商法 / テーマ別まとめ

海商/船舶先取特権及び船舶抵当権

船舶先取特権及び船舶抵当権の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

商法842条から850条は、船舶にまつわる債権を優先的に回収できる「船舶先取特権」と、登記した船舶に設定できる「船舶抵当権」の内容・優先順位・消滅事由を定めています。両者が競合した場合の優劣関係や、船舶が譲渡された場合・製造中の場合の扱いも整理されています。実務担当者は、どの債権がどの順位で優先弁済を受けられるか、権利がいつ消滅するかを押さえておく必要があります。

船舶先取特権及び船舶抵当権
項目船舶先取特権船舶抵当権
発生根拠842条各号の債権(人身損害・救助料等)登記した船舶への設定
優先順位の基準842条各号の順序抵当権設定の順序
救助料債権の扱い既存の先取特権にも優先―
先取特権と抵当権の競合抵当権に優先先取特権に劣後
一般先取特権との競合―第一順位の先取特権と同順位
消滅時期発生後1年で消滅不動産抵当権の規定を準用
船舶譲渡時公告後の届出なければ消滅―
  • 同一順位の先取特権が複数あるときは債権額の割合で按分する(843条2項)
  • 842条2号から4号の債権は、同一順位でも後に生じたものが優先する(843条2項ただし書)
  • 船舶譲渡時の公告期間は1箇月を下回ることができない(845条1項)
  • 船舶抵当権の実行には不動産抵当権の規定を準用し、民法384条1号は読み替えて適用する(847条3項)
  • 登記した船舶は質権の目的にできない(849条)
  • これらの規定は製造中の船舶にも準用される(850条)
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船舶先取特権及び船舶抵当権

船舶先取特権及び船舶抵当権について、条文は何を定めているか。

第842条船舶先取特権先取特権が生じる5種類の債権1項・5号判例 3件
  • 人の生命・身体の損害賠償請求権が対象(1号)
  • 救助料・共同海損分担、船員の雇用契約上の債権も対象(2,5号)
  • 国税徴収類似の請求権や水先料・航海費用も対象(3,4号)
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第843条船舶先取特権の順位先取特権同士は842条〈船舶先取特権〉の順序で優先2項判例なし
  • 救助料に係る先取特権は既存の先取特権にも優先する
  • 同一順位が複数あれば債権額の割合で按分する
  • 2~4号の債権は後に生じた方が優先(同時発生を除く)
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第844条船舶先取特権と他の先取特権との競合船舶先取特権は他の先取特権に優先1項判例なし
  • 船舶先取特権と一般の先取特権が競合すれば常に優先する
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第845条船舶先取特権と船舶の譲受人船舶譲渡時は公告し届出なければ消滅2項判例なし
  • 譲受人は登記後、先取特権者に債権の申出を公告する
  • 公告期間は1箇月を下回ることができない
  • 期間内に申出がなければ先取特権は消滅する
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第846条船舶先取特権の消滅先取特権は発生から1年で消滅1項判例なし
  • 発生後1年を経過すると自動的に消滅する
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第847条船舶抵当権登記船舶には抵当権を設定できる3項判例 1件
  • 抵当権の効力は属具にも及ぶ
  • 不動産抵当権の規定を準用する
  • 準用時、民法384条1号の要件は一部読み替える
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第848条船舶抵当権と船舶先取特権等との競合先取特権・抵当権が競合した際の順位2項判例なし
  • 船舶先取特権は船舶抵当権に優先する
  • 船舶抵当権は一般先取特権のうち第一順位と同順位となる
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第849条質権設定の禁止登記した船舶に質権は設定できない1項判例なし
  • 登記した船舶は質権の目的にできない
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第850条製造中の船舶への準用製造中の船舶にもこの章の規定を準用1項判例なし
  • 建造中の船舶にも先取特権・抵当権の規定が適用される
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第842条商法

航海中の遠洋鮪漁船に補給された燃料油や食料等の代金債権がわが国において船舶所有者が締結した契約に基づいて生じたものである場合に右債権が商法八四二条六号所定の債権にあたるとされた事例

裁判要旨航海中の遠洋鮪漁船に補給された燃料や食料等の代金債権がわが国において船舶所有者が締結した契約に基づいて生じたものであつても、右債権は、商法八四二条六号〈船舶先取特権〉所定の債権にあたる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年3月27日 昭和57(オ)859
登載
集民 第141号435頁
参照法条
商法842条6号
論点2第842条商法

