると認めることができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年12月24日 昭和31(あ)686
- 登載
- 刑集 第11巻14号3349頁
- 参照法条
- 憲法28条,労働組合法1条,刑法220条,刑法234条
論点30第234条刑法
一 期待可能性の不存在を理由として刑事責任を否定する場合、法文上の根拠を示すことを要するか
二 いわゆるピケツテイングが威力業務妨害罪にあたらない一事例
裁判要旨一 論旨は、原判決は被告人の所為について期待可能性がないとしてその刑事責任を否定したのであるが、その根拠としてはただ漫然条理上責任を阻却するというに止まり、何故期待可能性なき場合には刑事責任が排斥されるかを成文との繋りにおいて明示してその法的根拠を充分に説示していないから、結局裁判に理由を附せず又は判決に示すべき判断を遺脱した違法があると主張する。しかし期待可能性の不存在を理由として刑事責任を否定する理論は、刑法上の明文に基くものではなく、いわゆる超法規的責任阻却事由と解すべきものである。従つて、原判決がその法文上の根拠を示すことなく、その根拠を条理に求めたことは、その理論の当否は別としても、なんら所論のような違法があるものとはいえない。
二 炭坑労働組合が同盟罷業中一部組合員が罷業から脱退して会社の出炭運搬業務に従事し石炭を積載した炭車を連結したガソリン車の運転を開始した際、組合婦人部長たる被告人が、右一部組合員の就業は経営者側との不純な動機に出たもので罷業を妨害する裏切行為であり、これにより罷業が目的を達成し得なくなると考え、既に多数婦人組合員等がガソリン車の前方線路上に立ち塞がり、座り込みまたは横臥してその進行を阻止していたところに参加して「ここを通るなら自分たちを轢き殺して通れ」と怒号して就業組合員等のガソリン車の運転を妨害した行為は、未だ違法に刑法第二三四条にいう「威力を用い人の業務を妨害したる者」というに足りない。
(裁判官垂水克己の補足意見)本件所為は、いまだ違法に刑法第二三四条にいう威力を用いて人の業務を妨害したものということができないと考えられる。その主な理由は、右所為は同盟罷業中の組合員が同じ事業場の仲間組合員に対してしたものであり、かつ、被告人の軌道上に赴いてからの右所為は極めて短時分の間に行われたという原判決の認定と解することができ、結局軽微のものとみられるからである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月11日 昭和24(れ)2273
- 登載
- 刑集 第10巻12号1605頁
- 参照法条
- 刑訴法44条,刑法234条,刑法35条,労働組合法1条,裁判所法11条
論点31第234条刑法
業務妨害罪について訴因の変更を必要としない一事例
裁判要旨被告人が会社工場長の制止するにかかわらず、これに反抗して同工場に対する送電用スイツチを切断して送電を不能ならしめ、もつて威力を用い同会社の業務を妨害した旨の起訴状記載の訴因に対し、被告人が送電設備の状況を監視していた右会社の工場長に対し、同人が制止するにかかわらず暴行、脅迫をなし、その間数回にわたつてスイツチを切断しもつて威力を用い右工場長の業務を妨害した旨の事実を認定するには訴因変更の手続を経ることを要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年3月5日 昭和26(あ)1303
- 登載
- 刑集 第7巻3号443頁
- 参照法条
- 刑法234条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点32第234条刑法
被告人が賃借している家屋を不法に占拠し古物商を営んでいる者に対し該家屋の明渡を求めるため威力を用い業務を防害した場合と犯罪の成否
裁判要旨被告人が賃借している家屋を不法に占拠し、古物商を営んでいる者に対し威力を用いその業務を妨害したときは、たといそれが右家屋の明渡を求めるためであつても、適法行為として罪とならないとすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年3月4日 昭和25(あ)2108
- 登載
- 刑集 第6巻3号345頁
- 参照法条
- 刑法234条,刑法35条,刑法36条,刑法37条
論点33第234条刑法
猫の死がいを被害者の事務机引き出し内に入れておき同人に発見させるなどした行為が刑法二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」た場合に当たるとされた事例
裁判要旨被害者の事務机引き出し内に赤く染めた猫の死がいを入れておくなどして、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為(判文参照)は、刑法
二三四条〈威力業務妨害〉にいう「威力ヲ用ヒ」た場合に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成4年11月27日 平成4(あ)267
- 登載
- 刑集 第46巻8号623頁
- 参照法条
- 刑法234条,軽犯罪法1条31号
論点34第234条刑法
卒業式の開式直前に保護者らに対して大声で呼び掛けを行い,これを制止した教頭らに対して怒号するなどし,卒業式の円滑な遂行を妨げた行為をもって刑法234条の罪に問うことが,憲法21条1項に違反しないとされた事例
裁判要旨卒業式の開式直前に,式典会場である体育館において,主催者に無断で,保護者らに対して,国歌斉唱のときには着席してほしいなどと大声で呼び掛けを行い,これを制止した教頭らに対して怒号するなどし,その場を喧噪状態に陥れるなどして,卒業式の円滑な遂行に支障を生じさせた行為をもって,刑法
234条〈威力業務妨害〉の罪に問うことは,憲法21条1項に違反しない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成23年7月7日 平成20(あ)1132
- 登載
- 刑集 第65巻5号619頁
- 参照法条
- 憲法21条1項,刑法234条
論点35第234条刑法
1 東京都による動く歩道の設置に伴う環境整備工事が威力業務妨害罪にいう「業務」に当たるとされた事例
2 東京都による動く歩道の設置に伴う環境整備工事に威力業務妨害罪としての要保護性が肯定された事例
裁判要旨1 東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため,通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後,通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は,自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反して段ボール小屋を撤去した場合であっても,威力業務妨害罪にいう「業務」に当たる。
2 東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため,通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後,通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は,自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反して段ボール小屋を撤去するに及んだものであっても,同工事が公共目的に基づくものであるのに対し,路上生活者は通路を不法に占拠していた者であり,行政代執行の手続を採ってもその実効性が期し難かったことなど判示の事実関係の下では,威力業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成14年9月30日 平成10(あ)1491
- 登載
- 刑集 第56巻7号395頁
- 参照法条
- 刑法234条
論点36第234条刑法
労働組合の活動に参加した組合員らの威力業務妨害行為につき、労働組合の執行委員長に共謀が認められた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和7年1月27日 令和5(あ)422
- 登載
- ―
- 参照法条
- 刑法60条、刑法234条