借地借家法 / テーマ別まとめ

借地/借地権の効力

借地権の効力の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

借地借家法10条から16条は、借地権が第三者との関係でどこまで効力を持つかを定めています。登記済み建物による対抗力、地代等の増減請求、地代等未払い時の先取特権、契約終了時の建物買取請求権、自己借地権、そして借地権者に不利な特約を無効とする強行規定を扱います。実務担当者は、建物登記の有無や特約の有効性を確認する際の根拠として参照できます。

借地権の効力
制度要件効果備考
対抗力(10条)登記した建物を所有登記なくても第三者に対抗可滅失後2年は掲示で存続可
地代等増減請求(11条)公課・地価・近傍地代の変動将来に向け増減請求できる不増額特約があれば特約優先
先取特権(12条)最後2年分の地代等未払建物に先取特権を持つ登記より前の質権・抵当権に劣後
建物買取請求権(13条)存続期間満了・更新なし建物等を時価で買取請求可裁判所が代金支払に期限許与可
第三者の建物買取請求権(14条)譲渡・転貸を設定者が不承諾第三者が時価で買取請求可権原で附属させた物も対象
自己借地権(15条)他の者と共有する場合に限る設定者自身も借地権者になれる借地権者に帰しても共有なら存続
強行規定(16条)10条・13条・14条に反する特約借地権者・転借地権者に不利なら無効―
  • 地代等の増額請求で争いがある場合、裁判確定まで相当と認める額を支払えばよく、不足額には年1割の利息を付す。
  • 地代等の減額請求で争いがある場合、裁判確定まで相当と認める額の支払を請求でき、超過額には年1割の利息を付して返還する。
  • 一定期間地代等を増額しない特約があるときは、その特約が優先する。
  • 先取特権の規定は、転借地権者が所有する建物にも準用される。
  • 建物買取請求権の規定は、転借地権者と借地権設定者との間にも準用される。
  • 16条の無効規定は借地権者だけでなく転借地権者に不利な特約にも及ぶ。
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借地権の効力

借地権の効力について、条文は何を定めているか。

第10条借地権の対抗力登記した建物があれば対抗できる2項判例 2件
  • 借地権の登記がなくても、登記済みの建物を所有していれば第三者に対抗できる
  • 建物が滅失しても、必要事項等を土地の見やすい場所に掲示すれば対抗力は続く
  • ただし滅失から2年経過後は、その前に建物を新築し登記していないと対抗力を失う
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第11条地代等増減請求権地代等は事情変動で増減請求できる3項判例 3件
  • 公租公課や地価、近傍相場との不均衡があれば契約条件に関わらず増減請求できる
  • 増額請求で争いがあれば、裁判確定まで相当額の支払いで足り、不足分には年1割の利息が付く
  • 減額請求で争いがあれば、裁判確定まで相当額の支払いを請求でき、超過分には年1割の利息が付く
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第12条借地権設定者の先取特権未払地代の最後2年分に先取特権4項判例なし
  • 設定者は、弁済期到来済みの最後2年分の地代等について建物に先取特権を持つ
  • 先取特権は地上権や賃借権の登記で効力を保存する
  • 質権・抵当権より優先するが、登記より前の質権・抵当権には劣後する
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第13条建物買取請求権更新がなければ建物の買取を請求できる3項判例なし
  • 存続期間満了かつ更新なしの場合、設定者に建物等の時価買取を請求できる
  • 承諾なく残存期間を超えて新築された建物は、裁判所が代金支払に期限を許せる
  • 転借地権者と設定者の間にも同様のルールが準用される
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第14条第三者の建物買取請求権第三者も建物の買取を請求できる1項判例なし
  • 賃借権の譲渡・転貸を設定者が承諾しないとき、建物取得者は買取請求できる
  • 請求できるのは建物その他借地権者が権原で附属させた物
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第15条自己借地権共有に限り設定者も借地権を持てる2項判例なし
  • 他の者と共有になる場合に限り、設定者自身が借地権を持つことができる
  • 借地権が設定者に帰しても、他の者と共有なら借地権は消滅しない
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第16条強行規定10・13・14条〈第三者の建物買取請求権〉は不利な特約を無効にする1項判例なし
  • 10条〈借地権の対抗力〉・13条〈建物買取請求権〉・14条〈第三者の建物買取請求権〉に反し借地権者や転借地権者に不利な特約は無効になる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第10条借地借家法

一体として利用されている二筆の借地のうち一方の土地上にのみ借地権者所有の登記されている建物がある場合において両地の買主による他方の土地の明渡請求が権利の濫用に当たるとされた事例

