民法 / テーマ別まとめ

遺言の方式/特別の方式

特別の方式の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

民法976条から984条は、死亡の危急や伝染病による隔離、船舶内など、普通の方式で遺言できない特殊な状況での遺言方法を定めています。方式ごとに立会人の人数や作成手順が異なり、一部は家庭裁判所の確認を得なければ効力が生じません。普通の方式で遺言できる状態に戻ってから一定期間生存すると、この特別の方式による遺言は効力を失います。

特別の方式
種類立会人作成方法家庭裁判所の確認
死亡の危急に迫った者の遺言(976条)証人3人以上口授→筆記→読み聞かせ・承認→署名押印20日以内に確認必要
伝染病隔離者の遺言(977条)警察官1人+証人1人以上遺言書を作成不要
在船者の遺言(978条)船長等1人+証人2人以上遺言書を作成不要
船舶遭難者の遺言(979条)証人2人以上口頭で遺言→証人が筆記・署名押印遅滞なく確認必要
  • 976条:口がきけない者は通訳人の通訳で申述し、耳が聞こえない者がいれば通訳で読み聞かせに代えられる(2項・3項)。979条でも口がきけない者は通訳人による(2項)
  • 980条:977条・978条の遺言は、遺言者・筆者・立会人・証人が各自署名し押印する
  • 981条:977条から979条までの場合に署名・押印できない者がいるときは、立会人又は証人がその事由を付記する
  • 982条:968条3項及び973条から975条までの規定を準用する
  • 983条:普通の方式で遺言できるようになった時から6か月間生存すると効力を生じない
  • 984条:日本の領事駐在地にいる日本人が公正証書・秘密証書で遺言する場合、領事が公証人の職務を行い、遺言者・証人は970条1項4号の押印を要しない
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特別の方式

特別の方式について、条文は何を定めているか。

第976条死亡の危急に迫った者の遺言死が迫った人は証人3人以上で口頭遺言できる5項判例 3件
  • 証人3人以上の立会いで、1人に遺言の趣旨を口授し筆記してもらう
  • 筆記内容を遺言者・他の証人に読み聞かせ又は閲覧させ、各証人が承認後に署名押印
  • 遺言の日から20日以内に家庭裁判所へ確認を請求しないと効力を生じない
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第977条伝染病隔離者の遺言伝染病で隔離された人は警察官立会いで作成1項判例なし
  • 交通を断たれた場所にいる人は、警察官1人・証人1人以上の立会いで遺言書を作成できる
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第978条在船者の遺言船に乗っている人は船長等の立会いで作成1項判例なし
  • 船舶中にいる人は、船長又は事務員1人・証人2人以上の立会いで遺言書を作成できる
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第979条船舶遭難者の遺言船が遭難し死が迫った人は口頭で遺言できる4項判例 1件
  • 証人2人以上の立会いで、口頭により遺言できる
  • 口がきけない者は通訳人の通訳による
  • 証人が趣旨を筆記し署名押印のうえ、遅滞なく家庭裁判所に確認を請求する
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第980条遺言関係者の署名及び押印伝染病隔離者・在船者の遺言は全員が署名押印1項判例 1件
  • 977条〈伝染病隔離者の遺言〉・978条〈在船者の遺言〉の遺言は、遺言者・筆者・立会人・証人が各自署名し押印する
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第981条署名又は押印が不能の場合署名・押印できない人がいれば理由を書き添える1項判例なし
  • 977条〈伝染病隔離者の遺言〉から979条〈船舶遭難者の遺言〉までで署名や押印ができない者がいるときは、立会人又は証人がその事由を付記する
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第982条普通の方式による遺言の規定の準用普通方式の一部規定を特別の方式にも準用1項判例 2件
  • 968条3項〈自筆証書遺言〉(加除訂正の方式)や973条〈成年被後見人の遺言〉から975条〈共同遺言の禁止〉までの規定を準用する
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第983条特別の方式による遺言の効力普通方式に戻れて6か月生きると特別遺言は無効1項判例なし
  • 普通の方式で遺言できるようになった時から6か月間生存すると効力を生じない
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第984条外国に在る日本人の遺言の方式外国にいる日本人は領事が公証人の役割を担う1項判例なし
  • 日本の領事駐在地で公正証書・秘密証書遺言をする場合、領事が公証人の職務を行う
  • この場合、遺言者・証人は970条1項4号〈秘密証書遺言 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。〉の押印を要しない
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第976条民法

一、いわゆる危急時遺言の遺言書における日附と遺言の効力
二、いわゆる危急時遺言の遺言書に対する証人の署名捺印が遺言者の面前でなされなかつた場合に遺言の効力が認められた事例

裁判要旨一、いわゆる危急時遺言の遺言書に遺言をした日附ないしその証書の作成日附を記載することは遺言の有効要件ではなく、遺言書に作成の日として記載された日附が正確性を欠いていても、遺言は無効ではない。
二、いわゆる危急時遺言において、筆記者である証人が筆記内容を清書した書面に遺言者の現在しない場所で署名捺印をし、他の証人二名の署名を得たうえ、全証人の立会いのもとに遺言者に読み聞かせ、その後、遺言者の現在しない、遺言執行者に指定された者の法律事務所で右証人二名が捺印をし、もつて全証人の署名捺印が完成した場合であつても、その署名捺印が、原判示(原判決理由参照)のように、筆記内容に変改を加えた疑いを挾む余地のない事情のもとに遺言書作成の一連の過程に従つて遅滞なくなされたものであるときは、その署名捺印は民法九七六条の方式に則つたものとして、遺言の効力を認めるに妨げない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和47年3月17日 昭和46(オ)678
登載
民集 第26巻2号249頁
参照法条
民法976条
論点2第976条民法

