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相続/総則

総則の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

相続の総則は、相続がいつ・どこで始まるかという基本ルールと、相続権が侵害された場合の請求権の消滅期間、相続財産にかかる費用の負担ルールを定めています。相続手続き全体の前提となる規定であり、実務担当者はまず相続開始のタイミングと場所、権利行使の期限を押さえておく必要があります。

総則
条文定めることポイント
882条相続開始の原因死亡によって開始
883条相続開始の場所被相続人の住所
884条相続回復請求権の時効知った時から5年/開始から20年
885条相続財産に関する費用財産の中から支弁
  • 884条の「20年」は、権利侵害を知らなくても相続開始から20年経過すれば時効消滅する
  • 885条のただし書きにより、相続人の過失による費用は相続財産から支弁されない
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総則

総則について、条文は何を定めているか。

第882条相続開始の原因相続は死亡によって開始する1項判例 3件
  • 相続開始の原因は死亡のみと定められている
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第883条相続開始の場所相続は被相続人の住所で開始する1項判例なし
  • 相続開始地は被相続人の住所とされる
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第884条相続回復請求権相続回復請求権は期間経過で消滅する1項判例 14件
  • 相続権を侵害された事実を知った時から5年で時効消滅
  • 相続開始の時から20年経過したときも同様に消滅
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第885条相続財産に関する費用相続財産の管理費用は財産から支弁1項判例なし
  • 相続財産に関する費用はその財産の中から支弁する
  • 相続人の過失による費用は財産からの支弁対象外
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第882条民法

一 推定相続人は被相続人がなした仮装売買について無効確認を求め得るか
二 推定相続人は被相続人の権利を代位行使し得るか

裁判要旨一 たとえ被相続人が所有財産を他に仮装売買したとしても、単にその推定相続人であるというだけでは、右売買の無効(売買契約より生じた法律関係の不存在)の確認を求めることはできない。
二 単に推定相続人であるというだけでは、被相続人の権利を代位行使することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年12月26日 昭和27(オ)683
登載
民集 第9巻14号2082頁
参照法条
民法882条,民法423条,民訴法225条
論点2第882条民法

甲名義の不動産につき乙、丙が順次相続したことを原因として直接丙に対してされた所有権移転登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することの可否

裁判要旨甲名義の不動産につき、甲から乙、乙から丙への順次の相続を原因として直接丙に対する所有権移転登記がされているときに、右登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成12年1月27日 平成11(オ)773
登載
集民 第196号239頁
参照法条
民法882条,民法896条,民法898条,不動産登記法63条,不動産登記法66条
論点3第882条民法

一 被相続人の生存中に相続人に対し売買を原因としてされた所有権移転登記につき被相続人の死亡後に相続を原因とするものに更正することの可否
二 被相続人の生存中にその所有不動産につき共同相続人の一人に対し所有権移転登記がされた上で第三者のために抵当権設定登記がされた場合において被相続人の死亡後に他の相続人がした真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続請求及び抵当権設定登記についての更正登記手続請求が認められた事例

裁判要旨一 被相続人の生存中に相続人に対し売買を原因としてされた所有権移転登記について、被相続人の死亡後に、相続を原因とするものに更正することはできない。
二 被相続人の生存中にその所有する不動産につき共同相続人の一人である甲に対し仮空の売買を原因として所有権転移登記がされ、甲が第三者乙のために抵当権設定登記をした場合には、被相続人の死亡後、他の相続人は、甲に対しては真正な登記名義の回復を原因とする持分の移転登記手続を、乙に対しては甲の持分についての抵当権設定登記に改める更正登記手続を請求することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年3月9日 平成9(オ)953
登載
集民 第192号65頁
参照法条
民法177条,民法882条,民法896条,民法898条,不動産登記法63条,不動産登記法66条
論点4第884条民法

一 旧民法下の遺産相続による共同相続人の一人によつて相続権を侵害された他の共同相続人が右侵害排除を求める場合と相続回復請求権の規定の適用
二 旧民法下の遺産相続による共同相続人の一人によつて相続権を侵害された他の共同相続人の右侵害排除を求める請求について相続回復請求権の規定が適用されるべき一場合

裁判要旨一 旧民法下の遺産相続による共同相続人の一人甲が、相続財産のうち自己の本来の相続持分を超える部分について他の共同相続人乙の相続権を否定し、その部分もまた自己の相続持分に属すると称してこれを占有管理し、乙の相続権を侵害しているため、乙が右侵害の排除を求める場合には、相続回復請求権の規定の適用があるが、甲においてその部分が乙の持分に属することを知つているとき、又はその部分につき甲に相続による持分があると信ぜられるべき合理的な事由がないときは、同規定の適用が排除される。
二 旧民法下の遺産相続による共同相続人の一人乙女が遺産分割前に他の共同相続人甲男を家督相続人に指定して隠居したが、右隠居時に乙に胎児がいたことにより右指定が無効であり、乙が遺産相続権を失わないため、甲において相続財産のうち乙の相続部分もまた右指定により自己に帰属したとして同部分に対し占有管理を続けたことが乙の遺産相続権に対する侵害となる場合においても、胎児が生後まもなく死亡したため、甲において右指定の無効を知りえず、かつ、その無効を知りえなかつたことが客観的にも無理からぬものであるときは、乙の甲に対する右侵害排除を求める請求について、相続回復請求権の規定の適用がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年7月10日 昭和50(オ)878
登載
民集 第33巻5号457頁
参照法条
旧民法966条,旧民法993条,民法884条
論点5第884条民法

