論点1第632条民法
請負人の破産と破産法五九条の適用
裁判要旨請負人が破産宣告を受けた場合には、当該請負契約の目的である仕事が請負人以外の者において完成することのできない性質のものでない限り、右契約について破産法五九条が適用される。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和62年11月26日 昭和59(オ)521
- 登載
- 民集 第41巻8号1585頁
- 参照法条
- 破産法59条,民法632条
論点2第632条民法
請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合に注文者が残工事に要した費用の賠償を求めうる範囲
裁判要旨請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合において、残工事の施工に要した費用として、注文者が請負人に賠償を請求することができるのは、右費用のうち、未施工部分に相当する請負代金額を超える部分に限られる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和60年5月17日 昭和59(オ)543
- 登載
- 集民 第145号13頁
- 参照法条
- 民法415条,民法416条,民法632条
論点3第632条民法
工事未完成の間における既施工部分についての請負契約解除の可否
裁判要旨建物等の工事未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に請負契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、かつ、当事者が既施工部分の給付について利益を有するときは、特段の事情のない限り、右部分についての契約を解除することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和56年2月17日 昭和52(オ)630
- 登載
- 集民 第132号129頁
- 参照法条
- 民法541条,民法632条
論点4第632条民法
注文者の責に帰すべき事由により仕事の完成が不能となつた場合における請負人の報酬請求権と利得償還義務
裁判要旨請負契約において仕事が完成しない間に注文者の責に帰すべき事由によりその完成が不能となつた場合には、請負人は、自己の残債務を免れるが、民法
五三六条二項〈債務者の危険負担等〉により、注文者に請負代金全額を請求することができ、ただ、自己の債務を免れたことにより得た利益を注文者に償還すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年2月22日 昭和51(オ)611
- 登載
- 民集 第31巻1号79頁
- 参照法条
- 民法536条2項,民法632条
論点5第632条民法
整地請負契約における契約の一部解除の認定が相当でないとされた事例
裁判要旨対価として土地一〇〇〇坪の譲渡を受けるという約定のもとに、自動車学校の用地の整地、練習用コース周囲の明渠の設置及び排水の諸工事を請け負つた者が期日までに約一〇分の二程度の工事しかせず、全工事完成の見込みがたたなくなつたので、注文者が残工事部分の打切りを申し入れるとともに、既に請負人に譲渡ずみの土地五〇〇坪全部の返還を要求しているなど判示の事情のもとにおいては、他に特別の事情がない以上、注文者は契約全部を解除する旨の意思表示をしたものと解するのが相当であり、残工事部分のみについての契約解除の意思表示をしたものと断定するのは相当でない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年12月23日 昭和52(オ)583
- 登載
- 集民 第122号597頁
- 参照法条
- 民法541条,民法632条,民訴法185条
論点6第632条民法
請負契約の合意解除にあたり請負人が注文主に対し前払金返還債務を負担することを約した場合と請負人の保証人の責任
裁判要旨請負契約が合意解除され、その際請負人が注文主に対し請負契約上前払すべきものと定められた金額の範囲内で前払金返還債務を負担することを約した場合において、右合意解除が請負人の債務不履行に基づくものであり、かつ、右約定の債務が実質的にみて解除権の行使による解除によって負担すべき請負人の前払金返還債務より重いものではないと認められるときは、請負人の保証人は、特段の事情のないかぎり、右約定の債務についてもその責に任ずるものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月23日 昭和46(オ)126
- 登載
- 民集 第26巻2号274頁
- 参照法条
- 民法446条,民法447条,民法545条,民法632条
論点7第632条民法
請負契約に基づき建築された建物所有権が原始的に注文者に帰属するとされた事例
裁判要旨注文者が、請負契約の履行として、請負人に対し、全工事代金の半額以上を棟上げのときまでに支払い、その後も工事の進行に応じ残代金の支払をして来たような場合には、特段の事情のないかぎり、建築された建物の所有権は、引渡をまつまでもなく、完成と同時に原始的に注文者に帰属するものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年9月12日 昭和44(オ)538
- 登載
- 集民 第96号579頁
- 参照法条
- 民法632条
論点8第632条民法
請負代金債権に対する仮差押の効力発生後にされた請負契約の合意解除の効果
裁判要旨請負代金債権に対する仮差押の効力発生後に、請負契約を当事者間の合意で解除しても、請負代金債権の消滅をもつて仮差押債権者に対抗することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年2月27日 昭和41(オ)135
- 登載
- 集民 第90号449頁
- 参照法条
- 民法632条,民訴法598条,民訴法750条
論点9第632条民法
請負契約に基づき建築された建物所有権が右建物の引渡された時に注文者に移転するとされた事例。