一 民法第八九五条〈推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理〉と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否
二 民法第一〇一二条〈遺言執行者の権利義務〉と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否
三 民法第九七六条〈死亡の危急に迫った者の遺言〉による遺言と医師の立会等の要否

裁判要旨一 民法第八九五条〈推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理〉の規定は、受遺者が、相続人廃除の手続進行中、相続人から遺贈の目的物を譲り受けた第三者に対し、右目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。
二 民法第一〇一二条〈遺言執行者の権利義務〉の規定は、受遺者が自ら遺贈の目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。
三 禁治産者でない通常人が民法第九七六条による遺言をなす場合には、医師二人以上の立会その他同法第九七三条所定の方式を必要とするものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月10日 昭和28(オ)943
登載
民集 第9巻6号657頁
参照法条
民法895条,民法1012条,民法976条,民法982条,民法973条,民訴法755条
論点3第976条民法

いわゆる危急時遺言に当たり民法九七六条一項にいう遺言の趣旨の口授があったとされた事例

裁判要旨いわゆる危急時遺言に当たり、立ち会った証人の一人があらかじめ作成された草案を一項目ずつ読み上げ、遺言者が、その都度うなずきながら「はい」などと返答し、最後に右証人から念を押され了承する旨を述べたなど判示の事実関係の下においては、民法九七六条一項〈死亡の危急に迫った者の遺言〉にいう遺言の趣旨の口授があったものということができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年9月14日 平成9(オ)2060
登載
集民 第193号717頁
参照法条
民法976条1項
論点4第979条民法

一 家督相続人指定の遺言をなした者が改正民法施行後に死亡した場合における右遺言の効力
二 家督相続人指定の遺言を包括遺贈と見ることができるか
三 遺言執行者に対する訴の適否

裁判要旨一 家督相続人指定の遺言をなした者が改正民法施行後に死亡した場合には、右遺言は、特段の事情のないかぎり、なんらの効力を生じない。
二 家督相続人指定の遺言書中に、甲を家督相続人に指定する旨および乙等に対し財産の一部を遺贈する旨の記載があるにとどまり、他に遺言者に包括遺贈の意思があつたことを看取するに足る表示行為と目すべき事実上の記載がないときは、右遺言に包括遺贈の効力を認めることはできない。
三 相続人は、被相続人の遺言執行者を被告となし、遺言の無効を主張して、相続財産につき持分を有することの確認を求めることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年9月18日 昭和29(オ)875
登載
民集 第10巻9号1160頁
参照法条
旧民法(昭和22年法律222号による改正前のもの)979条,民法985条,民法附則4条,民法附則985条,民法附則990条,民法附則119条,民法1012条,民法1013条,民訴法45条
論点5第980条民法

家督相続人選定の効力発生時期

裁判要旨家督相続人の選定は、選定により効力を生じ、届出は、その効力発生の要件ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年2月22日 昭和25(オ)252
登載
民集 第6巻2号267頁
参照法条
旧民法982条,旧民法980条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第976条(死亡の危急に迫った者の遺言) 詳細ページ
(死亡の危急に迫った者の遺言)
第九百七十六条疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
民法 第977条(伝染病隔離者の遺言) 詳細ページ
(伝染病隔離者の遺言)
第九百七十七条伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
民法 第978条(在船者の遺言) 詳細ページ
(在船者の遺言)
第九百七十八条船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
民法 第979条(船舶遭難者の遺言) 詳細ページ
(船舶遭難者の遺言)
第九百七十九条船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人二人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。
2口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
3前二項の規定に従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
4第九百七十六条第五項の規定は、前項の場合について準用する。
民法 第980条(遺言関係者の署名及び押印) 詳細ページ
(遺言関係者の署名及び押印)
第九百八十条第九百七十七条及び第九百七十八条の場合には、遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印を押さなければならない。
民法 第981条(署名又は押印が不能の場合) 詳細ページ
(署名又は押印が不能の場合)
第九百八十一条第九百七十七条から第九百七十九条までの場合において、署名又は印を押すことのできない者があるときは、立会人又は証人は、その事由を付記しなければならない。
民法 第982条(普通の方式による遺言の規定の準用) 詳細ページ
(普通の方式による遺言の規定の準用)
第九百八十二条第九百六十八条第三項及び第九百七十三条から第九百七十五条までの規定は、第九百七十六条から前条までの規定による遺言について準用する。
民法 第983条(特別の方式による遺言の効力) 詳細ページ
(特別の方式による遺言の効力)
第九百八十三条第九百七十六条から前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から六箇月間生存するときは、その効力を生じない。
民法 第984条(外国に在る日本人の遺言の方式) 詳細ページ
(外国に在る日本人の遺言の方式)
第九百八十四条日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によって遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事が行う。この場合においては、第九百七十条第一項第四号の規定にかかわらず、遺言者及び証人は、同号の印を押すことを要しない。
出

一次情報

原文ママ

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