商法 / テーマ別まとめ

海商/海難救助

海難救助の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

海商における海難救助は、船舶や積荷等が海難に遭った際にこれを救助した者が救助料を請求できる仕組みと、その金額の決め方・上限・分配方法を定めています。契約の有無にかかわらず救助料を請求できる一方、海洋汚染の防止・軽減の措置には特別補償料という別の請求権も用意されています。救助料・特別補償料のいずれも、救助の作業が終了した時から2年で時効消滅します。

海難救助
区分請求できる場合金額の決め方上限時効
救助料海難を救助したとき当事者の合意、争いは裁判所が決定救助された物の価額の合計額2年
特別補償料海洋汚染の防止・軽減の措置をしたとき必要費用相当額(加算あり)費用相当額の130%(特別事情は200%)2年
  • 救助料は特約があればその額により、793条の裁判所判断は特約がない場合のみ適用される
  • 契約で定めた救助料が著しく不相当なときは当事者が増減を請求できる
  • 救助に従事した船舶の救助料の割合が著しく不相当なら船舶所有者・船員は互いに増減を請求できる
  • 故意に海難を発生させた場合や、正当な事由による救助拒否を無視して救助した場合は救助料を請求できない
  • 特別補償料は、同一海難で救助料の債権があるときはその額を控除した額になる
  • 汚染対処船舶救助従事者の過失で障害を防止・軽減できなかったときは特別補償料を減額されることがある
1

海難救助

海難救助について、条文は何を定めているか。

第792条救助料の支払の請求等契約がなくても救助料を請求できる2項判例なし
  • 海難に遭った船舶・積荷等を救助すれば救助料を請求できる
  • 契約に基づかない救助でも結果に対し救助料を請求できる
  • 船舶所有者と船長は積荷等の所有者に代わり救助契約を結べる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第793条救助料の額特約がないときの救助料は裁判所が決定1項判例なし
  • 特約がなく額に争いがあれば裁判所が事情を考慮して定める
  • 危険の程度、救助の結果、労力・費用などを考慮する
  • 海洋汚染の防止・軽減のための費用も考慮要素に含む
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第794条救助料の増減の請求契約で決めた救助料も著しく不相当なら増減可1項判例なし
  • 契約で救助料を定めても著しく不相当なら増減を請求できる
  • 増減を争う場合も793条〈救助料の額〉と同じ基準で裁判所が定める
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第795条救助料の上限額救助料には上限がある1項判例なし
  • 特約がなければ救助された物の価額の合計額が上限になる
  • 救助された積荷の運送賃の額もこの価額の合計に含める
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第796条救助料の割合等複数人で救助したときの割合も裁判所基準2項判例なし
  • 共同で救助した場合の各救助者の割合も793条〈救助料の額〉を準用して決める
  • 人命の救助に従事した者も同じ基準で救助料を受け取れる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第797条救助料は船主3分の2・船員3分の15項判例なし
  • 救助した船舶の救助料は3分の2を船舶所有者、3分の1を船員に分配
  • この割合を船員に不利に変える特約は無効
  • 業として救助する者には割合によらず救助料の全額を支払う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第798条救助料の割合の案船舶所有者は航海終了までに分配案を作成1項判例 1件
  • 各船員への救助料の割合案を航海終了までに作り船員に示す
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第799条船員は分配案に異議を申し立てられる3項判例なし
  • 案が示された後、最初に異議申立てができる港の管海官庁に申し立てる
  • 管海官庁は理由があると認めれば案を更正できる
  • 異議申立てについての決定が出るまで船舶所有者は船員に支払えない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第800条案を作らない船舶所有者には管海官庁が介入2項判例 1件
  • 船員の請求により管海官庁は船舶所有者に案の作成を命じられる
  • 命令に従わないときは管海官庁自らが割合を決定できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第801条救助料を請求することができない場合救助料を請求できない場合がある1項・2号判例なし
  • 故意に海難を発生させたときは救助料を請求できない
  • 正当な事由で救助を拒まれたのに救助しても請求できない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第802条積荷等についての先取特権救助料には積荷等への先取特権がある2項判例なし
  • 救助料に係る債権を持つ者は救助された積荷等に先取特権を持つ
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第803条救助料の支払等に係る船長の権限救助された船の船長が支払手続を代行できる4項判例なし
  • 救助された船舶の船長は救助料の支払に関する裁判上・裁判外の行為ができる
  • 船長は救助料の債務者のために原告・被告になれる
  • 救助側の船長にも同様の権限があるが、契約に基づく救助には適用されない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第804条積荷等の所有者の責任積荷等の所有者は救助料をその積荷等で弁済1項判例なし
  • 積荷等が救助されたとき、所有者はその積荷等で救助料債務を弁済する責任を負う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第805条特別補償料海洋汚染防止の措置には特別補償料がある5項判例なし
  • 海洋汚染の障害防止・軽減の措置をとった者は船舶所有者に請求できる(特約時を除く)
  • 額は必要・有益だった費用相当額が基本
  • 効果があれば費用相当額の30%〜100%を加算、同一海難の救助料があれば控除
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第806条救助料に係る債権等の消滅時効救助料・特別補償料は2年で時効消滅1項判例なし
  • 救助の作業が終了した時から2年間行使しないと時効で消滅する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第807条非航海船の救助への準用非航海船の救助にもこの章を準用1項判例なし
  • 非航海船や非航海船内の積荷等を救助する場合にも同じ規定を使う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第798条商法

