民法 / テーマ別まとめ

相続/遺留分

遺留分の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

相続人に保障される最低限の取り分である遺留分について、割合の算定方法と請求の仕方を整理したページです。兄弟姉妹以外の相続人に認められる遺留分の割合(民法1042条)を基準に、遺留分算定の基礎財産の計算(1043条〜1045条)、受遺者・受贈者への金銭請求とその負担順序(1046条・1047条)、請求権の期間制限(1048条)、事前放棄の手続き(1049条)までを扱います。

遺留分の割合
相続人の構成遺留分の割合(全体)
直系尊属のみが相続人三分の一
それ以外の場合二分の一
  • 相続人が複数のときは、上記の割合に各自の相続分(900条・901条により算定)を乗じる
  • 遺留分算定の基礎財産は、相続開始時の財産の価額+贈与財産の価額-債務の全額
  • 算入する贈与は原則相続開始前1年以内(相続人への贈与は原則10年以内で、婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与に限る)
  • 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与は、上記の期間を超えても算入される
  • 遺留分侵害額請求権は、侵害を知った時から1年、相続開始の時から10年で時効消滅する
  • 相続開始前の遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要
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遺留分

遺留分について、条文は何を定めているか。

第1042条遺留分の帰属及びその割合遺留分の割合を定める2項・2号判例 4件
  • 兄弟姉妹以外の相続人に遺留分がある
  • 直系尊属のみが相続人なら三分の一、他は二分の一
  • 相続人が複数なら各自の相続分を掛けた割合になる
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第1043条遺留分を算定するための財産の価額遺留分算定の基礎財産を決める2項判例 1件
  • 相続開始時の財産に贈与財産を加え債務を控除した額
  • 条件付き権利等は鑑定人の評価で価格を決める
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第1044条算入する贈与の範囲と期間3項判例 3件
  • 原則相続開始前1年以内の贈与を価額に算入する
  • 双方が損害を知ってした贈与は1年より前でも算入
  • 相続人への贈与は原則10年以内、婚姻・養子縁組・生計の資本の贈与に限る
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第1045条負担付贈与・不相当な対価の扱い2項判例なし
  • 負担付贈与は目的の価額から負担の価額を控除した額とする
  • 双方が損害を知った不相当な対価の行為は負担付贈与とみなす
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第1046条遺留分侵害額の請求遺留分侵害額を金銭で請求できる2項・3号判例 1件
  • 受遺者・受贈者に侵害額相当の金銭を請求できる
  • 遺留分から遺贈等の価額と取得すべき遺産の価額を控除する
  • 遺留分権利者が承継する債務の額を加算して算定する
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第1047条受遺者又は受贈者の負担額誰がどの順で負担するか決める5項・3号判例なし
  • 受遺者が先に負担し、その後受贈者が負担する
  • 複数の受遺者・同時の贈与は目的の価額の割合で負担
  • 複数の受贈者は後の贈与から順に前の贈与へ遡って負担
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第1048条遺留分侵害額請求権の期間の制限請求権は1年、相続開始から10年で消滅1項判例なし
  • 侵害を知った時から1年で時効により消滅する
  • 相続開始の時から10年経過したときも消滅する
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第1049条遺留分の放棄遺留分は家庭裁判所の許可で放棄できる2項判例なし
  • 相続開始前の放棄は家庭裁判所の許可を受けたときに限り有効
  • 共同相続人の一人の放棄は他の相続人の遺留分に影響しない
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第1042条民法

遺留分減殺請求権の行使の効果として生じた目的物の返還請求権等と民法一〇四二条所定の消滅時効

裁判要旨遺留分減殺請求権の行使の効果として生じた目的物の返還請求権等は、民法一〇四二条〈遺留分の帰属及びその割合〉所定の消滅時効に服しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年3月4日 昭和53(オ)190
登載
民集 第36巻3号241頁
参照法条
民法1042条
論点2第1042条民法

一 民法一〇四二条〈遺留分の帰属及びその割合〉にいう減殺すべき贈与があつたことを知つた時の意義
二 遺留分権利者が減殺すべき贈与の無効を訴訟上主張しているときと減殺すべき贈与があつたことを知つたと推認される場合

