商法 / テーマ別まとめ

海商/船長

船長の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

船長については、船籍港外で航海のために必要な行為を行う代理権、積荷の処分や航海継続のための使用、海員の監督責任、船舶所有者への報告義務、解任のルールが定められています。実務担当者は、船長がどこまで独断で判断・処分できるか、どの場面で船舶所有者の関与や責任・費用負担が生じるかを条文ごとに押さえておく必要があります。

船長
場面内容補足
船籍港外の代理権航海に必要な裁判上外の行為抵当権設定・借財は除く
代理権の制限内部的な制限を加えられる善意の第三者には対抗不可
職務代行者の選任やむを得ない事由で代行者を選任選任の責任は船長が負う
属具目録船内に備え置く義務―
積荷の処分利害関係人のため最適な方法で処分過失なき利害関係人は責任免れ可
積荷の使用航海継続のため積荷を使用可船舶所有者が償金支払
海員の監督責任海員の加害行為を賠償監督に無過失なら免責
報告義務重要事項を遅滞なく報告―
解任船舶所有者はいつでも解任可正当理由なければ賠償請求可
  • 抵当権の設定と借財は、船籍港外の代理権の対象から除かれる(708条1号・2号)
  • 職務代行者の選任は、法令に別段の定めがある場合は認められない(709条)
  • 積荷処分で生じた債務は、利害関係人に過失があれば権利移転による免責が認められない(711条2項ただし書)
  • 積荷使用の償金額は商法576条1項・2項を準用し、「引渡し」は「陸揚げ」と読み替える(712条2項)
  • 船長は、海員の監督について注意を怠らなかったことを証明すれば損害賠償責任を免れる(713条ただし書)
  • 船長が船舶共有者で意に反し解任された場合、持分買取請求時は遅滞なく他の船舶共有者又は船舶管理人に通知しなければならない(715条3項・4項)
1

船長

船長について、条文は何を定めているか。

第708条船長の代理権船籍港外では航海に必要な代理権を持つ2項・2号判例なし
  • 抵当権の設定と借財は代理権に含まれない
  • 代理権への制限は善意の第三者に主張できない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第709条船長による職務代行者の選任自ら指揮できない時は代行者を選べる1項判例なし
  • やむを得ない事由がある場合に限られる
  • 法令に別段の定めがあればそちらが優先される
  • 代行者の選任について船長が責任を負う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第710条属具目録の備置き属具目録を船内に備え置く義務がある1項判例なし
  • 目録は必ず船内に置いておく
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第711条船長による積荷の処分航海中は積荷を利害関係人のため処分できる2項判例なし
  • 利害関係人にとって最も利益になる方法で行う
  • 処分で生じた債務は債権者への権利移転で免れられる
  • 利害関係人に過失があれば責任は免れない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第712条航海継続のための積荷の使用航海継続のため積荷を使用できる2項判例なし
  • 船舶所有者が償金を支払う
  • 償金額は576条1項〈損害賠償の額〉・2項を準用して算定する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第713条船長の責任海員の加害行為について船長が賠償責任を負う1項判例 1件
  • 職務中の故意・過失による他人への損害が対象
  • 監督に注意を怠らなかったと証明すれば免責される
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第714条船長の報告義務航海の重要事項を遅滞なく報告する義務1項判例なし
  • 報告先は船舶所有者
  • 遅滞なく行う必要がある
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第715条船長の解任船舶所有者はいつでも船長を解任できる4項判例なし
  • 正当理由がなければ解任による損害賠償を請求できる
  • 船長が共有者なら持分買取を他の共有者に請求可能
  • 買取請求時は遅滞なく他の共有者等に通知する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第713条商法

一、貨物船による曳船が海上保険契約普通保険約款六条〈後見人登記〉にいう「危険の著しい増加」にあたるとされた事例
二、船長が危険の著しい増加を知つた場合と海上保険契約普通保険約款七条二項〈小商人〉にいう「保険契約者又は被保険者が危険の著しい増加を知つたとき」
三、貨物を積載した貨物船による曳船と商法七一三条一項

