民法 / テーマ別まとめ

質権/権利質

権利質の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

質権は債権などの財産権を目的にすることができ、動産質・不動産質などの規定がその性質に反しない限り準用されます。債権を目的とする質権(権利質)は、第三債務者への通知または第三債務者の承諾がなければ、第三債務者その他の第三者に対抗できません。質権者は目的である債権を直接取り立てることができ、金銭債権なら自己の債権額に対応する部分に限り取立てが可能です。

権利質
項目内容
対象財産権(債権など)
対抗要件通知または承諾
取立ての範囲自己の債権額まで
弁済期のずれ供託させることができる
金銭以外を受領受領物に質権が及ぶ
  • 準用は総則・動産質・不動産質の規定について、性質に反しない限り認められる
  • 通知・承諾は467条の規定に従う必要がある
  • 現に発生していない債権を目的とする質権設定も対抗要件の対象に含まれる
  • 363条・365条は削除されており現在内容はない
1

権利質

権利質について、条文は何を定めているか。

第362条権利質の目的等権利質にも質権規定を準用する2項判例 8件
  • 財産権(債権など)にも質権を設定できる
  • 総則・動産質・不動産質の規定を性質に反しない限り準用
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第363条この条文は削除されている1項判例 1件
  • 現在は内容のない削除条文
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第364条債権を目的とする質権の対抗要件債権質は第三債務者への通知等が対抗要件1項判例 3件
  • 467条〈債権の譲渡の対抗要件〉の規定に従い通知または承諾が必要
  • 通知・承諾がないと第三債務者や第三者に対抗できない
  • 発生していない債権を目的とする質権設定も含む
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第365条この条文は削除されている1項判例なし
  • 現在は内容のない削除条文
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第366条質権者による債権の取立て等質権者は目的債権を直接取り立てられる4項判例なし
  • 質権者は質権の目的である債権を直接取り立てられる
  • 金銭債権なら自己の債権額に対応する部分のみ取立て可能
  • 弁済期の関係で供託させることができ、金銭以外は受領物に質権が及ぶ
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第362条民法

一 債権質の準拠法
二 債権質の対抗要件である通知・承諾と法例八条〈成年被後見人及び成年後見人〉の適用

裁判要旨一 債権質に適用すべき準拠法は、その目的である債権の準拠法によるべきである。
二 指名債権を目的とする債権質の対抗要件である通知・承諾は、債権質の効力に関する要件であつて、法例八条〈成年被後見人及び成年後見人〉にいう法律行為の方式にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年4月20日 昭和50(オ)347
登載
民集 第32巻3号616頁
参照法条
民法362条,民法364条1項,民法467条,法例7条,法例8条,法例10条1項
論点2第362条民法

いわゆる預託金会員組織ゴルフ会員権をその譲渡担保権者から譲り受けた者が譲渡担保設定者に対して有するF理事会の譲渡承認手続請求権と右設定者の譲渡担保権者に対する清算金支払請求権との同時履行関係

裁判要旨いわゆる預託金会員組織ゴルフ会員権を目的とする譲渡担保設定契約において、設定者が、あらかじめ、譲渡担保権者の換価処分によりゴルフ会員権を譲り受けた者のために、Fの規則上譲渡に必要とされているF理事会の承認を得るための手続に協力することを承諾している場合には、設定者は、譲受人に対し、同時履行の抗弁により、譲渡担保権者が清算金を提供しないことを理由として、右譲渡承認を得るための手続に協力することを拒絶することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年7月25日 昭和49(オ)246
登載
民集 第29巻6号1147頁
参照法条
民法362条,民法369条,民法533条
論点3第362条民法

一 商品市場における売買取引の委託について顧客から商品仲買人に委託証拠金の代用として有価証券を預託する行為の法律上の性質
二 転質と横領罪の成否
三 商品仲買人がいわゆる委託証拠金充用証券を担保に差し入れる行為が業務上横領罪にあたるとされた事例

裁判要旨一 商品市場における売買取引の委託について、顧客から商品仲買人に委託証拠金の代用として有価証券を預託する行為の法律上の性質は、根質権の設定であつて、消費寄託ではない。
二 質権者は、質権設定者の同意がなくても、その権利の範囲内において質物を転質となしうるが、新たに設定された質権が原質権の範囲を超越するときは、横領罪を構成する。
三 商品仲買人が、いわゆる委託証拠金充用証券を顧客の同意なく担保に差し入れる行為は、それが原質権の範囲を超越しているときは、業務上横領罪を構成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年3月27日 昭和43(あ)2546
登載
刑集 第24巻3号76頁
参照法条
商品取引所法(昭和42年法律97号による改正前のもの)97条,商品取引所法(昭和42年法律97号による改正前のもの)92条,民法362条,民法348条,刑法252条,刑法253条
論点4第362条民法