遠洋まぐろ漁船につき本邦を出港し一年有余の漁獲ののち帰港するまでの全航海が商法八四二条六号所定の「航海」にあたるとされた事例

裁判要旨漁場が遠方洋上にあつて漁獲期間が一年有余にわたること、漁獲物の刺身用まぐろが本邦でのみ消費され海外での水揚げはできないこと、漁具及び餌が特殊なもので本邦でしか調達できないことなどから、本邦を出港し本邦に帰港するまでを一航海として、水揚げ代金から船員の生産奨励金、補給その他経費等の各債権の清算をする方式がとられている遠洋まぐろ漁船にあつては、本邦を出港し、漁獲に従事し、再び本邦に帰港するまでの全航海が、船舶法三五条によつて準用される商法八四二条六号所定の「航海」に該当する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年3月24日 昭和54(オ)412
登載
集民 第138号333頁
参照法条
船舶法35条,商法842条6号
論点3第842条商法

船舶の発航により商法八四二条八号所定の先取特権を消滅させた行為が不法行為にあたらないとされた事例

裁判要旨船舶所有者がその所有の船舶につき第三者が商法八四二条八号所定の先取特権を有することを知りながらこれを発航させて右先取特権を消滅させるに至つたとしても、右船舶所有者が船舶発航前に先取特権者の権利行使を妨げる行為をしたなどの特段の事情のない限り、右発航行為をもつて先取特権者の権利を違法に侵害した不法行為にあたるということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年3月24日 昭和56(オ)1213
登載
集民 第138号361頁
参照法条
民法709条,商法842条8号,商法847条2項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

商法 第842条(船舶先取特権) 詳細ページ
(船舶先取特権)
第八百四十二条次に掲げる債権を有する者は、船舶及びその属具について先取特権を有する。
一船舶の運航に直接関連して生じた人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権
二救助料に係る債権又は船舶の負担に属する共同海損の分担に基づく債権
三国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)若しくは国税徴収の例によって徴収することのできる請求権であって船舶の入港、港湾の利用その他船舶の航海に関して生じたもの又は水先料若しくは引き船料に係る債権
四航海を継続するために必要な費用に係る債権
五雇用契約によって生じた船長その他の船員の債権
商法 第843条(船舶先取特権の順位) 詳細ページ
(船舶先取特権の順位)
第八百四十三条前条各号に掲げる債権に係る先取特権(以下この章において「船舶先取特権」という。)が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、同条各号に掲げる順序に従う。ただし、同条第二号に掲げる債権(救助料に係るものに限る。)に係る船舶先取特権は、その発生の時において既に生じている他の船舶先取特権に優先する。
2同一順位の船舶先取特権を有する者が数人あるときは、これらの者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、前条第二号から第四号までに掲げる債権にあっては、同一順位の船舶先取特権が同時に生じたものでないときは、後に生じた船舶先取特権が前に生じた船舶先取特権に優先する。
商法 第844条(船舶先取特権と他の先取特権との競合) 詳細ページ
(船舶先取特権と他の先取特権との競合)
第八百四十四条船舶先取特権と他の先取特権とが競合する場合には、船舶先取特権は、他の先取特権に優先する。
商法 第845条(船舶先取特権と船舶の譲受人) 詳細ページ
(船舶先取特権と船舶の譲受人)
第八百四十五条船舶所有者がその船舶を譲渡したときは、譲受人は、その登記をした後、船舶先取特権を有する者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、一箇月を下ることができない。
2船舶先取特権を有する者が前項の期間内に同項の申出をしなかったときは、その船舶先取特権は、消滅する。
商法 第846条(船舶先取特権の消滅) 詳細ページ
(船舶先取特権の消滅)
第八百四十六条船舶先取特権は、その発生後一年を経過したときは、消滅する。
商法 第847条(船舶抵当権) 詳細ページ
(船舶抵当権)
第八百四十七条登記した船舶は、抵当権の目的とすることができる。
2船舶の抵当権は、その属具に及ぶ。
3船舶の抵当権には、不動産の抵当権に関する規定を準用する。この場合において、民法第三百八十四条第一号中「抵当権を実行して競売の申立てをしないとき」とあるのは、「抵当権の実行としての競売の申立て若しくはその提供を承諾しない旨の第三取得者に対する通知をせず、又はその通知をした債権者が抵当権の実行としての競売の申立てをすることができるに至った後一週間以内にこれをしないとき」と読み替えるものとする。
商法 第848条(船舶抵当権と船舶先取特権等との競合) 詳細ページ
(船舶抵当権と船舶先取特権等との競合)
第八百四十八条船舶の抵当権と船舶先取特権とが競合する場合には、船舶先取特権は、船舶の抵当権に優先する。
2船舶の抵当権と先取特権(船舶先取特権を除く。)とが競合する場合には、船舶の抵当権は、民法第三百三十条第一項に規定する第一順位の先取特権と同順位とする。
商法 第849条(質権設定の禁止) 詳細ページ
(質権設定の禁止)
第八百四十九条登記した船舶は、質権の目的とすることができない。
商法 第850条(製造中の船舶への準用) 詳細ページ
(製造中の船舶への準用)
第八百五十条この章の規定は、製造中の船舶について準用する。
出

一次情報

原文ママ

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