民法 / テーマ別まとめ

相続の承認及び放棄/相続の放棄

相続の放棄の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

相続の放棄について、家庭裁判所への申述という方式、放棄の効力(その相続に関して初めから相続人でなかったものとみなされること)、そして放棄後に財産を現に占有していた場合の管理義務までを定めている。実務担当者は、放棄の手続要件だけでなく、放棄後も一定の財産管理責任が残り得る点に注意する必要がある。

相続の放棄
項目内容
放棄の方法家庭裁判所への申述
効力初めから相続人でなかったとみなす
占有財産の保存義務引渡しまで自己の財産と同一注意
準用規定委任の規定(645,646,650条1項2項)
  • 占有財産の引渡し先は相続人又は相続財産の清算人(952条1項)
  • 準用される委任の規定は645条(事務の報告)、646条(受取物の引渡し等)、650条1項2項(費用等の償還)
  • 放棄の効力は「その相続に関しては」という限定付きの規定
1

相続の放棄

相続の放棄について、条文は何を定めているか。

第938条相続の放棄の方式放棄は家庭裁判所への申述で行う1項判例 6件
  • 家庭裁判所への申述という方式のみが定められている
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第939条相続の放棄の効力放棄した人は最初から相続人でなかったことになる1項判例 2件
  • その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされる
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第940条相続の放棄をした者による管理放棄後も占有財産には保存義務が残る2項判例なし
  • 放棄時に現に占有している相続財産が対象
  • 相続人又は相続財産の清算人に引き渡すまで保存義務が続く
  • 自己の財産におけるのと同一の注意で足りる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第938条民法

共同相続人の一人である後見人が他の共同相続人である被後見人を代理してする相続の放棄が利益相反行為にあたらない場合

裁判要旨共同相続人の一人が他の共同相続人の全部又は一部の者の後見をしている場合において、後見人が被後見人全員を代理してする相続の放棄は、後見人みずからが相続の放棄をしたのちにされたか、又はこれと同時にされたときは、民法八六〇条〈利益相反行為〉によつて準用される同法八二六条にいう利益相反行為にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和53年2月24日 昭和50(オ)354
登載
民集 第32巻1号98頁
参照法条
民法826条,民法860条,民法938条
論点2第938条民法

相続人が数人ある場合と相続放棄をすべき期間

裁判要旨相続人が数人いる場合には、民法九一五条一項〈相続の承認又は放棄をすべき期間〉に定める三か月の期間は、相続人がそれぞれ自己のために相続の開始があつたことを知つた時から各別に進行するものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年7月1日 昭和50(オ)211
登載
集民 第118号229頁
参照法条
民法915条,民法938条
論点3第938条民法

相続放棄の申述の受理に家事審判官の署名または記名を欠く場合における放棄の効力

裁判要旨相続放棄の申述の受理に家事審判官の押印のみがあつてその署名または記名を欠く場合でも、申述が申述者の真意に基づき適式になされたものであるかぎり、放棄の実体上の効力は妨げられない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年11月20日 昭和45(オ)784
登載
集民 第101号487頁
参照法条
民法938条,家事審判規則16条,家事審判規則115条1項
論点4第938条民法

相続放棄の申述と民法第九五条の適用の有無。

裁判要旨相続放棄の申述についても、民法第九五条〈錯誤〉の適用がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年5月27日 昭和36(オ)201
登載
集民 第79号201頁
参照法条
民法95条,民法938条
論点5第938条民法

相続の放棄申述受理の無効を訴訟において主張することの許否

裁判要旨相続放棄の申述が家庭裁判所に受理された場合においても、相続の放棄に法律上無効原因が存するときは、後日訴訟においてこれを主張することを妨げない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和28(オ)78
登載
民集 第8巻12号2310頁
参照法条
民法915条,民法938条,家事審判法9条甲類29号,家事審判法14条,家事審判規則115条
論点6第938条民法

相続放棄の申述は、申述者が申述書に自署することを要するか

裁判要旨相続放棄の申述書には、申述者が自署するのを原則とするが、自署でなければ無効であるということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月21日 昭和27(オ)1219
登載
民集 第8巻12号2222頁
参照法条
民法915条,民法938条,家事審判法9条甲類29号,家事審判規則114条
論点7第939条民法

相続の放棄と詐害行為取消権

裁判要旨相続の放棄は、民法四二四条〈詐害行為取消請求〉の詐害行為取消権行使の対象とならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年9月20日 昭和47(オ)1194
登載
民集 第28巻6号1202頁
参照法条
民法424条,民法939条
論点8第939条民法

相続放棄と登記

裁判要旨相続人は、相続の放棄をした場合には相続開始時にさかのぼつて相続開始がなかつたと同じ地位に立ち、当該相続放棄の効力は、登記等の有無を問わず、何人に対してもその効力を生ずべきものと解すべきであつて、相続の放棄をした相続人の債権者が、相続の放棄後に、相続財産たる未登記の不動産について、右相続人も共同相続したものとして、代位による所有権保存登記をしたうえ、持分に対する仮差押登記を経由しても、その仮差押登記は無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年1月20日 昭和41(オ)457
登載
民集 第21巻1号16頁
参照法条
民法939条1項(昭和37年法律40号による改正前のもの),民法939条,民法177条,民法909条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第938条(相続の放棄の方式) 詳細ページ
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
民法 第939条(相続の放棄の効力) 詳細ページ
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
民法 第940条(相続の放棄をした者による管理) 詳細ページ
(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
2第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。
出

一次情報

原文ママ

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