会社法 / テーマ別まとめ

吸収分割/株式会社に権利義務を承継させる吸収分割

株式会社に権利義務を承継させる吸収分割の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

吸収分割承継会社が株式会社である場合に、吸収分割契約で定めるべき事項と、効力発生日に生じる権利義務の承継・債権者保護の仕組みを整理しています。対価として交付する株式等の内容や、催告漏れの債権者・残存債権者が誰にどこまで請求できるかを中心に確認できます。

株式会社に権利義務を承継させる吸収分割
対象効力発生日の効果限度額
吸収分割承継株式会社契約の定めに従い権利義務を承継―
吸収分割会社(対価が株式等のみ)契約の定めにより株主等になる―
個別催告漏れの債権者(吸収分割会社宛)吸収分割会社にも履行請求できる効力発生日の財産価額まで
個別催告漏れの債権者(承継会社宛)承継株式会社にも履行請求できる承継した財産の価額まで
残存債権者(承継されない債務)承継会社に履行請求できる(害意時)承継した財産の価額まで
  • 承継会社が効力発生時に残存債権者を害することを知らなかったときは、残存債権者への責任を負わない
  • 残存債権者保護の規定は、758条8号の事項の定めがある場合には適用されない
  • 残存債権者の請求権は、害意を知った時から2年、効力発生日から10年で消滅する
  • 吸収分割会社について破産・再生・更生の各手続開始決定があったときは、残存債権者は承継会社への請求権を行使できない
  • 789条の異議手続等が終了していない場合や吸収分割を中止した場合には、759条の規定は適用されない
  • 対価が種類株式発行会社の株式であるときは、株式の種類・種類ごとの数まで契約で定める
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株式会社に権利義務を承継させる吸収分割

株式会社に権利義務を承継させる吸収分割について、条文は何を定めているか。

第758条株式会社に権利義務を承継させる吸収分割契約契約書に記載すべき事項を定める1項・8号判例なし
  • 両社の商号・住所や承継する資産・債務・雇用契約等を定める
  • 承継させる株式や、対価として交付する株式等の内容・数・算定方法を定める
  • 新株予約権を承継させる場合はその内容・数・割当てに関する事項を定める
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第759条株式会社に権利義務を承継させる吸収分割の効力の発生等効力発生日に承継が生じ債権者を保護10項・4号判例 1件
  • 効力発生日に、契約の定めに従い権利義務を承継する
  • 個別催告を受けなかった債権者は、吸収分割会社・承継会社の双方に履行請求できる
  • 残存債権者は承継した財産の価額まで請求でき、知った時から2年・効力発生日から10年で消滅
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第759条会社法

賃借人が契約当事者を実質的に変更したときは賃貸人は違約金を請求することができるなどの定めのある賃貸借契約において,当該賃借人が吸収分割の後は責任を負わないものとする吸収分割により契約当事者の地位を承継させた場合に,当該賃借人が上記吸収分割がされたことを理由に上記定めに基づく違約金債権に係る債務を負わないと主張することが信義則に反し許されないとされた事例