裁判要旨建築材料の一切を請負人において支給し請負代金の前渡もなされていない請負契約においては、特別の意思表示のないかぎり、右契約に基づき建築された建物の所有権は、右建物が請負人から注文者に引渡された時に注文者に移転するものと認めるのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年5月25日 昭和39(オ)1209
- 登載
- 集民 第79号175頁
- 参照法条
- 民法632条
論点10第632条民法
建物建築工事の注文者と元請負人との間に出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合と一括下請負人が自ら材料を提供して築造した出来形部分の所有権の帰属
裁判要旨建物建築工事の注文者と元請負人との間に、請負契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合には、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、右契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成5年10月19日 平成1(オ)274
- 登載
- 民集 第47巻8号5061頁
- 参照法条
- 民法632条
論点11第632条民法
元請企業につき下請企業の労働者に対する安全配慮義務が認められた事例
裁判要旨下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備工具等を用い、事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の従業員とほとんど同じであったなど原判示の事実関係の下においては、元請企業は、信義則上、右労働者に対し安全配慮義務を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成3年4月11日 平成1(オ)516
- 登載
- 集民 第162号295頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条,民法623条,民法632条
論点12第632条民法
共同企業体を請負人とする請負契約における請負人「乙」に対する公正取引委員会の排除措置命令等が確定した場合「乙」は注文者「甲」に約定の賠償金を支払うとの約款の条項の解釈
裁判要旨A及びBを構成員とする共同企業体を請負人とする請負契約において,注文者を「甲」,請負人を「乙」とし,「乙」に対する公正取引委員会の排除措置命令又は課徴金納付命令が確定した場合「乙」は「甲」に約定の賠償金を支払うとの請負契約約款の条項がある場合に,上記条項において排除措置命令等が確定したことを要する「乙」の意味が当該共同企業体のほか「A又はB」か「A及びB」かは上記契約の文言上一義的に明らかではないのに,「乙」の後に例えば「(共同企業体にあっては,その構成員のいずれかの者をも含む。)」などの記載もないなど判示の事情の下では,「乙」とは当該共同企業体又は「A及びB」をいうものとする点で合意が成立していると解すべきである。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成26年12月19日 平成25(受)1833
- 登載
- 集民 第248号189頁
- 参照法条
- 民法91条,民法632条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条の2第1項
論点13第632条民法
1 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗に反し無効とされた事例
2 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事の施工の合意が公序良俗に反しないとされた事例
裁判要旨1 注文者と請負人が建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約を締結した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記請負契約は,公序良俗に反し,無効である。
(1) 上記請負契約は,建築基準法所定の確認及び検査を潜脱するため,法令の規定に適合した建物の建築確認申請用図面のほかに,法令の規定に適合しない建物の建築工事の施工用図面を用意し,前者の図面を用いて建築確認申請をして確認済証の交付を受け,一旦は法令の規定に適合した建物を建築して検査済証の交付も受けた後に,後者の図面に基づき建築工事を施工することを計画して締結されたものである。
(2) 上記建物は,上記(1)の計画どおり建築されれば,耐火構造に関する規制違反や避難通路の幅員制限違反など,居住者や近隣住民の生命,身体等の安全に関わる違法を有する危険な建物となるものであった。
(3) 請負人は,建築工事請負等を業とする者でありながら,上記(1)の計画を全て了承し,上記請負契約の締結に及んだのであり,請負人が上記建物の建築という注文者からの依頼を拒絶することが困難であったというような事情もうかがわれない。
2 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事は,同工事が区役所の是正指示や近隣住民からの苦情など様々な事情を受けて別途合意の上施工されたものであり,その中には上記本工事の施工によって既に生じていた違法建築部分を是正する工事も含まれていたという事情の下では,上記追加変更工事の中に上記本工事で計画されていた違法建築部分につきその違法を是正することなくこれを一部変更する部分があるのであれば,その部分は別の評価を受けることになるが,そうでなければ,その施工の合意が公序良俗に反するものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年12月16日 平成22(受)2324
- 登載