裁判要旨一 民法一〇四二条〈遺留分の帰属及びその割合〉にいう減殺すべき贈与があつたことを知つた時とは、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知つた時をいう。
二 遺留分権利者が、減殺すべき贈与の無効を訴訟上主張していても、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されたことを認識していたときは、その無効を信じていたため遺留分減殺請求権を行使しなかつたことにもつともと認められる特段の事情のない限り、右贈与が減殺することができるものであることを知つていたと推認するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年11月12日 昭和54(オ)907
登載
民集 第36巻11号2193頁
参照法条
民法1042条,民訴法185条
論点3第1042条民法

一 減殺請求後の転得者に対する減殺請求の許否
二 転得者に対する減殺請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨一 受贈者に対し減殺請求をしたときは、その後に受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対してさらに減殺の請求をすることはできない。
二 受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対する減殺請求権の一年の消滅時効の期間は、遺留分権利者が相続の開始と贈与のあつたことを知つた時から起算すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年7月19日 昭和33(オ)502
登載
民集 第14巻9号1779頁
参照法条
民法1040条,民法1042条
論点4第1042条民法

遺留分減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権と消滅時効

裁判要旨遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は、時効によって消滅することはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成7年6月9日 平成6(オ)2007
登載
集民 第175号549頁
参照法条
民法167条,民法884条,民法1042条
論点5第1043条民法

相続開始後の遺留分放棄と民法第一〇四三条

裁判要旨相続開始後の遺留分放棄は、民法第一〇四三条第一項〈遺留分を算定するための財産の価額〉にかかわらず、効力を生ずる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年6月16日 昭和38(オ)1375
登載
集民 第83号769頁
参照法条
民法1043条
論点6第1044条民法

相続人が被相続人から贈与された金銭をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産の価額に加える場合と受益額算定の方法

裁判要旨相続人が被相続人から贈与された金銭をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産の価額に加える場合には、贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもつて評価すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年3月18日 昭和49(オ)1134
登載
民集 第30巻2号111頁
参照法条
民法903条,民法904条,民法1029条,民法1044条
論点7第1044条民法

共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡と民法903条1項に規定する「贈与」

裁判要旨共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項〈特別受益者の相続分〉に規定する「贈与」に当たる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年10月19日 平成29(受)1735
登載
民集 第72巻5号900頁
参照法条
民法903条1項,民法905条,民法1044条
論点8第1044条民法

民法九〇三条一項〈特別受益者の相続分〉の定める相続人に対する贈与と遺留分減殺の対象

裁判要旨民法九〇三条一項〈特別受益者の相続分〉の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、同法一〇三〇条〈配偶者居住権の存続期間〉の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成10年3月24日 平成9(オ)2117
登載
民集 第52巻2号433頁
参照法条
民法903条1項,民法1030条,民法1031条,民法1044条
論点9第1046条民法

遺言により相続分がないものと指定され、遺留分侵害額請求権を行使した相続人は、特別寄与料を負担するか

裁判要旨遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年10月26日 令和4(許)14
登載
民集 第77巻7号1911頁
参照法条
民法902条、民法1046条、民法1050条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第1042条(遺留分の帰属及びその割合) 詳細ページ
(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一直系尊属のみが相続人である場合三分の一
二前号に掲げる場合以外の場合二分の一
2相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
民法 第1043条(遺留分を算定するための財産の価額) 詳細ページ
(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
民法 第1044条 詳細ページ
第千四十四条贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
民法 第1045条 詳細ページ
第千四十五条負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
2不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。
民法 第1046条(遺留分侵害額の請求) 詳細ページ
(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
民法 第1047条(受遺者又は受贈者の負担額) 詳細ページ
(受遺者又は受贈者の負担額)
第千四十七条受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
三受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
2第九百四条、第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
3前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
4受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
5裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
民法 第1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限) 詳細ページ
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第千四十八条遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
民法 第1049条(遺留分の放棄) 詳細ページ
(遺留分の放棄)
第千四十九条相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。