一 共同相続人の一人によつて相続権を侵害された他の相続人の右侵害排除を求める請求について民法八八四条の適用がないとされた事例
二 共同相続人の一人が相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したとはいえないとされた事例

裁判要旨一 共同相続人の一人甲が、他の共同相続人乙丙の承諾を得ることなく乙丙名義で相続放棄の申述をし、これに基づき相続財産に属する不動産につき甲単独名義の相続登記をして乙丙の相続権を侵害している場合においては、右侵害排除の趣旨で甲単独名義の登記を甲乙丙共有名義の登記に更正することを求める乙丙の請求について、民法八八四条〈相続回復請求権〉は適用されない。
二 共同相続人の一人甲が、家業である農業を受け継いで相続財産に属する不動産につき単独の占有管理を継続し、他の共同相続人乙丙がこれに異議を述べなかつた場合であつても、相続開始当時甲において他に共同相続人として乙丙のいることを知つており、乙丙の承諾を得ることなく乙丙名義で相続放棄申述をし、これに基づき右不動産につき甲単独名義の相続登記をし、かつ右不動産を単独で占有している、との事情があるときは、甲が相続開始の時から右不動産につき単独所有者としての自主占有を取得したというには疑いがある。
(一につき意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年4月17日 昭和51(オ)639
登載
集民 第126号541頁
参照法条
民法162条,民法185条,民法884条
論点6第884条民法

共同相続人の一人によつて相続権を侵害された他の共同相続人の右侵害排除を求める請求について民法八八四条が適用されるべき事例

裁判要旨共同相続人の一人甲が、乙ら他の共同相続人名義の相続持分権譲渡の趣旨を記載した書面に基づいて相続財産に属する不動産につき甲単独名義の相続登記をした場合において、乙に持分権譲渡の意思がなく、乙名義の書面も乙の意思に基づかないで作成されたものであつたとしても、甲において、右書面が乙の意思に基づくものであると信じ、かつ、そう信じたことが客観的にも無理からぬものとされる事情があるなど乙の持分権が甲に帰属したと信ぜられるべき合理的な事由があるときには、乙の甲に対する持分権侵害排除を求める請求について、民法八八四条〈相続回復請求権〉が適用される。

(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年4月17日 昭和51(オ)908
登載
集民 第126号551頁
参照法条
民法884条
論点7第884条民法

共同相続人の一部の者によつて相続権を侵害された他の共同相続人の右侵害排除を求める請求について民法八八四条の適用がないとされた事例

裁判要旨共同相続人甲乙が他の共同相続人丙を排除して相続財産を占有管理している場合において、甲乙が他に共同相続人として所在不明ではあるが丙のいることを知つており、第三者から相続財産中の不動産買受の申入れがあつた際丙が所在不明で所有権移転登記が困難であるため申入れに応じなかつた、との事情があるときは、丙の相続権侵害排除請求又は遺産分割請求について、民法八八四条〈相続回復請求権〉は適用されない。

(意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年4月17日 昭和52(オ)456
登載
集民 第126号569頁
参照法条
民法884条
論点8第884条民法

共同相続人の一人によつて相続権を侵害された他の共同相続人の右侵害排除を求める請求について民法八八四条の適用がないとされた事例

裁判要旨共同相続人の一人甲が、他の共同相続人乙丙の承諾を得ることなく乙丙名義で相続放棄申述をし、これに基づき相続財産に属する不動産につき甲単独名義の相続登記をして乙丙の相続権を侵害している場合においては、右侵害排除の趣旨で甲単独名義の登記を甲乙丙共有名義の登記に更正することを求める乙丙の請求について、民法八八四条〈相続回復請求権〉は適用されない。

(意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年4月17日 昭和53(オ)6
登載
集民 第126号625頁
参照法条
民法884条
論点9第884条民法

