民法 明治二十九年法律第八十九号 現行施行 2026-06-24 条文取得 2026-09-05

第709条不法行為による損害賠償

原文解釈概要・一覧表・実務注記は当サイトによる解釈です。条文原文と判例は転記です。

この条文が出てくる場面

原文整理テーマ別まとめ
債権/不法行為ステップ 1 / 1 不法行為不法行為について、条文は何を定めているか。

概要

原文解釈
  • 民法第709条は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者が、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定める。
  • 主観的要件は「故意又は過失」であり、条文上はいずれか一方で足りる規定となっている。
  • 侵害の対象は「他人の権利」に限られず、「法律上保護される利益」も含まれる。
  • 賠償の対象となる損害は「これによって生じた損害」、すなわち当該侵害によって生じた損害である。
  • 条文は損害賠償責任が発生する要件と効果のみを定めており、賠償の範囲や方法についての規定は含まれていない。

第709条の要件一覧

原文解釈横スクロールできます
要件区分条文上の文言内容
主観的要件故意又は過失によって故意又は過失のいずれかが必要
侵害対象他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した権利に限らず、法律上保護される利益も対象
損害これによって生じた損害侵害によって生じた損害であること
効果賠償する責任を負う損害賠償責任が発生する

主要な判例

原文ママ裁判所が付した参照法条による機械照合で選定
民法損害賠償
位置づけ
最高裁大法廷 / 民集登載
事件番号
昭和56(オ)609
裁判
最高裁判所大法廷 昭和61年6月11日 棄却
登載
民集 第40巻4号872頁
参照法条
憲法13条,憲法21条,民訴法757条2項,民訴法760条,民法1条ノ2,民法198条,民法199条,民法709条,民法710条,刑法230条ノ2
判示事項
一 出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めと憲法二一条二項前段にいう検閲 二 名誉侵害と侵害行為の差止請求権 三 公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関する出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めの許否 四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合と口頭弁論又は債務者審尋
裁判要旨一 雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、憲法二一条二項前段にいう検閲に当たらない。
二 名誉侵害の被害者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。
三 人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めは、右出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものである場合には、原則として許されず、その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときに限り、例外的に許される。
四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合には、原則として口頭弁論又は債務者の審尋を経ることを要するが、債権者の提出した資料によつて、表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、債権者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があると認められるときは、口頭弁論又は債務者の審尋を経なくても憲法二一条の趣旨に反するものとはいえない。
民法大阪国際空港夜間飛行禁止等
位置づけ
最高裁大法廷 / 民集登載
事件番号
昭和51(オ)395
裁判
最高裁判所大法廷 昭和56年12月16日 その他
登載
民集 第35巻10号1369頁
参照法条
民訴法第2編第1章訴,民訴法226条,国家賠償法2条1項,民法709条
判示事項
一 民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えの適否 二 営造物の利用の態様及び程度が一定の限度を超えるために利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合と国家賠償法二条一項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵 三 国営空港に離着陸する航空機の騒音が一定の程度に達しており空港周辺地域の住民の一部により右騒音を原因とする空港供用の差止請求等の訴訟が提起されているなどの状況のもとに右地域に転入した者が右騒音により被害を受けたとして国に対し慰藉料を請求した場合につき右請求を排斥すべき事由がないとした認定判断に経験則違背等の違法があるとされた事例 四 将来にわたつて継続する不法行為に基づく損害賠償請求権が将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格性を有するとされるための要件
裁判要旨一 民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えは、不適法である。
二 営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物につき国家賠償法二条一項にいう設置又は管理の瑕疵があるものというべきである。
三 当該空港に離着陸する航空機の騒音がその頻度及び大きさにおいて一定の程度に達しており、また、空港周辺住民の一部により右騒音を原因とする空港供用差止請求等の訴訟が提起され、主要日刊新聞紙上に当該空港周辺における騒音問題が頻々として報道されていたなど、判示のような状況のもとに空港周辺地域に転入した者が空港の設置・管理者たる国に対し右騒音による被害について慰藉料の支払を求めたのに対し、特段の事情の存在を確定することなく、転入当時右の者は航空機騒音が問題になつている事情ないしは航空機騒音の存在の事実をよく知らなかつたものとし、右請求を排斥すべき理由はないとした原審の認定判断には、経験則違背等の違法がある。
四 現在不法行為が行われており、同一態様の行為が将来も継続することが予想されても、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点においてはじめてこれを認定することができ、かつ、右権利の成立要件の具備については債権者がこれを立証すべきものと考えられる場合には、かかる将来の損害賠償請求権は、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格性を有しない。
民法損害賠償請求事件
位置づけ
最高裁大法廷 / 民集登載
事件番号
平成24(受)1478
裁判
最高裁判所大法廷 平成27年3月4日 棄却
登載
民集 第69巻2号178頁
参照法条
(1,2につき)民法709条,労働者災害補償保険法16条 (2につき)民法412条
判示事項
1 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどした場合に,上記の遺族補償年金との間で損益相殺的な調整を行うべき損害 2 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどしたとして損益相殺的な調整をするに当たって,損害が塡補されたと評価すべき時期
裁判要旨1 被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,損害賠償額を算定するに当たり,上記の遺族補償年金につき,その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。
2 被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが相当である。

実務注記

原文解釈
  1. 主観的要件は選択的条文は「故意又は過失によって」と規定しており、故意・過失のいずれかがあれば足りる。
  2. 侵害対象は権利に限られない「他人の権利又は法律上保護される利益」とされており、権利以外の法律上保護される利益への侵害も対象となる。
  3. 侵害と損害の関連性「これによって生じた損害」との文言があり、侵害行為によって生じた損害であることが要件となっている。
  4. 効果は損害賠償責任の発生条文の効果は「損害を賠償する責任を負う」ことのみであり、これを超える内容は規定されていない。

条文原文

原文ママ
民法 第709条(不法行為による損害賠償)
(不法行為による損害賠償)
第七百九条故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

一次情報