- 集民 第238号297頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法90条,民法632条
論点14第632条民法
請負人の製造した目的物が,注文者から別会社を介してユーザーとリース契約を締結したリース会社に転売されることを予定して請負契約が締結され,目的物がユーザーに引き渡された場合において,注文書に「ユーザーがリース会社と契約完了し入金後払い」等の記載があったとしても,上記請負契約は上記リース契約の締結を停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で請負代金の支払期限が到来するとされた事例
裁判要旨請負人の製造した目的物が,注文者から別会社を介してユーザーとリース契約を締結したリース会社に転売されることを予定して請負契約が締結され,目的物がユーザーに引き渡された場合において,注文者が請負人に交付した注文書に「支払いについて,ユーザーがリース会社と契約完了し入金後払いといたします。手形は,リース会社からの廻し手形とします。」との記載があったとしても,次の(1),(2)など判示の事実関係の下においては,上記請負契約は,上記リース契約が締結されることを停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で,請負代金の支払期限が到来する。
(1)上記リース契約は,上記ユーザーに目的物の代金支払につき金融の便宜を付与することを目的とするものであった。
(2) 上記請負人が,請負代金の支払確保のため,あえて信用のある会社を取引に介在させることを求めた結果,上記注文者との間で上記請負契約が締結された。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年7月20日 平成21(受)309
- 登載
- 集民 第234号323頁
- 参照法条
- 民法127条1項,民法135条1項,民法632条,民訴法247条
論点15第632条民法
数社を介在させて順次発注された工事の最終の受注者XとXに対する発注者Yとの間におけるYが請負代金の支払を受けた後にXに対して請負代金を支払う旨の合意が,Xに対する請負代金の支払につき,Yが請負代金の支払を受けることを停止条件とする旨を定めたものとはいえず,Yが上記支払を受けた時点又はその見込みがなくなった時点で支払期限が到来する旨を定めたものと解された事例
裁判要旨数社を介在させて順次発注された工事の最終の受注者XとXに対する発注者Yとの間におけるYが請負代金の支払を受けた後にXに対して請負代金を支払う旨の合意は,上記工事が一部事務組合から発注された公共事業に係るものであって,同組合からの請負代金の支払は確実であったなど判示の事情の下においては,Xに対する請負代金の支払につき,Yが請負代金の支払を受けることを停止条件とする旨を定めたものとはいえず,Yが上記支払を受けた時点又はその見込みがなくなった時点で支払期限が到来する旨を定めたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成22年10月14日 平成21(受)976
- 登載
- 集民 第235号21頁
- 参照法条
- 民法127条1項,民法135条1項,民法632条
論点16第632条民法
請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,上記の派遣を違法な労働者派遣と解すべき場合に,注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえないとされた事例
裁判要旨請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,上記の派遣を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」に違反する労働者派遣と解すべき場合において,(1)上記雇用契約は有効に存在していたこと,(2)注文者が請負人による当該労働者の採用に関与していたとは認められないこと,(3)当該労働者が請負人から支給を受けていた給与等の額を注文者が事実上決定していたといえるような事情はうかがわれないこと,(4)請負人が配置を含む当該労働者の具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったことなど判示の事情の下では,注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年12月18日 平成20(受)1240
- 登載
- 民集 第63巻10号2754頁
- 参照法条
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律2条1号,職業安定法4条6項,労働契約法6条,民法623条,民法632条
論点17第632条民法
1 建築会社の担当者が顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を提案した際に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかった点に説明義務違反があるとされた事例
2 建築会社の担当者と共に顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を説明した銀行の担当者に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることについての説明義務違反等がないとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨1 建築会社の担当者が,顧客に対し,銀行から融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する計画を提案し,顧客が,上記計画に沿って銀行から融資を受けて建物を建築したが,その後,上記土地の一部を予定どおり売却することができず,上記融資の返済資金を調達することができなくなったところ,上記計画には,上記土地の一部の売却によりその余の敷地部分のみでは上記建物が容積率の制限を超える違法な建築物となり,また,上記土地の一部の買主がこれを敷地として建物を建築する際には,敷地を二重に使用することとなって建築確認を直ちには受けられない可能性があるという問題があったなど判示の事実関係の下においては,上記問題を認識しながらこれを顧客に説明しなかった上記担当者には,信義則上の説明義務違反がある。
