民法 / テーマ別まとめ

相続の承認及び放棄/総則

総則の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のいずれかを選ばなければなりません。この期間の起算点や伸長の可否、相続財産の管理義務、承認・放棄の撤回・取消しの可否など、承認・放棄をめぐる共通ルールを整理しています。

総則
条文定めている内容期間・起算点等
915条単純・限定承認/放棄の選択知った時から3か月以内
916条承認・放棄前に相続人死亡次の相続人が知った時から起算
917条未成年者・成年被後見人法定代理人が知った時から起算
918条相続財産の管理義務承認・放棄で管理義務終了
919条撤回不可・取消しは可追認可能から6か月/10年で消滅
  • 915条:期間は利害関係人または検察官の請求により家庭裁判所が伸長できる
  • 916条:相続人が承認・放棄をしないまま死亡した場合に適用される規定
  • 918条:承認または放棄をした後は、この管理義務は適用されない
  • 919条2項:総則(第一編)・親族(前編)の規定による取消しは妨げられない
  • 919条4項:限定承認・放棄の取消しをする者は家庭裁判所に申述する必要がある
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総則

総則について、条文は何を定めているか。

第915条相続の承認又は放棄をすべき期間承認・放棄は3か月以内に決める2項判例 5件
  • 自己のために相続開始を知った時から3か月以内に単純承認・限定承認・放棄を選ぶ
  • 利害関係人や検察官の請求で家庭裁判所がこの期間を伸ばせる
  • 決める前に相続財産を調査できる
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第916条承認・放棄前に死亡したら期間を再計算1項判例 1件
  • 相続人が承認・放棄をしないまま死亡した場合の規定
  • 3か月の期間はその人の相続人が開始を知った時から数え直す
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第917条未成年者・成年被後見人は起算点に特則1項判例なし
  • 相続人が未成年者・成年被後見人のときの起算点の特則
  • 3か月の期間は法定代理人が開始を知った時から数える
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第918条相続人による管理相続人は相続財産を自分の財産同様に管理1項判例なし
  • 承認・放棄前は固有財産と同一の注意で相続財産を管理する義務がある
  • 承認または放棄をした後はこの管理義務は適用されない
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第919条相続の承認及び放棄の撤回及び取消し承認・放棄は撤回不可、取消しは可4項判例 1件
  • 3か月の期間内でも承認・放棄の撤回はできない
  • 総則・親族編の規定による取消しは可能(6か月または10年で時効消滅)
  • 限定承認・放棄の取消しは家庭裁判所へ申述が必要
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第915条民法

民法九一五条一項〈相続の承認又は放棄をすべき期間〉所定の熟慮期間について相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当であるとされる場合

裁判要旨相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法九一五条一項〈相続の承認又は放棄をすべき期間〉所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年4月27日 昭和57(オ)82
登載
民集 第38巻6号698頁
参照法条
民法915条1項,民法921条2号
論点2第915条民法

相続人が数人ある場合と相続放棄をすべき期間

裁判要旨相続人が数人いる場合には、民法九一五条一項〈相続の承認又は放棄をすべき期間〉に定める三か月の期間は、相続人がそれぞれ自己のために相続の開始があつたことを知つた時から各別に進行するものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年7月1日 昭和50(オ)211
登載
集民 第118号229頁
参照法条
民法915条,民法938条
論点3第915条民法

旧民法九一五条四号にいう「後見人と被後見人トノ利益相反スル行為」にあたるとされた事例

裁判要旨後見人が未成年者を代理して後見人の内縁の夫に対し未成年者所有の土地を無償譲渡する行為は、旧民法九一五条四号にいう「後見人ト被後見人トノ利益相反スル行為」にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年5月22日 昭和42(オ)473
登載
民集 第24巻5号402頁
参照法条
旧民法915条4号,民法851条4号,民法860条
論点4第915条民法

相続の放棄申述受理の無効を訴訟において主張することの許否

裁判要旨相続放棄の申述が家庭裁判所に受理された場合においても、相続の放棄に法律上無効原因が存するときは、後日訴訟においてこれを主張することを妨げない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和28(オ)78
登載
民集 第8巻12号2310頁
参照法条
民法915条,民法938条,家事審判法9条甲類29号,家事審判法14条,家事審判規則115条
論点5第915条民法

相続放棄の申述は、申述者が申述書に自署することを要するか

裁判要旨相続放棄の申述書には、申述者が自署するのを原則とするが、自署でなければ無効であるということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月21日 昭和27(オ)1219
登載
民集 第8巻12号2222頁
参照法条
民法915条,民法938条,家事審判法9条甲類29号,家事審判規則114条
論点6第916条民法

民法916条〈相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったこ…〉にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」の意義

裁判要旨民法916条〈相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったこ…〉にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいう。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和元年8月9日 平成30(受)1626
登載
民集 第73巻3号293頁
参照法条
民法916条
論点7第919条民法

一 家事調停による農地の所有権移転と知事の許可の要否
二 相続人らからの相続放棄者に対する家事調停による農地贈与と農地法第三条第一項但書第七号

裁判要旨一 家事調停による農地の所有権移転については、知事の許可を要する。
二 遺産分割の家事調停において、相続人らから利害関係人たる相続放棄者に対して農地を贈与する旨の調停条項が成立したとしても、右条項による権利移転は、農地法第三条第一項但書第七号所定の遺産分割による場合に当らない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年5月29日 昭和33(オ)967
登載
民集 第16巻5号1204頁
参照法条
農地法3条1項但書5号,農地法3条1項但書7号,民法919条1項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間) 詳細ページ
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
民法 第916条 詳細ページ
第九百十六条相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
民法 第917条 詳細ページ
第九百十七条相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
民法 第918条(相続人による管理) 詳細ページ
(相続人による管理)
第九百十八条相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
民法 第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し) 詳細ページ
(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
2前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
3前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。
4第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。