第三者が金銭債権に基づき質権付電話加入権に対し強制執行をした場合と右質権者の地位。

裁判要旨第三者が金銭債権に基づき質権付電話加入権に対し強制執行をしてその換価手続を完了した場合には、右の質権は、当然消滅するとともに、右の質権者は、法律の定めるところにより、その売得金から当然優先弁済を受けることができるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和40年7月14日 昭和37(オ)1202
登載
民集 第19巻5号1263頁
参照法条
民法362条,民訴法625条,民訴法628条1項,民訴法649条2項,電話加入権質に関する臨時特例法1条,電話加入権質に関する臨時特例法5条
論点5第362条民法

1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことによる損害の額
2 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことを理由とする国家賠償請求事件において損害の発生を認めるべきであって損害額の立証が困難であったとしても民訴法248条により相当な損害額が認定されなければならないとされた事例

裁判要旨1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかった場合,これによる損害の額は,特段の事情のない限り,その被担保債権が履行遅滞に陥ったころ,当該質権を実行することによって回収することができたはずの債権額である。
2 特許権者戊に対して融資をしたXが,戊から特許権を目的とする質権の設定を受け,特許庁長官にその設定登録を申請し,これが受け付けられたにもかかわらず,この受付に後れて申請及び受付がされた己に対する特許権移転登録が先にされたため,上記質権を取得することができなかった場合において,上記特許権が最終的にはその事業化に成功せず消滅するに至ったとしても,(1)戊が,特許出願中の上記特許権を構成する技術の一部を用いた工法を発表したところ,多数の新聞に取り上げられ,多数の企業等から同工法についての照会や資料請求があったこと,(2)戊から上記特許権の譲渡を受けた己が,庚に対し,上記特許権等を代金4億円で譲渡したこと,(3)庚は,戊らと共に上記特許権の事業化に取り組み,その商品の販売営業に努力したこと,(4)戊は,銀行取引停止処分を受け,上記質権の被担保債務についての期限の利益を喪失したが,それは上記販売営業中のことであったこと,(5)庚は,最終的に,上記特許権の事業化は採算が合わないものと判断してこれを断念し,上記特許権の第5年分の特許料の支払をしなかったため,上記特許権が消滅したが,それは戊が銀行取引停止処分を受けてから約2年半後のことであったことなど判示の事実関係の下では,Xには上記質権を取得することができなかったことにより損害が発生したというべきであり,これを理由とする国家賠償請求事件につき,損害額の立証が極めて困難であったとしても,民訴法248条により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて,相当な損害額が認定されなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年1月24日 平成17(受)541
登載
集民 第219号329頁
参照法条
(1,2につき)国家賠償法1条1項,民法362条,民法369条,特許法27条1項3号,特許法95条,特許法98条1項3号 (2につき)民訴法248条
論点6第362条民法

破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして上記賃料等の現実の支払を免れたことにより敷金返還請求権の質権者に対し不当利得返還義務を負う場合において破産管財人が悪意の受益者であるとはいえないとされた事例

裁判要旨破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際して破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をし,上記賃料等の現実の支払を免れたことにより,敷金返還請求権の質権者に対し不当利得返還義務を負う場合において,法律上の原因の有無が,破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と質権設定者が質権者に対して負う目的債権の担保価値を維持すべき義務との関係をどのように解するかによって結論の異なり得る問題であって,この点について論ずる学説や判例も乏しかったことや,破産管財人が上記合意をするにつき破産裁判所の許可を得ているという事情の下では,破産管財人を悪意の受益者であるということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年12月21日 平成17(オ)184
登載
集民 第222号643頁
参照法条
民法362条,民法619条2項,民法703条,民法704条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条7号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条8号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)49条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)50条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)95条,破産法65条,破産法148条1項7号,破産法148条1項8号,破産法151条
論点7第362条民法

1 破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことが質権設定者の質権者に対する目的債権の担保価値を維持すべき義務に違反するとされた事例
2 破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害しても質権者に対して善管注意義務違反の責任を負うとはいえないとされた事例
3 破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして上記賃料等の現実の支払を免れた場合において破産管財人は敷金返還請求権の質権者に対して不当利得返還義務を負うとされた事例