裁判要旨一、海上保険契約中の普通保険約款六条〈後見人登記〉により、保険者の負担する危険が保険期間中保険契約者又は被保険者の責に帰しえない事由により著しく増加したときは保険契約はその効力を失う旨が定められている場合において、総トン数四〇五トン余、純トン数二四〇トン余の貨物船が五〇〇トンの貨物を積載したうえ無人の総トン数四四四トン、純トン数二六七トンの貨物船を曳船して太平洋沿岸航路を航海することは、右約款条項のいう危険の著しい増加にあたる。
二、海上保険契約中の普通保険約款七条二項〈小商人〉により、保険契約者又は被保険者が危険の著しい増加を知つたときは遅滞なくその事実を保険者に通知する義務を負う旨が定められている場合において、右危険著増の事実の知、不知は、船長について決すべきではない。
三、貨物を積載した貨物船により他の船舶を曳船して航海することは、特別な事情のないかぎり、船籍港外における船長の権限に属しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年1月31日 昭和44(オ)718
登載
民集 第29巻1号16頁
参照法条
商法656条,商法657条2項,商法713条1項,商法815条2項,商法816条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

商法 第708条(船長の代理権) 詳細ページ
(船長の代理権)
第七百八条船長は、船籍港外においては、次に掲げる行為を除き、船舶所有者に代わって航海のために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
一船舶について抵当権を設定すること。
二借財をすること。
2船長の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
商法 第709条(船長による職務代行者の選任) 詳細ページ
(船長による職務代行者の選任)
第七百九条船長は、やむを得ない事由により自ら船舶を指揮することができない場合には、法令に別段の定めがあるときを除き、自己に代わって船長の職務を行うべき者を選任することができる。この場合において、船長は、船舶所有者に対してその選任についての責任を負う。
商法 第710条(属具目録の備置き) 詳細ページ
(属具目録の備置き)
第七百十条船長は、属具目録を船内に備え置かなければならない。
商法 第711条(船長による積荷の処分) 詳細ページ
(船長による積荷の処分)
第七百十一条船長は、航海中に積荷の利害関係人の利益のため必要があるときは、利害関係人に代わり、最もその利益に適合する方法によって、その積荷の処分をしなければならない。
2積荷の利害関係人は、前項の処分によりその積荷について債務を負担したときは、当該債務に係る債権者にその積荷について有する権利を移転して、その責任を免れることができる。ただし、利害関係人に過失があったときは、この限りでない。
商法 第712条(航海継続のための積荷の使用) 詳細ページ
(航海継続のための積荷の使用)
第七百十二条船長は、航海を継続するため必要があるときは、積荷を航海の用に供することができる。
2第五百七十六条第一項及び第二項の規定は、前項の場合において船舶所有者が支払うべき償金の額について準用する。この場合において、同条第一項中「引渡し」とあるのは、「陸揚げ」と読み替えるものとする。
商法 第713条(船長の責任) 詳細ページ
(船長の責任)
第七百十三条船長は、海員がその職務を行うについて故意又は過失によって他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、船長が海員の監督について注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
商法 第714条(船長の報告義務) 詳細ページ
(船長の報告義務)
第七百十四条船長は、遅滞なく、航海に関する重要な事項を船舶所有者に報告しなければならない。
商法 第715条(船長の解任) 詳細ページ
(船長の解任)
第七百十五条船舶所有者は、いつでも、船長を解任することができる。
2前項の規定により解任された船長は、その解任について正当な理由がある場合を除き、船舶所有者に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。
3船長が船舶共有者である場合において、その意に反して解任されたときは、船長は、他の船舶共有者に対し、相当の対価で自己の持分を買い取ることを請求することができる。
4船長は、前項の規定による請求をしようとするときは、遅滞なく、他の船舶共有者又は船舶管理人に対してその旨の通知を発しなければならない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。