2 銀行の担当者が,顧客に対し,融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する計画を提案した建築会社の担当者と共に,上記計画を説明し,顧客が,上記計画に沿って銀行から融資を受けて建物を建築したが,その後,上記土地の一部を予定どおり売却することができず,上記融資の返済資金を調達することができなくなったところ,上記計画には,上記土地の一部の買主がこれを敷地として建物を建築する際,敷地を二重に使用することとなって建築確認を直ちには受けられない可能性があることなどの問題があったなど判示の事実関係の下においては,顧客が,原告として,銀行の担当者は顧客に対して上記土地の一部の売却について取引先に働き掛けてでも確実に実現させる旨述べたなどの事情があったと主張しているにもかかわらず,上記事情の有無を審理することなく,上記担当者について,上記問題を含め上記土地の一部の売却可能性を調査し,これを顧客に説明すべき信義則上の義務がないとした原審の判断には,違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成18年6月12日 平成16(受)1219
- 登載
- 集民 第220号403頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法1条2項,民法415条,民法709条,建築基準法52条 (1につき)民法632条 (2につき)民法587条
論点18第632条民法
一 請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することの可否
二 請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権の一部に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができるとされた事例
裁判要旨一 請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができる。
二 甲から機械の設置工事を請け負った乙が右機械を代金一五七五万円で丙から買い受け、丙が乙の指示に基づいて右機械を甲に引き渡し、甲が乙に支払うべき二〇八〇万円の請負代金のうち一七四〇万円は右機械の代金に相当するなど判示の事実関係の下においては、乙の甲に対する一七四〇万円の請負代金債権につき右機械の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情があるということができ、丙は、動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成10年12月18日 平成10(許)4
- 登載
- 民集 第52巻9号2024頁
- 参照法条
- 民法304条,民法322条,民法632条
論点19第633条民法
請負代金債権の消滅時効の起算日の認定判断に審理不尽・理由不備の違法があるとされた事例
裁判要旨原判示の事実関係のもとにおいて、賃貸マーケット等の用に供する建物の建築工事請負契約に基づく残代金債権の弁済期はその建物にマーケットの賃借人が充員した時に到来し、右残代金債権の消滅時効はその時から進行を開始したとする原審の認定判断には、審理不尽・理由不備の違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年4月20日 昭和46(オ)814
- 登載
- 集民 第105号613頁
- 参照法条
- 民法166条1項,民法170条2号,民法633条,民訴法185条,民訴法395条1項6号
論点20第633条民法
工事の未完成部分が軽微である場合に信義則上請負代金の支払を拒みえないとされた事例。
裁判要旨工事の請負契約において、引渡した目的物に未完成部分があつても、その部分が未払代金に比し極めて軽微であるときには、信義則上代金支払期日の未到来を主張することは許されないと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年2月12日 昭和37(オ)408
- 登載
- 集民 第64号425頁
- 参照法条
- 民法633条
論点21第634条民法
造船の請負契約による建造船舶に比較的軽微な瑕疵があるがその修補に著しく過分の費用を要する場合において右修補に代えて改造工事費及び滞船料相当の金員につき損害賠償請求をすることが許されないとされた事例
裁判要旨造船の請負契約によつて建造された船舶に存する瑕疵が比較的軽微であるが、その修補に著しく過分の費用を要するなど原判示の事実関係のもとにおいては、注文者は、請負人に対し、右修補に代えて、右修補に要する改造工事費及び滞船料に相当する金員を損害賠償として請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年1月20日 昭和54(オ)158
- 登載
- 集民 第138号1頁
- 参照法条
- 民法634条1項但書,民法634条2項
論点22第634条民法
瑕疵の修補が可能な場合に修補を請求することなく直ちに修補に代る損害賠償請求をすることの可否
裁判要旨仕事の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の修補が可能なときであつても、修補を請求することなく直ちに修補に代る損害賠償を請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和54年3月20日 昭和53(オ)826
- 登載
- 集民 第126号271頁
- 参照法条
- 民法634条
論点23第634条民法