裁判要旨1 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際し,賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことは,当時破産財団に上記賃料等を支払うのに十分な銀行預金が存在しており,これを現実に支払うことに支障がなかったなど判示の事情の下では,質権設定者の質権者に対する目的債権の担保価値を維持すべき義務に違反する。
2 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際して賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことが,質権設定者の質権者に対する目的債権の担保価値を維持すべき義務に違反する場合であっても,その義務違反の有無が,破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と質権設定者が質権者に対して負う上記義務との関係をどのように解するかによって結論の異なり得る問題であって,この点について論ずる学説や判例も乏しかったことや,破産管財人が上記合意をするにつき破産裁判所の許可を得ているという事情の下では,破産管財人は,質権者に対し,善管注意義務違反の責任を負うということはできない。
3 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際し,賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,上記賃料等の現実の支払を免れた場合において,当時破産財団には上記賃料等を支払うのに十分な銀行預金が存在しており,これを現実に支払うことに支障がなかったなど判示の事情の下では,破産管財人は,敷金返還請求権の質権者に対し,敷金返還請求権の発生が阻害されたことにより優先弁済を受けることができなくなった金額につき不当利得返還義務を負う。
(2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年12月21日 平成17(受)276
登載
民集 第60巻10号3964頁
参照法条
(1〜3につき)民法362条,民法619条2項,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条7号,8号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)49条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)50条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)95条,破産法65条1項,破産法148条1項7号,8号,破産法151条
論点8第362条民法

質権が設定されている金銭債権の被転付適格

裁判要旨質権が設定されている金銭債権は,券面額ある債権として被転付適格を有する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年4月7日 平成11(許)42
登載
民集 第54巻4号1355頁
参照法条
民事執行法159条,民法362条
論点9第363条民法

質権が設定された定期預金権が書き替えられた場合において質権が当該新定期預金債権に及ぶとされた事例。

裁判要旨銀行のため質権の目的とされていた右銀行に対する定期預金債権につきいわゆる書替が行われた場合には、右書替にあたり、預金名義が預金者の仮名であつたのを預金者の氏名に改め、既経過分の利息を右銀行において任意に支払うなど判示の事情があつても、質権は当該新定期預金債権に及ぶと解することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年10月7日 昭和39(オ)1437
登載
民集 第19巻7号1705頁
参照法条
民法363条
論点10第364条民法

指名債権に対する質権設定を第三者に対抗しうる要件としての第三債務者に対する通知又はその承諾と質権者特定の要否

裁判要旨指名債権に対する質権設定を第三者に対抗しうる要件としての第三債務者に対する通知又はその承諾は、具体的に特定された者に対する質権設定についてされることを要する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年6月30日 昭和56(オ)304
登載
民集 第37巻5号835頁
参照法条
民法364条1項,民法467条
論点11第364条民法

敷金返還請求権を目的とする質権設定についての第三債務者の異議をとどめない承諾に要素の錯誤があるとされた事例

裁判要旨敷金返還請求権を目的として質権が設定され、第三債務者がこれを承諾した場合において、第三債務者としては敷金から控除される金額の割合を定めた特約の存在について異議をとどめて承諾をするつもりであったのに、その使者がこれと異なった表示をしたため、錯誤により異議をとどめない承諾がされる結果となったものであり、右特約が返還の対象となる敷金の額と密接なかかわりを有する約定であったなど判示の事実関係の下においては、第三債務者の右の錯誤は、承諾をするに至った動機における錯誤ではなく、承諾の内容自体に関する錯誤であって、要素の錯誤に当たるというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年6月18日 平成4(オ)874
登載
集民 第179号331頁
参照法条
民法95条,民法364条,民法467条,民法468条

関連する会計・監査の基準

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原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第362条(権利質の目的等) 詳細ページ
(権利質の目的等)
第三百六十二条質権は、財産権をその目的とすることができる。
2前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する。
民法 第363条 詳細ページ
第三百六十三条削除
民法 第364条(債権を目的とする質権の対抗要件) 詳細ページ
(債権を目的とする質権の対抗要件)
第三百六十四条債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)は、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者にその質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
民法 第365条 詳細ページ
第三百六十五条削除
民法 第366条(質権者による債権の取立て等) 詳細ページ
(質権者による債権の取立て等)
第三百六十六条質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
2債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
3前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
4債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。