船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効は,民法724条により,被害者が損害及び加害者を知った時から進行する
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年11月21日 平成16(受)1434
登載
民集 第59巻9号2558頁
参照法条
民法166条1項,民法724条,商法798条1項
論点2第800条商法

一、海難における救援救助についての規定の統一に関する条約(大正三年条約第二号)に基づく海難救助料請求権と救援救助義務
二、曳船の所有者が被曳船の海難につき曳船契約上負担すべき救援救助義務
三、曳船契約履行中被曳船の海難に対し曳船の船長及び海員のした救援救助行為につき曳船の船長の海難救助料請求が否定された事例

裁判要旨一、海難における救援救助についての規定の統一に関する条約(大正三年条約第二号)に基づく海難救助料請求権が発生するためには、海難に対する救援救助行為が義務なくしてされたものでなければならない。
二、曳船の所有者は、曳船契約履行中、被曳船が通常生ずるとはいえない事故により海難におちいつた場合においても、曳船に急迫な危険が存しないかぎり、原則として、被曳船の海難につき信義則上相当と認められる程度の適切な処置をとるべき契約上の義務を負担する。
三、独力による航行能力がなく、その乗組員は曳航中曳船の船長の指揮命令下にある被曳船が、その船底に生じた約二・五センチメートルの亀裂によつて浸水し、そのまま放置していたのでは沈没を免れない危険におちいつた場合において、曳船の船長が直ちに最寄りの港へ向け転進するとともに、曳船に備え付けられた排水用ポンプを被曳船に送り込み、被曳船の乗組員に指示して排水作業を継続させるなど曳船の船長及び海員のした判示のような救援救助行為につき、曳船の船長は、海難救助料を請求することができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年9月26日 昭和47(オ)1236
登載
民集 第28巻6号1331頁
参照法条
商法800条,海難における救援救助についての規定の統一に関する条約(大正3年条約第2号)2条1項,海難における救援救助についての規定の統一に関する条約(大正3年条約第2号)4条,民法1条2項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