一 民法五〇六条二項〈相殺の方法及び効力〉の法意
二 民法六三四条二項〈注文者が受ける利益の割合に応じた報酬〉所定の損害賠償債権の発生時期及び期限の有無
裁判要旨一 相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺をするに適するにいたつた時点に遡つて効力を生ずるものであり、その計算を双方の債務につき弁済期が到来し、相殺適状となつた時期を基準として双方の債権額を定め、その対等額において差引計算をすべきものである。
二 民法
六三四条二項〈注文者が受ける利益の割合に応じた報酬〉の損害賠償債権は、注文者が注文にかかる目的物の引渡を受けた時に発生する期限の定めのない債権である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和54年3月20日 昭和53(オ)827
- 登載
- 集民 第126号277頁
- 参照法条
- 民法506条2項,民法634条2項
論点24第634条民法
請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求と賠償額算定の基準時
裁判要旨請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、注文者が請負人に対し、あらかじめ修補の請求をすることなく直ちに修補に代わる損害賠償の請求をした場合には、右請求の時を基準として賠償額を算定すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和54年2月2日 昭和53(オ)924
- 登載
- 集民 第126号67頁
- 参照法条
- 民法634条
論点25第634条民法
債権額の異なる請負人の報酬債権と注文者の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とを相殺することの許否
裁判要旨請負人の注文者に対する報酬債権と注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とは、右両債権額が異なる場合であつても相殺することが許される。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年9月21日 昭和52(オ)1306
- 登載
- 集民 第125号85頁
- 参照法条
- 民法505条,民法533条,民法634条
論点26第634条民法
注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とし請負人の注文者に対する工事代金債権を受働債権とする相殺が当事者間の特約により許されないとされた事例
裁判要旨請負工事の目的物の瑕疵をめぐり紛争が生じたため、当事者間において、請負人のなすべき修補工事の内容を特定したうえ、注文者は予め弁護士である第三者に工事残代金を預託し、同人に請負人が右修補義務を履行したかどうかの判断権を委ね、右第三者がその履行があつたものと科断したときは、預託金を請負人に支払い、当事者双方は相互にその余の一切の請求権を放棄する旨を覚書で定めたなど判示の事情があるときは、注文者は自己独自の判断に基づき工事の目的物に瑕疵があるとしてその瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とし請負人の工事残代金債権を受働債権とする相殺を主張することは、許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年11月30日 昭和53(オ)765
- 登載
- 集民 第125号763頁
- 参照法条
- 民法505条,民法634条
論点27第634条民法
請負契約における目的物の瑕疵修補請求権と瑕疵修補に代わる損害賠償請求権との関係
裁判要旨請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、注文者は、瑕疵修補の請求をすることなく直ちに瑕疵修補に代わる損害賠償を請求することもできる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年2月28日 昭和51(オ)1226
- 登載
- 集民 第120号201頁
- 参照法条
- 民法634条
論点28第634条民法
民法六三七条〈目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限〉所定の期間の経過した請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とし請負人の報酬請求権を受働債権としてする相殺と同法五〇八条
裁判要旨注文者が民法六三七条所定の期間の経過した請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とし請負人の報酬請求権を受働債権としてする相殺については、同法五〇八条の類推適用がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和51年3月4日 昭和50(オ)485
- 登載
- 民集 第30巻2号48頁
- 参照法条
- 民法508条,民法634条2項,民法637条
論点29第634条民法
一、附帯控訴状の提出及び送達に関し、責問権の喪失が認められた事例。
二、請負契約の目的物の瑕疵修補に代る損害賠償請求と損害額算定の基準時
裁判要旨一、控訴審最終口頭弁論期日に附帯控訴状が未だ提出送達されていなかつたとしても、附帯訴代理人がこれに基き附帯控訴の趣旨を陳述したのに対し、附帯控訴人の代理人において何ら異議を止めることなく、附帯控訴棄却の判決を求める旨申立て、そのまま弁論終結に至つたときは、民訴
第141条〈期間の満了〉により、附帯控訴人は右附帯控訴状の提出送達がなかつたことを上告の理由とし得ないものと解すべきである。
