商法 / テーマ別まとめ

商行為/匿名組合

匿名組合の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

匿名組合契約は、匿名組合員が営業者の営業のために出資し、その営業から生じる利益の分配を受ける契約です。出資は営業者の財産となり、匿名組合員は業務執行や対外的な権利義務を持たない点が大きな特徴です。ここでは契約の成立から利益配当の制限、閲覧・検査、解除・終了、出資の返還までを商法535条から542条の順に整理しています。

匿名組合
項目内容
契約の成立出資と利益分配の合意で成立
出資の帰属出資は営業者の財産になる
出資できるもの金銭その他の財産のみ
業務執行・代表匿名組合員はできない
対外的な権利義務匿名組合員は第三者に負わない
氏名等の使用許諾許諾後の債務を連帯して弁済
利益配当の制限損失てん補後でないと請求不可
貸借対照表の閲覧等年度終了時に閲覧・謄写を請求可
裁判所許可の検査重要事由があればいつでも可
解除(期間の定めなし等)年度終了時、6箇月前に予告
解除(やむを得ない事由)いつでも解除できる
終了事由事業成功・不能、死亡、破産等
出資の返還出資価額、損失減少時は残額
  • 解除の6箇月前予告は、存続期間の定めがない場合、又は当事者の終身の間存続すると定めた場合が対象
  • 裁判所許可に係る検査事件は、営業者の営業所(営業所がなければ住所地)を管轄する地方裁判所が管轄
  • 終了事由の死亡には、営業者が後見開始の審判を受けたことも含まれる
  • 終了事由の破産は、営業者又は匿名組合員のいずれかが破産手続開始の決定を受けたとき
  • 貸借対照表の閲覧等は書面と電磁的記録とで請求の方法が分かれて定められている
1

匿名組合

匿名組合について、条文は何を定めているか。

第535条匿名組合契約出資と利益分配の約束で契約が成立する1項判例 3件
  • 一方が相手方の営業のために出資し、利益分配を約すると効力を生じる
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第536条匿名組合員の出資及び権利義務出資は営業者名義、業務執行はできない4項判例 2件
  • 出資した財産は営業者の財産になる
  • 出資できるのは金銭その他の財産に限られる
  • 業務執行・代表はできず、営業者の行為について第三者に権利義務も負わない
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第537条自己の氏名等の使用を許諾した匿名組合員の責任氏名等の使用を許した場合の連帯責任1項判例なし
  • 自己の氏名・商号を営業者の商号に使わせることを許諾した場合が対象
  • 許諾後に生じた債務は営業者と連帯して弁済する責任を負う
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第538条利益の配当の制限損失をてん補するまで利益配当は請求不可1項判例なし
  • 出資が損失で減少したときは、てん補前は配当を請求できない
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第539条貸借対照表の閲覧等並びに業務及び財産状況に関する検査年度末の閲覧請求と裁判所許可の検査3項・2号判例 1件
  • 営業年度終了時、営業時間内に貸借対照表の閲覧・謄写を請求できる
  • 重要な事由があれば、裁判所の許可を得ていつでも業務・財産状況を検査できる
  • 許可事件は営業者の営業所(ないときは住所地)の地方裁判所が管轄
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第540条匿名組合契約の解除存続期間の定めがなければ6箇月前予告で解除2項判例なし
  • 期間の定めがない、又は当事者の終身の間存続と定めた場合が対象
  • 各当事者は営業年度終了時に解除でき、6箇月前の予告が必要
  • やむを得ない事由があれば、いつでも解除できる
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第541条匿名組合契約の終了事由事業の成功・不能、死亡、破産で終了する1項・3号判例なし
  • 匿名組合の目的である事業が成功した、又は成功不能となったとき
  • 営業者が死亡した、又は後見開始の審判を受けたとき
  • 営業者・匿名組合員のいずれかが破産手続開始の決定を受けたとき
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第542条匿名組合契約の終了に伴う出資の価額の返還契約終了時は出資の価額を返還する1項判例なし
  • 契約終了時、営業者は匿名組合員に出資の価額を返還する
  • 出資が損失で減少していれば、残額の返還で足りる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第535条商法

設立中の株式会社の財産について横領罪の成立する一事例

裁判要旨株式会社設立のため出資された資金によつて建設された建物が、会社設立前でも出資者の組合財産であると認められる場合は、その組合の事業を委されている者がこれを自己名義に保存登記をした上、自己の債務の弁済に供するため他に譲渡した場合は横領罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年12月19日 昭和28(あ)5403
登載
刑集 第11巻13号3316頁
参照法条
刑法252条,民法667条,民法668条,商法535条,商法536条
論点2第535条商法