共同相続人の一人によつて相続権を侵害された他の共同相続人が右侵害の排除を求める場合と民法八八四条の適用

裁判要旨共同相続人の一人甲が、相続財産のうち自己の本来の相続持分を超える部分につき他の共同相続人乙の相続権を否定し、その部分もまた自己の相続持分に属すると称してこれを占有管理し、乙の相続権を侵害しているため、乙が右侵害の排除を求める場合には、民法八八四条〈相続回復請求権〉の適用があるが、甲においてその部分が乙の持分に属することを知つているとき、又はその部分につき甲に相続による持分があると信ぜられるべき合理的な事由がないときには、同条の適用が排除される。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和53年12月20日 昭和48(オ)854
登載
民集 第32巻9号1674頁
参照法条
民法884条
論点10第884条民法

家督相続回復請求権の行使にあたらない場合

裁判要旨戸籍上家督相続人と表示され右家督相続によつて不動産の所有権を取得したと主張する甲が、右不動産を占有している乙を被告として右不動産所有権の確認を求める請求は、乙が甲の家督相続を争つているときでも、乙が戸籍上家督相続人と表示されておらず、乙みずからが真正家督相続人であると主張しているわけではなく、単に真正家督相続人が判明するまでの間その者のために一種の事務管理として右不動産を管理しているにすぎない場合には、家督相続回復請求権の行使にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年2月17日 昭和49(オ)2
登載
集民 第120号65頁
参照法条
旧民法(昭和22年法律第222号による改正前のもの)966条,民法884条
論点11第884条民法

相続権を侵害された者の相続人が右侵害者に対して有する相続回復請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨甲の相続権を乙が侵害している場合、甲の相続人丙の乙に対する相続回復請求権の消滅時効の期間二〇年の起算点は、丙の相続開始の時ではなく、甲の相続開始の時と解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年4月26日 昭和39(オ)270
登載
集民 第83号407頁
参照法条
民法884条
論点12第884条民法

相続権を侵害された者の相続人が右侵害者に対して有する相続回復請求権の消滅時効の起算点。

裁判要旨甲の相続権を乙が侵害している場合、甲の相続人丙の乙に対する相続回復請求権の消滅時効の期間二〇年の起算点は、丙の相続開始の時ではなく、甲の相続開始の時と解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年2月27日 昭和37(オ)1258
登載
民集 第18巻2号383頁
参照法条
民法884条,旧民法966条,旧民法993条
論点13第884条民法

新民法附則第四条〈成年〉により新法の遡及効を認め得ない一事例

裁判要旨旧民法施行当時、子と家を異にする母が、親権者母たる資格において子の法定代理人として締結した賃貸借には、新民法附則第四条〈成年〉によつて新民法を適用すべきでない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月27日 昭和25(オ)350
登載
民集 第6巻5号568頁
参照法条
民法附則4条,民法818条2項,民法824条,旧民法884条,旧民法877条2項
論点14第884条民法

遺留分減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権と消滅時効

裁判要旨遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は、時効によって消滅することはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成7年6月9日 平成6(オ)2007
登載
集民 第175号549頁
参照法条
民法167条,民法884条,民法1042条
論点15第884条民法

単独名義で相続の登記を経由した共同相続人の一人から不動産を譲り受けた者と相続回復請求権の消滅時効の援用

裁判要旨相続財産である不動産について単独名義で相続の登記を経由した共同相続人の一人甲が、甲の本来の相続持分を超える部分が他の相続人に属することを知っていたか、又は右部分を含めて甲が単独相続をしたと信ずるにつき合理的な事由がないために、他の共同相続人に対して相続回復請求権の消滅時効を援用することができない場合には、甲から右不動産を譲り受けた第三者も右時効を援用することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成7年12月5日 平成6(オ)440
登載
集民 第177号341頁
参照法条
民法884条
論点16第884条民法

共同相続人相互の間で一部の者が他の者を共同相続人でないものとしてその相続権を侵害している場合に相続回復請求権の消滅時効を援用しようとする者が立証すべき事項

裁判要旨共同相続人相互の間で一部の者が他の者を共同相続人でないものとしてその相続権を侵害している場合において、相続回復請求権の消滅時効を援用しようとする者は、真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人が、当該相続権侵害の開始時点において、他に共同相続人がいることを知らず、かつ、これを知らなかったことに合理的な事由があったことを立証すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成11年7月19日 平成7(オ)2468
登載
民集 第53巻6号1138頁
参照法条
民法884条,民訴法第2編第3章第1節総則
論点17第884条民法

相続回復請求の相手方である表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができるか

裁判要旨相続回復請求の相手方である表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和6年3月19日 令和4(受)2332
登載
民集 第78巻1号63頁
参照法条
民法162条、民法884条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第882条(相続開始の原因) 詳細ページ
(相続開始の原因)
第八百八十二条相続は、死亡によって開始する。
民法 第883条(相続開始の場所) 詳細ページ
(相続開始の場所)
第八百八十三条相続は、被相続人の住所において開始する。
民法 第884条(相続回復請求権) 詳細ページ
(相続回復請求権)
第八百八十四条相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする。
民法 第885条(相続財産に関する費用) 詳細ページ
(相続財産に関する費用)
第八百八十五条相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。