二、請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、請負人に修補を請求したがこれに応じないので、修補に代る損害の賠償を請求する場合においては、右修補請求の時を基準として損害の額を算定するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和36年7月7日 昭和33(オ)1046
- 登載
- 民集 第15巻7号1800頁
- 参照法条
- 民法634条
論点30第634条民法
一 請負人の報酬債権と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺がされた後の報酬残債務について注文者が履行遅滞による責任を負う時期
二 仮執行宣言に基づく給付金に商事法定利率による金員を付加してその支払を求める民訴法一九八条二項の申立てが認容された事例
裁判要旨一 請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う。
二 (省略)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年7月15日 平成5(オ)2187
- 登載
- 民集 第51巻6号2581頁
- 参照法条
- 民法412条,民法506条2項,民法533条,民法634条2項,民訴法198条2項,商法514条
論点31第634条民法
請負契約の注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬全額の支払との同時履行を主張することの可否
裁判要旨請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年2月14日 平成5(オ)1924
- 登載
- 民集 第51巻2号337頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法412条,民法533条,民法634条
論点32第634条民法
請負契約における約定に反する太さの鉄骨が使用された建物建築工事に瑕疵があるとされた事例
裁判要旨建物建築工事の請負契約において,耐震性の面でより安全性の高い建物にするため,主柱について特に太い鉄骨を使用することが約定され,これが契約の重要な内容になっていたにもかかわらず,建物請負業者が,注文主に無断で,上記約定に反し,主柱工事につき約定の太さの鉄骨を使用しなかったという事情の下では,使用された鉄骨が,構造計算上,居住用建物としての安全性に問題のないものであったとしても,当該主柱の工事には,瑕疵がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年10月10日 平成15(受)377
- 登載
- 集民 第211号13頁
- 参照法条
- 民法634条1項
論点33第634条民法
建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合に注文者が請負人に対し建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することの可否
裁判要旨建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には,注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成14年9月24日 平成14(受)605
- 登載
- 集民 第207号289頁
- 参照法条
- 民法634条2項,民法635条
論点34第635条民法
民法第六三五条〈削除〉但書にいう「土地ノ工作物」の意義等。
裁判要旨民法
第六三五条〈削除〉但書にいう「土地ノ工作物」とは、社会観念上、土地に付着し、継続的に使用されるものと認められる工作物をいうのであつて、工場内に据え付ける機械は、基礎工事によつて土地に固著させられないかぎり、右法条にいう「土地ノ工作物」にあたらないと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年9月24日 昭和37(オ)108
- 登載
- 集民 第75号409頁
- 参照法条
- 民法635条
論点35第641条民法
不動産売買仲介の依頼が合意解除された場合における不動産取引仲介業者の報酬請求権。
裁判要旨不動産取引仲介業者に対する不動産売買仲介の依頼が合意解除された後、当事者間の直接取引により右不動産を目的とする売買契約が成立した場合においても、右業者の仲介と当該売買契約成立との間に因果関係がなく、右解除も故意に右業者を除外する目的でなされたものでなく、かつ、右依頼に関して報酬金の特約もなかつたときに、右業者が報酬金を請求できるという一般取引観念が存するものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年7月16日 昭和36(オ)1232
- 登載
- 民集 第18巻6号1160頁
- 参照法条
- 商法512条,商法550条1項,商法546条,宅地建物取引業法17条,民法648条3項,民法641条
論点36第642条民法
民法六四二条一項〈注文者についての破産手続の開始による解除〉による請負契約の解除と仕事の結果の帰属
裁判要旨請負契約が民法六四二条一項により解除された場合には、請負人がすでにした仕事の結果は破産財団に帰属する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年6月23日 昭和53(オ)327
- 登載
- 集民 第124号141頁
- 参照法条
- 民法642条1項
論点37第642条民法
証券取引法第四九条に違反して委託証拠金なしに信用取引がなされた場合における証券業者と委託者との間の契約の効力。
裁判要旨証券取引法第四九条に違反して委託証拠金なしに信用取引により株式が売買されても、右違反は、証券業者と委託者との間の契約の効力に影響を及ぼすものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和40年4月22日 昭和39(オ)816
- 登載
- 民集 第19巻3号703頁
- 参照法条
- 民法91条,民法642条,商法552条,証券取引法49条