匿名組合契約の営業者が新たに設立される株式会社に出資するなどし,同社が営業者の代表者等から売買により株式を取得した場合において,営業者に匿名組合員に対する善管注意義務違反はないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨匿名組合契約の営業者であるY1社が,その営業として,新たに設立される株式会社A社の資本金の8割を出資し,A社の発行する新株予約権付社債を引き受け,A社がY1社の代表取締役であるY2及びその弟であるY3から売買によりB社株式を取得した場合において,次の(1)及び(2)など判示の事情の下では,上記の出資,引受け及び売買に係る匿名組合員であるXの承諾の有無について審理判断することなく,Y1社に善管注意義務違反はないとした原審の判断には,違法がある。
(1) 上記売買は,Y1社らがA社設立時に予定し,A社の代表取締役であるY3において実行したものであり,上記の出資,引受け及び売買はY1社による一連の行為といえるところ,上記一連の行為は,これによりY1社に生ずる損益が匿名組合契約に基づき全部Xに分配されるものであり,Y2及びY3とXとの間に実質的な利益相反関係が生ずるものであった。
(2) 上記売買の売主であるY2及びY3が買主であるA社の取締役や代表取締役であること,B社株式に市場価格はなくXが売買代金額の決定に関与する機会もないこと,上記の出資及び引受けの合計額は1億8000万円であり,上記売買の代金額は1億5000万円であって,いずれも匿名組合契約に基づくXの出資額である3億円の2分の1以上に及ぶものであることに照らすと,上記一連の行為はXの利益を害する危険性の高いものであった。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年9月6日 平成27(受)766
登載
集民 第253号119頁
参照法条
商法535条,民法415条
論点3第535条商法

1 匿名組合契約に基づき匿名組合員が受ける利益の分配と所得区分の判断
2 匿名組合契約に基づき航空機のリース事業に出資をした匿名組合員が,当該契約に基づく損失の分配を不動産所得に係るものとして所得税の申告をしたことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例

裁判要旨1 匿名組合契約に基づき匿名組合員が営業者から受ける利益の分配に係る所得は,①当該契約において,匿名組合員に営業者の営む事業に係る重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されており,匿名組合員が実質的に営業者と共同して事業を営む者としての地位を有するものと認められる場合には,当該事業の内容に従って事業所得又はその他の各種所得に該当し,②それ以外の場合には,当該事業の内容にかかわらず,その出資が匿名組合員自身の事業として行われているため事業所得となる場合を除き,雑所得に該当する。
2 匿名組合契約に基づき航空機のリース事業に出資をした匿名組合員が,当該事業につき生じた損失のうち当該契約に基づく同人への損失の分配として計上された金額を不動産所得に係る損失に該当するものとして所得税の申告をしたところ,これに該当しないとして更正がされた場合において,匿名組合契約に基づき匿名組合員が受ける利益の分配に係る所得区分に関する課税庁の公的見解が上記申告後の通達改正によって変更されたが,変更前の公的見解によれば上記の金額は不動産所得に係る損失に該当するとされるものであったなど判示の事情の下では,上記申告をしたことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年6月12日 平成24(行ヒ)408
登載
民集 第69巻4号1121頁
参照法条
(1,2につき) 商法535条 (1につき) 所得税法27条1項,所得税法35条1項,商法536条,商法539条 (2につき) 国税通則法65条4項,所得税法26条1項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

商法 第535条(匿名組合契約) 詳細ページ
(匿名組合契約)
第五百三十五条匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。
商法 第536条(匿名組合員の出資及び権利義務) 詳細ページ
(匿名組合員の出資及び権利義務)
第五百三十六条匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。
2匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる。
3匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない。
4匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しない。
商法 第537条(自己の氏名等の使用を許諾した匿名組合員の責任) 詳細ページ
(自己の氏名等の使用を許諾した匿名組合員の責任)
第五百三十七条匿名組合員は、自己の氏若しくは氏名を営業者の商号中に用いること又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務については、営業者と連帯してこれを弁済する責任を負う。
商法 第538条(利益の配当の制限) 詳細ページ
(利益の配当の制限)
第五百三十八条出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない。
商法 第539条(貸借対照表の閲覧等並びに業務及び財産状況に関する検査) 詳細ページ
(貸借対照表の閲覧等並びに業務及び財産状況に関する検査)
第五百三十九条匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、次に掲げる請求をし、又は営業者の業務及び財産の状況を検査することができる。
一営業者の貸借対照表が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二営業者の貸借対照表が電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもので法務省令で定めるものをいう。)をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2匿名組合員は、重要な事由があるときは、いつでも、裁判所の許可を得て、営業者の業務及び財産の状況を検査することができる。
3前項の許可に係る事件は、営業者の営業所の所在地(営業所がない場合にあっては、営業者の住所地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
商法 第540条(匿名組合契約の解除) 詳細ページ
(匿名組合契約の解除)
第五百四十条匿名組合契約で匿名組合の存続期間を定めなかったとき、又はある当事者の終身の間匿名組合が存続すべきことを定めたときは、各当事者は、営業年度の終了時において、契約の解除をすることができる。ただし、六箇月前にその予告をしなければならない。
2匿名組合の存続期間を定めたか否かにかかわらず、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、いつでも匿名組合契約の解除をすることができる。
商法 第541条(匿名組合契約の終了事由) 詳細ページ
(匿名組合契約の終了事由)
第五百四十一条前条の場合のほか、匿名組合契約は、次に掲げる事由によって終了する。
一匿名組合の目的である事業の成功又はその成功の不能
二営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたこと。
三営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと。
商法 第542条(匿名組合契約の終了に伴う出資の価額の返還) 詳細ページ
(匿名組合契約の終了に伴う出資の価額の返還)
第五百四十二条匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならない。ただし、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足りる。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。