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先取特権の種類/動産の先取特権

動産の先取特権の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

民法311条は、不動産の賃貸借・旅館の宿泊・旅客や荷物の運輸・動産の保存や売買・種苗肥料の供給・農業や工業の労務という8種類の原因から生じる債権について、債務者の特定の動産を対象とする先取特権を認めています。312条以下では、この8種類それぞれについて、どの動産に先取特権が及び、どの範囲の債権が担保されるのかを個別に定めています。実務担当者は、自社の債権が8種類のうちどれに当たるかを見極め、担保が及ぶ動産と債権の範囲を確認する必要があります。

動産の先取特権
種類対象動産担保される債権
不動産の賃貸借土地・建物に備付けの動産等賃料等の賃貸借上の債務
旅館の宿泊宿泊客の手荷物宿泊料・飲食料
旅客・荷物の運輸運送人が占有する荷物運送賃・付随の費用
動産の保存保存された動産保存等に要した費用
動産の売買売買された動産代価及び利息
種苗・肥料の供給供給後1年内の土地の果実代価及び利息
農業の労務労務で生じた果実最後の1年間の賃金
工業の労務労務で生じた製作物最後の3箇月間の賃金
  • 賃借権の譲渡・転貸の場合、賃貸人の先取特権は譲受人・転借人の動産や譲渡人・転貸人が受けるべき金銭にも及ぶ(314条)
  • 賃借人の財産全部を清算する場合、賃貸人の先取特権は前期・当期・次期の賃料等と前期・当期の損害賠償債務に限られる(315条)
  • 敷金を受け取っている場合、賃貸人の先取特権は敷金で弁済を受けない部分についてのみ成立する(316条)
  • 土地の賃貸人の先取特権は備付け動産・利用に供した動産のほか賃借人が占有する土地の果実にも及ぶ(313条1項)
  • 建物の賃貸人の先取特権は賃借人がその建物に備え付けた動産に限られる(313条2項)
  • 312条から318条の先取特権には即時取得の規定(192条から195条)が準用される(319条)
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動産の先取特権

動産の先取特権について、条文は何を定めているか。

第311条動産の先取特権動産の先取特権が生じる8つの原因を列挙1項・8号判例なし
  • 不動産賃貸・宿泊・運輸・動産保存・動産売買が原因になる
  • 種苗肥料の供給や農業・工業の労務による賃金債権も対象
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第312条不動産賃貸の先取特権不動産賃貸の先取特権は賃借人の動産が対象1項判例 1件
  • 賃料その他賃貸借関係から生じた賃借人の債務を担保する
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第313条不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲土地と建物で対象動産の範囲が異なる2項判例なし
  • 土地:備付け動産・利用に供した動産・賃借人占有の果実に及ぶ
  • 建物:賃借人がその建物に備え付けた動産のみに及ぶ
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第314条賃借権の譲渡・転貸でも先取特権は及ぶ1項判例なし
  • 譲受人・転借人の動産にも先取特権が及ぶ
  • 譲渡人・転貸人が受けるべき金銭にも同様に及ぶ
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第315条不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲財産全部を清算する場合は担保範囲が限定される1項判例なし
  • 前期・当期・次期の賃料その他の債務に限られる
  • 前期・当期に生じた損害賠償債務も対象になる
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第316条敷金がある場合は不足する部分のみ担保される1項判例なし
  • 敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する
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第317条旅館宿泊の先取特権旅館宿泊の先取特権は宿泊客の手荷物が対象1項判例なし
  • 宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料を担保する
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第318条運輸の先取特権運輸の先取特権は運送人が占有する荷物が対象1項判例なし
  • 旅客又は荷物の運送賃及び付随の費用を担保する
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第319条即時取得の規定の準用312条〈不動産賃貸の先取特権〉以降の先取特権に即時取得規定を準用1項判例なし
  • 192条〈即時取得〉から195条〈動物の占有による権利の取得〉までの即時取得の規定を準用する
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第320条動産保存の先取特権動産保存の先取特権はその動産自体が対象1項判例なし
  • 動産の保存に要した費用を担保する
  • 動産に関する権利の保存・承認・実行の費用も担保する
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第321条動産売買の先取特権動産売買の先取特権はその動産自体が対象1項判例なし
  • 動産の代価及びその利息を担保する
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第322条種苗又は肥料の供給の先取特権種苗・肥料供給の先取特権は土地の果実が対象1項判例 3件
  • 種苗又は肥料の代価及びその利息を担保する
  • 用いた後1年以内に生じた果実に限られる
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第323条農業労務の先取特権農業労務の先取特権は労務で生じた果実が対象1項判例なし
  • 労務に従事する者の最後の1年間の賃金を担保する
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第324条工業労務の先取特権工業労務の先取特権は労務による製作物が対象1項判例なし
  • 労務に従事する者の最後の3箇月間の賃金を担保する
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第312条民法