裁判要旨丁戊二筆の土地の借地権者甲が、ガソリンスタンドの営業のために、丁地上に登記されている建物を所有して店舗等として利用し、隣接する戊地には未登記の簡易なポンプ室や給油設備等を設置し、右両地を一体として利用していて、戊地を利用することができなくなると右営業の継続が事実上不可能となり、甲が右ポンプ室を独立の建物としての価値を有するものとは認めず登記手続を執らなかったこともやむを得ないと見られ、他方、右両地の買主乙には将来の土地の利用につき格別に特定された目的は存在せず、乙が売主の説明から直ちに甲は使用借主であると信じたことについては落ち度があるなど判示の事情の下においては、乙が右両地を特に低廉な価格で買い受けたものではなかったとしても、乙の戊地についての明渡請求は、権利の濫用に当たり許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年7月1日 平成6(オ)590
登載
民集 第51巻6号2251頁
参照法条
民法1条3項,建物保護に関する法律1条,借地借家法10条1項
論点2第10条借地借家法

登記に表示された所在地番及び床面積が実際と異なる建物が借地借家法10条1項にいう「登記されている建物」に当たるとされた事例

裁判要旨借地上の建物の登記に表示された所在地番及び床面積が実際と異なる場合において,所在地番の相違が職権による表示の変更の登記に際し登記官の過誤により生じたものであること,床面積の相違は建物の同一性を否定するようなものではないことなど判示の事情の下では,上記建物は,借地借家法10条1項〈借地権の対抗力〉にいう「登記されている建物」に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年1月19日 平成17(オ)48
登載
集民 第219号49頁
参照法条
借地借家法10条1項,不動産登記法44条
論点3第11条借地借家法

ゴルフ場経営を目的とする地上権設定契約及び土地賃貸借契約につき借地借家法11条の類推適用をする余地はないとされた事例

裁判要旨地上権設定契約及び土地賃貸借契約において,ゴルフ場経営を目的とすることが定められているにすぎず,当該土地が建物の所有と関連するような態様で使用されていることもうかがわれないという事実関係の下においては,借地借家法11条〈地代等増減請求権〉の類推適用をする余地はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年1月22日 平成23(受)2229
登載
集民 第243号1頁
参照法条
借地借家法11条
論点4第11条借地借家法

建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において賃料を減額しない旨の特約が存することにより賃料減額請求権の行使を妨げられることはないとされた事例

裁判要旨建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において,3年ごとに賃料の改定を行うものとし,改定後の賃料は,従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ,公租公課の増減額を加算又は控除した額とするが,消費者物価指数が下降してもそれに応じて賃料の減額をすることはない旨の特約が存する場合であっても,上記契約の当事者は,そのことにより借地借家法11条1項に基づく賃料減額請求権の行使を妨げられるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年6月29日 平成15(受)751
登載
集民 第214号595頁
参照法条
借地借家法11条1項,民法91条
論点5第11条借地借家法

地代等自動改定特約と借地借家法11条1項

裁判要旨地代等自動改定特約において地代等の改定基準を定めるに当たって基礎とされていた事情が失われることにより,同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には,同特約の適用を争う当事者は,同特約に拘束されず,同項に基づく地代等増減請求権の行使を妨げられない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成15年6月12日 平成14(受)689
登載
民集 第57巻6号595頁
参照法条
借地借家法11条1項,民法91条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

借地借家法 第10条(借地権の対抗力) 詳細ページ
(借地権の対抗力)
第十条借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
借地借家法 第11条(地代等増減請求権) 詳細ページ
(地代等増減請求権)
第十一条地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
借地借家法 第12条(借地権設定者の先取特権) 詳細ページ
(借地権設定者の先取特権)
第十二条借地権設定者は、弁済期の到来した最後の二年分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。
2前項の先取特権は、地上権又は土地の賃貸借の登記をすることによって、その効力を保存する。
3第一項の先取特権は、他の権利に対して優先する効力を有する。ただし、共益費用、不動産保存及び不動産工事の先取特権並びに地上権又は土地の賃貸借の登記より前に登記された質権及び抵当権には後れる。
4前三項の規定は、転借地権者がその土地において所有する建物について準用する。
借地借家法 第13条(建物買取請求権) 詳細ページ
(建物買取請求権)
第十三条借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
2前項の場合において、建物が借地権の存続期間が満了する前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
3前二項の規定は、借地権の存続期間が満了した場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。
借地借家法 第14条(第三者の建物買取請求権) 詳細ページ
(第三者の建物買取請求権)
第十四条第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
借地借家法 第15条(自己借地権) 詳細ページ
(自己借地権)
第十五条借地権を設定する場合においては、他の者と共に有することとなるときに限り、借地権設定者が自らその借地権を有することを妨げない。
2借地権が借地権設定者に帰した場合であっても、他の者と共にその借地権を有するときは、その借地権は、消滅しない。
借地借家法 第16条(強行規定) 詳細ページ
(強行規定)
第十六条第十条、第十三条及び第十四条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。