商法 第792条(救助料の支払の請求等) 詳細ページ
(救助料の支払の請求等)
第七百九十二条船舶又は積荷その他の船舶内にある物(以下この編において「積荷等」という。)の全部又は一部が海難に遭遇した場合において、これを救助した者があるときは、その者(以下この章において「救助者」という。)は、契約に基づかないで救助したときであっても、その結果に対して救助料の支払を請求することができる。
2船舶所有者及び船長は、積荷等の所有者に代わってその救助に係る契約を締結する権限を有する。
商法 第793条(救助料の額) 詳細ページ
(救助料の額)
第七百九十三条救助料につき特約がない場合において、その額につき争いがあるときは、裁判所は、危険の程度、救助の結果、救助のために要した労力及び費用(海洋の汚染の防止又は軽減のためのものを含む。)その他一切の事情を考慮して、これを定める。
商法 第794条(救助料の増減の請求) 詳細ページ
(救助料の増減の請求)
第七百九十四条海難に際し契約で救助料を定めた場合において、その額が著しく不相当であるときは、当事者は、その増減を請求することができる。この場合においては、前条の規定を準用する。
商法 第795条(救助料の上限額) 詳細ページ
(救助料の上限額)
第七百九十五条救助料の額は、特約がないときは、救助された物の価額(救助された積荷の運送賃の額を含む。)の合計額を超えることができない。
商法 第796条(救助料の割合等) 詳細ページ
(救助料の割合等)
第七百九十六条数人が共同して救助した場合において、各救助者に支払うべき救助料の割合については、第七百九十三条の規定を準用する。
2第七百九十二条第一項に規定する場合において、人命の救助に従事した者があるときは、その者も、前項の規定に従って救助料の支払を受けることができる。
商法 第797条 詳細ページ
第七百九十七条救助に従事した船舶に係る救助料については、その三分の二を船舶所有者に支払い、その三分の一を船員に支払わなければならない。
2前項の規定に反する特約で船員に不利なものは、無効とする。
3前二項の規定にかかわらず、救助料の割合が著しく不相当であるときは、船舶所有者又は船員の一方は、他の一方に対し、その増減を請求することができる。この場合においては、第七百九十三条の規定を準用する。
4各船員に支払うべき救助料の割合は、救助に従事した船舶の船舶所有者が決定する。この場合においては、前条の規定を準用する。
5救助者が救助することを業とする者であるときは、前各項の規定にかかわらず、救助料の全額をその救助者に支払わなければならない。
商法 第798条(救助料の割合の案) 詳細ページ
(救助料の割合の案)
第七百九十八条船舶所有者が前条第四項の規定により救助料の割合を決定するには、航海を終了するまでにその案を作成し、これを船員に示さなければならない。
商法 第799条 詳細ページ
第七百九十九条船員は、前条の案に対し、異議の申立てをすることができる。この場合において、当該異議の申立ては、その案が示された後、当該異議の申立てをすることができる最初の港の管海官庁にしなければならない。
2管海官庁は、前項の規定による異議の申立てを理由があると認めるときは、前条の案を更正することができる。
3船舶所有者は、第一項の規定による異議の申立てについての管海官庁の決定があるまでは、船員に対し、救助料の支払をすることができない。
商法 第800条 詳細ページ
第八百条船舶所有者が第七百九十八条の案の作成を怠ったときは、管海官庁は、船員の請求により、船舶所有者に対し、その案の作成を命ずることができる。
2船舶所有者が前項の規定による命令に従わないときは、管海官庁は、自ら第七百九十七条第四項の規定による決定をすることができる。
商法 第801条(救助料を請求することができない場合) 詳細ページ
(救助料を請求することができない場合)
第八百一条次に掲げる場合には、救助者は、救助料を請求することができない。
一故意に海難を発生させたとき。
二正当な事由により救助を拒まれたにもかかわらず、救助したとき。
商法 第802条(積荷等についての先取特権) 詳細ページ
(積荷等についての先取特権)
第八百二条救助料に係る債権を有する者は、救助された積荷等について先取特権を有する。
2前項の先取特権については、第八百四十三条第二項、第八百四十四条及び第八百四十六条の規定を準用する。
商法 第803条(救助料の支払等に係る船長の権限) 詳細ページ
(救助料の支払等に係る船長の権限)
第八百三条救助された船舶の船長は、救助料の債務者に代わってその支払に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2救助された船舶の船長は、救助料に関し、救助料の債務者のために、原告又は被告となることができる。
3前二項の規定は、救助に従事した船舶の船長について準用する。この場合において、これらの規定中「債務者」とあるのは、「債権者(当該船舶の船舶所有者及び海員に限る。)」と読み替えるものとする。
4前三項の規定は、契約に基づく救助については、適用しない。
商法 第804条(積荷等の所有者の責任) 詳細ページ
(積荷等の所有者の責任)
第八百四条積荷等の全部又は一部が救助されたときは、当該積荷等の所有者は、当該積荷等をもって救助料に係る債務を弁済する責任を負う。
商法 第805条(特別補償料) 詳細ページ
(特別補償料)
第八百五条海難に遭遇した船舶から排出された油その他の物により海洋が汚染され、当該汚染が広範囲の沿岸海域において海洋環境の保全に著しい障害を及ぼし、若しくは人の健康を害し、又はこれらの障害を及ぼすおそれがある場合において、当該船舶の救助に従事した者が当該障害の防止又は軽減のための措置をとったときは、その者(以下この条において「汚染対処船舶救助従事者」という。)は、特約があるときを除き、船舶所有者に対し、特別補償料の支払を請求することができる。
2特別補償料の額は、前項に規定する措置として必要又は有益であった費用に相当する額とする。
3汚染対処船舶救助従事者がその措置により第一項に規定する障害を防止し、又は軽減したときは、特別補償料は、当事者の請求により、前項に規定する費用に相当する額以上当該額に百分の三十(当該額が当該障害の防止又は軽減の結果に比して著しく少ないことその他の特別の事情がある場合にあっては、百分の百)を乗じて得た額を加算した額以下の範囲内において、裁判所がこれを定める。この場合においては、第七百九十三条の規定を準用する。
4汚染対処船舶救助従事者が同一の海難につき救助料に係る債権を有するときは、特別補償料の額は、当該救助料の額を控除した額とする。
5汚染対処船舶救助従事者の過失によって第一項に規定する障害を防止し、又は軽減することができなかったときは、裁判所は、これを考慮して、特別補償料の額を定めることができる。
商法 第806条(救助料に係る債権等の消滅時効) 詳細ページ
(救助料に係る債権等の消滅時効)
第八百六条救助料又は特別補償料に係る債権は、救助の作業が終了した時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。
商法 第807条(非航海船の救助への準用) 詳細ページ
(非航海船の救助への準用)
第八百七条この章の規定は、非航海船又は非航海船内にある積荷その他の物を救助する場合について準用する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。