適法な抗告理由とは認められないとして特別抗告が却下された事例

裁判要旨抗告人と相手方との間には、抗告人が相手方の著作に対する検定という方式を通して相手方の有する表現の自由を糊限したという法律関係が存在する旨の原決定の判示は、抗告人および相手方の判示主張事実を前提とすれば右法律関係が存在することとなるとしているものにすぎず、本件検定が相手方の表現の自由を侵害している旨を原審みずからが判断したものではないから、原審が右のような判断をしたものであるとして原決定の違憲をいう抗告理由は、その前提を欠くに帰し、特別抗告適法の理由とは認められず、右抗告は不適法として却下すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年12月17日 昭和44(ク)376
登載
集民 第104号737頁
参照法条
民法312条,民法419条ノ2
論点2第322条民法

動産の買主が転売先から取り戻した右動産を売主に対する売買代金債務の代物弁済に供した行為が破産法七二条四号による否認の対象になるとされた事例

裁判要旨甲から動産を買い受けた乙がこれを丙に転売して引き渡したことにより、甲が右動産に対して動産売買の先取特権を行使し得なくなったところ、その後に支払を停止した乙が、右動産を甲に返還する意図の下に、丙との間で転売契約を合意解除して右動産を取り戻した上、甲に対する右動産の売買代金債務の代物弁済に供したなど判示の事実関係の下においては、乙が右動産を代物弁済に供した行為は、破産法七二条四号による否認の対象になる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年12月18日 平成7(オ)863
登載
民集 第51巻10号4210頁
参照法条
破産法72条4号,民法322条,民法333条
論点3第322条民法

動産売買の先取特権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡

裁判要旨動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年2月22日 平成16(受)1271
登載
民集 第59巻2号314頁
参照法条
民法304条,民法322条,民法467条
論点4第322条民法

一 請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することの可否
二 請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権の一部に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができるとされた事例

裁判要旨一 請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができる。
二 甲から機械の設置工事を請け負った乙が右機械を代金一五七五万円で丙から買い受け、丙が乙の指示に基づいて右機械を甲に引き渡し、甲が乙に支払うべき二〇八〇万円の請負代金のうち一七四〇万円は右機械の代金に相当するなど判示の事実関係の下においては、乙の甲に対する一七四〇万円の請負代金債権につき右機械の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情があるということができ、丙は、動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成10年12月18日 平成10(許)4
登載
民集 第52巻9号2024頁
参照法条
民法304条,民法322条,民法632条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第311条(動産の先取特権) 詳細ページ
(動産の先取特権)
第三百十一条次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
一不動産の賃貸借
二旅館の宿泊
三旅客又は荷物の運輸
四動産の保存
五動産の売買
六種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
七農業の労務
八工業の労務
民法 第312条(不動産賃貸の先取特権) 詳細ページ
(不動産賃貸の先取特権)
第三百十二条不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。
民法 第313条(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲) 詳細ページ
(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲)
第三百十三条土地の賃貸人の先取特権は、その土地又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。
2建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。
民法 第314条 詳細ページ
第三百十四条賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶ。譲渡人又は転貸人が受けるべき金銭についても、同様とする。
民法 第315条(不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲) 詳細ページ
(不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲)
第三百十五条賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人の先取特権は、前期、当期及び次期の賃料その他の債務並びに前期及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。
民法 第316条 詳細ページ
第三百十六条賃貸人は、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。
民法 第317条(旅館宿泊の先取特権) 詳細ページ
(旅館宿泊の先取特権)
第三百十七条旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。
民法 第318条(運輸の先取特権) 詳細ページ
(運輸の先取特権)
第三百十八条運輸の先取特権は、旅客又は荷物の運送賃及び付随の費用に関し、運送人の占有する荷物について存在する。
民法 第319条(即時取得の規定の準用) 詳細ページ
(即時取得の規定の準用)
第三百十九条第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。
民法 第320条(動産保存の先取特権) 詳細ページ
(動産保存の先取特権)
第三百二十条動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。
民法 第321条(動産売買の先取特権) 詳細ページ
(動産売買の先取特権)
第三百二十一条動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。
民法 第322条(種苗又は肥料の供給の先取特権) 詳細ページ
(種苗又は肥料の供給の先取特権)
第三百二十二条種苗又は肥料の供給の先取特権は、種苗又は肥料の代価及びその利息に関し、その種苗又は肥料を用いた後一年以内にこれを用いた土地から生じた果実(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉の使用によって生じた物を含む。)について存在する。
民法 第323条(農業労務の先取特権) 詳細ページ
(農業労務の先取特権)
第三百二十三条農業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の一年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。
民法 第324条(工業労務の先取特権) 詳細ページ
(工業労務の先取特権)
第三百二十四条工業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の三箇月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。