裁判要旨賃借人Yが契約当事者を実質的に変更したときは賃貸人Xは契約を解除し違約金を請求することができる旨の定めのある建物の賃貸借契約において,Yが吸収分割の後は責任を負わないものとする吸収分割により契約当事者の地位をAに承継させた場合に,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,Yが,上記賃貸借契約を解除したXに対し,上記吸収分割がされたことを理由に上記定めに基づく違約金債権に係る債務を負わないと主張することは,信義則に反して許されず,Xは,上記吸収分割の後も,Yに対して同債務の履行を請求することができる。
(1) Xは長期にわたってYに上記建物を賃貸しその賃料によって上記建物の建築費用を回収することを予定していたと解され,Xが上記定めを設けたのは賃借人の変更による不利益を回避することを意図していたものといえ,YもXの上記のような意図を理解した上で上記賃貸借契約を締結したものといえる。
(2) Aは,上記吸収分割の前の資本金が100万円であって,上記吸収分割によって上記違約金債権の額を大幅に下回る額の資産しかYから承継しておらず,同債権に係る債務の支払能力を欠くことが明らかである。
(3) Xは,上記違約金債権を有しているとして,Yに対し,上記吸収分割について会社法789条1項2号の規定による異議を述べることができたとは解されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成29年12月19日 平成29(許)10
登載
民集 第71巻10号2592頁
参照法条
民法1条2項,会社法759条1項,会社法789条1項2号
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第758条(株式会社に権利義務を承継させる吸収分割契約) 詳細ページ
(株式会社に権利義務を承継させる吸収分割契約)
第七百五十八条会社が吸収分割をする場合において、吸収分割承継会社が株式会社であるときは、吸収分割契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。
一吸収分割をする会社(以下この編において「吸収分割会社」という。)及び株式会社である吸収分割承継会社(以下この編において「吸収分割承継株式会社」という。)の商号及び住所
二吸収分割承継株式会社が吸収分割により吸収分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務(株式会社である吸収分割会社(以下この編において「吸収分割株式会社」という。)及び吸収分割承継株式会社の株式並びに吸収分割株式会社の新株予約権に係る義務を除く。)に関する事項
三吸収分割により吸収分割株式会社又は吸収分割承継株式会社の株式を吸収分割承継株式会社に承継させるときは、当該株式に関する事項
四吸収分割承継株式会社が吸収分割に際して吸収分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項
イ当該金銭等が吸収分割承継株式会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該吸収分割承継株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項
ロ当該金銭等が吸収分割承継株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ当該金銭等が吸収分割承継株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ当該金銭等が吸収分割承継株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ当該金銭等が吸収分割承継株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
五吸収分割承継株式会社が吸収分割に際して吸収分割株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該吸収分割承継株式会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権についての次に掲げる事項
イ当該吸収分割承継株式会社の新株予約権の交付を受ける吸収分割株式会社の新株予約権の新株予約権者の有する新株予約権(以下この編において「吸収分割契約新株予約権」という。)の内容
ロ吸収分割契約新株予約権の新株予約権者に対して交付する吸収分割承継株式会社の新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ハ吸収分割契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、吸収分割承継株式会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
六前号に規定する場合には、吸収分割契約新株予約権の新株予約権者に対する同号の吸収分割承継株式会社の新株予約権の割当てに関する事項
七吸収分割がその効力を生ずる日(以下この節において「効力発生日」という。)
八吸収分割株式会社が効力発生日に次に掲げる行為をするときは、その旨
イ第百七十一条第一項の規定による株式の取得(同項第一号に規定する取得対価が吸収分割承継株式会社の株式(吸収分割株式会社が吸収分割をする前から有するものを除き、吸収分割承継株式会社の株式に準ずるものとして法務省令で定めるものを含む。ロにおいて同じ。)のみであるものに限る。)
ロ剰余金の配当(配当財産が吸収分割承継株式会社の株式のみであるものに限る。)
会社法 第759条(株式会社に権利義務を承継させる吸収分割の効力の発生等) 詳細ページ
(株式会社に権利義務を承継させる吸収分割の効力の発生等)
第七百五十九条吸収分割承継株式会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する。
2前項の規定にかかわらず、第七百八十九条第一項第二号(第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定により異議を述べることができる吸収分割会社の債権者であって、第七百八十九条第二項(第三号を除き、第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の各別の催告を受けなかったもの(第七百八十九条第三項(第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。)に規定する場合にあっては、不法行為によって生じた債務の債権者であるものに限る。次項において同じ。)は、吸収分割契約において吸収分割後に吸収分割会社に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、吸収分割会社に対して、吸収分割会社が効力発生日に有していた財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。
3第一項の規定にかかわらず、第七百八十九条第一項第二号の規定により異議を述べることができる吸収分割会社の債権者であって、同条第二項の各別の催告を受けなかったものは、吸収分割契約において吸収分割後に吸収分割承継株式会社に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、吸収分割承継株式会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。
4第一項の規定にかかわらず、吸収分割会社が吸収分割承継株式会社に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って吸収分割をした場合には、残存債権者は、吸収分割承継株式会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。ただし、吸収分割承継株式会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
5前項の規定は、前条第八号に掲げる事項についての定めがある場合には、適用しない。
6吸収分割承継株式会社が第四項の規定により同項の債務を履行する責任を負う場合には、当該責任は、吸収分割会社が残存債権者を害することを知って吸収分割をしたことを知った時から二年以内に請求又は請求の予告をしない残存債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。効力発生日から十年を経過したときも、同様とする。
7吸収分割会社について破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定があったときは、残存債権者は、吸収分割承継株式会社に対して第四項の規定による請求をする権利を行使することができない。
8次の各号に掲げる場合には、吸収分割会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、当該各号に定める者となる。
一前条第四号イに掲げる事項についての定めがある場合同号イの株式の株主
二前条第四号ロに掲げる事項についての定めがある場合同号ロの社債の社債権者
三前条第四号ハに掲げる事項についての定めがある場合同号ハの新株予約権の新株予約権者
四前条第四号ニに掲げる事項についての定めがある場合同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
9前条第五号に規定する場合には、効力発生日に、吸収分割契約新株予約権は、消滅し、当該吸収分割契約新株予約権の新株予約権者は、同条第六号に掲げる事項についての定めに従い、同条第五号ロの吸収分割承継株式会社の新株予約権の新株予約権者となる。
10前各項の規定は、第七百八十九条(第一項第三号及び第二項第三号を除き、第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第七百九十九条の規定による手続が終了していない場合又は吸収分割を中止した場合には、適用しない。
出

一次情報

原文ママ

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